少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

136話 旅立ちの時

   周りでもだいぶ慣れてきたのか、仮面で出歩いても違和感なく声をかけてくれる。


「ソラヤ!そろそろか?必要な物があれば、言ってくれよ。」
「ありがとう。いつも良くしてもらっているし、これ以上は大丈夫だよ。」
「メイクちゃんもまたご飯食べにおいで。」
「うん。また帰ってきたら。」


   僕らは村の雑貨屋や武器防具屋を回っている。回復薬買ったし、武器はベースあるし、服もある。ギルドの前を通ると受付の人が外に出ている。


「あ、ソラヤ様、メイク様。もしや出発ですか?」
「うん。昨日である程度のLv上げられたし、行こうかと。」
「そうですか…いつもの時間にいらしゃらないので、もしやと思っていましたが。」
「ちゃんと挨拶には来ますよ。ライグさんにはお世話になりましたし。」
「そんな事はありません。私は何もしてませんよ。」
「そんな事ないよ!ライグ、私にナイフ教えてくれた。」


   そう、ギルドの受付嬢のライグさんは投擲が凄く上手だった。それを目撃した時は驚いたな。煩くする冒険者をナイフで壁に縫い付けていく姿は……。


「そう言っていただけると嬉しいです。でもメイク様が頑張ったから、あの技を覚えられたんですよ。」
「私も頑張った!ライグも頑張った!」
「はい。そうですね。」


   フードの上から頭をポンポンするライグの顔は、とても優しい顔だった。それを見ていた僕に気がつきハッとなり手を下げる。触っちゃまずいとか思ったかな?別に禁止にしたつもりはないけど。


「ふふ。触るくらいならいいですよ。メイクも喜びますし。」
「そ、そうですか?では……。」
「ぐむ、ライグ……くるしいよ。」


   触っていいよみたいには言ったけど、抱きしめていいとは……まぁしばらく会えなくなるんだし、寂しいと思っているのかもしれない。メイクも苦しそうだけど、嫌そうではない。


「外で声がすると思えば、坊主か。」
「ワグーさん。Lvも上がったんで、そろそろ出発しようかと。」
「ここきて2週くらいか。確か来た時20そこらだろ?そんな急ぐ旅なのか?」
「まぁ仲間もいるし。」
「そうか。あ、坊主。嬢ちゃんにギルドカード作ってけ。色々有ると便利なはずだ。」
「そう言えば、作ってなかったね。この際作ろうか。」
「ん?」


   おじさんに言われてギルドカードを作っていなかった事に気がついた。この村の人は僕らに慣れてくれたから、顔パス?仮面パスだったけど、他の街に行くには必要だろう。


「じゃ、ここに手をかざしてくれ。」
「ん。」


 ……。


「おじさん。僕の時も簡単に出来たんじゃ?」
「……坊主の実力は見たしな。嬢ちゃんが戦わなくても2人分くら……い、は?」


   カードが出来て確認しているおじさんが固まる。


「Lv44?もともと高かったんだな。」
「いえ、会った時はLv1でしたよ。」
「Lv1!?え?は?43も上げたのか?2週間で?」
「そうですよ。魔物はいっぱい持ってきたじゃないですか。」
「いやいや、だって坊主Lv20くらいだったろ?」
「今は50ありますよ。だから出発するんです。」


   あ、おじさんがフリーズした。カードを持って固まるから奪う。


「メイクどうぞ。失くさないようにね。あ、一応中身見せて貰ってもいい?」
「いいよ。どうやるの?」


   ギルドカードを借りて確認をする。一応やり方を教えながら。




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メイク 18歳/神子 Lv44
スキル/【グロウエッグ】【短剣Lv10】【投擲Lv10】【錬金Lv10】【練成Lv10】【鍛治Lv10】【彫金Lv10】【調合Lv10】【採取Lv10】【無限倉庫】【気配Lv10】【危険察知】【観察眼Lv10】【空間管理Lv2】【???】


称号/無し


ステータス/【HP 7,612/7,612】【MP 2,112/2,112)【SP 5,500/5,500】
【STR/46】【DEX/50】【VIT/20】【AGI/200】【INT/10】【MND/20】【LUK/2】


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   称号は設定してないから無いけど、スキルやステータスが出ちゃってる。これを隠さないで昔は驚かれたっけな…。まずは【グロウエッグ】【無限倉庫】は隠そう。この2つは僕が持つ女神様と龍神並みにチートだし。それ以外は武器とか作るスキル系か……このままで大丈夫だろう。


「AGI高くない?均等に上げる方が良いよって言ったんだけど。」
「だってソラヤがそうしているし。上げないとソラヤに置いていかれそうで。」
「置いてかないけどな。そっか、まぁメイクが決めたならそれで良いか。」
「うんうん。」


   メイクには自分で好きにステ振り分けるよう話してある。今後何が有るか分からないから、可能な限り均等にする方が良いよって言ったけど。ステが僕に似ているな…まぁ当たらなければどうという事はない。って誰かが言ってるくらいだしこれでいいのかな。


「は!ここは!?」
「おじさん戻ってきた。」
「おいおい、何がどうなってる?」
「質問の意味がよくわかりませんが。」
「すまん、坊主のギルドカードもう一度見せてくれ。」
「いいですけど。はい。」


   ギルドカードを見て驚くおじさん。おや?スキルとかステータスはある程度隠してあるはずだけど。


「本当に50ある…この2週で?」
「だから言ったじゃないですか。格上相手を一日10以上は倒してきましたから。そんなもんでしょう。」
「いや、そんなもんでしょうで片付けて良いわけじゃないぞ。」
「だって一撃で倒せますし。」
「それがそもそもおかしいんだけどな。」
「メイクだってそんな時間かけずに倒せますよ?」
「流石の処刑人って事か…。」


   おじさんは諦めたように話しを切り上げる。まぁ倒せるんだししょうがない。皆んなも真似をすれば良いだけだ……ん?処刑人ってなんだ?


「処刑人って?」
「お前達の通称だ。マントに仮面額に書かれたXの文字。魔物をバンバン殺し…倒してくるからな。他にも色々あるけどな。」
「ふーん。」
「聞いといてあまり興味なさそうだな。」
「あ、すいません。」


   僕の中の処刑人って斧や鎌を持ってるイメージだけど、この世界だと違うのかなって少し思った。僕自身は銃だし、メイクはナイフだしどっちかっていうと武器は小さい。体もそんな大きくな……これから伸びるし!メイクも小さいから気にならなかったけど、おじさんを見ると首が痛いくらい見上げる事になる。


「って事で出発しようかと。皆さん今までお世話になりました!」
「おうよ!達者でな、人間の子に天使の子。」
「あ、おい!」
「あ。」


   天使の子ってやっぱり知っていたか。あからさまだったけど、それが皆んなの優しさなんだろう。


「皆んなに行ってきますって。仮面はとっても良いから。」
「え?分かった。」


 メイクがフードを外し、仮面を外したメイク。少し恥ずかしそうにしているけど、まっすぐ前を見て言う。


「いってきます!!」


 元気な声がギルドに響く。



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