嫁ぎ先の旦那様に溺愛されています。
一つ屋根の下での事情2(2)
「総司さん、起きてください」
とりあえず、起こした方がいいかな? と、思い声を掛けるけど反応がまったくない。
埒が明かないと思い近寄って彼の肩に手を添えながら揺らすと、彼の身体が横倒しに倒れそうになり――、畳に叩きつけられては危ないと咄嗟に彼の身体を抱きしめるけど……。
「――お、重い……」
寝ている成人男性の身体ってこんなに重いの!?
お父さんの時は、泥酔した時に起こすと、すごく機嫌が悪いから起こさずにいたから気が付かなかった。
横倒しになっていく彼の圧力に耐えかねて体制が崩れる。
「……膝枕になっちゃった」
図らずも、彼の頭は私の膝の上に。
怪我をしなくて良かったと思うけど、これでは私は身動きがとれない。
「どうしよう……。高槻さん、起きてください」
私の膝の上で寝ている彼に声を掛けるけど、「スー、スー」という寝息しか聞こえてこない。
「すごく疲れているのかな……」
仕事が立て込んでいると言っていたし。
そうなると1時間くらいは寝かせておいてもいいかも知れない。
総司さんのために入れてきたお茶を飲みながら、考えを纏めたところで――、ふとテーブルの上に載せてあったノートパソコンの画面が視界に入る。
「いけないから。人のパソコンの中身を見るなんて――」
――と、思いつつもノートパソコンの画面を見ると、それは幾つものグラフや英語や日本語で作られた資料。
資料内容を読むだけなら問題ないかな? と、思いつつ目を通していくと、どうやら会社の収支報告書だというのが資料のタイトルに書いてあったので辛うじて読み取れた。
「へー、資料ってこんな風に作るのね」
興味が沸いてきて、画面をスクロールしつつ下まで見ていくと最後の方に会社名が書かれていて――、
「瑞穂グループ? それって、都内に拠点を置く大企業だったような……、以前に友達がそういう話をしていたのを聞いた気がする……」
つまり、高槻さんの勤務先は瑞穂グループと言う事になるわけで……。
収支報告書を見ていると言う事は、もしかして……、少し偉い人? だよね?
どうりでお金を持っているはずだと少しだけ納得した。
「――ん……」
「総司さん、起きましたか?」
「ああ、莉緒か……」
私は、サッ! と、ノートパソコンから手を離して意識が朦朧としている彼に声をかける。
もちろん、未だに高槻さんは私の膝枕で寝たまま。
「……」
「……」
高槻さんが私を見上げる役。
そして、私は高槻さんを見下ろす役。
互いの視線が絡み合い、しばらく無言――。
「――ど、どどど、どうして!?」
現状を把握した高槻さんが慌てる。
「総司さんを起こそうとしたら、私に向かって倒れ込んできたので膝枕になりました」
「そ、そうなのか……。すまないな」
「いえ、気にしないでください。これもお仕事ですので」
「……そうか」
何か分からないけど、高槻さんが不機嫌になった? そんな空気を感じ取ってしまう。
「あ! 丁度いいので、耳かきとかしましょうか? 疲れている時に、仕事をしてもはかどらないと思いますので」
「……」
私の提案に彼は無言。
了承を得たと判断し耳かきをする。
結構、耳垢が溜まっていて時間は掛かったけど除去し終わったあとは、彼は何時の間にか寝ていた。
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