少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

94話 常識を覚えましょう。

西門前からそそくさと退散した。


「さっきの門番の人、すっごい驚いてたね〜。」
「あの声に僕はびっくりしたよ。」
「へぇ〜ソラヤでも驚いたりするんだ。」
「シー、僕をなんだと思っているの?」


先頭を歩く僕とシー。
道は空いていて、人にぶつかりそうになる事もない。
と言うか、人が避けて行くようなぁ…。


「ほほ。あの2人は日に日に仲良くなりますね。」
「そう?私が初めてあった時と変わんないけど。」
「ナイトが会った時は、すでにこんな感じだったぞ。」
「ほほ?そうでしたかな?」
「私が会った時ともそう変わらないが。」
「ローゼの時から?ならブルームはいつからあーなの?」
「そうですね。ブルームとの出会いは……。」


「ふふ。クロイも気がついていないけど、あの3人も仲良しよね。」
「ん?そうか?まぁ一緒にいる事は多いが。」
「豪ってそう言うの鈍いもんね。」
「今まで女と付き合うとかしてこないからな。」
「そうなんだ。って空ちゃんが小さい頃から、一緒にいるもんね。」
「そうだな。そうなると俺は栄理しかいないな。」
「え?」
「一緒にいるやつだ。仲も悪くはないと思っている。」
「え?あー、そうね。」
「まぁ恋人を飛び越して、今は夫婦だがな。」
「そ、そうだねぇ…。」
「これからもよろしく頼むぞ。」
「うん。…………え?」
「ほら、置いていかれるぞ?」
「待って!い、今の!?え?えぇ?」


ふむ。皆んな仲良しでいい事だ。
僕は先頭を歩いていても、周りの声を聞くようにしている。
1番は町の人の声を聞きたいから。
僕らが道を歩いているだけで、聞かずとも噂が耳に入る。


悪い噂は一つも無い。
あのおじさんが作ったクランだし、悪い事はしないんだろう。
しかもこんな仮面を被った集団が、街を歩いても何も言われる事は無い。


一部例外はいたか……後で聞いた話だけど。
ギルドの前で絡んだ来た冒険者は、ここに来たばかりの人だったとか。
王都ではそれなりの知名度があるけど、外から来た人まで知れ渡ってはいない。


すんなり歩いてこれたからか、ギルドの前に着いた。


「ん?十番の……。」
「ソラヤです。」
「そうだったな。どうした忘れ物か?前以て言ってくれれば、馬くらい貸すぞ?」
「……前以て言って下さいよ。」
「ん?もう用意したのか?そりゃすまんな。だが、冒険者なら自分の足で動く事も重要だからな!」
「まぁ次の機会があれば、ギルドで馬を借りる事が出来ると覚えておきます。」
「はっは!真面目だな。そん時は融通きいてやるぜ。」


大柄で声もデカイから、ギルドの前にいるだけで周りの人からの注目を集める。
この人やっぱり、おじさんそっくりだな。


「まぁいいや。もう終わった事だし。」
「そうだな。手配したもん、キャンセルはカッコつかねーな。」
「ん?馬?借りて無いよ。」
「なんだよ、借りて無いのか。じゃうちで貸すか?」
「次に必要であれば。」
「ん?あの山まで歩くのか?荒野を1時間くらい歩くことになるぞ?」
「っく。そう言う情報は……収集できなかった僕のせいか。」


さっきからちょいちょい会話のズレを感じる。
そして、話せば話すだけ情報が出てくる。
情報収集はもっと時間かけてやるべきだな。


「そうじゃなくて、依頼。終わったよ。」
「は?あれから3時間くらいしか経ってないぞ?」
「そうだね。目撃情報は幸い持ってたから。見つけるのは苦労しなかったよ。」
「ははは、冗談だろ?ちょっと信じられないな。嘘つくならもっとまともなのにしろよな。」
「む。」
「魔物なら……。」


―ドサッ、ドサッ。


「へ?」
「あー…。」


気がついた時には、目の前に2羽の魔物が。


「魔物だ!!」
「なんで街中に!?」


周りが突然現れた2羽の魔物に慌て出す。
目の前のギルドマスターは……固まっている。
1羽でも結構な大きさなのに、それが2羽並ぶと印象が全然違うもんなんだな。
なんて呑気に見てる場合じゃないか。
ここで騒ぎを起こしても、良いことないし。


「シー、下げていいよ。」
「うん。」


大騒ぎになる前に魔物をアイテムに戻す。


「………は!イヤイヤ、本当に!?」
「もう一度出す?」
「いや、大丈夫だ!」


シーが若干怒っている?
冗談だと言われた事が、気に障ったのかもしれない。


「ん?騒がしいと出てきてみれば。皆さまどうしました?」
「お?師匠。忘れ物ですか?」


「出さなくて良いからねシー。」
「ん。」
「すまん。訓練場まで来てもらっていいか?ここだと兵士が来ちまう。」


少し騒ぎになったが、ギルドの人達が沈めに出回りに出掛けた。
うーん。仕事増やしてごめんなさい。






そしてこれまた広い訓練場。
ギルドの中には、これを作らないといけない決まりでもあるのだろうか?


「すまんが、魔物を出してもらって良いか?」


シーがこちらを見て、様子を伺ってきたので頷く。


―ドサッ、ドサッ。


「ゴールデン・イーグルっすね。さすが師匠、仕事が早いっすね。」
「間違いないな。しかし、この短時間でしかも2羽も?どう言う戦闘すればこうなるんだ?」


ピースさんが魔物に近づいてその状態を確認する。
それに続くエッジ。
遅れてギルドマスターも参加する。


「こっちは右のに比べ、若干焦げ跡が。燃えたとは違う何かだな。」
「何にせよ、魔法でやられたって事ですか?」
「裂傷は無し。打撃痕も少しあるが、決め手はおそらく魔法……雷か?」


「ほほ。正解です。見てお分かりになるんですか?」
「おそらくだが焦げ跡となると、水と土以外ならありえるんだが。羽根や表面が全体的ではないからな。」
「ふむ。勉強になります。」


何が勉強になるのか分からないけど、クロイは感心そうに話しを聞いている。
僕らのパーティの何人かは飽きて、訓練場を歩き始めてる人もいる。


「雷っすか。そうなるとこっちはクロイさん主体か。こっちのは見てすぐわかります、師匠。」
「まぁ対照的だしね。」
「この後は銃ですね。羽の付け根に数発、トドメはこの額の銃痕ですね。」
「ここの銃痕だけ、焦げてるな。0距離で撃ったか。」


その後も色々3人で話し始めた。
別にここにいても用がないので、皆んなを呼び食事でもして来よう。


「おや?マスターは?」
「中で魔物を見てますよ。時間かかりそうなので、ご飯食べてきます。」
「畏まりました。マスターには伝えておきます。いってらっしゃいませ。」
「うん。ありがとう、よろしくね。」


ギルドの受付の人に、伝言を任せて僕らは再び街に繰り出したのであった。

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