少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

161話 守るべき存在②

 ♢


 遠くの空がキラリと光る。


 私を守ってくれる2人を見て、涙が流れてきた。


「いやだよぉ……そらやぁ……。」


―キラッ……ドゴォォン!!


 遠くで大きな爆発があった。


「ふぅ……少し焦りましたぞ。」
「そうですね。しかし安心しました。」


 クロイが魔法を中断して、ゴウパパが座り込む。


 上を見上げると黒い影が横切る。


「無理無理!もっと下がれないの?」
『いけるだろう?これ以上下がると天井薙ぎ払うが?』
「それこそ下の人潰れちゃうよ。」
「なら僕が下まで送りますよ?」
「それだ!」


 黒い渦が目の前に現れる。


「よっと。ふぅ。飛び降りなくて済んだ。」
「ソラヤ!」


 目の前に出てきたのを見て何も考えずに飛び込む。


「ぐふぅ!?……こ、この感じ久しぶりだ。」
「そらやぁ〜。」


 思わず泣いてしまうけど、ソラヤが優しく頭を撫でてくれる。


「久しぶりシー。ただいま。」
「おかえりなさい。」
「皆んなも元気そうで。」
『感動の再会の所悪いが、あちらもまだいける様だぞ。』


 空からよく響く声が届く。あれは龍?


「聖魔弾くらって無事なの?ん〜そうは見えないけど、逃げないところ見ると何かあるかもね。」


 そう言うとソラヤは少し考えて銃を構える。


―ガチャ、ズゥゥゥン!


「……お。弾かれた。って事はさっきのも障壁でもあったかな?どうしようかな。ローゼ皆んなの状況は?」
「この距離で攻撃は届かない。先程ナイトがクロイを連れて飛ぶ予定だったのと、ゴウがあのスキルを使用しているくらいか。それ以外は皆無事だ。」
「さっきの攻撃が無いとも限らないか……ってナイト飛べるの?」
「少しならね。」
「いつの間に……でも今はリナが居るし止めようか。マレット君!降りてきて!」
「マレット?」


 ソラヤが空の龍に向かって叫ぶ。するとナイト姉が首を傾げるのと同時に黒い渦がまた出てきて男の子が出てくる。


「呼んだ?」
「悪いけどここで皆んなを守って欲しい。僕はメイクとリナで相手してくるよ。」
「分かった。」
「じゃ、ちょっと行ってくるから。皆んなは休んでて。」


 そう言ってまた黒い渦に消えていくソラヤ。


「皆様、初めまして。ソラヤ君の旅に同行させてもらってますマレットと言います。」


 丁寧に挨拶してきた男の子。それを見て皆んなが挨拶を交わす中、1人だけ私の陰に隠れる。


「どうしたのナイト姉?人見知りとかするっけ?」
「な、なんでも無いの。いないと思って〜」
「ん?」
「突然現れて驚かせて申し訳ありません。人族では無いですが、仲良くして……。」
「……。」


 ナイト姉を見たマレット君と言う男の子が固まる。人族では無いって見た目は男の子にしか見えないけど。


「フリージュ姉様?」
「あはは〜久しぶりだねマレット。少し大きくなった?」
「そんな数ヶ月じゃ伸びませんよ。じゃなくて!今までどこに!?ってここに居るのか。ってえぇ!?」
「落ち着きなよマレット。」


 変な驚き方をして混乱しているマレット君。それより今姉様って言った?フリージュって?


「この子は私の弟よ。世間って狭いわね。」
「弟ってナイト姉の?そう言えばさっき人族じゃ無いって言ってたね。」
「はい。僕もフリージュ姉様も魔族です。」
「そっか。肌の色とか目元似てるもんね。改めてよろしくねマレット君。」
「お姉さんも順応高いですね……あ、よろしくお願いします。」


 ♢




「あっちはいいの?」
「マレット君がいれば何かあっても守ってくれるよ。」
「そっか。でも私達はどうするの?」
「え?リナが居るし問題ないとお思ってたけど。」
『む?そうだな!我がいればなんて事は無いぞ!』


 上機嫌に飛ぶリナは、まっすぐ天使達の所まで行く。


「それで私とソラヤとリナでどうするの?」
「どうするって全員撃ち落とすつもりだけど。」
「街に?結界もない。落ちた先の手配もしないで?」
「……あ。」


 なんだか誰かに似ていると思ったら、ローゼに似ているんだ。僕の気がつかない部分を冷静に刺してくる。


「なら、まずリナのブレスで平原まで吹き飛ばしす。その後に落とすなんてどう?」
「リナはどう?」
『人族の街に結界ないのであろう?街ごと吹き飛ぶが構わんか?』
「いやいや、構うから。それじゃ〜……僕とメイクが牽制。リナが平原に物理攻撃で吹き飛ばすのは?」
『我は問題無いぞ。』
「そうだね。それなら街への被害も少ないかな。」


 今回は魔界とは勝手が違う。ギルマスとか王都の部隊長も居るから、天使達が落ちても大丈夫だとは思うけど。戦力も分からないから、勝手な事は出来ない。
 こんな時に王様や勇者はどうしたんだ?あ、人間の王様が強いわけないか。


「どうしたのソラヤ?」
「いや、魔界は魔王様が強いからいいけど。人間の強いのって言ったら勇者じゃん?」
「そうなの?ソラヤが勇者じゃないの?」
「違うし。こんな普通な男が勇者な訳無いじゃん。」
「普通?」
『普通では無いだろう。』
「2人とも僕をなんだと思っているの?」


 まぁいいや。今いない勇者を頼ってもしょうがないし。目の前の敵をなんとかしようか。


「じゃ、さっきのでいこう。リナ頼んだよ。」
『任された。ではスピードを上げるぞ。しっかり掴まっておれ。』


―グガァァァ!!!


 リナは大きく吠えた後、天使達に向かって飛んでいく。って言うか突然叫ぶとびっくりするじゃん。


 目に見える距離まで近づくとリナに驚いているように見える。


「な!何故、龍が此処にいる!?」
「き、聞いてないぞ!?」
「ええい!神に逆らう存在は全て敵だ!」
『ふん!天使風情が、我に牙を剥くか!……あ、メイクの事では無いからな?」
「うん。分かっているから大丈夫。」


 相手を威嚇したリナだが、すぐに気がついてメイクにフォローをする。メイク自身は全然気にしていない。


―ブゥゥン!ゴス。
―ガチャ、ズゥゥゥン!チュン!
―チャキ、ッシュ!ザク!


「っぐあぁぁぁ…………。」
「が!?」
「いだっ!?」


 リナが殴り飛ばし遠くの平原まで飛んでいく。僕が撃ち込み天使に風穴を空ける。メイクがナイフを投げ、肌に突き刺さる。


「貴様ら!我らが神のお使いであぁぁ…………。」


―ブゥゥン!ドゴ。


『そんなもの知るか。』
「ひぃ!?に、逃げろ!!」
「逃がすつもりはないから。」


―ガチャ、ズゥゥゥン!


「くそ!なんなんだ!」
「喋るってる暇はないし、聞いてもあげないよ?」


―チャキ、ッシュ!ザク。


 ものの数分で天使達はいなくなった。


「さっきの光のビームしてこなかったね。別の誰かが何処かにいるとか?」
『周囲に天使達の反応は無いぞ?街にはいくつかあるが。』
「そっか。どうしよ。とりあえず戻ろうか。」
「街の人は助けに行かないの?」
「ん〜どう言う状況か分からないし。お城に戻ってからにしようか。」
『了解だ。』


 僕らは来た道を折り返して、皆んなのいるお城へと戻る。



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