少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

111話 お姉ちゃんの存在感。

鎧を脱ぎ捨てて出てきた女の人は、シーのお姉ちゃんだった。
久し振りに会えたのが嬉しいのか、涙ながらシーを抱きしめる。


「お姉ちゃん、痛いよー。」
「え!!どこか怪我したの!?」
「してないよ。力が強いの。」
「鍛えてますから!」


若干ずれたこの感じが、何処と無くシーぽい。


「ソラヤ戻った。」
「ただいま〜怪我はない?」
「師匠。父上、母上共に無事であります。」
「3人ともお疲れ様。僕は大丈夫。」


お父さんとお母さんとエッジの3人組が戻ってきた。
鎧を手探りで探している副隊長がいたから、お母さんに言って回復をしてもらった。


「おーしっかり見えます。どうもありがとうございます。」
「いいんだよーあっちの女の人にもする?」
「よろしくお願いします。」


その流れでシーのお姉ちゃんも回復してもらった。


「のわぁ!突然見えるようになった!」
「それはよかったよ。」
「回復感謝です。これでシーちゃんの顔が……。」


突然視界が戻り驚くシーのお姉ちゃん。
ちゃんとお母さんに頭を下げてお礼をすると、すぐに振り向きシーを見る。
仮面を着けたままのシーに、何とも言えない感じが分かる。


「シー、仮面を取ってあげて。周りは僕らだけだし。」
「あーしてたんだっけ。よいしょ。」
「シーちゃん!しばらく見ない間にまた可愛くなって〜。」


「しばらくって、どれくらい会ってないんですか?」
「ん〜1年くらいかな?」
「お姉ちゃん2年だよ。」
「そんなに立ってたの!?忙しすぎて時間の感覚が…。」


1年の誤差は大きすぎるだろう。一体どんな生活してきたんだか。


「そんなに忙しかったの?お姉ちゃんは今何してるの?」
「新米隊長さんだよ。覚えているか分からないけど、お屋敷では挨拶したはず。あれ?したっけ?」
「あ〜してたね。隊長さんだっけ?凄いじゃん。」
「でしょ〜。えっへん!」


何とも掴み所のない会話が続く。
この2人の会話には、なぜか入り込めない何かがある。


「せっかくの再会ではありますが、隊長帰りますよ?
「え!?まだいいじゃ「いけません。」……。」
「ソラヤ様達はまだ王都にいらっしゃいますか?」
「え?そうですね。しばらくは王都にいる予定です。何もなければ。」
「らしいです。またすぐに会えるのであれば、今日やらなければならない責務を。」
「でもさ〜…。」


シーのお姉ちゃんが駄々をこねているが、慣れた感じで副隊長があしらっていく。
こう言う会話を常にしていると思わせるやりとり。


「お姉ちゃんは変わらないな。」
「そうなの?」
「この話した感じが懐かしいよ。駄々をこねる事とか。」


優しそうな目で見る中、ちらっと見える寂しそうな目が気になった。


「シー大丈夫?なんか少し寂しそう。」
「……あそこのね。」
「うん。」
「駄々をこねるお姉ちゃんをあやすの私だったなぁって。」
「…あ、うん。」


普通逆だと思った事は口には出さず、心の中にしまっておいた。
寂しそうに見えたのは、自分の役割を副隊長さんに取られたから?
そっとシーの頭を撫でてあげる。


「そ、ソラヤ…お姉ちゃん見られちゃうよ。」
「あ、ごめん。つい。」
「あ、やめなくていい…よ。」


色々駄々をこねていた、シーのお姉ちゃんは僕をじっと見つめてくる。
さっきまで色々喋っていたのに、突然静かになるもんだから皆んながこっちを向く。




「…………帰る。」
「はい。街に行くので「副隊長、鎧お願い。」…畏まりました。」


何も言わずに鎧を着ていく。
怒らせるような事をしただろうか?


「ソラヤさん。」
「はい。」
「シーの事…任せましたよ。」
「はい。お任せください。」
「何か困った事があれば、遠慮なく頼りなさい。」
「ありがとございます。」


それだけ言うと振り返り、谷の入り口に向かい歩き出す。


「シー!」
「なーにー?」
「今楽しい?」
「うん!」
「ふふ。良かったわ。また会いましょう!」
「お姉〜ちゃん!またね〜」


見えなくなるまでシーは手を振る。
その間副隊長が何度も振り返って、頭を下げてきた。
シーのお姉ちゃんは振り返る事なく、歩き続けていた。


「なんか突然帰ったけど、何か怒ったりしていたのかな?」
「そんな事ないよ。満足したから帰るって言っただけ。」
「そうなの?」
「お姉ちゃんって切り替え早くて、よくそういう風に見られることもあったんだ。」
「それならいいんだけど。」


シーのお姉ちゃんか……。
そう言えば当初の目的だとシーは、お姉ちゃんに会うために旅をしているんだっけか。
会えた今はどうなんだろう?
シーのお姉ちゃんには任されたけど、今後も一緒に入れるかな…。


「ソラヤ〜?どうかした?」
「え!?ううん、何でもないよ。さて岩山の探索を再開しようか。」
「うん!」


今考える事ではないな。
僕の目の前でシーが笑ってくれている。


今はこれだけでいい。


先の事はまだ分からないのだから……。

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