嫁ぎ先の旦那様に溺愛されています。
生徒指導室(1)
学校に居る時間は、やる事――、スケジュールが学生は決まっている。
だから、あっと言う間に時間は過ぎてしまい気が付けば帰りのホームルームの時間になっていた。
ちなみに大和は、完全に私を避けていて目が合ってもすぐに逸らしてきて、何の接点も持てない。
本当のことを打ち明けて、前みたく仲良く話をしたい。
他愛もない事で笑っていたい。
だけど、誤解を解かない内は無理だし、説明をする事もできない。
「はぁ……」
意識せずとも溜息は出てしまう。
それを見咎めた美穂は、「溜息ばかりついていると幸せが逃げちゃうよ?」と、話しかけてくるけど、そんなのは私も知っている。
だけど、意識している訳ではないので止めるのは不可能なのだ。
「ねえ。美穂」
「どうかしたの?」
「大和って怒っていると思う?」
「そうね……」
親友の美穂は、人差し指を自身の唇に当てると考える素振りをしながら、「莉緒は、どう思うの?」と、疑問に疑問を返してきた。
「――え? わ、私!?」
「そうよ。大和の事が気になっているんでしょう?」
「気になっているけど……、それは友達って観点からだし……」
「まったく、素直じゃないわよね」
呆れた声で、両手を上げるようなジェスチャーをしながら「ヤレヤレ」と呟く美穂。
何が素直じゃないのか分からないけど、きっと喧嘩の原因をさっさと解決すれば? と、言う意味なのかも知れない。
「そんな事が出来ていれば、もっと早くしていたし……」
「そうよね。莉緒って、自分一人で抱え込む帰来があるものね」
「そんなことないもん」
「本人は無自覚と――」
そう言いながら美穂は、机の横に下げていた学校指定のカバンを持つと立ち上がる。
どうやら、小声で美穂と話している間に帰りのホームルームは終わってしまったみたいで――、前の方に座っているはずの大和の姿も、見当たらない。
「あれ?」
「大和なら、剣道だから体育館に向かったんじゃないの? ホームルームが終わってから、すぐに教室から出て行ったわよ?」
「――そ、そう……」
高槻さんが来てからというもの、大和とは殆ど話せていない。
すごく彼が遠くなった気がする。
だけど、本当のことは言えない。
どうすれば仲直りできるのかな? と、考えてしまうけど、それは私が事情を説明した場合に限ると言う事くらいは分かる。
そうすると巫女舞などを含めて高槻さんと相談する必要があるけど……。
私から提案した内容で承諾してくれたばかりで、さらに別の要件を付け足すのは何か違う気がする。
提案をするなら、相手を納得させるだけの代案を出すのが筋だし。
「どうするの? 体育館にいく?」
「ううん。今日は、まっすぐに帰らないと――」
仕事があるし……。
そう考えながら席を立ったところで――、『3年1組 宮内美緒さん。至急、生徒指導室まで来なさい』と、言う校内放送が流れた。
「え?」
呼び出されるような問題を起こしたつもりは……。
「莉緒、何かやったの?」
「ううん。思い当たる節は……」
高槻さんのことくらいしか……。
「ある……」
「だよね! きっと、校門前の件じゃない? 許嫁って噂も流れていたし、それで先生が呼んでいるのかもね」
「うん……。たぶん……」
美穂の言葉に私は「ですよねー!」と、思いつつ頷く。
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