少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

141話 村の龍撃戦②

―バキバキ……バリィィン!!


『ガァァァァ!!!』
「前衛突撃!」
「行くぜ!!」
「こっからは俺たちが相手だ。」
「魔法でだいぶ弱っているはずだ。このチャンス逃さないぜ!」


 何とも言えないけど、フラグと言うか勝てる気がまるでしない。龍は突撃していく前衛部隊に顔を向け、翼を広げたと思ったら。


―ゴォォォォ!


「くっそーーー!!」
「うわぁぁーー!!」
「ま、負け……がぁぁ!!」


 次々と吹き飛ばされていく前衛部隊。龍はただ翼を羽ばたいているだけ、飛ぶ様子もなければブレスを使ってくる事もない。


「後衛!魔法で援護せよ!」
『グルゥ……。』


 さっきと一緒で色々な方向から、魔法のラッシュが始まる。


―ゴォォォォ!


「うぉ!」
「あちぃ!」
「きゃ!」


 翼を羽ばたかせ、その風に魔法も弾かれて前衛部隊に降り注ぐ。


「うわぁ、悲惨。」
「皆んな可愛そう。」
「あの翼の豪風は、魔法をも弾くのか。さすが龍種だな。」
「団長もお二人も見ていないで、なんとかして下さいよ。」


 近くにいた兵士に言われてしまった。あれ?僕とメイクにも?


「ソラヤどうする?」
「あの風交わして、ナイフが通るかな?」
「ん〜やってみたい事はある。」
「そか。ならやろっか。」
「すまんな。ソラヤ殿、メイク殿。」


 言われたからには動くしかない。さすがにこのまま放って置いたら、自分自身も危ない訳だし。


―バサッ。


「その翼は……。」


 マントを脱いで戦闘態勢のメイク。隠れていた翼を広げ周りからの視線を集める。


「行くよ。ソラヤ、私の後ろに。」
「了解。」


 その目を機にする様子もないメイクは、前だけを向いている。その後ろ姿はとても頼もしくすら思う。


―ダッ!!
―ダッ!!


 メイクの後に続いて走り込む。AGIを上げた僕ら2人は一気に距離を詰める。龍もこちらに気づいたか、翼を広げ羽ばたいた。


―ゴォォォォ!!


「はぁ……ふん!せい!」


 ―ビュン!ビュン!……サク。


『グルゥ!?』


 龍が明らか驚いているのが分かる。いや、僕も驚いたけど。自分の翼で龍と同じ事をして、その勢いのままナイフも投げてる。


「ソラヤ!」
「あ、うん。」


―ガチャ、ズゥゥン!ギン、ザク。


『グガ!?』


 メイクの声に条件反射で銃を撃つ。ナイフが刺さった部分に撃ち込み、さらに押し込む。


「せい!せい!せい!」


―ビュン!サク。ビュン!サク。ビュン!サク。


「ここまで近づくと、射程の長い意味がなぁ〜。」


―カチャ、ズン!ザク。ズン!ザク。ズン!ザク。


 近距離用の銃に切り替えて、メイクのナイフを狙い深くまで押し込むを繰り返していく。


『ガァァ!』
「メイク、爪に気をつけて。」
「分かった。」


 龍は翼を羽ばたかせるのは続けているが、すでに目の前にいる僕とメイクにはあまり影響がない。腕を振り上げ踏み潰そうとしたり、爪で切り裂こうと動かしているが僕らには当たらない。


「尻尾の方には行かないように。あとは顔の前、ブレスとかあるかも知れないから。」
「分かった。」


 戦闘中でも視野を広く持って観察する。メイクに行動パターンの予測や知識を教えていく。基本は相手の攻撃を避けて、癖や出来る事を可能な限り確認する。そのあと攻めるのが、僕らの戦闘パターン。







「思わずなんとかして下さいとか、言ってしまいましたが……。」
「なんとかしそうだな。」


 呆然と立ち尽くすしかない部下は、ソラヤ殿とメイク殿の戦いに見入っている。かく言う私も見ていることしかできない。
 さっきから前衛部隊が近づこうとしても、翼の豪風によって未だ近づけずにいる。後衛は魔法が跳ね返されてから、前衛部隊の回復に回った。


「凄い……。」
「だな。さっきからメイク殿のナイフに当てて、ナイフを押し込んでいるが。全弾命中ってどんな精度だよ。」
「全くです。しかも攻撃を避けて、豪風すら物ともしないなんて。」
「豪風に関しては近づく事が出来ればなんとなりそうだが。」
「そこまで近づく事が出来ないと話になりませんね。」
「仮に切り抜けてもな……。」


 目の前にいる2人は難なく出来てそうに見えるが……。


「噛みつき、爪で引っ掻き、その手で押しつぶそうとしたり。どれも当たりませんね。」
「きっとあそこにいる前衛部隊でも、何人が同じ事を出来るか。」


 私を含め、きっと誰1人出来ないと私は思う。この戦いはあの2人に任せるしかないな。
 騎士団長として、鈍ってしまったな……。もし生きて帰る事が出来れば、今一度鍛え直さねば。


「頼む……頑張ってくれ。」







「ソラヤ!」
「大丈夫。メイク、来るよ。」
「うん!」


 戦闘を続けて、何十箇所とナイフを差し込んでいる。それでも龍は倒れる気配は全くない。


「中々効果出ないね。」
「まぁLUK2しかないし。ソラヤ投げる?」
「ん〜僕のステじゃ刺さらないと思う。」


 ナイフには色んな状態異常を付与してある。なので効果が出るまで、龍に投げている訳で。そして抜け落ちないように僕が押し込んでいるが……。
 龍だからか、メイクだからか。龍自体は中々変化を見せない。


「長期戦だな。」


 僕とメイクは攻撃に注意しながら、攻撃を続ける…………。



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