少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

110話 感動の再会?

2羽もすぐ倒せたし、残り4羽か。
皆んなに合流しようと振り返る。


シーとナイトが挟み撃ちで1羽を相手にしている。
見た感じ……キャッチボールかお手玉か、とにかくあそこは大丈夫か。
少しばかり魔物が可哀想な事を除けば。


エッジの所はお父さんが盾で牽制して、隙を見てエッジが斬りかかる。
お母さんは全体を見ながら、回復に気を配っている。
あそこは完成形だなぁ。安定度が違う。


クロイとローゼのところは、鞭で距離を取り遠距離魔法で応戦する感じか。
この前みたいな魔法を使わないのは、もう1羽を警戒しているのか。
2人は慎重だからな。




「もう1羽はどこに?」
「ん?誰とも戦闘していない魔物の気配なら、谷底にあるわよ。」
「そ、そんなとこまで分かるんですか?」
「まぁ探索や探知は得意だから。」


全身鎧の怪しい女の人が、谷底の方に気配があると教えてくれた。
探索や探知が得意とは言っているけど、広範囲過ぎる。
その上強さも、エッジより上な気がする。


「さすが隊長。朧姫の二つ名は伊達じゃないですね。」
「ちょ!副隊長!」
「朧姫?」
「えぇ。ある戦闘で霧が濃く、どの戦士も警戒して足踏みしている中。隊長はその探索力で敵を斬り伏せて言ったのです。」
「ほぅほぅ。」
「だから、やめてって〜」
「その霧に霞む姿!そして煌めく剣さばき!こうして隊長は朧姫と呼ばれるようになったのです!」
「それは凄い。僕もその探索力は欲しいです。」
「そうでしょう、そうでしょう。」
「もうやだよ〜。や〜め〜て〜。」


突然始まる副隊長と呼ばれる人の演説。
力一杯に自分の隊長を讃えている。
そして、その話を中断させようとする鎧の人。


「朧姫様。目の方は大丈夫ですか?」
「ほら、覚えられたじゃん!?副隊長の所為だからね!」
「良いじゃないですか。私はカッコいいと思いますよ。」
「そういう問題じゃないの〜」
「何をそんなに恥ずかしがるのか…。」
「くぅ…副隊長にも何かつけてやる…。」
「それは光栄ですね。」
「うーーーん。」


とことんからかう副隊長。
純粋にその反応を楽しんでいるように見える。
僕の質問の答えはどうした?


「兜が無ければ顔が……は!目の前が真っ白だ。」
「………まだ回復しないんですね。」
「かなり強力な魔法だったしね〜。私もボヤッとしか見えない。」
「困りましたね。谷のやつが来るかもしれないし、仲間は今のところ苦戦も無いからこのまま様子見るか。」


かなり強力な魔法ねぇ…光るだけだからって力入れすぎたか?
とは言え、回復してないんじゃ下手に離れるのも…。
この隊長がいるなら大丈夫な気もするけど。




「ん?上昇し始めたよ。」
「そうですね……距離的にシーとナイトの所か。」
「シー!?この近くの2人の内どっちかがシーちゃんなのね!?」
「え?はい、そうですよ?」


気配を探知した朧姫。
僕も探知できる距離になり、1番近くにいるのはシーとナイト。
警戒させるつもりで、声をかけようとした。
すると朧姫がシーの事を聞いてきた。


「魔物が……。」
「え?ちょっと!」


僕が止める暇なく走り出した。
あんだけ重そうな全身鎧で、よくあれだけ動けるな。


「見てる場合じゃないか。あなたはここで。」
「すいません。」
「シー!ナイト!1羽下から来る!僕らが対処するから、目の前の魔物に集中で。」
「はーい。」
「了解よ〜。」


副隊長を置いて僕も走り出す。
念の為シーとナイトには声をかけて、目に前の魔物に集中してもらう。


「目も見えていないのに、そんな走ると危ないですよ!」
「関係ないわ。」


石に躓く様子もぶつかる事なく、シー達との差を縮める朧姫。
どんな感覚してるんだ。


「この位置ね。」


あるポイントで止まり、今度は剣を上段構え。


「私が守るんだ…神話の剣ミスソード。」


剣に光が集まる。
その剣が伸びていき………


「え?それ、いき過ぎじゃない?」


見ただけで分かる、異常な光。
雲までとはいかないが、それでもかなり長い。


「せいや!!」


―ブゥゥン…ザン!


そのまま振り抜いた光は、地面ごと斬りさいた。


「ふぅ…。」
「ふぅ…じゃないよ。1羽の魔物に過剰な攻撃しすぎでしょう!」
「大丈夫よ。」
「何が?」
「魔力は沢山あるから。」
「いや、そういう問題じゃ…。」


やりきった朧姫はとても満足そうだ。


「ソラヤ大丈夫?」
「ふはは。ソラヤが言えた義理か?あー面白い。」
「僕は全然平気だよ。ナイトは笑い過ぎ。怪我はないかいシー?」
「うん!私は元気だよ。」
「ソラヤ〜私には〜?」
「ナイト大丈夫?」
「あ、そこ素直に聞くんだ…あーうん。全然大丈夫。」


元気いっぱいなシーに、何故か少し照れるナイト。
なんでナイトは照れているのか?


「シー?シーちゃん?」
「ん?私?」
「あぁ…シーちゃんの声だ。」
「この鎧の人お屋敷にいた人だね。ん?この声どこかで…それにシーちゃんって。」
「シーちゃーーん!!」


朧姫はシーに飛び込む。


「うわぁ!?」


咄嗟に避けるシー。


「酷いぃ〜避けるなんて。」
「そんな全身鎧が飛びついてきたら逃げますよ。」
「そう?鎧か……副隊長!」
「はい。ちょっと待って下さい…まだ、しっかり見えなくて…おっとと。」


手を前に出し、探り探り近づいて来る副隊長。


「副隊長!これ脱いでいい?」
「これ?何がで…」
「うん、脱いじゃうね。アイテム収納よろしく!」
「え?」


―ガシャ、ガシャ、ゴン。


鎧をぽいぽい脱いでいく朧姫。
先に兜を取りなさいよ、怪しさ満点だわ。


「ふぅ〜開放感!」
「ん?隊長もしかして、鎧脱ぎました?」
「うん。聞いたじゃん。」
「いけませんよ…ってもう遅いか。さっきの金属音…鎧投げ捨てました?」
「…そんな事ないよ。鎧と鎧が当たった音だよぉ…。」
「…私ボヤッとですが、見えてますからね?」
「ごめんなさい。」


目の前で繰り広げるコント…じゃない、じゃれ合い。
中の人はやっぱり女の人か。
ん?そう言えばさっき屋敷に居た人って……


「お、お姉ちゃん!?」
「シーちゃーーん!!」


今度はしっかり抱きとめるシー。


「シーのお、お姉ちゃん?」


なんと怪しい鎧の人はシーのお姉ちゃんだった。



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