少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

28話 敵と味方の区別

豪ニィが、めっちゃ怒ってる。
普段から怒るとこは、見たことないし。
ましてや、こんな怒鳴るとこなんて一度もない。


まぁ目の前にいるおっさんの態度を見るに、嫌なやつだなーとは感じる。
シーもどこか、呆れた感じでいる。
お母さんは……どこか幸せそうな笑顔だけど。


だからか、状況が全然分からない。
まずは話を聞く事にしよう。






「ふむふむ。成る程。ご…お父さんが怒る理由は分かった。」
「おい、呑気に話なんてしてるな。擦りむいて、血が滲んでるじゃないか。」
「シーが呆れるのも分かるな。だけど一点分からないのは…お母さんだ。大丈夫?」
「おい!聞いてるのか!?」
「えへへへへ、だいじょ〜ぶ〜。」
「分からないけど、大丈夫ならいいけど。」
「ソラヤ君は今の話を、聞いても分からないの?」
「ん。全然。」
「はぁ…そっか。」


さっきのウルフ戦とか、会話のやり取りで何が分かるんだ?
シーが呆れた顔で僕を見てくる。
僕が悪いのか?なんだ?……分からん。


「貴様ら聞いているのか!無視しやがって!俺様を舐めるんじゃないぞ!!」
「ふん!」


―バキン…。




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―ソラヤはスキル【武器破壊Lv1】を覚えた。


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なんかスキル増えた。
武器破壊ってなんか物騒だな。
どれどれ…武器を破壊する効果で、Lvによって武器ランクの破壊しやすさアップって書いてある。


「ふ〜ん。ま、あって困らないし、いいか。」
「な、我が家の家宝を!何をしてくれる小僧!」
「家宝?Lv1のスキルで壊せるそれが?」
「スキル?Lv1?何言ってるんだ。我が家の家宝だぞ!」
「さっきからうるさいな…。」


―ゴス。


「グハッ!な、何を!?」
「何って、攻撃しただけだけど?あ〜安心して、スキルで手加減してるから。」
「私は兵士達の指揮官だぞ!攻撃してタダで済むと思ってるのか!?」
「そんなの知らないよ。剣で斬りつけて来たんだ。……敵だろ?」
「んな!?」
「兵士の人達が周りにいるけど……先に言っとくけど。家族に手を出すなら、魔物も人も関係ない。」


いつのまにか、周りに兵士達が集まる。
全部で5人か、まぁ背後は取られてないし、なんとかなるな。


「おい!何を見てる!こいつは俺の剣を折り、尚且つ攻撃もしたんだぞ!捕らえよ!!」
「いや、しかし…。」
「見てましたが、先に剣で斬りつけたのは指揮官様ですし…。」
「それにまだ子供です。」
「ええい!使えんやつらだ!貸せ!!」


