少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

35話 見た目が大事って事。

凱旋パレードを抜け、僕らは次の目的地の防具屋に来た。


「おじさん。客を連れてきた。」
「ん?ローゼちゃん。いらっしゃい。今日も異常なしだよ。」
「うむ。それは何よりだ。」
「で、後ろの方々がお客様ですかね?」
「ついさっき、このくだりやった気がするよ。」
「ほほ。わたくしも思ってました。」


このくだりは、きっと店に入る度あるんだろう。
ここでは、お父さんの防具が優先で、買い揃えたいところ。


「何をお探しかな?」
「戦士用の装備をいくつかみたいです。」
「はい。どなたが使うものですか?」
「あ、俺が使います。」
「では、イメージでいいので。どう戦うかお聞かせ願っても?」
「構いません。」


お父さんは自分の戦い方を、防具屋のおじさんに伝える。
攻めずにひたすら耐える。


「戦わない戦士ですか、守り一択と。ふむ。面白い。」
「これでなにか、分かるものなんですか?」
「商売人を舐めてもらっちゃ〜困るぜ。今の身なりに、戦い方聞けば、どんな人間かくらい分かる。」
「それで、分かったらどうなるんですか?」
「ちょっと待ってくれ……。」


これとこれ、これも必要だな。…これは…いるかな?一応もってくか。
そんな感じの声が、裏から聞こえて来る。
持って着たのは二つの小手と盾、それにシャツを1枚。


「これはインナーな。細かく金属繊維を編み込んである。」
「楔帷子!これにしよう、お父さん。」
「坊やは中々いい目を持ってるな。この防具の良さをしっている。」
「いや、店長さんもさっきの話から、これを持ってくるなんて…センス良すぎます?!」
「おぉ!このセンスが分かるか!ならこいつらをどう見る?」


むむ。この作りは剣道の小手に似てるな。
鉄製でも、布をやったわけではない。


「少し思ってたのと…いや、これは鎖籠手?」
「いいねぇ!正解だ!」
「よし!これなら動きやすいし、その上防御も高い。でも、高いんでしょう?」
「ふふ。なんと鎖3点セット銀貨3枚でどうだ!」
「銀貨3枚やすーい!」


なんか、ノリのいいおじさんだ。
相場とか駆け引きとか、そう言えば購入の醍醐味である値引き交渉してない。
このノリで攻めてみるか…。


「そして今ならなんと!」
「今ならなんと!…え?」
「その盾が……。」
「盾が……。」
「……。」
「この盾がついて…こねぇわ!危ねぇ坊主だな。あげそうになったぜ。」
「おしい!あともう一歩。」


流石に、どこぞのチャンネルみたいにはいかない。
ノリで値切りやおまけをさそう。


「おじさん。さっきの籠手で、この子が着けれそうなのない?」
「この子も戦士で防御か?」
「いや、格闘家。手を守る物に丁度いいかなって。」
「それなら、レザー系のグローブで良いだろう。籠手までいくと重たいな。」
「丈夫そうなのある?」
「あぁ。これならどうだ?」
「シー、つけてみて。」


グローブをはめて貰い、シャドーボクシング。


―しゅ、しゅ、しゅ。


「ん。問題なさそう。」
「そうか。じゃ、鎖帷子と籠手にレザーグローブ貰うよ。」
「盾いらんのか?全部セットで銀貨7枚でいいぞ?」
「盾か〜ワー・ウルフの牙は耐えれなそうだし。全部で銀貨4なら買うけど。」
「ワー・ウルフと戦うやつなんか…何?ローゼちゃん。この子らが昨日の?…銀貨6枚。」


ワー・ウルフと戦うやつなんかいないって言おうとしたらしい。
ローゼさんが僕達を指差してくる。
何やら、ワー・ウルフの討伐された噂は出ている。
防具屋のここにも、多少の素材が来ているみたいだ。
ローゼさんが指を指したあたりで、察しがついたか少し勢いが弱まった。


「グローブの分あるしそうだよね。銀貨4枚に銅貨5枚。」
「確かにグローブ足せば…いや、銀貨5枚はないと無理だな。これ以上は無理だ。」
「じゃ、銀貨5枚で貰うよ。」
「く〜まぁいい!他のもんも買ってくれよ。」


もとより、そのつもりだ。
お父さんは防御面はこんなものか、あと武器がいいのあるかだな。
後3人の軽い装備が欲しいな。


装備の話をしている時に、僕らの格好が気になると、防具屋の店長と仕立ててくれた。
見た目を冒険者っぽくする為に。
普通の服だからと、1人銅貨1枚づつ。
すっごい追加効果が!は無いけど。


「うむ。それで少しは冒険者っぽいな。」
「こう見るとそうだね。僕は私服でもいいんだけど。」
「冒険者なら、ある程度着飾らねばならんぞ。」
「そー言うもの?」
「また舐められて、色んな事を吹っかけられるぞ?」
「それをローズさんが言いますか?」
「やったのはアリーだ。とにかく見た目は大切だと言いたいだけだ。」


この格好するだけで、問題が減る可能性が上がるなら安い買い物だな。


「あとはさっきの鎖帷子を、シーとクロイ、お母さん用にあればいいかな。」
「3人分か?坊主のは要らんのか?」
「僕は回避タイプだから、動きやすさ重視。」
「それでも用心で、着けとくべきだぞ?」
「いいよ。この後武器も見に行くし。余裕でたらで。」


ここでは鎖籠手、盾と鎖帷子を4枚に、レザーグローブと冒険者ぽい格好を銀貨7枚と銅貨5枚支払う。
金貨1枚出した時は、金あるのな…って会話をされたがもう殆どない。
残り銀貨3枚と銅貨5枚。
結構安く済んだ気がする。
武器はないけど、防具が先だよな。やっぱり。




残りのお金を数えて、宿は明日まで支払っているから、今日はとりあえず大丈夫だろう。
店長に挨拶をして僕らは、次の目的地の武器屋に向けて歩き出す。


「次なんだけど、武器屋は見た目装備だけの予定だから。」
「私は殴るだけだし。」
「俺も盾があれば必要ないです。後は蹴ります。」
「このパーティ肉弾戦多いな…まぁ僕も接近だし、石あればいいくらいだけどね。」
「貴方達、武器屋に冷やかしに行くの?」
「そんなつもりは無いけど。今は見た目が大事だからね。そうでしょローズさん。」
「まぁそうなんだが…。」


よくよく考えれば、武器屋にすら行かなくていい気がしてきた。
今後利用するかも知れないし、行って損はないだろう。




「こんにちは。異常はありませんか?」
「あら?ローゼちゃん。いつもご苦労様。うちは至って平和よ。」
「今回は客のくだりやらないんだね。」
「ほほ。あまり買えませんし。変に期待させてはと、考えておられるのかと。」
「クロイは、私の心を読むなよ。」


ローゼさんが客を連れてきたってくだりは今回無い。
クロイがローゼさんの、心境を読み取って少し複雑そうだった。
でもまぁ、ここで使えるのは銀貨2枚かな。


雑貨屋や、防具屋に比べたらあまり買えないのは確かだ。


「後ろの人達は?冒険者の人ね。ゆっくり見ていってちょうだい。」
「あ、はい。ありがとうございます。」


今後の為に店内をよく見ておこう。
もしかしたら、掘り出し物があるかもしれない。



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