少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

73話 お試し期間の初戦闘

強さが何か語った夜。


そして翌朝、なんとも恥ずかしくなった。


それには理由があった。


「師匠!おはようございます!」
「おはよう………師匠?」
「はい。私は師匠の考えに感動しました。なので師匠です。」


師匠ってそう言うもの?
クロイを見たけど、なんとも微妙な顔で微笑んでいるだけだ。
師匠って秘伝の技を教えて貰うとかのだよね?


「刀を教えたり出来ないよ?スキルも確かLv1だし。」
「そんなの関係ないです!強さの真髄を知れたので。」
「しんずい?」
「昨日の自分より強く!です!本日からよろしくお願いします!」
「あーうん。よろしく?」


どうしよう、会話のキャッチボールが可笑しいぞ?
もしかして僕は魅了系のスキルを持ってたり……うん、ないな。
それならどうしてこの人は…………?


仲間になりたそうな目でこちらを見ている。




…こんなゲームなんかでやったなぁ。


一部始終皆んな見ていたので、それぞれに目を向けてみる。


シーは?


「ソラヤを師匠ね。君はなかなか見所がある!ソラヤと一緒なら強くなれるよ!」
「おっす!ブルーム先輩!」
「うむ。」


おぉ〜なんかシーが物凄く偉そうだ。
先輩の響きが嬉しかったのか、耳が赤いのを僕は見逃さない。


お母さんとお父さんは?


「昨日の敵は今日の友的な?別に空ちゃんが良いなら。」
「同じ釜の飯を食べた仲と言うやつだな。俺はどっちでも良い。」


お母さんは龍眼で能力見てるけど、もともとそんな嫌う事しない人だからな。
お父さんはダメな時はダメって言う人だから、人柄的には問題ないんだろう。
まぁどちらも僕次第って事か。


「ん?私にも聞くのか?」
「そりゃ、ナイトも僕らの仲間だし。」
「にしし。別に良いじゃない?昨日会ったばかりだけど、私もパーティ入ったの変わらないくらい早いよ。」


仲間とかの言葉に弱いのか、照れて頬をかくナイト。
確かにナイトの場合は、クロイが召喚?してからすぐ仲間になったな。
色々と事情はあったけどね。


「皆、賛成意見だが、私は今すぐは反対だ。」
「わたくしも、少し様子を見る方が良いかと。」
「それはどうして?」


「前にも言ったが、パーティは自身のスキルやステータスを晒すことになる。覚えているか?」
「あ〜。ローゼがパーティ入る時に言ってたやつ?」
「そうだ。このまま王都まで共に行くしかないのであれば、パーティに加入は王都に言った後。それでも着いて来る場合でいいだろう。」
「ふむふむ。」


さすがはしっかり者のローゼ。
仮面の人と王都で別れた場合、僕らの能力を知ってる人が街にいるのか。
しばらく王都に居るつもりだし、能力が誰かの耳に入ると面倒な事が起きそうだな。
少しでもリスクは下げるべきか。


「わたくしもローゼと意見は一緒です。王都にしばらく滞在するのに当たって、可能な限りのリスクは下げたいです。」


クロイはローゼと意見は一緒と。
ローゼに言われた事を頭で考えた僕の考えにも近い。
やっぱり、1番はシーの要件だからな。




「とりあえずは、王都に向かうのは一緒に行くけど、パーティ加入は少し様子を見てからでもいいかな?」
「はい!一緒に行けるだけでも有難いです!しっかり皆さんの信頼と強さを見せていきます!よろしくお願いします!」
「あーうん。よろしくお願いします。」


