少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

175話 戦闘好きの試験①

 突然の戦闘開始に1番始めに動いたのは父さんだった。


「ソラヤ!」
「分かった。クロイ!ローゼ足を。」
「ほほ。行きますよ。」
「任せろ。」


 短い掛け声でそれぞれ行動を開始する。ローゼの鞭とクロイの魔法で足止めが出来るかを確認する。


―ズズズ……。
―シュルゥ、スパン!


「ほぅ。重力魔法に鞭での拘束。足止めとは定石。しかし……」


―バァァン!


「止められると思わない方がいいわ!」
「シー、ナイト!」
「「はい!」」
「おっと!」


 拘束を弾かれたタイミングで、攻撃させたが見事に避けられた。しかし避けた先が良くない。空中では僕の的でしか無い。


―ガチャ、ズゥゥン!


「あらあら。火よ。」


―ゴォ。


「そんな避け方ある?」
「魔法も使いようよ。」


 火の魔法で自身を少しだけ動かして、僕の弾丸を避けた王妃様。言うなれば飛行機の様な感じか。


『では、これはどうかな?』
「へ?」


―グガァァァァ!!


「っちょ、」


―ドゴォォン!


「リナ容赦ないね。」
『自分の弾を囮に、我の攻撃範囲に誘導したソラヤが言うのか?』
「あれ、気づいてた?」
『無論だ。』


 全部の動きに意味はある。これを悟ってやってくれる人と、感覚や勘で出来る人とで分かれる。前者はリナ、クロイ、ローゼくらいかな。あとは感覚派かな…半分以上か。今は考えるのをやめよう。


「ぶは!ちょっと、龍は反則じゃ無い?バランスおかしいよ、不利だって。試練する前に、私がやられるって!」
『全員でと申したのは、其方であろう?』
「そうなんだけどね。しょいが無い、あれを使うか。すぅ…………は!」


―ボン。


 気合いを入れたかと思うと、王妃様が少しブレて見える様になった。そして髪の毛が赤と黒に見える。さすが魔神、変身もできるのか。こうもっとゴツくなるのが、ゲームとかのボスだったけど。


「「ひぃ!?」」


 ナイトとマレット君はあからさまに怯える。


「2人とも、あれは何か分かるの?」
「昨日私がボロボロに負けた時に、あんな赤と黒髪に姿がブレて見えてた。」
「マレット君は?」
「父上に怒った母上があの様な感じになる時が。その後丸焦げな父上を僕は見た事があります…。」


 なんだろうか。ただただ怖いだけで、あの技の特徴やどうなるのか具体的な話がない。まぁゲームじゃ無いんだから、初見で攻略はしょうがないか。そうなると……。


「マレット君、僕にシールドを。出来るなら体の周りに纏わせる様なのがいいな。」
「スキン型?これでいい?」
「うん。行ってくる。ローゼ!」
「任された。」


 指揮をローゼに渡して僕は前に出る。分からないものは調べなければならない。


「単騎とは無謀な。」
「これが1番生存率が高いんだよ。」
「大した自身だ。」


―ビュン、ゴォ。バリン。


「動きは良いが、いつまでそうしていられるかな?」
「ん〜ちゃんと回避したけどな。」
「マレットさん、ソラヤに。あとリナさん、メイクさんにも。」
「分かりました!」


―ヒュン。


「おっと、中々鋭いな。」
「喋る余裕もなくしてあげるよ。」


―ヒュン、ヒュン、ヒュン。


「これぐらいじゃ私は。」
『反応は良いのだが、視野が狭いのは問題だぞ?』


―ドドン!


「忠告感謝する。一撃も重いな……しかし私に触れて平気ですか?」
『何を?……熱い?』


―ジュゥ…。


 リナの腕が焼けていく。痛覚が鈍い龍だからこそ気づきにくいのか、腕から煙が出てる。


「ほら、我慢できてもしない!離れて!」


―ガチャ、ズゥン!ズゥン!
―ヒュン、ヒュン、ヒュン!


 近距離用の銃を撃ち込む。でも僕の攻撃は当たらず避けられる。あ、メイクのナイフも避けられるな。


『ふむ。マレットの防御があったはずだがな。』
「スキン系は瞬間のダメージはなんとか出来ますが、継続的なダメージには弱いんですよ。」
『疲れるが龍闘気使うか。』
「リナさんのそれはまだ大丈夫です。クロイ、ナイト。中距離応援を。」


「ほほ。ではナイ……ふむ。フリージュのが良いです?」
「どっちでも。私にとってはどっちも大切な名前だから。」
「ほほ。そうですか。では参りましょうナイト。」
「は〜い。」


―ズゥン、ズゥン、ズゥン!
―ヒュン、ヒュン、ヒュン。
―ボゥ、ボゥ。
―ブクゥ…ズババババババ!


「ふふ。これだから戦闘は辞められないのよ。っほっよ。ていてい!あで。」


 僕とメイクの攻撃は確実に避けて、ナイトの魔法は相殺。クロイの魔法はたまに当たっているが、あまり気になる様なダメージでは無い。


 僕やナイトの物理武器には、何か効果が付いているから避けるんだろう。魔法は極力撃ち落として当たっても支障がなさそうなものは、無理に避けて体勢を崩すくらいなら当たる。中々に理に適った戦い方だ。


 ただ、全てを避けているわけじゃ無い事から、AGIそこそこのVITに多く振り分けているタイプ。だんだん見えてきた。そんな振り方じゃ、こっちの攻撃は耐えられないよ。


「シーそろそろいくよ。」
「待ってました!いつでも。」


 肩を回して、やる気満々なシー。この攻撃は当たると痛いよ?

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