少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

101話 助けてくれる人達。

僕が戦っていた兵士は、銃で意識を奪ってある。
大臣の横の兵士が、近寄り何かしている。


「大丈夫、そっちの人は殺していないよ。あっちはこれから止めるから、待ってね。」


「っふ。っふ。っは!」
「がぁ!ご!がは!?」


うーん。手加減の基準がね…。
ボコボコにしているシーを止める。


「終わった?」
「僕の方は問題ないけど。こっちは問題じゃない?」
「おや?この人はどうしてこんなに、ボロボロなんだろう?」
「し……イレブンがやったんでしょう。」
「全部寸止めで、当ててないんだけど…。」


当ててない?寸止めしているとシーが言う。
そうなるとこの人は演技?


地面に倒れた人を観察すると、演技じゃないダメージがありそうだ。
そうなると……もしかして。


「この手にさっきと同じ寸止めしてみて。」
「ん?こー…っふ。」


―ブォ。


「おぉう…分かったよ。寸止めしてても、当たってた理由。」
「当たってた?」
「拳の周りに何か纏ってるんだよ。多分そのグローブの力かな?」
「この新しいの?」
「アンチ系で魔力を殴れると言ってたけど、色々規格外なのかも。」
「ふむふむ。全然わからないや。とりあえず、ごめんね。」


ボコボコにしてしまった相手に謝るシー。
死んじゃいないけど、意識はとっくにない。


「っぐ。こんなことしてタダで済むと思うなよ!」
「街の人いじめてた貴方が悪いのに。怒るの?」
「うるさい!ワシを誰だと思っている。」
「もーうるさいのはおじさんだよ。……黙らせていい?」
「その手を引っ込めて欲しいな。僕が許可を出すには情報が少ないから、エッジかピースさん来るまで待っておこう。」
「そら……テンが言うなら。」


渋々拳を下ろすシー。
偉そうにしていた大臣は、無事な1人の護衛の後ろに隠れている。
これからどうしようかな。


「師匠!」
「えっ…セブン。」
「セブン?あー俺の事か。」
「別に番号で呼ばなきゃいけない縛りは無いよ。」
「あ、そうなんですか。」


別に名前呼んで問題ないらしい。
番号振り分けてるから、外だとそう呼んだ方が良いのかと思った。
よくよく考えれば、初めて会って戦った時も名前だったか。


「ソラヤ、ソラヤ。」
「ん?どうしたのシー?」
「んーん。呼んだだけ。やっぱりいつも通りが良いね。」
「そうだね。」
「仲の良い事で。それより状況を説明して頂けますか?」


僕はここまでの経緯を話す。
叫び声がしてしばらく様子を見ていたが、斬りつけそうだったのを止めに入った。
意識が回復した人に回復薬を渡して、2人を呼びに行って貰った。


「ふむふむ。内容は分かりました。それで元凶はあの方々と。」
「すいません。剣を抜かれたので少しばかり応戦しました。」
「少し……ですか?」


倒れた2人を見て、首を傾げて考え込むピースさん。


「っく。また仮面が増えおった。」
「大臣、あれは3番と7番ですよ。」
「ふん。あの使えん7番か。」
「はは。ひどい言われよう。」


未だに強気な発言に、プラスエッジに暴言も吐く。
言われた本人は、特に気にした様子もない。


「さて、うちの新人がお世話になったようで。」
「全くだ。どう言う教育をしているのか。」
「うちのマスターは放任主義ですから。」
「それがこの結果か?」
「ええ。何か問題でもありますか?」
「なんだと!?貴様も…」
「なんだと言うのです?」


大臣が何かを言い切り前に、剣を抜き構えるピースさん。
おや?戦うのだろうか?


「っく、おい。あいつらを捕らえよ!」
「え?私一人で?」
「当たり前だ!他に誰がおる。」


残りの護衛の人がこちらを見て固まる。


「っぐ……。」
「剣を抜いたら……分かっていますか?」
「っぐ…くっそーーー!!」
「向かって来る勇気は認めましょう。ですが…。」


―キィィン!……カラン。


一瞬で距離を詰めて、剣を弾くピースさん。
弾かれた剣が、地面に転がる。


「チェックメイトです。さて、ここは引いていただけると助かるのですが。」
「っち。誰でもよい!此奴らを捕らえよ!褒美なら後で金貨くれてやる!」


周りには色んな人が見ているが、誰一人動くことは無い。
ここまでの行いは皆んな見ているので、そんな中で動く人はいないだろう。


そこに金属が擦れる音が聞こえてくる。


「そこまでだ!全員そこを動くな!」


全身鎧の兵士達が集まってきた。
声を上げた人の後ろには10人くらいの兵士。
これどうなるんだ?


