少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

83話 戦いの後で。

食事も終えて、さっきの模擬戦の話をする事にした。
まずは僕が倒れている時の話を聞いた。


僕が吹き飛んだ後、シーがキレて暴走してた事。
おじさんの剣を砕いて、レイランさんに全力パンチしようとしていた事。
両手をボロボロにしてまで戦っていた事と受けたナイトの手が折れてた事を、お母さんからこっそり聞いた。


「そっか。僕が言えたことでは無いけど、一人で突っ込むのはいけないよ?」
「うん…。」


お前が言うの?的な目で見なくても分かってるから。
だから僕も考えている。


「さっきの模擬戦では、自分の運を過信してたいたところがあるって。」
「ソラヤのLUKは、過信するくらい高いからな。」
「クロイのINT程じゃないけど。」
「ほほ。わたくしは経験でカバーしてますから。」
「経験って、ソラヤと1つしか変わらないだろう。」
「ほほ。ローゼ、1年はでかいですぞ?」


一年どころじゃないんだけどね。
クロイとは38歳違う。
経験って言っても、この世界に来たのは一緒なんだから、変わらない気もするけど。


「とにかく、しばらくはエッジもいるから2人1組を組んでおく。」
「お互いがフォローし合えるのは良いな。」
「どう言う組み合わせなんですか?」
「基本は戦闘スタイルに合わせるつもりだけど。」


「私はソラヤとが……何でもない。」
「シーは僕との予定だけど?」


何か言おうとしてやめたシーだったが、僕とのペアだと言うと満面の笑顔で答えてくれた。
嫌われてないようで良かった。さて、次行こう。


「お父さんはお母さん。やっぱり治癒系のお母さんを守るなら、1番守りの固い人に任せる。」
「あぁ。エイリはおれが必ず守る!」
「んー!!」


使命感に燃えるお父さんの後ろで悶えるお母さん。
いつもの事だ、次は。


「クロイはローゼかな。チームの頭脳だから指揮とか任せたいし。お互いにフォローして。」
「ほほ。任せろ。」
「うん。きっちり見張るからな。」
「さっきの様な魔法は打ちませんって。」
「どちらにしろ相談はしろ。もしくは事前に話し合い、出来そうな魔法を聞いておきたい。」


見張る?一体何を言ってるのか。
見張るって使い方って僕の聖魔弾とか………。
僕は野営の横に空いている大きな穴を見た…あ、察し。




交代で見張りを出し、夜を過ごした僕達だったけど。
魔物1匹として近づいてこなかった。
14人もいる多所帯だからか、それとも横にある大きな穴のせいかどうかは分からない。
お陰で外なのにぐっすり眠れた。






翌朝、全員で王都を目指す。


「しかし、馬車で移動とか面倒じゃないか?」
「そう?僕は楽だと思うけど。」
「馬に跨って走る方が楽じゃないか?」
「馬乗れないし、7頭用意するのも大変だよ。」
「そうか…そうなると馬車もいいのか。」


馬に乗ってるおじさんは、腕を組み考えつつ唸りだす。


「そうだ!」
「買いませんよ。」
「レイラン。俺はまだ何も言ってないんだが。」
「そうですね。けど私は買わないと言いました。」
「むぅ…。」


いいこと思いついた感じで、声を出したおじさん。
何かを言う前に、レイランさんに否定をされる。
これもいつもの状況なのかと、馬車の上からそのやり取りを眺める。


「ソラヤよ。馬車はいいもんだとレイランに言ってくれれば!」
「え?僕にそれ振る?」
「私達は全員馬に乗れますし、迅速に動く意味でもこのままで構いません。」
「ソラヤ!何か無いのか!!」


凄く必死に説得を頼まれる。
馬車の利点か…僕が馬に乗れたとして想像してみる。
その上で馬車の方がいい所……。


「うーん…戦闘に対して先手を取れるところかな。」
「先手ですか。確かにそれは良いですね。実際にはどう言う風に?」
「馬は機動力がある。でも馬車にはこうやって……。」


―ガチャ、ズゥゥン…キラ、ドゴォォン!!


「って、事が出来ます。」
「こら、ソラヤ!闇雲に撃つな。」
「ローゼ!?あ、あそこにウルフが3頭いるんだよ〜。」
「ん〜……見えんな。」
「ちょっと待ってね。」


―ガチャ、ズゥゥン。ガチャ、ズゥゥン。ガチャ、ズゥゥン。




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《ウルフLv30を倒した。21(150)の経験値を得た。》
《ウルフLv30を倒した。21(150)の経験値を得た。》
《ウルフLv30を倒した。21(150)の経験値を得た。》


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「ね?」
「まぁ良いが。一言相談はしなさい。」
「あ、うん。ごめん。」


少し怒られたけど、3匹を仕留めてなんとか信じてもらえた。


「今何をしたのですか?」
「あそこに居たウルフにトドメ刺したの。ログも出たから間違い無いかと。」
「ほら、これは凄いぞ!馬車!」
「そうですねぇ……この場合凄いのはソラヤさんであって、馬車は関係ないのでは?」
「「………。」」
「それに私達のクランに遠距離は私だけですし、馬で移動しながらの方が都合がいいです。」


僕はおじさんと目が合う。
泣きそうな目をしないでくれ、大人でしょうに。


「あれだ、馬の操作を交代しながら進めば楽だし、その分進距離も!」
「馬を休ませないのですか?」
「…負傷した仲間も荷台に乗せて運べたり?」
「そもそもこのクランに治癒魔導師がいない問題を解決したいです。」


顔をレイランさんから逸らすおじさん。
過去に何があったんだよ。


「しかし、荷台としては必要な依頼もあるでしょう。この件は検討してみましょう。」
「おぉ!まったり馬車の旅!これぞ、冒険者ってものだよな!」
「なので、ブロックは治癒魔導師を探して下さい。」
「はははは。」
「笑って流す事は出来ませんよ。お願いします。ね!」
「あぁ、おう、頑張ります。」


このおじさんはどれだけ馬車が欲しいんだか。
そして、僕が余計な事を言った感じもするけど。
まぁなんだ、治癒魔導師は必要だよ。頑張れおじさん!


「ソラヤさん。この丘を登れば王都の門が見えてきます。出来れば中に戻って欲しいです。」
「何かあります?」
「なんて言うのでしょうか。目立つので。」
「まぁ上にいないといけない理由は無いし。戻るかな。」


丘を越えたあたりから顔を乗り出し王都を見つける僕。


「来たね、王都。」
「うん!」


シーも嬉しそうだ。


これから王都で何があるのか。
僕らはワクワクした気持ちで、門に近づいて行く。



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