少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

41話 兄妹水入らずで。

「お楽しみ中ごめんね。クロイ洗いたいんだけど〜」
「お楽しみ!?べ、べ、別に話していただけだ!」
「そう?」
「ほほ。わたくしは楽しかったぞ。」
「私もつまらないとは言っていない!」
「ほほ。ありがとうございます。」


おや、お母さん達が戻ってきた。
騒いでるけど、何かあったかな?


―なでなで。


「ふにゅぅ〜…。」


シーの頭を撫でながら、その様子を見守る。
お母さんがこっちも見てる?とりあえず手を振っておこう。




「空ちゃん達寛いでるけど、大丈夫なの?」
「うん。今の所は。」
「それならいいけど…。シーちゃんは大丈夫?」
「らぃじょ〜う。」
「大丈夫ね。そろそろ村に戻ろうと思うんだけど。」
「だって。シー起きれる?」
「はぁ〜時間って残酷だよね。」
「十分堪能したでしょうに。」


すくっと起き上がって、何だかよく分からない事を言うシー。
暗くなると面倒だし、用がないなら帰った方が良いだろうに。




森を抜けて村に歩く僕達6人。
遠目に何台か馬車が、村に入ってくのが見えた。


「この村って結構人来るんだね。」
「いや、来ないぞ。ソラヤさん達が久々な旅人だ。」
「そうなんですか?」
「なんだ?高い金払って世界地図を買っておいて見てないのか?」
「あ〜そう言えば見てないね。」
「なんの為に買ったんだよ…。」
「王都に行く為。世界とか全然知らないからね。」


買って満足する事ってあるよね。
シーも、は!って顔をしている。


「今日はギルド行って、魔物置いてきたら見ようか。」
「うん!」
「私も見て見たいな。この村から出ないから、世界を知るだけでも面白そうだ。」
「じゃ、皆んなで見ましょう。」


この村から、王都までどれくらいあるんだろう。
世界地図って結構デカかったし、ロビーの端で広げられるかな?






「お、ローゼちゃんが、帰ってきたぞ。」
「ん?何かあったか?」


―どどどど……。


何かがもの凄い勢いで走って来る。


「ろぉぉーーぜぇぇーー!!」
「兄さん?もう帰って来たの?」
「大丈夫か?どこも怪我してないか?」


―がく、がく、がく。


「そんなに…揺らさな……ええい!やめい!」
「ぐふぅ!さすが、我が妹…良い拳持ってるぜ。」
「ローゼのお兄さんですか?」
「ろぉーぜぇ!?呼び捨てか?コラ!」
「ほほ。ローゼのお兄さん、初めまして。クロイと申します。」
「だから!呼び捨てなの「兄さん挨拶は?」…。」
「あ・い・さ・つ。」
「ん!ギルドマスターでローゼの兄、ファイル・ヴァイスだ。」


僕ら全員で挨拶をした。
なぜかクロイの時だけ、お兄さんはトゲトゲしい気がする。
向かう先は同じギルドで、お兄さんはずっとローゼさんの横にいる。




「しかし、兄さんはなぜ入口にいたの?」
「それはアリーにローゼが、俺の知らないパーティと森に入ったと聞いてな。」
「行ったが何か?」
「そんな危険な事をやるなんて……何かあったらどうするのだ!」
「何も無いじゃないか。それにソラヤさん達は凄いぞ?」
「ソラヤさん?」
「はい。なんでしょう?」


ジロジロ見られてるよ。
なんだろう、この人少し変だ。


「ひょろひょろじゃ無いか!それにこんなにガキに…。」


―げし。


「あいたー!?」
「ソラヤは、かっこいいんだから!」
「そうだ、そうだ!空ちゃんを、馬鹿にする人は敵だ〜いくらでも直すから、バンバンやっちゃって!」


―ゲシ、ゲシ、ゲシ、ゲシ…。


「ちょ!…いた!……ごめ、ごめんて!?すいません!助けてローゼ!」
「栄理さんに治して貰ってるから、大丈夫だ。死んだりはしない。」


しばらくシーの蹴りと、お母さんの治癒のコンボが続く。
お兄さんはローゼさんに助けを求めていたが、死なないから大丈夫だと放置。
ローゼさんはクロイと話し出した。
僕の事で怒ってくれてるから、僕が止めるのもな。
まぁギルドまでもうすぐ出し、このままでいいや。




