没落貴族の俺がハズレ(?)スキル『超器用貧乏』で大賢者と呼ばれるまで
-プロローグ-
ピーポーピーポー……
――響くサイレンの音を聞きながら俺は薄れゆく意識の中、ぼんやりと過去を振り返っていた。
「(いいことは……何も無かったな……)」
しかし、思い返してみてもロクな思い出は無かった。倒れた身体に打ち付ける冷たい雨が、俺の二十三年の人生を嘲笑うように染みこんでいく。
俺こと『三門 英雄』は、両親と弟の四人家族。だが、家族との仲はよろしくなく、長男である俺は疎まれていた。
両親は出来の良い弟を溺愛し、何もかもが平均な俺には辛辣に当たっていた。そして実の弟には早く出て行けと言わんばかりの態度でなんとも肩身の狭い思いをしていた。
「(もう……いいか……)」
これは死ぬな、と、身体は痛むのに何となく冷静な判断をする。俺はスリップして歩道に飛び出した車に後ろからはねられ全身を強く打っていたからだ。
「――お兄さん! しっかりしてください! ああ……ほ、骨が……」
「君、どきなさい! 後は我々が――」
良かったなと思ったのは、俺の前を歩いていた女の子を突き飛ばしたことで事故に巻き込まれることを阻止できたことだろう。
……どうせ両親と弟は俺が死んでも保険金が出て喜ぶだけ。そういう家族なのだ。
「(なら、これが最初で最後の親孝行か……? 何が英雄だ……期待してもいないくせに分不相応な名前をつけやがって……)」
そんなことを思いながら目を瞑ると、俺の意識は暗闇の中へ誘われていった――
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