この人こんなキャラだったか?
なんか昨日と今日で全然違う人に見える。
なんて言うのか…熱い、熱血って感じがする。




昨日は思うように進めなかったから、今日はちゃちゃっと朝食を済ませて出発する事にした。
途中仮面の人の戦闘も見ておきたいし。


「そうだ。仮面のお兄さん。って言っても今は無いけど。」
「はい。何か?」
「名前ってなんて呼べばいいですか?」
「そう言えば自己紹介してましたんね。私はクラン『仮面の騎士団』所属、名前はセブン・エッジ。セブンはクランに入って貰ったので、エッジとお呼び下さい。」
「で、エッジさんは…」
「エッジでいいですよ、師匠。」
「そしたら僕もソラヤでいいよ。エッジさんの方が歳上でしょう?」
「歳は21ですが、師匠が弟子にさん付けは可笑しいですよ。」
「あーうん。いや、まぁ〜いいか。」


あれこれ切り返そうとしたけど…そっちの方が面倒になりそうだったので飲み込んだ。
仮パーティなんだし、一緒に行動するかどうかはまだ先なんだし、呼び方は分かればいいか。
それより話を進めよう。


「エッジはいつも使う武器は刀だよね?」
「はい。所持品のほぼ全て刀です。」
「所持品の…?あそこにいるボア倒せる?」
「え?あそこ………あ、あの遠いのですか?」


指をさした方角を睨むエッジ。
遠かったかな?200メートルしか離れてないんだけど。


「通り道だから、近づいた時に相手して欲しいんだ。」
「はい。お任せください!」
「あ、そうそう預かっていた刀なんだけど…。」
「よし。いつでも良いです。」


預かっていた刀を返そうとしたら、所持品から刀を取り出したエッジ。
さっきあえてスルーしたけど、ここは突っ込むべきかね?


「あ、俺の刀あったんですね。」
「うん。返そうと思ってたんだけど、もう一本あるんだね。」
「武器は自分の生命線ですから。なんでしたら、師匠に一本差し上げますよ。スキル上げにでも使ってください。」
「え?いいの?」
「はい。あ、でもそれは2尺5寸あるやつなので……あった。これどうぞ。」
「2しゃくなんとかって?」
「あー刀の長さです。背にあった刀を使わないと抜刀も難しく、重くなるので振り回されちゃいます。」
「エッジはデカイからね…。」
「まぁ3寸も持ってますが、あまり使わないですね。」


刀をかえして、1本貰った。
さっき持ってたやつよりは軽いし、気持ち短いような気もする。
刀に関しては、めちゃくちゃ知識があるエッジ。
しかし色んな長さをいくつも所持品に入れてるって商売人なのかな?


せっかくなんで、これ使って戦闘してみるか。
指示出しはローゼに任せよう。




『フン!』
「あいつもうこっちに気がついてるね。お母さん。」
「ボア、レア度EのLv30だよ〜」
「やっぱり少しLv高目だね。今回は僕とエッジをセットの前衛で。後はローゼが指示出して。」
「了解よ。ゴウさん、アイツを止めてもらえますか?」
「あぁ。任せろ。」


前足で何度か地面を蹴り、今にでも走り出しそうなボア。
僕らに向かって走り出したボア。


「ソラヤ、エッジ。ゴウさんの後ろに。」
「うん。」
「はい!」


―ガン!


『ブモ!』
「ソラヤ!エッジはソラヤの逆から、一撃離脱。」


僕に対してはいつも通り合図のみ。
エッジに関しては、少し細かく指示を出すローゼ。


―ザン。
―ザン。


『ブモゥ!』


僕の遅れて逆側から飛び出して、ボアに斬りつける。
僕は前脚狙い斬りつけたが、見ていたのか反対側の脚を斬りつけるエッジ。


エッジは少し遅れたくらいで、致命的に遅いわけではない。
やっぱ戦闘の勘は、凄くいい。
それに意図を離さずとも、僕らの狙いを理解してくれる。


前脚を斬られたボアは、少し屈み踏ん張っている。
流石にLv30ともなると簡単にはいかないか。
防御に特化していない僕らは、お父さんの後ろにまた戻る。


そして次の指示を待つ。
ボアはまだまだ倒れる様子はなさそうだ。

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