少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

129話 お人好しは隠し切れない?

外も暗くなってきたので、ここで寝ることにした。


「今日はありがとう、またあし……。」
「え?どう致しまして。ところで……寝てる!?」


その場で丸まり眠るメイク。
魔物は来ないって安心感はあるけど、どこで寝るのこれ?
少し洞窟の中を歩いてみた。


「ジルが入るくらいの大きさなのか?毛布とか何か横になれる物は無いよな。」
「…すぅ。」


本当にいつもここで寝泊まりしているのか。
布団もなければ、ベッドも当然ない。
メイク自身がそのまま地面に寝ている訳だし、これはこのまま寝ろという事か?
端っこで自分の羽根に包まって寝ているメイク。
あの羽根暖かそうだな…。


この洞窟魔物は来ないけど、夜は少し冷える。


「全く…とっとと寝ちゃって。」
「え?」


急に声がしたから、他に誰かいるかと見回した。


「ソラヤだっけ?人間がこんなとこで寝たら風邪引くぞ。こっち来い。」


翼を広げるメイク。


「ん?来いって?」
「せっかくの友達だ。風邪を引かれても困るんだよ。」
「え?じゃー遠慮なく。」
「やれやれ、この体じゃ色気もないよな…。」
「ん?何か言った?」
「気にするな。寝るぞ。」


羽根で包まれる。


「暖か……すぅ。」


突然魔界に来て疲れていたのだろう。
僕はそのまま意識を落とした。




…。


………。




「ん。」
「は!もう朝か…。」


もぞもぞ動き出したメイクに気がつき、目が覚めた。
羽根に包まれているから、身動きが取れない。
いや、完全に抱きつかれて動けないだけか。


「ん〜?ん〜?ソラヤ?」
「そうだよ。おはようメイク。」
「…………き。」
「き?」
「きゃぁぁぁ!!」


―ドス。


「ぐふぅ!」


突き出された手により僕は、壁際まで飛ばされる。
寝起きに受け流しは出来ず、もろに食らった。


―た、たた、たん!ぴたん!


転がりつつ壁に激突する前に、受け身を全力で行う。
そのまま転がる力を少しづつ受け流す事には成功した。


壁に両手で思いっきり受け流し、激突をま逃れた。


「せ、セーフ。」


危うく壁に激突してしまうところだった。


自分のHPを見ると1だけ残っていた。
これ、受け身のスキル無ければ死んでいたかもしれない。
追撃が来る前に、回復薬を飲んでおく。


「な、なんで!?えぇ!」
「ぷは。それは僕が聞きたいよ。」
「な、なんで一緒に寝てるの?」
「なんでって。昨日僕が寒がっていたら、こっちに来いって言ったのはメイクだよ?」
「え!そ、そうなの?覚えてない…。ん〜〜〜。」


必死に考えるメイクだったが、それでも思い出せないらしい。


「私、たまに覚えもない事が偶に起きるの。なんでかな?」
「それは僕にはなんとも…とにかくごめんね。次から気をつけるよ。」
「へ?あ、はい。私も突き飛ばしてごめんなさい。」


とにかく、同じ間違いをしないように気をつけよう。
シーの時もそうだけど、不意打ちの必中だったからかHPも1で耐えられた。


でも次も同じようになるかと言うと分からない。
…僕っていつも仲間に殺されそうになるな〜何でだろう?


「今日はどうする?」
「そうだな…ギルドに行ってカードを作ろうかな。それで…。」


―ぐぅ。


「はぅ!?」
「今食べ物は持ってないから。村にでも食べに行こうか?」
「す、すいません。でも私、村には入れないの。」
「そうなの?何で?」
「何でって…私は忌子だから。」


村に入れないとかどうなの?
何か悪い事をした訳じゃ無いのに。


「それならここで待ってて。話つけてくるよ。」
「え?うん………話をつけてくる?」




何をこんなに怒っているのか。
自分でも分からず、気がつけばギルドまで走ってきた。


「熊のおじさん居ますか?」
「おじさん??」
「名前は、ワグーさんだったかな。」
「ぶふっ。ギルマスに何かご用でしょうか?」
「昨日、試験をした者です。」
「あ〜君が噂の冒険者!呼んでくるから、待ってて。」


笑いを堪えているけど、堪え切れていませんよ。
プルプル肩を震わせ、後ろに下がっていった受付の人。


「坊主、生きてたか。」
「そりゃ何も問題ないからね。」
「そうか。ん、ではギルドカードの更新する。少し貸してくれるか?」
「はい、どうぞ。」


ギルドカードを受け取ると、机に置き。


―ゴン!


拳を振り落とす。
人間界じゃ特殊な印鑑押していたような気がするけど。
魔界は違ったやり方なんだな。


「…。」
「人間界のは丈夫だな。」
「壊そうとした?」
「いや、本物なら今のじゃ壊せんよ。」
「いえ、質問は壊そうとしたかです。」
「……すまん。ちょっと気になってな。」


その後普通に印鑑を押して、無事に更新は終わったとの事。
何が気になって壊そうとしたのかは、ここでは聞かないことにした。


「それでいくつか質問があるのですが。」
「おう。答えられる範囲でなら。」
「このお金使える?」
「こりゃ人間界のか。コレクターに売れるかも知れんが、使う事は出来んぞ。」


お金は使えないと、そうなると稼ぐ事からやり直しだな。


「では次に。ここから南に進むとして、どれくらいの強さが必要ですか?」
「坊主なら大丈夫な気もするが。この辺りの魔物がLvで言うと50はあるからな。それくらい以上じゃないか。」
「そうですか。」


僕そのLvの半分くらいしか無いんですけど。
これは少しLv上げしないと…。


メイクも一緒に連れて行こうかな。
Lvいくつあるんだろう?あとでパーティ組めばいいか。


「最後に何でメイクを…あの天使の子を村に入れないの?」
「入れないって訳じゃないんだが、あの羽根で歩かれるとな。色んなとこから苦情が来るんだよ。」
「それだけの理由?」
「えーその言い方だとギルマス悪役じゃん。」


後ろから顔を出したさっきの受付の人。


「村に入って見られたり、何か言われるのは可哀想って言ってたじゃん。」
「おま!」
「それに龍の住処にこっそり果物持って行ってるの知ってますよ。」
「な!?」


周りを見ると魔族の人達が、ニヤニヤしながらこっちを見ている。


「お、俺は、龍神様にお供えをしてるだけだ!」
「そうでしたね〜って事なの坊や。だからあまり怒らないでもらえる?」
「……そうでしたか。話を聞けて良かったです。」


優しい人なのか、そうでないのか分かりにくい人だな。
でも、話を聞けて良かった。




さて、お金が使えないから、サクッと終わる依頼こなしてご飯代稼がないと。
依頼ボードらしき前で佇んでいると、おじさんに声をかけられた。


「なんか急いでいるのか?」
「メイクがお腹を空かせているから。お金も使えないし、サックと討伐してお金稼げるかな…っと。」


そして再びボードを眺める。


「ちょっと待ってろ。」


裏に下がるおじさん。
待ってろって言うから、引き続きボードを見る。


「ほれ。今日はお供えにいけんから。お前に依頼するぜ。報酬は前渡しで銀貨3枚だ。」
「「「ギルマスやさしぃ〜」」」
「うるせーぞ!いいからお前らは自分の仕事でもしろ!」


ガヤガヤ騒ぎ出すギルド内。
この人、やっぱり良い人だ。


「有難うございます。その初依頼、お受けいたします!」


こうして、初依頼を受けた僕は洞窟まで走り出した。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品