少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

172話 恐怖の隊列。

 後ろを向くと白い門の扉の前。扉を抜けた先は森の中。


「懐かしいね。」
「その下りは先程やりましたぞ?」
「……そうだね。」


『ブモ?』


「懐かしい味だね。」
「ほほ。食べる前提ですか。」
「空ちゃん、あまりお肉を傷めないようにね。」
「栄理も食べる気満々だな。しかし、これで夕食は困らない。」


『ブモゥ!?』


―チュゥーン!…ドサッ。




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《ボアLv10を倒した。0(0)の経験値を得た。》


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 食材は無事に確保!


 ……出来たんだけど、少し気になるものが。


「この経験値0って。」
『パーティ全体に平均Lvが高すぎるのだな。』
「0の経験値の意味って……。」
『我には分からん。神の考える範囲だ。』


 上はリナのLv85で、下は皆んなのLv34か。Lv10のボアから経験値が無いのはしょうがないか。これで1でも入っちゃったら、弱い奴を永遠に狩続ければ強くなれちゃうわけだし。まぁ100匹とか1,000匹をちまちま戦う人はいないだろうけど。


「とりあえずどんどん進もうか。メイク、このイノシシ回収しておいて。」
「はーい。」


 前までは捌いた後じゃ無いと、重量オーバーで運べなかったボア。メイクのスキル【無限倉庫】があれば何も気にする必要はない。そんな訳でサクサク進みましょう〜




『モォォ!』
「はい、ごめんね。」


―ドン…………ドサッ。


 ミノタウルスLv10が叫んだが、走りながらシーの拳1発で吹き飛んだ。殴る瞬間ですら止まらず突き進む。




『『『ゴブ!』』』
「次は私の番ね。それそれそれ。」


―パァン、パァン、パァーン。


 ゴブリンLv10の群れに遭遇したが、速度を落とさず流れるような手捌きでゴブリン達が飛んでいく。いつ決まったのか、暗黙の了解なのか攻撃した人は最後尾に行くシステムが出来上がっていた。一番最初はシーで次はナイト。




『フゥン!』
『我の前に立つとは見上げた根性だ。』


―ッシュ、パァァン!


 ナイトの次に出てきたのはリナ。目の前に出てきたオークLv10に軽く手を振った。速すぎる攻撃は音が遅れて聞こえてくる。結果回避もできないオークは顔から上を弾き……グロいな〜。


「この豚さんだったもの回収する?」
「いや、流石に獣人は食べたくないよ。この森だとボアぐらいでいいかな。」
「分かった。あ、武器は拾ってくよ。後で分解して材料にする。」
「それはいいよ。」


 僕は別に戦わなくてもいいかとメイクと最後尾にいた。そして先頭だったシーは僕の後ろにいる。メイクと話している時の視線を感じるのはなんだろうか……。


 その後も皆んな順調に進んで行く。




 ゴブリンの群れに当たったのはクロイは。


「ほほ。大量ですな。水よ、貫け。」


―ブクゥ、スパパパパパ!


 明らかにオーバーキル。5匹もいたゴブリンはこちらに気づくことなく倒れていった。あの距離であの速度の魔法での不意打ちはやばい。狙いも正確で全て脳天一撃。




「次は私か。別に戦わなくてもいいんだがな。」


―シュルゥゥ、スパン!グゥゥン……ドォォン!


『フゥン!?ガハ!』


 鞭で捕らえ、勢いをつけて木にぶつける。僕よりも重そうなオークをあんな軽々と……僕も色々気をつけないと。後ろに行く時目が合った時に、ぶるっとしたのは気のせいではないだろうか?




「ふん!」


―ガァン!


『ゴフゥ!?』


 次はお父さんが盾でゴブリンを叩き潰す。盾は本来ならそんな使い方じゃないんだけど。防御に極振りしている父さんでもLv10のゴブリンは余裕か。




 次に出てきたのは、またもゴブリンの群れ。相手は3匹だけど順番は母さんだ。これは厳しいか?母さんMNDにしか振ってないし。


「母さん、僕が相手を…。」
異常な治癒アブノーマル・ヒール!」
『ゴブゥ?……がふぅ!?』
『ゴ…ガ…。』
『ッガ。』


 何が起きた?母さんが何か魔法を唱えたと思ったら、ゴブリン達が倒れていった。


「母さん何したの?」
「ん?悪い治療って言うのかな。生き物って増え過ぎてはいけない物もあるんだよ。即効性は無いかもだけど、あの子達はもう助からないかな。」
「あ、そうなんだ。」


 僕に簡単な説明をすると母さんは最後尾まで下がっていった。


 ……ってか母さんの怖!原因が聞いても分からないだけに恐怖は倍だよ。触られてもいなければ、詠唱も早かった。あれ、もしかして目に見える範囲なら母さん最強か?ん?分からなくなってきた。




 次はマレット君。少し先にゴブリン達が5匹見える。


「僕戦いたく無いんだけど。パスってあり?」
「戦わないと僕らと来た意味がなくなっちゃうよ。」
「そうそう。前に走ってた人達の戦い参考にして。」
「メイクさんに言われるなんて……。」
「何を〜!私だってソラヤを見て、戦い方学んだんだから。」
「それで遠距離攻撃が多いんだ。まぁいいか。さて…どうしたものかな。」


 考えつつ走るも止まる事はしないマレット君。


「まずは、スフィア。」
『『『『『ゴブゥ??』』』』』


 ゴブリンには見えないのか、うまく全員を円の中に閉じ込めたマレット君。


縮むシュリンク!」
『ゴガガ!』


―バキ。バキバキ……。


 これまた……参考にしたのは逆転の発想としては母さんか?ゴブリン達に球体のシールド張ったマレット君は、それを小さくした……それはもうビー玉くらいの大きさまで。これはこれで……今度からシールドに色でもつけて見えなくして貰おうかな。思わず視線を逸らしちゃったよ。


 その後の僕は石で貫通。メイクはナイフで頭に命中させる。少しばかりナイフの刀身が長く見えたので、あれはもう起きる事はない。




 こうして僕らの通る道には、魔物が倒れて行く。これが原初の森じゃなければ、目撃者は驚くであろう。だけどここに来る人はいないだろうし、僕ら10人は気にせず先を進む事にした。

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