少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

170話 時間が経つのは早いもんだ。

 シーとメイクに連れて行かれた買い物から一夜明けた。


「朝だ……。」


 今の王都って色々壊れていて、お店もやってないだろうって思っていた。しかしそんな事はなかった。お店の人に話を聞いたところ、こんな時だからこそ商人は休んでいられない。むしろ色々と必要なものが多く、忙しいくらいだと言っていた。


 今僕はベットで動けずにいる。


「そろそろ起きて森に行きたいんだけど……。」
「すぅ…。」
「ん〜…すぅ。」


 聞こえるのは2つの寝息。いや、2人のだな。右に首を向けるとシーの寝顔。左に首を向けるとメイクの寝顔。


 どうしてこうなっているんだっけ?







 いつも行く薬屋のおばちゃんと話した時は……。


「おや、ボウヤ久しぶりだね。今日も2人は仲がいい……あらあら、今日は両手に華なのね。」
「ソラヤこのお店に結構来るの?」
「まぁここのポーションは、いつもお世話になっているからね。」
「ふぅ〜ん。その時いつもブルームちゃんと?」
「ん?いつも…そうだね。街だと大体は一緒に行動しているかな。」


 そんなやり取りを見てシーがニヤリと笑う。メイクが僕の腕を強く寄せる。


「かっかっか。色男は大変ね。」
「おばちゃん。それどういう事?」
「おやおや。分かってるくせに!」


―バシン。


 なぜか強めに肩を叩かれた。その肩を撫でるようにシーも僕の手を取る。引っ張り合いが始まったけど、2人よりSTR低い僕に何も出来る事はない。


 次に会ったのは武器屋のおじさんとの話では……。


「お。旦那!戻ってきた噂は本当だったんだな。」
「おじさん久しぶりです。面白い物入荷した?」
「こんな時に入荷を聞くか?」
「いや。おじさんならどんな状況にもめげないかと。」
「はは。違いねぇ。今倉庫整理しているとこだ。何なら見て行くか?」


 そう言われたので見に行く事にした。倉庫とかきっとお宝が眠る可能性が高いからね。


「掘り出し物、掘り出し物っと。」
「そんなにないと思うぞ?それこそ奥さんがいつも見にきていたからな。」
「奥さん!?」
「むむむ。」
「おや?旦那も若いのにやるなぁ。」
「だから何がさ。」
「はっはっは。分かってるでしょう。」


 叩かれはしなかったが、実に怪しい笑顔だ。そんなんだから、この店の客は逃げてしまうのだよ。本人には言わないけど。


 その後も色んな所を回った。ポーションは補充したけど、それ以外は何も買っていない。ただ3人で街を歩いただけ。仮面のギルドの屋敷に戻って食事をとり後は寝るだけ。


「じゃ、ソラヤ。寝ようか。」
「いやいや。何が寝ようか。よ。」
「だって向こうではいつも一緒に寝てたよ?ねーソラヤ。」
「え?まぁ別々に寝るにも寒かったし。」


 ほぼジルが作った洞窟で寝泊りをしていた訳で。あそこ夜は冷えるんだよね。


「な!?ソラヤ、今日は私と寝よう。」
「何でそうなるの?部屋は個々にあるし、ここ暖かいし。」
「ぐ!?メイクと寝たんだから、次は私だよ!」
「ちょっとソラヤは私と寝るんだから!」


 シーとメイクの睨み合い。火花が散るってこういう事か?


「いや、メイクにも部屋を用意してもらったから。」
「え?」
「もちろん、リナやマレット君もあるから。後でヤヤさんかココさんに案内してもらうよ。」
「そうじゃなくて、私はソラヤと…。」
「部屋もベットもあるし。1人で良くない?」
「「良くない!!」」


 息ぴったりな2人だった。


『ならば3人で寝れば良い。我は先に休ませて貰うぞ。』
「あ、僕も行きます。3人とも、また明日!」


 そう言うとリナとマレット君はそそくさと行ってしまった。







 それでそのまま一緒に寝た訳か……。結局何で一緒に寝たんだ?2人とも寒がりなのかな?


―ガバ!


「わ!どうしたのメイク。」
「ソラヤ。紙とペンはあるか?」
「そこにあるけど?」
「借りるぞ。」


 起きる気配も無かったメイクが突然起きた。ちょっとびっくりした。


「後はシーか。気持ち良さそうに寝てるし、起こすのも悪い気がしてきたなぁ。」
「…すぅ。」
「ソラヤ。」
「ん?どうしたのメイク?」
「これを起きたら渡してくれ。決して中を見るなよ。」
「分かったけどってミステリア?」
「では、もう起きると思う。頼んだぞ。」


 そしてまたベットに戻る。ミステリアが渡してきたのは手紙かな?メイクに渡せばいいんだよな。






―コンコン。


「空矢そろそろ…………ほっほ。失礼しました。」
「ちょっとクロイ。何で閉めようとするの?2人を起こしてよ。」
「わたくしには出来ませんぞ。」
「え〜……じゃ母さん呼んできてよ。」
「結果は一緒だと思いますが、畏まりました。」






―コンコン。


「空ちゃん、呼んだ?って……ご飯は取っておくね。」
「いや、母さんもどうして閉めようとするの?」
「だって、ねぇ?」
「どう言う事?」
「分からないのは空ちゃんらしいけど。ここはじっと待つのが男の子だよ。」
「そんなもの?」
「そんなもの。じゃ、先に準備しておくように皆んなには伝えておくから。」


 そして扉は再び閉められた。


「黙って待つのか……寝よう。」


 僕は二度寝する事にした。






 そんなこんなで原初の森に着いた頃には、日が完全に登っていた。


「見送りはここまでで大丈夫か?」
「はい。ありがとうございます。」


 ここまで案内してくれた国王様と兵士さん達。


「本当に兵士達は連れて行かんのか?」
「大丈夫。」
「そうか……道中気をつけてな。」
「うん。一度行った事あっても油断はしないようにするね。」
「では、達者でな。また遊びに来てくれ…………ん?一度行った事ある?」


 最後に国王様の呟きが聞こえたけど、そのまま聞かなかった事にして門を潜る。あー言ってなかったっけ?まぁいいか。


 前に原初の森を出てから、6人多くなったのか。時間が経つのは早いもんだ。

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