少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

89話 街に出てみよう。

僕達は早速街に繰り出すことにした。
案内役にはエッジと第3席のピースさん。
おじさんは何がいつ呼び出されるか分からないので待機中。
そしてお目付役のレイランさんが一緒に残る事になった。


「ところで、これはどこに向かっているんだい?」
「一応ギルドに向かってます。」
「そうか。」


エッジとピースさんが先頭を歩き、エッジには予めギルドに向かってもらうよう話はしていた。
何も聞かされていないのか、ピースさんは短い返事でそのまま歩く。


ただ歩いているだけなんだけど…。


「「「ピース!」」」
「はは。今日も皆んな可愛いね。」
「「「きゃー!!!」」」


ピースさんを呼ぶ女の人達。
今のピースさんは、仮面を着けていて顔は見えない。
身長は確かに高く、スタイルだって良い。
銀色の長い髪が風になびく度、髪をかきあげる。
その度に女の人達がキャーキャー騒ぐ。


後ろをついて行く僕らは無言。
隣を歩いていたはずのエッジも、少しずつ後ろに下がり距離を取る。


「ピースさんは人気者なんですね。」
「ピースさんは街で護衛系の依頼が多いからな。知名度も高いんだよ。」
「護衛ってこの前のエッジがやってたみたいな?」
「そうです。俺は遂行できてませんがね。」
「でも結果は護衛対象が生きてるんだし。」
「その結果が面倒ですけどね。」
「まぁ〜しょうがないよ。」


しかし、いくら護衛の依頼を多くこなしたからって…。


「なんだか、女の人から声かけられるの多いね。」
「シーもそう思う?男の人はキャーキャー言わないだけだから、そう見えるのかもだけど。」
「実際女性しかいないかも知れません。御令嬢の護衛なので。」
「御令嬢の護衛ですか?」
「えぇ。街に行きたい。だけども使用人を引き連れるのは嫌だと言う方や、外を散歩したいけど執事達は邪魔、みたいな方々にせめて1人だけでも!ってピースさんが選ばれました。」
「お嬢様の我儘を叶える人?」
「おおまかに言えばそうですね。それでいて女性の扱いが上手で、両親でも叱れない子をピースさんは怒り、そしてしっかり甘えさせる。御令嬢からもですが、その両親からもリピートが多くて。」
「そのお陰で、3ヶ月先まで予約でいっぱいさ。」
「ピースさん…お疲れ様です。」


3ヶ月先まで予約とか、どこか有名なお店で言われそうな感じだ。
本人は楽しんでるみたいだから、別にこれで良いのか?




女の人の声援が止み、周りに鎧を着た人や武器を装備している人を見かける様になった。


「静かになったね。
「この辺はギルドが近いし、冒険者や傭兵が多いんです。御令嬢が近づくような場所では無いですからね。」


スタスタ前を歩くピースさん。
声は聞こえないけど、視線は凄く増えた気がするけどなんだろう?
道を塞いで喋る3人の男達。
会話も盛り上がって、こちらを見えていない。


「すまないが、道を開けてはくれませんか?」
「あぁ?何だ貴様?」
「何だと言われましても。道を通りたい人です。」
「回り道すればいいだろう?」
「……。」


道を塞ぐ人に優しく声をかけたピースさん。
ただ、相手が反論して何やら雲行きが怪しい。


「それに何だ?その仮面はカッコいいのか?後ろの連中も着けてるな。王都の流行りか?」
「そうなんですか?いくら流行っても着けたくないですよ。」
「そうですね。ははは。」


「この仮面の意味も知らずに、着ける事はお勧めしないよ。」
「は。つけねーよ。そんなダサい仮面なん…て……。」


ん?なんか空気が変わった。少し重くてピリッとする。


「あ、まずい。」
「エッジ、何が悪いの?」
「この仮面、考案もデザインもレイランさんがしたんですよ。」
「それが?」


「貴様らみたいなゴミが……レイランさんを、否定するのか?」
「あぁ?何だ?聞こえたねー…げふぉ!!」


―ガツン!ズガァァン!!


