少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

29話 村からすぐ出る事になるとは。

やっと村に着いたよ。
ここまで長かったな。


「それでは。我々はギルドに向かいます。ご協力有難うございました。」
「「「姉御〜!!!」」」
「皆んなまたね〜」
「「「はい!また会いましょう!」」」


ふぅ、やっと静かになる。
道中は、結局あの盗賊と一緒にいたから、うるさいの何のって。
そして入り口付近で、馬車に乗せて暮れた人達と別れる。


「ソラヤさん達には、色々助けられました。あいにく、今は渡せるものが無いのですが…。」
「馬車に乗せて貰って、道案内してくれたんだ。十分だよ。」
「ソラヤさんはお優しいですね。しかしそれでは…。」
「そしたら、またどこかで会った時。困ってたら助けてよ。」
「はは。ええ。約束しましょう。それでは、次会う時まで、お元気で。」


結構いい人達だったな。
馬の従者の人に、馬車に乗せてくれたおじさん。
治癒が使えるおばさん。あの人達は夫婦なのかな?
異世界で出会った人達が、いい人でよかった。


「ほほ。いい人達でしたな。」
「あ、名前聞いて無いや。」
「名も知らぬ人を乗せるなんて、あの人達も人が良いよね。」
「それはソラヤの人柄の良さを見抜いたんだろう。」
「豪パパは、親ばかさんなんだね。」


皆んなで手を振り、見送る。


「さてと、シーこの村知ってる?」
「んーん。分からない。私はあんまり村から出てないから。」
「そうなると、未だに現在地不明って事だね。」
「ごめんなさい。」
「いいんだよ。僕らも知らないからね!」


シーを責めるつもりは、サラサラない。
だって僕ら自身が、何も知らないんだもん。


「始めてくる場所の場合、だいたいのやる事はきまっている。」
「ほほ。それは頼もしいですな。」
「情報収集に宿の確保、なんと言っても装備品の新調!」
「「おおぉ〜」」


オンラインやゲームの定番だからな。
新しい村や町こそ、隅から隅まで調べ上げねば。


「その割にソラヤくんは、初期装備のままだよね?」
「うん。こんなたくさん人が居るとこ、来たことないからね。知識だけ先行してる感じ?」
「都会に憧れる、村人みたいなこと言うね。」
「別に憧れはないけど。」
「ふ〜ん。」


シーは中々、鋭いツッコミをしてくるな。
俺達が何も知らない異世界人ってバレるのも時間の問題かも。
俺達が森から来て、町は愚か、人にも会ったことないって聞いたらどう思うかな?
隠してる訳じゃないけど、女神とか龍神の話をしなきゃだしな〜
まぁ、いずれ話す時があるかな。


「じゃ、宿の確保を始めにしようか。」




そこで気がつく衝撃の事実。
宿が分からないんじゃない、むしろ1つしか無かったからすぐ分かったんだ。
問題はそこじゃない。


「お、客なんて珍しいな。男女同室と、別々の部屋。どっちがいい?」
「別に一緒でいいけど。」
「え?あ〜まぁ私に言う権利はないけど…。」
「空ちゃん、この場合、男女は分けるべきよ。」
「そうなの?じゃ、別々で。」


家族なんだし、夜営も一緒だったしってノリだったけど。
宿では別々なんだな。これはゲームじゃわからない知識だった。


「栄理ママありがとう。」
「いいのよ。」
「別々か、なら飯付き1泊で銅貨5枚でいい。」
「銅…貨……。」
「なんだ?安すぎてびびったか?ここじゃあんま人こないからな。」
「へ、部屋は余ってるの?」
「あぁ。埋まる事は無いだろうよ。」
「そうか。ちょっとまだ来たばかりで、色々見てみたいから後でくるよ。」
「おう。飯が必要なら、ここで声かけてくれ。」
「分かりました。ありがとう。」


そうか。そりゃそうだよな…。


「ねぇ、シー銅貨ってどうやって手に入れるの?」
「野菜とか物売ったり、お仕事すれば貰えるよ。」
「お母さん、猪の肉とか余ってたり?」
「昨日食べちゃったよ。」
「村近いしって、皆んなで食べたっけか…。」


