少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

31話 冒険者の第一歩。

現在村のギルドにいます。
と言ってもロビーからさらに奥、ギルドマスターの部屋です。


なんで、こーなったかね?
そして、僕らを睨むギルドマスター(仮)。
仮なのは、お兄さんがギルドマスターで、いない間の代理だからみたい。


「で、君達があのウルフを、置き去りにしたパーティだな。」
「置き去りといいますか。納品したつもりですけど。」
「納品?……ロビーの真ん中に9匹もか?」
「剥ぐの面倒なので、このままでもいいか、聞きましたよ?」
「ほう。そうか…なんとなく想像はつくが、なぜウルフを?」
「ん?それがギルドに入る条件だと聞いた気がします。」
「成る程な。……少し受付と話をつけて来る。申し訳ないが、ここで待っていてほしい。」
「僕らは、かまいませんんよ。」
「おーい。客人に茶を出してくれ!おっと、アリーは、私と自室においで。」
「えへへ。ダメ?…おーゆーるーしーをー!?あぁ!」




―ばたん。


静まり返る部屋。
しばらくして、別のギルド員がお茶を持ってきてくれた。
水以外のを、飲むのも久しぶりだ〜うまい!


「あぁ。お茶が沁みますなぁ〜」
「はは。クロイ、お爺ちゃんぽいよ。」
「ほほ。気持ちはお爺ちゃんですよ。」
「ははは。何それ〜。」


いや、それ。あながち間違ってない。
見た目は僕と変わらないし、時々言葉が年寄りぽいけど。
まぁ、言わなきゃバレる事もないだろう。


扉が空いてギルドマスター(仮)とギルドの受付さんが入ってきた。


「その手にぶら下げてるのは、受付さんですか?」
「ん?あぁ。詫びを入れさせたかったんだが…ぐったりしてるな。どうした、おーい。」


いや、首は閉まってるし、そんな状況で揺らしても…。


「ほほ。まずは彼女を降ろしてくださいな。」
「ん?こうか?」
「ゲホ!………あれ?お爺ちゃん?」
「ほほ?わたくしですか?」
「あー…あれ?私さっきお爺ちゃんと話してたのに。」
「ほほ。川の側でお話ししていたとか?」
「あ、うん。そうです。」
「ほほ。おかえりなさい。ここは現世ですぞ。」
「…………は!この度は!大変!申し訳ない!!」


―ゴン。


クロイと河辺どうのって、話をしていて正気を取り戻した受付さん。
そして、素早い身のこなしで土下座。頭を床に思い切り叩きつけて。


「私の勝手な判断で、皆様を見くびり、そして無理難題を言ってしまい、危険な目に合わせて、申し訳なく、この度はなんと、なんと!非礼を詫びれば!」
「支離滅裂だが、誠心誠意謝ってると思う。私も監督が及ばず、申し訳ない。」
「別に無理難題ではないし。冒険者になるんだし、危険はしょうがないでしょ?」
「まぁ、冒険者は安全では無いが…。」
「そういう事です。それとは別で、1つ確認して欲しい事がありまして。」
「ん?なんだ?」
「10匹目のウルフなんですが、少し名前が違くて。これでいいか、見て欲しいのです。」
「10匹本当に狩ってきたのか…。」
「はい。ちょっと大きいので、ここだと…。」
「そうだな。では裏手に訓練するスペースがある。そこで確認でもいいか?」






裏手にある訓練スペースに来た。
ここなら十分大きいし大丈夫だろう。


「ここなら平気そうだね。シー。大きいの出して。」
「はーい。よいしょと!」


―ズシィン…。


「「な!?」」
「ウルフだと思うんですけど、名前が…」
「「ワー・ウルフ!!??」」
「あ、そうそう。これもウルフにカウントされるかなって?」


大きな口を開けて、驚く2人。
この反応はどうなんだ?いいのかなー?


「これを…武器も防具も持たずに倒したのか?」
「倒したのは、ソラヤくんとクロイさんだけどね。」
「「2人で!」」
「そもそも無傷だから、私が回復する事も無かったし。」
「「無傷!」」
「俺も盾として手伝いたかったですが、噛まれたら大変そうでしたし。」
「大変じゃ済まないわ。しかし、それならどうやって…。」


一人一人、怪我がないか見てくるギルドマスター(仮)さん。
その後、ワー・ウルフをまじまじと観察する。


「全体的にずぶ濡れだけど…あ、牙が折られてるわね…。何かで貫通しているけど、銃でもあるの?」
「僕らは何もないです…あ、石はありますよ。」
「石でこれを?でも、ワー・ウルフは図体の割に早いだろう?当たるのか?」
「そこは、クロイの水魔法で。」
「その少年は水魔法が使えるのか!若いのに凄いな。」
「ほほ。それ程でも。ただついていただけです。」