盾でその男は吹き飛ばされ、壁にぶつかり倒れる。


「貴様!やりやがったな!」
「知るか。」


―ゴン!ズド!ズザァァ。


頭に軽く剣を当てて、蹴りで後ろに大きく飛ばす。
地面を転がりその人も動かなくなる。


「ひぃ!なんなんだ!」


そして残りの1人が逃げ出す。


「エッジ…逃げたアイツ連れて来い。」
「え?ピースさんが…」
「行け。俺がゴミを消し去る前に。」
「イエッサー!!」


エッジの下っ端感が凄いよ。
そして人が変わったピースさん。


吹き飛んだ2人を縄で縛るピースさん。
何をするのか見ていると、剣で相手の頬をペチペチ叩く。


「うぅ…。」
「おはよう。寝ていると教育が出来ないから、起きていていろ。」
「ひぃ!?」
「隣の奴もだ。起きろ…じゃなきゃここで殺すぞ。」


やはり剣で頬を叩く。
そんな様子を黙って見ている僕。


「それじゃ、足の爪から剥ぐか。」
「「ヒィ!!??」」
「はい、ストーップ!」


爪を剥ぐと言ったピースさんを、直ぐに止めたのはお母さん。


「空ちゃん達の前で何しようとしているの!」
「知るか。これは教育だ。」
「いけません!」
「っぐ。しかしコイツ等はレイランさんを否定する奴らで。」
「言い訳しないの!ダメなものはダメです!」
「……。」
「返事は?」
「…はい。」
「「ふぅぅぅぅぅ…。」」


暴走気味のピースさんを抑えたお母さん。
爪を剥ぐと言われ、ビビっていた男達は安堵の息を吐く。


昔から叱るのはお母さん、栄ネェの役割だった。
そして、何を言っても最後には纏められる。


だが、僕は知っている。
この後の会話でとんでも無いことを言う事を…。


「爪を剥ぐとか痛いし、見栄えも良くないから…」
「…?」


お母さんの会話は続く。
ピースさんがそれに耳を傾ける。


「跡形もなく消しちゃえばいいんだよ。」
「「「んな!?………。」」」
「ほほ。燃やしますか?」
「「ひぃぃぃぃぃ!!??」」


「い、いや。そこまでは。基本殺しは禁じられている。」
「そうか。ならしょうがないね。道は皆んなの物だよ。独り占めはダメだからね?」
「「はい!!以後、気をつけます!!」」
「うん。いい子ね。」


おぅ…今のクロイが突っ込んだ事で、嘘か本当か分からないな。
きっとお母さん自身で魔法か何かあればば、本気で消し去ろうとするだろう。


一度突き放し、手を差し伸べると良いんだよ。
なんて昔に言われた気がするが、恐ろしい人だ。


「なんか、怒り方ソラヤみたいだね。」
「どこかで見た気がしてたが、ソラヤだったか。」
「え?似てる?」


そんな事言われた事ないな。
怒り方か…そんな怒った事あったかな?


「見た感じ変わらないんだけど、言い方が物凄く過酷なの。」
「ふふ。ブルームはよく見てるわね。」
「えっへん!」


「別に私怒ってないよ?」
「わたくしも怒ってませんよ。さっきのも冗談ですし。」
「え?そうなの?燃やさないの?」
「「え?」」


困ったであろうクロイは、僕とピースさんを見る。
ここで振られても困るんだけどな。


「別に僕らは危害を受けたわけじゃないし。」
「先程も言いましたが、殺しはレイランさんに怒られるので…。」
「そうだったね。」


「俺が連れてきたコイツはどうします?」
「うーん。燃やす?」
「え?」
「燃やすんですか?」
「いや、燃やさないから。」


ビクビクしていた3人の男達は、抱き合って震え上がっている。
いつまでもここに居たら、ギルドにたどり着かない気がしてきた。
もう反省してそうだし、ほっといて次に行こう。



コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品