「大臣…。」
「おぉ。王国騎士団ではないか。貴殿らが来たのであれば、こいつらも終わりだな。」
「ふぅ。」


ピースさんも剣を収めて、僕らの方に歩いてくる。


「仮面が4人…ん?見ない奴もいるな。」
「2人は最近加入した新人だ。」
「ほぉ、仮面が2人も増やしたか。良いことだ。」
「そうですね。今回7名増えたので、少しはいい方向に向かえば良いと思います。」
「7人もか!?今まで増えなかった分、ドカンと増やしたな。」


仲良さそうに話し始めるピースさん。


「話しておらんで、早く捉えないか!こいつらはワシに無礼を働いたのだぞ!」
「って、言ってるけど?」
「私に言われましても。周りの街の人に聞けばいいと思いますよ。」
「当事者に聞いてもしょうがないな。お前達、事の詳細を聞き込みしてくれるか?」
「「「は!!」」」


後ろにいた兵士が一斉に散らばる。


「そんな事せんでも、ワシが言っておるのだぞ!」
「だからです。我々は王の騎士、真意は街の人間に確認します。何か問題でも?」
「ぐぬぬ。」


聞き込みを終えた兵士達が戻ってきた。


「仮面2名が街の住人を庇ったと聞きました!」
「抜刀した兵士を抑止したと聞きました!」
「同じく!」
「同じく!」
「後のものは、大体同じか?」
「「「は!!」」」


「隊長!助けられたと言って2名が申し出をしてきました!いかが致しましょう?」
「聞こう。」


流れるように話が進んでく。
統率のとれた隊って感じがする。


「ねーエッジ。あの鎧の騎士の人って?」
「王国騎士団の2番隊の隊長っすよ。」
「2番隊って事は他にも?」
「そうっす。隊としては9番まであるんですよ。」
「って事は2番って凄く上の方じゃん。」
「そうっすね。」
「はは。隊に上も下もありませんよ。」
「「あ。」」


コソコソ聞いていたら、騎士団の隊長が話に入ってきた。


「街の住人を守って頂いたみたいで、感謝いたします。名乗るのが遅れてしまいましたね。私は王都軍王国騎士団の2番隊隊長、ツヴァイと言います。以後お見知り置きを。」
「何を悠長にしておる。さっさと捕らえんか。」
「はぁ…。誰か、大臣を城までお送り頼めるか?2人でいいだろう。」
「「は!」」


ため息混じりに指示を出して、大臣はそそくさとその場を後にした。


「大変そうだな。」
「まぁこれも実務。俺は王都の平和の為に頑張るさ。」
「たまには飲みに行こう。」
「それは嬉しい誘いだな。では仮面の方々私はこれで。よし!引き上げだ!」


鎧の集団……王国騎士団2番隊が帰って行く。
倒れた人はいつのまにか回収されていて、剣は街の人が掃除をしていた。
砕いたの僕とシーだし、手伝おうとしたけど断られた。
砕けた剣は溶かして再利用が出来るから、この作業も仕事だって言っていた。
お言葉に甘えて、僕らはギルドに戻る事にした。




「しかし、日帰りで魔物倒しちゃうのに、師匠達なら騒動もすぐ鎮圧出来そうですけど。」
「ソラヤ君は貴方と違いますよ。」
「それってどう言う意味です?」
「初めからいた訳ではありませんが、住人の目を気にしている戦い方。それに大臣に一切手を出していない事、負傷者の回復を待ちギルドにいる我々を呼ぶ。」
「それが?」
「エッジ……少しは頭を使おうか。」
「使っていると思うんですけどね。」
「ソラヤ君。師匠頑張れよ。」
「ん?なんだかよく分からないけど、よろしくお願いします師匠!」
「……あー。頑張りますよ、はは。」


途中で説明する事を諦めたピースさん。
そんな事気にせず、明るいエッジ。
任されて乾いた笑いしか出ない僕。


僕らの王都デートもこれで終わりかと思ったが。
歩き出した後、思い出したかのように、シーが腕を組んでくる。
少し恥ずかしい気もするけど、振りほどくつもりもない。
ギルドまでもう少し、僕はこんな時間が続けばいいなっと思うのであった。



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