少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

85話 今回の事は目を瞑ろう。

「「お帰りなさいませ。団長様。」」
「おう。変わりないか?」
「概ね問題は御座いません。王都の使者から手紙が2通御座います。」
「はい。大臣の使いと言われる方が団長に合わせろと、屋敷に入ろうとしたので追い返しました。」


屋敷の入口らしき門に着いた。
門が開き2人のメイドがおじさんに頭を下げる。
これがゲームで見ていたリアルメイドさんなのか。


揃った礼で後ろにまとめた髪が地面に着きそう。
顔を上げれば同じ顔がそこにあった。
どちらも凄く整った顔をしている。
先に手紙の件で話した方がメガネをかけている…けど、鋭い目つきなような。
後に喋った方はニコニコしているからだろうか、柔らかい目をしている。


眼鏡をかけた女の人と目が合う。
真っ直ぐ僕を見たかと思うと…


「え?女神?龍?」


『聞き耳』のスキルのある僕には聞こえた。女神と……。
偶然だろうか、一応調べておこう。


「お母さん、ちょっといい?」
「ん?ふんふん。えー、なんだかな?それを知りたい?分かったよ。」


―リィィィ…


「ヒィ!?」
「ん?どうかしたか?」
「いえ。な、何でも。ありません。」
「そうか?体調が優れん時は、休むのだぞ?」
「はい。お心遣い、感謝致します団長様。」


あれはお母さんの眼にやられたのだろう。
死ぬわけじゃないし、気になる事があたのでしょうがない事。
…多分警戒されるくらいだろう。


「空ちゃん。あの人と目があった?」
「うん?少し合ったかな。」
「多分それかも。鑑定ってスキルがあったから。」
「やっぱりか…後で話す機会が欲しいね。」


僕がお母さんに頼んだのは、彼女が口にした女神や龍のワードの真相。
会ったこともない相手に、しかも会話の流れも不自然だった。
気になったので、『龍眼』を使い、僕だけに教えてと話した。


結果は『鑑定』のスキルがあった。
これは一定時間見る事、人であれば目が合う事で、物質や相手の情報を得ることが出来る。
僕の場合はおそらく称号を見られたんだと思う。
その後すぐに目をそらし、お母さんと話したから効果まではバレていないと思う。


あの人自身の能力は、きっとおじさんも把握しているはずだ。
報告される前に話す機会が欲しいな…少し、踏み込むか。


馬車から出た僕は、一瞬でおじさんの横に行く。


「初めまして。僕はソラヤと言います。」
「およ?君……中々可愛い顔してるね。」
「ココ。お客様ですよ。」
「分かりました!レイラン様!いらっしゃいませ、ソラヤ様!」
「様とかいいよ。ただの冒険者だし。」
「分かったソラヤ!」
「ココ、あなたは…。」


頭を抱えるレイランさん。
ココと呼ばれるメイドさんは、とても元気のいい人だ。
握手して、ブンブン腕を振ってくる。
さて、なんて言えばいいかな…とりあえず、笑顔で手を出す。


「初めまして。ソラヤです。」


ハッとした顔を一瞬で切り替えて、背筋を伸ばしスカートの裾を摘みお辞儀をする。


「私はメイドのヤヤと申します。それと申し訳ありません。団長のお客様の御手を取るのは、恐れ多いです。」
「握手くらい構わんが、ヤヤは真面目だな。と言うか、ココはぶん回してたぞ?」
「あの子は後で言い聞かせます。」
「ひぃ!?」


出した手を引っ込める。別に握手がしたかった訳じゃないし。
近くに行って話をしたかったんだけど、別の手を考えるか。


おじさんが言った事で、ココさんを睨むヤヤさん。
怖がってるし、僕は別に気にしないんだけど…お、そうだ。


「まぁまぁ。僕は構いませんよ。 今回は……お互い目を瞑りましょう。それでいいですか?」
「……ソラヤ様が言うのであれば。私も目を瞑ります。」
「ソラヤありがとう!」
「いえいえ、許したのはヤヤさんです。ね?」
「は、はい。」


多分これで意図は通じたかな。
許す口実に目の事を含ませ目で合図をする。


「とりあえず、何も無かったみたいだし。屋敷に入るか。」
「そうですね。」


手紙の件はいいけど、後者は問題ありだろう。
追い返したとか言ってるよ?
おじさんはいいとして、レイランさんも気にした様子もないし、もしかすればいつもの事なんだろうか。
疑問は残るけど、気にしてもしょうがない。
僕らはおじさんに続いて中に入る。




「早速で申し訳ありませんがソラヤさん。今後の事といくつか聞きたい事あり、お時間頂ければと。」
「分かりました。」
「団長とエッジも来て下さい。ピース達は馬のお世話をお願いね。」
「おじさんいるなら、私はソラヤに着いて行くよ!がるぅ!」
「はは。嫌われたな〜俺。」


話し合いの場におじさんがいると分かると、シーは僕の腕に絡み離れようとしない。
何かある訳じゃないんだけど、あの模擬戦以来シーは警戒し続けている。


「なんか、すいません。」
「構いませんよ。お一人でって話ではないので。皆さん来られますか?」
「ん〜アオのお世話もあるし…。」
「ソラヤ。アオの世話なら俺がやる。」
「私も豪を手伝うー。」
「そう?ならお願いしようかな。」


アオのお世話をお父さんとお母さんに任せて、僕と一緒にシー、ローゼ、クロイ、ナイトを連れて行く。


そして歩く事5分…。


やっと入口に着いた。


「「「遠くない?」」」
「これだけ広い屋敷とはな。」
「ほほ。」


「外で訓練する事もあるからな。広くないといかんのだ。」
「まぁ馬舎はもう少し近くて良いと思いますが。」
「あーそれは思うっすね。」


レイランさんとエッジも僕らと同じ意見みたいだ。
この広さはこの世界では普通なのか?それともおじさんが凄いのか。
僕らは何も触れずに屋敷に入った。



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