少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

68話 訓練と特訓で完成したもの。

僕らがこの町『ツユクサ』に来てから早1ヶ月。
日課の橋修復作業の護衛に、飽き始めたこの頃…口には出さないけどさ。


「1班!右翼敵影4!」
「行くぞお前ら!!」
「「「は!」」」
「2班左翼より敵影5!1分!」
「了解です!もうすぐ来るから準備だ!」
「「「はい!!」」」


川から湧き出るリバーマーマンを倒す為、配列した部隊を動かす。
指揮をしているのは僕で、実際動くのはギルドや町の人だ。


橋の完成が近づくにつれ、この町には色々と問題があった。
第一に上げるのは、流通がない事での貧困。
橋が壊されると言う不運もあるが、それ以前に食材に対しての蓄えがほぼ無い事。


ローゼの故郷である『羊飼いの村』と違って食物を育てたりしていない事。
それに狩りをして、魔物を食べる習慣がない事。
流通がある時は、商人から買っていたりと衣食住に困る事は無かった。
物を作る職人が多く、販売に力を入れすぎた結果である。


そして僕は思った。
……この町のギルドの兵士は弱すぎる。


王都から渡る人の中には冒険者がかなりいた。
その為、町で魔物による被害はないと言っていい程だった。
外の守りをずっと任せていたので、ここのギルドの兵士達は街中のトラブルの対応しかしていない。
町で武器を費う事もなく、商人達が力で兵士に勝てるわけもなく。
結果、人より少し強いくらいの兵士達が出来上がった。


始めのうちは僕らが率先して倒していて、ギルドの兵士達には誘導と軽い盾をして貰っていた。
防具が良いだけに、ある程度の攻撃に耐えられるので、攻撃に参加して貰ったら…。


それはもう悲惨だった。


僕はいずれこの町からいなくなる。
今後の事を考えて全員を鍛える事にした。
とは言え、僕らのパーティで剣を使う人はいない。
それでも戦い方なら分かると教え続けてやっと今の形まで持っていけた。




そして、もう一箇所から大きな声が。


「そこ!角度が少し曲がってます…そこです!」
「ヘイ!」
「結び目はしっかりと。それを怠れば橋はすぐに割れてしまいますから。
「へい!気をつけます。」


お父さんが職人達を指示。
完成目前にして、今日も指示を出し続ける。


兵士が十分戦う事が出来るようになって、橋の作りが気になるとお父さんは職人さんの元に向かった。
橋を作るって中々に無い機会だからか、凄く気にしていたしね。




そしてもう一箇所にはクロイがナイトに指示を出す。
遠隔が苦手とあまりやらないナイトだったが、今後必要だと範囲攻撃じゃない魔法の練習中。


「あー毎回毎回、飽きるよ〜。」
「成る程。この練習は慣れたと。では、マーマンの右肩と左肩を交互に5発撃って貰いましょうか。」
「まずったー!!それはさらに面倒だよー!!」


―ッボ、ボン。ッボ…。ッボ、ボン。ッボ…。ッボ、ボン。


そう言いつつやるんだ。っと僕は指示の合間に見ていたりする。
命中率6割くらいか、飛ばすのが苦手だった割には上手くなったと思う。


「5発中3発ですか。」
「これむずいって〜。」
「ナイトが集中してないからですぞ。」
「クロイだって出来な…い……あ。」
「ほほ。言いでしょう。それ。」


―ッボ、ボン。ッザ、ザボ。バチィ、バチン。ビュウ、ゴウ。キラッ、パァン。


クロイは精度も威力も並外れている。
魔法に関して大抵のことは出来てしまう。
しかし、まぁ〜器用なもんだ。
ナイトもいつかはクロイのようになれるでしょう。


「言わなきゃ良かったよ。5属性でしかも左右の肩に、両足、脳天とか…。」
「集中すればこれくらい出来ますよ。」
「いやいや。5属性もだけど、その魔力コントロール異常だからね?」
「ほっほ。では異常じゃ無い様に、ナイトが出来るように慣ればいいのです。」
「そっか。そうすれば普通になる……ってならないから!私も異常の仲間入りだよ。」
「ほほ。頑張って下さい。ほら次が来ますぞ。」
「鬼教官〜!!」


クロイの猛特訓は今日も続く。




日が沈み始め、本日の橋修復作業も無事終わった。


「お父さんお疲れ様。」
「あぁ。なんだかんだで、やっと形になったな。」
「ん?この作業と護衛の形?」
「いや、橋だ。」
「あーそうだね。だいぶ出来上がってるけど、これって後どれくらいで終わりそうなの?」
「完成はしているぞ。渡るだけなら今日から行けるだろう。」
「そうか、まだそれだけ………。」


ん?


「今、完成したって言った?」
「あぁ。今職人達が向こう側に渡り知らせに行っている。いつから通行許可が出るかは後で知らせてくれる。」
「あーうん。なんか、こう…出来たぞ!って感動は無いんだね。」
「はは。記念や新たな設備とかでは無いからな。物作りなんかはこんな感じが殆どだ。」
「しかし、2ヶ月って聞いていたのに早いね。」
「一番重要な工程はクロイがちゃちゃっと終わらせましたから。」


んー実にさらっと出来上がったもんだ。
当初の予定では2ヶ月はかかると言われていたのに。
クロイが土魔法でやった土台作りだっけか?
橋を作る上で、結構苦労する箇所らしい。


とにかく出来たんならいいか。
さてと、町で旅支度して出発の話を考えないとだな。
橋の完成の感動が少ないと思いつつ、僕は次に頭を切り替える事にした。



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