「あ。帰って来た。お帰りギルマス兄。」
「アリーよ。俺がギルマスなんだがな。」
「知ってますよ。」
「アリー、変わりないか?」
「はい。お兄さんが来た以外は、問題なしですギルマス。」
「そうか。ソラヤさん達の納品があるから、訓練場使うぞ。」
「あの〜俺がギルマス。あれ?違うのか?」


ローゼさんとアリーさんの扱いが……。
隅で丸まるローゼさんのお兄さん。


「お、そうだ。兄さんに見せた方が早いか。」
「ん?」
「今日彼らが討伐して来た獲物を、訓練場に出すから兄さんも見るといい。」




訓練場に移動して来た僕達。
ローゼさんがまず2匹を出す。


「ウルフ2匹か。えらく状態が綺麗だな。ふむ、この頭部の穴か…これをこのパーティが?」
「いや、それはソラヤさん一人で倒していた。私達がボア1匹を倒す間に。」
「一人で?倒す間にってどういう事だ?」


ローゼさんがボアの戦闘での話しを説明した。
僕だけ先行してウルフを倒しに行った事。
4人でボアの戦闘の流れから、自分自身は何もしていないと言う事。


「それは妙だな。2匹を倒すには早すぎないか?ソラヤ君は銃でもあるのか?」
「ありませんよ。あれ揃えるのにも、弾薬も高いって言うじゃないですか。」
「なら、あの穴は?」
「こいつですよ。」


アイテムから石を取り出して見せる。


「これは……普通の石だな。」
「あ、やっぱり普通の石なんだ。」
「その辺で拾ってますからね。」
「なぁソラヤ君。あの的に向かって、一つ全力で投げて見せて貰えるかな?」
「的って…あれか。良いですけど。」


言葉で色々説明するより楽かな。
って事で、僕は石投げの実演をする。


「……セィ!」


―ビュッ…チュン、ゴーン。


投げた石は目標を貫通、壁にめり込み止まった。
あの的穴開けちゃったけど…良いのかな?


「うーわぁ、マジだよ。銃の有意義性がまた無くなった。」
「そらやさんは、本当に石一つで…。」
「まぁ、そういう事です。そんなに驚く事ですか?」
「まぁDEXやAGIが高いか、スキルなど色んな事情があるとは思うが。」


根ほり聞かれる前に、話を次に進めよう。


「あ、ローゼさん。例のはここで良いんですか?」
「例のって、なんだいローゼ?」
「ふふふ。ウルフに関しては、前菜みたいなものだ。このパーティが凄いと思うのはここからだ!」


その言葉に合わせて、目の前に出してもらう。


「これは…ボア?いや、でかいな…な!!この顔!シールド・ボアか!?」
「そうだ!凄いだろう!」
「これに対しては、ローゼも手伝って頂きましたよね。」
「なんだって!ローゼ!!こいつと戦ったのか!?」
「少し遠くから、鞭で動きを止めただけだ。そんな危ない事はなかった。」
「それは結果が、そうであったからで……」
「だからこのパーティは凄いのだ。そして謎が多い。そこが面白く興味深い。」


なんか、褒められてるのか?それとも変人扱いか?
悪い印象がある訳じゃないので、放っておくけどね。




シールド・ボアでの戦闘はローゼさんが説明をしてくれた。
どこか映画の戦闘シーンの、感想を聞いている感じだ。
テンション高く、とても面白そうに話す。
それを聞くお兄さんは、嬉しそうであった。


「なんか微笑ましい兄妹トークになってるね。」
「ほほ。そうですな。お邪魔してもあれなので、どこか行きますか。」
「それでは、何か飲み物お出ししますよ。」


興奮して話すローゼさんは気がつかない。
お兄さんが気づいて、アリーさんが指で何かサインを出す。
僕らはアリーさんに着れられ、ロビーに向かう。



コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品