少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

78話 保護者の到着。

「ふぅ…ふん、ふん、ふん!」
「っほ、よ、はっ!」


大剣が僕の頭上を通り過ぎる。
おじさん自身の技のキレは無くなってきている。
手首を怪我しているからち、純粋に体力の問題だと思う。


僕は避けてはいるけど、あんな重いものをブンブン振り続けたりはしてない。
そして攻撃は唐突に終わる。


「あーキッツイ!」
「そりゃ、そんなでかいのブンブン振り回せばね。」
「途中から攻撃やめたが何かあんのか?」
「僕一人じゃ倒すの凄く時間かかるから、避ける事に専念して時間稼ぎ。」
「あからさまだな。で、倒せないとは言わんのな。」
「えぇ。出来ない事はない。けど、お金も時間もかかるし。」
「ちなみに勝てる作戦は?」
「鉄を斬れる様になるか、鉄を貫くまで撃ち込む、それか爆破の衝撃を内側から。どれかかな。」


「えぐいな〜」
「すぐには出来ないでしょ?」
「確かにな。で、時間稼ぎたい理由はなんだ?」
「それ答えたら意味なくない?いや、どうなんだろうね。」
「なんだ、なにがあるんだ?」


剣を地面に突き立て、完全に聞く姿勢になったおじさん。
僕はここで一つのカードを切ることにした。


馬車に戻りエッジに話をする。


「知り合いなのは分かってるんだよ。話つけてきて。」
「いやークロイさんにも言ったんですが、マスターはやばいんですって。」
「死ななきゃ大丈夫。シー、ナイト。連れてきて。」
「「はーい。」」
「うわぁ!」


馬車から出てきても大剣はそのまま、仁王立ちのおじさん。
そして感動の再会?


「な……セブンか?」
「ははは……マスターお疲れっす。」
「………。」


険しい顔のおじさん。
どうやらエッジの事を知っているらしい。


すぐに馬車から顔を出せば、僕は戦わなくても良かったんじゃないか?
クロイに色々話をしていたみたいだけど。
なんの問題も…


「セブン!!生きていたか!心配したんだぞーー!!!」
「ま、マスター!?ぐふっ。イダダダ!!」


―バキ、メリメリ…。


「わぁ〜メキメキ変な音がする〜。」
「男同士の抱擁って激しいのね。
「ほほ。こうなると分かっていたから、嫌だと仰ってました。」
「おじさん容赦ないな。僕も捕まらなくて良かった。」


シーとナイトがメキメキに抱き合う二人を見ている。
クロイが話を聞いていたけど、出なかった訳を話す。
しかし、このままだとエッジ死んじゃいそうだから止めるか。


「クロイ。水で2人包んじゃって。」
「あー分かった。それくらいしかないか。」


―ザボォン……


「ぬ?」
「??」


―ザバン!


「「がぼ!」」


水の中でもがく2人。
エッジを解放したので、クロイの魔法を解除する。


―スタッ、ドシン!




頭を強制的に冷やしてもらい、瀕死のエッジをお母さんが回復する。
エッジが生きていた事で、僕らの話は信じてもらえた。
おじさんはしばらく考えた後。


「大臣、悪いやつじゃね?」
「少なくとも良い人では無いね。」
「なんでそんな奴の依頼受けてるんだ?」
「僕に言われても困るよ。」
「ここで考えても分かんないな。王都に向かえば会えるだろう。よし、じゃー王都に行くか。」


馬に乗り歩き出したおじさん。


「えっじ、おじさんはいつもあんな感じ?」
「そうだな。ナンバー2の姉御がいない時は、誰もあの人を止められない。」
「ナンバー2?その姉御はどこ?」
「ここにいないなら、王都なんじゃないかな?」
「何か起きる前に、是非とも会いたいと思うよ。」
「ソラヤさん…そんな不吉な事言わないでくださいよ。」


僕はこれから王都に向かう中で、絶対何かあると思っている。
エッジは不吉な事を言わないでと言っているが、遅いかもしれない。


だって向こうから、馬で近づいてくる集団がある。
1、2、3……5人かな。


「ソラヤどうする?」
「このまま進みたいけど。ダメそうだね、止まろうか。」


お父さんに言われ状況を確認するが、絶対に僕らにと言うか…このおじさんに用があるんだろう。
馬に乗る5人全員が仮面してるんだもん。


「アイス…ニードル!」


―キラ、ザザザザ!


「ぬ!この攻撃は!ふぅん!!」


―ビュン、バリ!ビュン、バリ!ビュン、バリ!ビュン、バリン!


「全員止まれ!」


氷の魔法がこちらに撃ち込まれた。
全部おじさん狙いだから、特に何もしなかった。


大剣を横薙ぎに振り、氷の矢を全て撃ち落とす。
相変わらずのデタラメな人だ。


馬に乗った5人組は、こちらを見て止まる。
敵意はないのか、スキル『危険察知』が反応しない。


「おいおい。いきなりだなツーちゃん。俺だよ?」
「知ってます。だから撃ち込みました。」
「えーー。」
「えーーではありません。単独で敵に突撃されたマスターが悪いです。」


会話を聞く限りエッジの仲間かな?怪しい仮面も着けているし。
おじさんをマスターと言っているし。


「そんなカリカリするなよ。クールに行こうぜ。」
「大臣の話を聞き、一目散に馬を走らせたあなたが言いますか?」
「俺のは、ほら。迅速に対応してだな。相手に逃げられないようにだな。」
「フリーズ、バレット。」
「おわ!!」


お、氷の遠隔魔法。早さ的に銃弾に似ていた。
回避が出来なかったおじさんの頬を掠る。
若干頬が凍っている。


「セブン!無事なのか!!」
「ふぁい!!無事であります!!」
「ふん。ならば良い。」


突然声をかけられて、当てて返事をするエッジ。
なんか怖そうな人だな。


そう思っていると、馬から降りてこちらに近づいてくる。
仮面を外し、僕らを見回す。


「貴方がリーダーかとお見受けします。うちのが2名お世話になったみたいで、申し訳ありません。」
「え?うん。大丈夫ですよ。」
「そうは言っても、2人とも頭が弱いので即戦闘と面倒でしたでしょう。」
「…まぁ戦闘はしましたけど。」


ッキ!!


「嫌だって、セブンをやった相手だしな。」
「マスター、対話してからでも遅くありません。それに戦って勝てなかったんでしょう?」
「っぐぅ。」


おじさんを睨みつける女の人。
おじさんも何も言い返し出来ず黙る。


「俺も大臣に殺せと命じられてですね。」
「セブン。殺せと命じられてと言ってますが、善意を判断した上での戦闘ですか?」
「それは……。」
「結果として彼らがあなた方より強く、死亡していない事が救いですね。見る限り100対0でこの少年が善でしょう。」
「それは戦ってるうちにそう思いました。」
「脳筋め……失礼。対話を覚えなさいと常に言っているでしょう?」
「はい。気をつけます。」


2人が気がつけば正座して話を聞いている。
仮面の中から見える目が、心なしか光って見える…気のせいか?


お説教はこの後も続きました。

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