少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

167話 絶妙なタイミング。

―バン!バン!
―ビュン!バリ、ビターン!バリィィン!


「さすが!これならどうです!」
『まだまだ!ソラヤの攻撃はそんなものでは無いであろう!』
「結構いっぱいだ……」


―ガチャ、ズゥゥン!


「よっと。」


―ガチャ。


『そんな貧弱な氷じゃ、我を止める事なんぞ出来んぞ。もっと早く、もっと精密にだ。』
「いやいや、リナと戦闘中にそんな時間ないから。それともじっと待っててくれる?」


―ビュン、ビターン!


『ふはは!冗談を。敵は待ってくれんぞ。』


―ビュン、ビュン、ビュン。


 僕の頭上をリナの爪や尻尾が通り過ぎて行く。龍族って言うだけあってか、攻撃力は凄く高いのだろう。ただ避けられない程速いわけではない。


「っよ。っは。っと。」
『一撃くらい当たってもいいはずなのだが。』
「いや、この攻撃当たったら僕の負けるし。」
『そうであったな。ではもう少し速くいくぞ。』


 ―シュッシュ!


 龍の状態より動きやすいのか、以前戦った時より速い。その分攻撃力も多少は落ちているだろう。でも僕には致命傷間違いなし。


―ダンダンダン!


『この速さにもついてくるどころか反撃か!』
「やられっぱなしもつまらないからね。」
『はは!そう来なくては!』







「ん……ここは。」
「国王様!気がつかれましたか!」
「アインツか。私はソラヤと戦って……そうか、負けたか。」
「……。」


―シュッシュ!
―ガチャ、ズゥゥン!ギン!


「…体も動くな。怪我も無くなっている。」
「クロイさんとエイリさんに助けて頂きました。」
「そうか。知らぬ間に助けて頂き。感謝する。」
「ほほ。わたくしはただ焼いただけです。」
「焼いた?」


 よく思い出してみる。左腕と右足を凍らされ、右腕と左腕足を撃ち抜かれたのは覚えている。その後は痺れたと思ったら、目の前が暗くなった……。


「私は一体どうなっていたのだ?」
「えっと、氷漬けになってました。」


―バリ、バリィィン!


「そう、あんな感じに。」


 見るとリナ殿がソラヤ殿の攻撃で、全身氷漬けとなっていた。


『……。』
「ふぅ。今のうちに魔力回復しておこう。」


 瓶を取り出し飲み干すソラヤ殿。それと同時に氷の山にヒビが入る。


―バリィィン!


『龍闘気!って寒いわ!』
「出た。反則技。」
『いやいや、これもれっきとしたスキルだぞ。』
「なら、僕にも出来る?」
『出来るさ。100年もあれば。』
「人はそんなに生きられないから。」
『さてじっとしていると寒いからな。続きをやろうか。』


 そして再び戦い出す2人。


「これは何をしているのだ?」
「国王様との戦いを見ていたリナさんが次は自分だと。」
「趣旨変わっているな。まぁいいか。で、氷漬けの私は火の魔法で助けてもらったと。」
「はい。その後はエイリさんが治癒魔法をして頂きました。」


 あの氷を溶かす魔法使いに、凍傷や火傷も貫通した傷すらない完璧な治癒術。そして目の前で戦うこの少年は一体……。


「私は一体何と戦っていたんだ……。」
「ソラヤさんですよ?」
「そういう意味じゃない。あの少年は……いや、これ以上はいいか。成るべき者が現れただけであろう。」


 私は清々しい思いで、目の前で空中に浮かぶ不思議なパネルを操作する。







―バンバン!ズゥゥン!
―ギンギン!ッシュ。


『ふはは!面白い!面白いぞソラヤ!』
「それは何より。それよりそんな余裕見せてて大丈夫なの?」
『む?』


 リナを壁際まで追い込む。


―バン!ズゥゥン!カッ、バリィィン!


 ハンドガンで撃った氷魔弾を、武器を素早く持ち替えライフルに込めた風魔弾で撃ち込む。魔力を帯びた弾丸は大きな氷の結晶を作り出す。


『何処を狙っている?』
「こっからだよ。」


―ガチャ、ズゥゥン!パキッ、ゴゴゴ…。


『ほう。考えたな。しかしそんな攻撃が私に。』


―バン!バリ!


『上は囮か!?しかしその雷は当たらん!上の氷はこれで…ガァァァ!!』
「それ待ってた!貰っ…。」




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ソラヤは【勇者】の称号を得た。


ソラヤはスキル【短剣Lv10】になった。
ソラヤはスキル【刀Lv10】になった。
ソラヤはスキル【剣Lv10】を覚えた。
ソラヤはスキル【大剣Lv10】を覚えた。


ソラヤは【ソードマスター】の称号を得た。


ソラヤはスキル【盾Lv10】になった。
ソラヤはスキル【英雄】を覚えた。
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「ちょっと!このタイミングで!ログ邪魔!」


―ズゥゥン!


『む!』


 突然流れてきたログに意識を持っていかれて、発射のタイミングが僅かだけど遅れた。それはリナが頭上の氷をブレスで壊した後、こっちに気がつき回避するには十分な時間。


「あぁせっかくの隠し玉が。」
『いつのまにあれだけの魔力を溜めていた?ん?その武器さっきのと少し違うな。』


 リナは気付いちゃったか。今僕が持っているのは、いつも使うライフルを元にメイクに作って貰ったライフル。
 元々はリロードの時間短縮でアイテムにしまっている緊急用。戦い始めに魔力を込めた風魔弾を仕込んでいた。


「はぁ。また作戦考えないと。」
『どうかしたのか?』
「なんかよく分からないけど、突然ログが目の前に出てさ。んっと、勇者?」
『ログ?勇者関連なら。あの王が何か知っているのではないか?』


 戦いを止めて2人で観客席に振り返る。


「申し訳ない!水を指すつもりじゃなかったのだ!」


 頭を下げる国王様がいた。

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