感心するばかりで、一向に話が進まない。
感触はいいけど、ダメならダメで、もう1匹狩ってこないといけないんだけど。


「それでこれは、10匹目カウントでもいいんですか?」
「あ、これはこれで全然問題ない。むしろプラス報酬出るくらいだぞ。」


お、なんだ。これで良かったのか。
しかも、プラス報酬は、無一文な僕らにはありがたい。


「そう言えば、ギルド登録も兼ねてと言ってたな。」
「仕組みすら分からないので、聞いてみて必要であれば。」
「ちなみにだが、必要じゃないと思ったらどうする?」
「入りませんよ。」
「即答か。では、私自ら説明しよう。」
「お願いします、ギルドマスター(仮)さん。」
「……まずは、自己紹介からだな。」




名前はローゼ・ヴァイスさん。
現在、ギルドの集会で、他の街に行っているお兄さんがいる。
その代理でギルドを運営しているとか。


とは言え、管理自体はアリーさんを含めた4人で回しているらしい。
ローゼさんはギルドの看板娘的立ち位置で、主な仕事はアリーさんのお目付役…。
村のパトロールに、消化されない小さな依頼を、こなす事が多いみたいだ。


「私の事はこんなでいいだろう。じゃ、本題入るぞ。」
「はい。お願いします。クロイちゃんと聞いててな。」
「ほほ?大丈夫だと思いますが、分かった。」


クロイに目で合図…嘘かどうかを判断してもらいたい。
…伝わったかな?まぁ疑問があれば聞けばいいか。




この世界のギルドは、村や町に支部があり、王都には本部がある。
身分証として提示すれば、村や町に入る時に面倒な手続きがいらないらしい。


そして何より依頼による報酬、魔物の素材買取をおこなってくれるとの事。
買取のみなら出来るが、依頼を受けられないので、それに対する報酬がない。
冒険者かそうでないかでは、稼ぐための効率が違う。


ただ、いい事ばかりではない。
村や町の緊急時は、矢面に立ち戦闘や支援をする事が絶対条件。
その為に、誰でも入れる訳ではなく、Lv10以上や魔物を狩るみたいな課題がある所が多い。
ウルフ10匹はやり過ぎな事だと、ここで教えてもらった。


「概要としてはこんなものか。」
「活動や優位性は分かりました。う〜ん、何個か質問いいですか?」
「あぁ。なんでもいいぞ。」


説明がさっぱりし過ぎてるな。
少し突っ込まないとか、確認は大切だしな。


「身分証発行っと言っていましたが、僕らの何をもって証明するんですか?」
「基本は嘘がないか調べるくらいだな。あるアイテムで判断するんだ。」
「それだけですか?では、どこまで情報が載ってしまいますか?」
「身分証だからな。名前と年齢に職業。後はLvとスキル…称号がつけられるくらいか。」
「スキル出るんだ…うーん。ステータスとか出ますか?」
「ステータスは出ないぞ。あと気になっているようだから言っておくが、スキルは一部非表示に出来る。」
「あ、そうなの?」
「あぁ。スキルは隠し球みたいなものだからな。隠したい奴もいるのでな。逆に全部非表示にすれば、怪しさますけどな。」


成る程ね。うまく作られてる。
スキルやステータスは隠せるなら隠したい。
女神や龍神のチートスキル見られると、色々と面倒な事になりそうだしな。


「あと、依頼はやらないと、いけないんですか?」
「強制はしないが、依頼をこなさないとランクは上がらないぞ?」
「ランクってギルドの?」
「あぁ。ランクが高ければ報酬の高い依頼、規制の厳しい街に入れるようになる。」
「ふ〜ん。高い報酬ね……あれ?もしかして王都ってランク必要?」
「ランクC以上あれば城下町まで入れるな。」
「あ、あの!お城に入るには…。」
「城か?あそこはランクA以上に、誰かの紹介状が必要だぞ。」
「ランクA…そっか。」


ローゼさんと話してる時に、シーが食いついてきた。
お姉さんのいる王都に、行きたいって言ってたしな。
城に入るのに必要なランク聞いてるって事は、お姉さんがお城の関係者か何かかな?
まぁ、詮索するつもりは無いけどね。


―ぽす。なでなで。


「頑張ろうな。シー…。」
「ソラヤ君……うん。頑張る!」
「それでは入ってくれるのか?」


僕は皆んなをみて、頷いてくれたので答える。


「はい。冒険者になります。よろしくお願いします。」
「こちらこそ。ようこそ冒険者!我々は貴君らを歓迎する!」


僕達5人は今日、晴れて冒険者になれました。

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