少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

137話 危険な爆走。

 村を出た僕とメイク。色んな所で保存食を買い混み、いざ南へ。


「って出てきたけど、馬とか用意した方が良かったかな?」
「え?走るんじゃないの?」
「そのつもりだったけど。ふと思って。」
「ん〜馬いると、食事とかお世話も出来ないとだし。」
「そうか。とりあえず、次の街まで走ってから決めようか。」
「はーい。」


 始めは軽く走ってみた。メイクの様子を見ながら走っていると。


「もっと速くてもいいよ。」
「そう?いきなりはあれだし、少しずつ上げていくね。」
「はーい。」


 向こうではAGIが高いのは自分だけだったし、全力で走った事なんてない。そして同じくAGIが高いメイクは、顔色一つ変えずに着いてくる。自分が走っている速度なんて考えてもいなかった。


「魔物が前にいるね。どうする?」
「このまま走り抜けようか。追ってきたら倒す方向で。」
「はーい。」


 そして走る事数時間して、街が見えてきた。走るスピードを少しずつ遅くして、門番の前で止まる。


「ここは通さんぞ!」


 おや?槍を突き出してどうしたんだろう。あ、もしかして魔物を引き連れてきたかな?後ろを振り向く。


「何もいないな。」
「喋るのか!?」
「ん?」


 よし待て、落ち着いて整理しよう。ここは通さないと槍を向けられたけど、後ろに魔物はいなくて僕とメイクしかいない。


「これって僕らの事?」
「今応援を呼んでいる。観念して元いた場所に戻るんだ。」
「元いた場所って、あの村まで?また走るの?なんで?」
「何でと言われても…。」


 槍を向けられた状態を黙って見守る僕とメイク。 そして後ろからごつい鎧を着ている男が、何人かの兵士を連れてきた。


「おい、無事か。後は我々に……。」
「またいっぱい出てきたね。」
「な、喋るのか!」
「さっきから何なの?人間なんだから喋るでしょう。」
「人間の振りなど、我々は騙されんぞ。」
「振りって、どうしてそうなったんですか?」


 僕が喋り出すと、周りにいた兵士も慌て始める。人間はそんな珍しいかね?


「高台で見張りの者から報告があってな。魔物すら寄せ付けない速さで、仮面をつけたアンデットが進行中とな。」
「魔物を寄せ付けないって、戦わないで走り抜けただけだよ。」
「しかし、人間があのスピードを走るとか。普通は馬や馬車を使うだろ?」
「僕も彼女もAGIは高いから、馬を連れて行くと世話や餌代かかるから。走っただけなんだけど?」
「……何か身分を確認出来るものと、仮面を外せないか?」


 メイクが僕を見ている。ここでは顔がバレても問題ないだろう。仮面をしまい、ギルドカードを渡した。


「人間か、それに隣のも……それで仮面で隠していたのか。ギルドカードも確認出来た。」


 メイクは獣系の魔族と違って、天使だから顔だけ見ると人間に見えるのか。で、この人は人間が2人じゃ大変だから、仮面をつけて隠していると勝手に認識してくれた訳だ。


「すまんな。Lvも50と高レベルあればあの動きも納得できる。」
「高レベル?そうなんですか?」
「あぁ。この辺りの魔物はLv30くらいだからな。」
「おぅ……。」
「Lv50もあれば1人でも余裕だろうな。」


 あれー?少し走っただけなのに、この魔物のLv差は何だと言うのだろう。


「大変申し訳ない。我々の早とちりであった。」


 いきなり話が変わり兵士の人達が頭を下げてくる。


「いや、大丈夫です。慣れてますので。」
「はい。ありがとうございます。」
「じゃ、街に入っても良いですか?」
「あぁ構わん。ただ出来ればですが、仮面は外して貰えたりしますか?」
「構いませんよ。」


 こうして荒野を爆走する仮面のアンデットは、兵士の中での噂として引き継がれる。この後の伝説も追加をして……。



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