戸惑う兵士から剣を奪う指揮官。
どうやら、周りにいる兵士はまともな人らしい。


「覚悟し…ぐふぅ…!?」
「ダメだなこいつ。よくお父さん我慢したね。」
「え?あ、ああ。」
「でも、どうしようかな。人やっつけたら何か罰則あるかな?」


こんな冒険始まったばかりで、余計なペナルティとかゴメンだな。
やってしまってからじゃ遅いし、かと言って、このままもなぁ〜


「困った。どうしようかな。」
「な!っく!こっ!」


―ゲシ、ゲシ、ゲシ。


考える時間が欲しいから、【手加減】スキルは全開で蹴り続ける。
とは言え心配は、減らしたいな。


「お母さん、あいつのHP見てくれない?」
「え?うん。」


―リィィン。


「ヒィ!?」
「HPは減ってるね。あと10くらい、9…8…。」
「おっと、一桁。コレ以上は危ないな。」
「あ…あ…あ…。」
「さて、どうしよ…ん?」


指揮官の様子がおかしい?何かに怯えて…怯えて…。
初めから、お母さんに見て貰えば良かったか?
まぁ静かになったし、結果オーライかな。




馬車が近づいて来た。


「ほほ?これはどんな状況だ?」


目に前にはボロ雑巾の様な指揮官。
蹴るのをやめたけど、足は頭の上に乗せてる僕。
止める様子のない兵士に、お怒りのお父さん。
若干おかしいお母さんと呆れ顔のシー。


お父さんに、同じ説明をクロイにしてもらう。
クロイはどういう反応するかな。


「成る程。それでソラヤは、ボコボコにしてるんですね。」
「うん。ただ殺しちゃうと、ペナルティありそうでさ。」
「ふむ。これからの旅を考えるに、それはデメリットしかありませんね。」
「でしょ?考える時間が欲しいから、少し弱らせてた。」
「ほほ。理解しました。それでは私に提案があります。」
「さすがクロイ。クロイならすぐ思いつくと思ったよ。」


クロイに話をしたら、すぐに新しい案をだしてくれるみたいだ。
さすが、伊達に歳はとってないな…見た目は13歳だけど。


「私達が手を下さなければ良いのです。」
「そうだな。お母さんが言うに、今のHPは一桁だから、誰でも倒せるだろう。」


兵士を見る、首を振る。


「で?誰がやるの?」
「村や町で裁いてもらいたいですが…兵士さんの反応と、指揮官と言う職業で難しそうですな。」


兵士達を見るに、なんとも悔しそうな苦い顔をしている。


「なので、ここに置いていきましょう。」
「それじゃ助かったりしない?」
「ほほ。村から距離もありますし、何より、この人弱そうです。」
「Lv10の僕にボコボコだからね。」
「それは基準にはなりかせんが、これ以上、この人に関わりたくありません。」
「あークロイも怒ってる?」
「さて、どうでしょう?」


これは怒ってる顔だ。
クロイも身内には甘いからな。
お父さんやお母さんにした仕打ちを、許したりはしないだろう。


「では、皆様。行きましょうか。」
「何か負に落ちんが…。」
「いいの、いいの。行きましょう豪。」
「腕を引っ張るなよ。」


なんだか、夫婦ぽさが板についてきたな。
両親が仲が良い事はいい事だ。


「どうしたんだいシー?」
「ん〜なんか羨ましいなって…。」
「あの腕組むのが?」
「うん……ってソラヤ君!?」
「仲が良さそうだよね。やる?」
「にゃ!?」


あの腕を組んで歩く事に、何の意味があるか分からないけど。
やりたそうだったし、腕を差し出してみた。


「あ、あぅ、その…。」
「違った?なら良いんだけど。」
「あ。……う〜〜〜えい!」


シーが腕を絡ませて、引っ張り出す。
流石のSTR。ものすごい勢いで、馬車まで引っ張られる。
お父さん達のそれと、何かが違う気がするけど。
シーが満足してるなら別にいいか。




馬車に戻っても、兵士の人達はオロオロして進もうとしない。
これは、ビシッと号令かける人が必要だな。
適任は……。




「はい!皆んな!ちゃきちゃき動く!盗賊輸送の任務があるんでしょ!」
「え?はい。」
「声が小さいよ!そんなゆっくりしてたら、日が暮れちゃう!」
「「「は、はいぃ!!!」」」
「よし。見る限りHP危ない子もいないし。皆んなちゃんと動きだしたね。」
「ありがとうお母さん。」
「お安い御用よ。」


何をしたかって?
お願いしたのは、HP危ない人がいないか見てもらい。
スキル【龍眼】発動しながらの、号令をかけて貰ったんだよ。


盗賊のように集団の指揮が、お母さんは上手いかなって思い。
あの統率は中々出来るものじゃない。うんうん。




あ、そうそう。遺留品って事で折れた剣を回収してある。
代わりに兵士の人の支給された剣を置いて。
運が良ければ、きっと生き残るでしょう。


ちなみに回復はしてない。
お母さんが、この人に魔法使ったら汚れると言ってた。
何だかんだ、お母さんも嫌ってたのね。


3台の馬車は村へ向けて出発。
道中盗賊達がうるさかったのは、言うまでもない。



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