少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

200話 決めた事③

 ミステリアがミカエルと戦い始めて、僕は魔法陣の中にじっと座るのみ。


「これいつまで続くの?」
「空ちゃんはじっと座るの得意でしょ?」
「別に得意って訳じゃ。」
「そーかなー?パソコンの前で、何時間もじっとしていたと思うけど。」


 あれは別にじっとはしていない。指とマウスはずっと動いていたし。


「2人は?」
「うん。大丈夫。戦闘に参加するのは、厳しいかもしれないけど。」
「そっか。ありがとう母さん。」
「私はこれくらいしか出来ないから。」
「これは母さんにしか出来ないことだから、戦うのは僕らに任せてよ。」


 父さんは母さんの膝枕で寝ている。マレット君は立ち上がれないけど、意識はあって座り込んでいる。


―キィィン!


 甲高い音と共に光の粒が辺りに広がる。ミステリアが出していた剣が消えていく音だった。


「8分……かなり無理をさせたわね。後は……。」
「む?切れたか。あれだけ派手に戦えば当たり前だがな。実に呆気ない幕引きだったな。」
「うぅ……ごめんなさい。」
「メイク!!」


 ミカエルが剣を掲げそれが……


―ガン。


 マレット君が障壁で守ってくれた。


「……これくらい、なら。」
「ふん。小賢しい。」


―バリィィン!


「っく。後は頼みました……。」
「良くやったわマレット!」


―ギュン、ッザ。


 マレット君の魔法壁は破られたけど、そのタイミングでナイトが飛んで来た。


「なかなかの速さだが。それだけだな。」
「リナに投げられただけだからね。邪魔さえ出来ればそれで良いのよ。」
「む?」


『……ふ……はは……。うま…?分かって……。』


 遠くから声がする。見える範囲にいればリナの声は聞こえるはずだけど。それが途切れ途切れ聞こえる。


―ギュン!ダァァン!


「この龍族は危ない事ばかり!」
『あの速度をも回避するか。』
「あれだけ大きな声で喋っていれば、どちらから攻撃が来るか分かるからな。」
『なんと!そんな盲点が。』


 わざとらしい態度なリナ。注意をミステリアから剥がす為だと、僕でも分かる。


「その娘から注意を向けたいのは分かるが、もう少しまともな演技は出来んのか?」
『構わんだろう。貴様は我から目を離さないのだから。』
「ふん。後で遊んでやる。今はその天使族が邪魔なのでな。」
『それをさせんと言っているのだ。』


 睨み合う両者。先に動いたのはミカエル。


「龍の速さはもう見た!我の勝ちで……」
『甘いな。』
「な!?ふん!!」


 ミカエルの走り出したのに反応して、シーが突っ込んできた。


「私が見誤るわけが!」
「師匠!」
『来い!』


―ダン!グググ……。


 リナが回転し、勢いをつけた尻尾に両足で着地するシー。着地と言っても角度は真横、顔は相手を見ている。


『新・龍……』
「……破掌ゥ!!!」


―ドゴ、ボキ……。


「グハァ!?」


―ダン、ダン、ズザァァ……ドォォン!


「どうですか師匠?」
『完璧である。力の使い方もタイミングも素晴らしい。』
「やった!」


 僕に向けてVサインでドヤるシー。


 飛んできたシーを受け止めて、自分の回転力で更に速度と破壊力を上げた攻撃。さっき攻撃前『新』っとか言ってたよな。それはリナにしか出来ないからね、そこんとこちゃんと教育してくれるんだろうか。僕なんかが受け止めたら色んな骨が逝きそう。


「そ、ソラヤのパーティは頼もしい方々が多いですね。」
「どんどん人間離れしていく気もします。」
「先頭を走るソラヤがそうですからね。」
「そうそう…って!」
「ふふ。楽しみにしていて下さい。」


 怪しげな笑顔なサリエルさん。


―コツン、コツン、コツン。


 そして杖を床にコツコツと当て始めた。


「ギリギリで間に合って良かったわ。」
「いてて。ありがとうナイトさん。」


 ここまでメイクに肩を貸して、歩いてくるナイト。


「どこか痛いの?」
「魔力が無くて。ちょっと無理した反動なだけで、怪我したわけじゃないです。」
「魔力切れの反動か。無理をさせたみたいでごめんね。」
「私がやりたくてお願いした事だから。手紙にもひどい筋肉痛があるって書いてあったし。」


 筋肉痛って……あの手紙には何を書いていたんだろうか。まぁそこは2人の秘密で聞き出そうとは思ってないし。


―コツン、コツン、コツン。


「ソラヤ何しているの?」
『これが加護か。聞こえてはいたが、随分と重々しいんだな。』
「実は僕もよく分からない。」
「はは。何それ?でも、もう終わりそうなんだね。」
「え?」


 いつの間にか杖をつく音がしなかった。自分の下にあった魔法陣も、少しずつ小さく掠れて見える。


「お待たせしました。」
「お?おぉ!…………。」


 そして魔法陣が消えていった。


「…………ん?何か起こった?」
「はい。終わりましたよ。」
「なんか、こー……ドカン!って光ったりしないの?」
「ん?そう言う事は起きませんが。今までの加護ではそうでしたか?」
「いや、何もなかったけど。」


 すっごいパワーアップした時ってさ。こう……凄い光が出てきたり。煙が出てきて、その煙が晴れたら僕が立ってる的な……。今までも何にも無くさらっと凄いスキルあったんだけどさ〜。


―ガラッ……ズガァァン!!


「ぐふ!っくそ。なんて力だ。」
「あら。あの天使さんはタフだね。」
『いい音していたのにな。』


 瓦礫からミカエルが這い上がってくる。リナの言ういい音はシーの攻撃で折れた何か。きっと回復したのか今は何ともなさそう。


「ソラヤ……。」
「サリエルさんどうしたの?」
「今更なんですが、申し訳ありません。天使族の事を任せる形になり。」
「ん?任せてくれていいよ。」
「しかし……。」
「ここまで一緒に来てくれたんだし。仲間を守るって僕が決めた事だから。」
「仲間……。」
「だからさ、サリエル。」
「……はい。」


 なんて言おう。この土壇場で言葉が出てこない。着いて来いって偉そうだな……戦うのは僕だけなんだし。背中を見ていてとか……かっこつけだな。待っていろ、すぐ終わらす……どこのアニメだ?


「いってきます。」
「はい。いってらっしゃい。」


 優しく微笑むサリエル。


 言葉の流れ的に変じゃないかな。まぁこんなもんでしょう。さてと最終ラウンド……。


「お待たせ。」
「ふん。多少強くなったところで。」


 始めるとしますか!

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