嫁ぎ先の旦那様に溺愛されています。
一つ屋根の下での事情2(1)
家事を終えたあと、先にお風呂に入って良いと言う事なので、一日の疲れを癒す為にお風呂場に向かう。
「ふうー」
身体を洗ったあと浴槽に張られた湯の中に浸かると思わず声が出てしまう。
今日は、酷い目にあった。
それは生徒指導室で、高槻さんと生徒指導担当の山田先生がゴタゴタしたこと。
弁護士を出すという話を高槻さんは言っていたけど、彼なら本当にしそう。
面倒ごとにならない事を祈るばかり。
先にお風呂を使わせてもらっていて、次は高槻さんがお風呂に入るので、私は早めにお風呂から出る。
タオルで髪の毛を包んだあと、パジャマに着替えてからスキンケアしてから腰まで伸ばしている黒い髪の毛をドライヤーで乾かす。
正確には伸ばしているのではなく、お金がないから髪を切りに行く余裕が無かったというのが正しいところかもしれない。
「たかつ――、総司さん」
焜炉がある居間に向かうと高槻さんはノートパソコンの画面を真剣に見ていて、その様子から仕事をしているのが伺いしれる。
ただ、仕事に熱中するあまりに私の声は届いていないようで――、
「総司さん」
再度、彼の名前を呼ぶ。
すると、ようやく私の声が届いたのか高槻さんが私の方へと視線を向けてくる。
それは、眼鏡越しだったので何時もの険しく睨みつけるような視線が少し緩和されているように感じられる。
「――ん? 風呂から出たのか?」
「はい。先にいただきました。そういえば以前から、お聞きしようと思っていたのですが」
「何をだ?」
「総司さんは目が悪いんですか?」
「どうして、そう思う?」
「だって、眼鏡をかけていない時は、いつも睨みつけるような感じで私を見てきていますので」
「それはすまなかったな」
あれ? 素直に謝罪してきた?
ちょっと、高槻さんらしくない。
もしかして天変地異前触れでは……。
「じつは、莉緒を迎えに行く前に色々とあってコンタクトレンズを無くしてしまってな。すぐに用意をしようと思ってはいたのだが、なかなか時間がとれなくてな」
「そうだったんですか……。てっきり、その筋の方だと思ってました」
「その筋? 俺の目つきが悪いからとヤクザだと思っていたのか?」
「えーっと」
目を逸らしながら、藪蛇だと思いつつ、上手い言い訳を思いつかなかったので、「はい。最初は、そう思っていました」と! 今は、そんな風に思っていない事をアピールというかフォローを入れつつ返事を返す。
「なるほどな……、それじゃ明日は買いにいくとするか」
「それがいいかも知れませんね」
身長が高いことも相まって高槻さんは眼鏡が無い時はヤクザに見えてしまうから。
「それじゃ私はこれで――」
「何か飲み物を用意してくれ。仕事が立て込んでいるからな」
「それでは、お茶でいいですか?」
「ああ、頼む」
私は台所に行き、お茶を入れたあと居間に戻る。
室内に入ったところで私は気が付く。
彼の手はパソコンのキーボードに添えられたまま。
だけど、彼は目を閉じていて……。
「寝ている?」
本当に寝ているのか好奇心が勝った私は、湯飲みを乗せたお盆をテーブルの上に置いたあと、彼に近寄る。
よく見ると、目の所に隈があって、睡眠不足だというのが分かってしまう。
いつもは、近くから彼の顔を見る事もなかったし、雇用主というか借金をしていて使われているという意識が先行していたから、彼の容姿について気にしたことはなかったけど……。
目鼻が、すごく整っていて寝ている時の顔は、何と言うか子供ぽい? そんな印象を受けてしまう。
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