少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

39話 理想的なパーティ

「私が少しだけ拘束します。あまり長くは止められないので、一撃離脱でお願いします。」
「分かった!張り切っちゃうよ!」


後ろで簡単な口合わせをして、ローゼさんが前に出る。
白く長い鞭をが空を切る。


「はぁ!てやぁ!」


―シュルゥ…ビュン!パン!


『ブモォ!?』
「せーの!どん!」
『ブフゥ…!?』
「離脱〜。」
「よっと。」


鞭が相手に絡まり一度締め上げる。
一瞬だけどシールド・ボアが動きを止める。
すかさずそこへ、シーの全力パンチ。
攻撃を入れたシーは、言われた通り離脱。
鞭は大きく空を切り、ローゼさんの手元に収まる。


「ほほぅ。器用なもんですね。」
「そうだな。一瞬だけど相手が止まるから、シーとの連携もしやすそうだ。」
「わたくしも皆様の役に立たねばですな。」
「僕もだけどね。」
「いやいや。話しながら魔法撃ったり、石で牽制を超えた攻撃しといて何を。」
「わたくしのはシーさんを活かす連携出来ませんし。」
「僕も味方がいると危ないし。」
「まぁそれだけ派手に撃ち込んでいれば…。」




そう僕とクロイはひたすら牽制。
左右に移動しようと方向転換すれば、水弾が視界を奪い、お父さんが再び前で抑える。
お母さんが回復して、皆んなが離れたり、水弾の僅かなラグを石で牽制。


「本来なら、これである程度怯むから、シーに攻撃してもらったんだけど。」
「レア度が高くなったり、耐久度が高いやつでは出来ないだろうな。」
「そうなんだよね。シーに攻撃を当てたく無いからさ。」
「ソラヤは優しいんだな。」
「防具新調したとは言え、基本VIT6だからね。僕みたいに当たらないならいいんだけど。」
「シーは前衛なのに、VITが6だと!?」
「それを言うならソラヤ君1じゃん〜。」
「1ぃぃ!?」
「ほら、僕は意識すれば当たらないし、スキルでなんとかなるし。」


ローゼさんが、凄くびっくりしている。
確かに本来であれば、バランスよく振り分けるべきだよな。
うん、それは凄く分かるよ。
おっと、クロイと交代だな。




「攻撃当たったらどうするんだ?」
「豪パパが基本守ってくれるし。」
「いない時はどうするのだ?」
「あんまり無いけど。一人で危ない時は……どうしてるっけ?」
「ほほ。基本ソラヤが一人にはしないから。いつもお姫様抱っこされてますよ。」
「は!そうなのか!」
「ほほ。シーさんは幸せそうですから、記憶も飛んでしまうのかもですね。」
「そ、そ、そ、そんな事!?」
「戻った。クロイ、前をお願い。」
「では、行ってきましょう。」


シーの顔が赤い。


「何話してたの?顔赤いけど大丈夫?シー疲れた?」
「へぇ!?なんでも無いよ!大丈夫!」
「そう?あまり無理はしないんだよ。」


―なでなで。


「えへへ〜うん。分かったぁ〜。」
「ソラヤさんはシーさんに甘いんだな。」
「そうかな?」


頭を撫でてあげると、シーは元気になるからやってるんだけど。
別に甘やかしてたりは、しないんだけどな〜何より撫でてて僕が気持ちいい。


「空ちゃ〜ん。残り1割だよ。」
「ありがとう、お母さん。ローゼさん、さっきの拘束もう一回出来ます?」
「さっきの感じで良ければ、可能だが。」
「それならお願いします。シー今度は僕も手伝うから、倒すまで連続で攻撃しようか。」
「分かった!」
「では、クロイの魔法がそろそろ止むので、そのタイミングでお願いします。」
「あぁ。任された。」


―シュルゥ…ビュン!パン!


「行くよ!シー!」
「うん!たぁー!」
『ブモォ!?』


―ズバン!ズバン!ズバン…
―ドゴ!ドゴ、ドゴ…


『ブモ……。』




➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖ 


《シールド・ボアLv30を倒した。150(750)の経験値を得た。》
―ソラヤはスキル【蹴撃Lv5】【拳撃Lv5】になった。


―シー・ブルームはスキル【拳撃Lv6】になった。


➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖ 




「何とかなったね。ローゼさんもありがとう。」
「いや、正直凄く勉強になったからいい。これがパーティか…。」
「パーティあまり組まないんですか?それだけの力があって、引く手数多でしょう?」
「兄に鍛えられただけだからな。表立って戦闘はあまりしないぞ。」


あれだけの戦闘が出来るんだから、戦う事には慣れているのかと思った。
魔物慣れしてるって言うのかな?よほど厳しく鍛えられたのかな。
正直言って、このままパーティ組んで行動したいくらいだ…。
僕らのパーティにとっては理想的なメンバーだし。
でも、どうしようかな。パーティ加入も一度断られたし。
後でクロイに上手く交渉してもらうか。


「何考えている?」
「あ、いや…この魔物どうしようかなって。」
「この質量じゃ持って行くのは……難しいか。」
「シー、これ回収できる?」
「やってみるよ……10㎏オーバーで出来ないって。」


考え過ぎたか、今僕が交渉してもダメな気がするし。
咄嗟に思いついた言い訳だったが、うまく誤魔化せたかな。
回収もシーにやってみて貰ったけど無理か…。
いや、待てよ?