売れそうなものは、お母さんの食材くらいか。
使い切っているとなると…。


「2人は何か持ってる?」
「売れそうなものはないな。」
「俺もありません。」
「そーだよね。どうしようか。」
「もしかして、ソラヤ君達、貨幣無いの??」
「うん。何1つない。」
「………今までどうしてたの?」
「自給自足。獲物はいたし、火や水もあるもん。」
「今まで、よく生きてこれたね。」


宿屋や買い物は明らか、お金が…貨幣が必要な事が分かった。
実はそうじゃ無いかな〜って考えていたんだけど、考えないようにしていた。


売るもの無いし、仕事で稼ぐのが手っ取り早い。
そうと決まれば、まずはギルドだ。


シーが言うには、ギルドが指定した物の納品や、討伐などの仕事があるらしい。
強く無いと出来ないって事で、誰にでも出来る訳じゃない。


元々村で鍛えていたシーは、ウルフの素材を売って稼いでいたらしい。
それで初めて会った時から、Lv9もあったのかと、ちょっと納得した。






「ここがギルドか…シーはギルドに登録してないの?」
「私の村のギルドはLv10以上って決まりがあるの。私はおじさんに、売りをお願いしてただけだから。」
「そっか。なんか条件があるんだね。出来たらシーも登録しちゃう?」
「うん。その方が何かといいかも。」


ギィっと扉の音が響き渡る。
木のテーブルに全体的に、洋室な作りの部屋だ。
なかには色んな格好の人達がいた。
騒がしかったのも、僕達が通りを歩いて来るのを見て静かになる。
注目されてるのも御構い無しで、まっすぐカウンターに向かって行く。


「ギルドって、ここでいいのかな?」
「はい、こちらは『羊飼いの村・ギルド支部』で御座います。」
「僕ら登録してないんだけど、ここで出来るかな?」
「出来ますが……その、本気ですか?」
「何か問題でも?」
「ギルドに登録と言う事はですよ。冒険者になるってことです。」
「ふむふむ。それで?」
「命をかけて魔物を退治したり、困った町の人々を助ける職業です。」
「まぁ〜そうだろうとは思ってます。」
「本当に!?分かってますか!そんな…普段着で来るような場所ではないのですよ!」


あーそういう事か。
周りにいる人は、武器や防具を装備したいかにも冒険者だ。
そりゃここの人達と比べて、子連れの親子が普段着に素手なのはおかしいか。


「成る程。場違いな格好は理解した。」
「ですです。」
「で、登録出来るの?」
「…む。おちょくってます?」
「格好なんてどうでもいいでしょう。僕らはここに来たばかり、今日中に銅貨5枚稼ぎたいんだ。」
「……は?」


静まり返るロビー。
少しづつ周りから笑いが溢れてくる。


「だはははは。いいじゃねーか、登録してやれよ。お金がないんだとよ。」
「生活費稼ぐためか?それは健気だね。そこの女が稼ぐ方が安全じゃねか?」


こんなに笑われるもんかね。


「むぅ!そんな笑う事ですか!」
「だって、手ぶらでギルド登録って。笑う以外に何がある?」
「受付のねーちゃんを困らせるもんじゃないぞ〜」
「まぁまぁ、落ち着きなよシー。それで、受付するのに何か条件ある?」」
「本気なのね。ならウルフを討伐して来なさい。そうね10匹でいいわ。」
「そんなんでいいの?時間も勿体無いし、皆んな行くよ。」


再び静まり返るロビー内。
僕らがいなくなった後、また笑い声が聞こえる。
ウルフを10匹討伐すれば、あの笑い声も無くなるかな。


やっとの事で村に来たのに、またすぐ外に出るなんてね。
とにかく早く倒してこないと、今日のご飯も宿もない。
寝泊まりは何とかなるけど、食べ物のストックがないのはきつい。
ウルフか食料を見つける為、僕らは近くの森に入る事にした。

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