嫁ぎ先の旦那様に溺愛されています。
高槻家の親戚(5)
「ええ、そうです」
高槻さんが、短く答えると老婆は私を真っ直ぐに見てくる。
「名前は何と?」
「宮内莉緒と言います」
「宮内さんね。私は#瑞穂__みずほ__# #加奈__かな__#です」
私は静かに頷く。
高槻さんが余計な事は口にしないように言っていたので――。
「ところで一つ伺いたいのですが……」
その言葉に、私は高槻さんの方へと視線を向けるけど彼は頷くだけ。
たぶん私が答えろという意味合いだと解釈し――、「何でしょうか?」と、答える。
「両親がご不在と伺いましたが――、婚約に関して許可は取れているのですか?」
「お父さんの許可は得ています」
「そう。それで母親からは?」
「それは……、お母さんは、私が小さい頃に他界致しましたので……」
「つまり片親と言う事ですか?」
コクリと頷く。
「なるほど……」
加奈さんは溜息をつく。
「総司さん、このような、どこの馬の骨とも知れない者を婚約者として迎い入れるなど、瑞穂家の血筋を引いている者として許可はできません」
その言葉に――、まるでお母さんが馬鹿にされたように感じて思わず文句を言いかけたところで――、「私の婚約者の悪口を言うのは控えてもらいましょうか?」と、高槻さんが加奈に話しかけた。
「貴方、それが本家の人間に言うセリフだと?」
「関係ありませんね。妻を守るのは夫の役目だと心得ていますので」
「――ッ!」
老婆が憎々しい表情で私を睨みつけてくる。
どうして怒りの矛先が私に向いてくるのか……。
「そう……。それならいいわ。それよりも例の件は、本家で了承することは無い事は分かっているわよね?」
「いえ。きちんと約束はこなしておりますので」
「ああいえばこう言う……。だけど高槻神社では巫女舞をする者が居なければ神社を継ぐ事は出来ないということは――」
「ご心配はご無用です。妻が巫女舞を奉じることができますので」
「な!? ――い、一体――何故!?」
目を大きく見開く老婆。
「約束の内容は違えず行っておりますので文句はありませんね?」
「――ッ。好きにしなさい!」
苛立ちを隠すかのように叫ぶと加奈さんは立ち上がり部屋から出て行ってしまった。
「一体、どうしたんでしょうか?」
「ああ、莉緒の身分までは調べたようだが巫女舞が出来るまでは知らなかったようだな。それにしても今から料理が届くのに勿体ないことをするものだ。それよりも莉緒――」
「は。はい?」
「食事でもするとしよう」
先ほどまでの話が嘘のように高槻さんは私に話しかけてきた。
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