「さっきのウルフって回収した?」
「ごめんね、出来てないんだ。今はさっきのボアだけ。」
「ボアを捨てるのも勿体ないな…かと言って、こいつを回収しない方がもっと勿体無いか。」
「それなら空ちゃん。さっきのボア解体して、豪に持ってもらう?」
「あ、それいいね。お母さんお願いできる?」
「分かったよ。シーちゃん。あそこにボア出して。」
「はーい。」


離れた所に回収したボアを出して、シールド・ボアを回収する。
ウルフは…この際しょうがないか。


「ウルフはどうするんだ?」
「僕らの所持重量じゃ持てないし、置いとくしかないかな。」
「それなら、私の空きがあるから運ぶぞ?」
「ん〜捨てるつもりだったし。ローゼさんが貰って下さい。」
「それはいい。倒したのは君達のパーティだ。向こうで換金して、後でまとめて渡すからな。」


ローゼさんは律儀な人だな。
戦闘も助けてくれたのに、その上荷物持ちさせるのも気がひけるな。
ん〜こう言う時は、クロイに頼もう。


「クロイ、ちょっといい?」
「ん?なんだ?」


戦闘も助けてもらい、その上荷物を持ってもらって何かしたい話。
それと一緒にパーティの勧誘もお願いした。


「ローザさん。」
「ん?どうした?」
「換金の件ですが、普通のボアはわたくしたちで頂いても良いでしょうか?」
「ギルドには売らないって事か?それはクロイ達の好きにして構わんぞ。」
「そうですか。あれは鍋にすると美味しいので、回収しておきたかったのです。」
「ほう。それは美味しそうだな。」
「なら、今度料理をするので、ご一緒にどうですか?と言っても、作るのは母さんですが。」
「いいのか?栄理さんの料理には少し興味があるな。」


会話を聞いてて感心する。
本題にすぐ入らず、興味のある話で相手を引き込む。
昔から買い物で値引きとか、凄かったからな…僕もそこは憶えておこう。


「あ、後それと。シールド・ボアは、また訓練場に置いてもいいですかね?」
「そうだな…それでいい。消してロビーには出さないでくれよ。」
「ほほ。覚えました。」
「本当に頼むぞ。魔物の血を落とすのも大変なんだ。」
「それは、申し訳ありません。次は洗うのお手伝いしますよ。」
「その時は頼む………いやいや、そもそも置くなよ。」
「ほほ。バレましたか。冗談です、やりませんよ。」
「ふふ。クロイは、面白いやつだな。」


知らなかったな〜そうか、そんな迷惑かけていたか。
知らないとは言え、本当に申し訳ないです。
話を聞いていた僕らは、全員でローゼさんに謝る。


「ははは、そんな畏まらないでいい。それに説明しなかったアリーに非がある。」
「いえいえ、わたくし達が無知なだけですよ。」
「それは少し見える時があるな。まぁこの村にいる間は、分からない事は聞いてくれればいい。」
「それは助かります。ありがとうローゼさん。」


気にしなくていいと、笑って許してくれるローゼさん。
何かあれば聞いてくれと、とても頼もしい。
クロイも笑顔でそのお礼に答える。


「っ!クロイさんも笑うのだな。」
「ほほ。笑顔には笑顔で答えるものです。」
「クロイさんはたまに物凄く、お年寄りぽい発言をするな。」
「そうですか?ローゼさんの方が一つ上ですぞ…よ。わたくしの事は呼び捨てで丁度いいくらいですな。」
「1つしか変わらんのか、なら私も呼び捨てでいい。さん付けは慣れん。」
「それなら、ローゼと呼びましょう。」
「っっ!(呼び捨て…いいかもしれん。)」
「どうしたローゼ?」
「いやいや、なんでもないぞクロイ!」


2人は少し仲良くなったかな?
解体作業中のお父さんとお母さんが、戻るまで暇だな。
シーと一緒に木陰に座り、2人の会話を聞いて待つ。
ん?そう言えば。


「シーも僕の事を、君付けするよね。」
「突然どうしたの?」
「2人の会話を聞いて、僕は呼び捨てにしてて、シーは君付けだなって思って。」
「そー言えばそうだね。気にしてなかったよ。」
「僕の事も呼び捨てでいいからね。僕もシーって呼ぶから。」
「うん。分かった…そ、ソラヤ。」


静かな森だね。
魔物の気配も無いし、解体組が戻るまでゆっくり出来そうだ。



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