少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

24話 血塗られた歩道

朝だ。今日も何事もなく起きる事が出来た訳で。


「夜にさ。奇襲をかけられたりって無いの?」
「ソラヤはされたいのか?」
「そう言う訳じゃ無いけど。夜起きるって新鮮じゃん。何も無いから、想像と違うなって。」
「ほほ。夜寝れる事は、幸せな事だぞ?何も無いならその方がいい。」
「そりゃね。」


何度か夜営してるが、魔物が来ることはない。
安全に越したことは無いんだけど。
こんなものかと、少し思うところもある。


だけど、その考えも、この後吹き飛んだ。
さくっと朝の準備をして、出発するとしようって事になったんだけど…。


「現在地を確認する為にも、どこかの街か村に行きたいね。」
「そうだな。道があるんだから、そのまま進めばいずれ見えるだろう。」
「じゃ、道にいる魔物は、シーを中心に戦ってもらおうか。」
「はい!頑張ります!」










道なりに進む事、数時間。
通りにはワームやら、ウルフがいた。
それら全てが、それはもう言葉には言い表せない状態です。


「はぁぁ!!てやぁぁ!!」


―ドパァン、ドーン…どさ。




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《ワームLv10を倒した。1(5)の経験値を得た。》
《ウルフLv10を倒した。1(5)の経験値を得た。》


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出発する前、刺激が無いみたいな事思ってたけど。
あんまり想像して欲しく無いから、サクッと言うね。


シーの極振STRと、見落としていたけどLUK50あるんだよね。
簡単に言うと、すごい攻撃力にクリティカルが、高確率で入る。
するとどうなるか。


ワームが弾けて、ウルフがぶっ飛んでる光景。


ちょっと見るに耐えられなくなって来たから、クロイに戦闘を任せてみた。
燃やしたり、草原で溺れさせたり…あれ、これも酷い。


もういい、僕が石を投げればいいんだ。




魔物に風穴が開きました。
その風穴から、吹き出る………言わないよ?


「ちょっと、僕らのパーティ酷すぎない?主に戦闘後の惨状。」
「何が?」
「何がでしょう?」


シーさん。その拳についてるのは…なんだい?あー言わなくていいから。
クロイは…見た感じは何も変わらないんだけど。




「私から言わせれば、全員どうかしてると思うわよ。」
「俺は護るだけなので、そんなことは無いぞ?」
「あなたは、見た目がダントツだけどね。」


攻撃から皆んなを護るお父さんは、必然的に魔物の近くにいる訳で。
自分自身には、怪我ひとつないのに…魔物のそれが降りかかる。
この状況を、何も知らない人が見たら……。








「君達大丈夫かい?な!?その怪我はどうしたんだい!?」
「そうそう。そんな事言われちゃうよ………およ?」
「今治癒しがいるから、急いで治療させよう。」


馬車が来てるの知ってたから、歩道から外れて狩りをしていたんだが。
遠くから、僕らが戦っているのを見て、救援に来てくれたらしい。


「…クロイ、シーの腕全般と、お父さんには全体的に水魔法を。」
「ほほ。畏まりました。」


―ザパァー、ザバァーン。


「この通り、怪我はしてませんので、大丈夫です。心遣い感謝いたします。」
「そ、そうか?その男性ずぶ濡れだが……。」
「エイリ、拭くもの無いか?」
「あるわよ。はい、どうぞ。」


シーの腕を洗い、お父さんは水を被せた。
そうか、戦闘後こうすればいいのか。


「変わったパーティなのだな。」
「いえいえ。ごく普通かと。」
「ごく普通のパーティが、血塗れであったりするだろうか?そもそも返り血浴びるのか?」
「こんな感じで戦ってるだけですよ〜。」


―シュッ…ズパァァン。




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《ワームLv10を倒した。1(5)の経験値を得た。》


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「…………。」


馬車の陰から近づいて来たワームをシーが倒した。
弾け飛んだワームは、馬車を汚す事なく、道端にその惨状だけ残る。


「シー…。」
「何かマズかった?あ、馬車汚しちゃいました?」
「いや、それは問題ないんだけどさ。」
「なら良かった。」
「まぁ良かった…のか?」


馬車に乗ってる人が、驚いてるよ。
目の前であんなの見たら、気分悪くしないか心配だ。


「変わったパーティなんだな。」
「いや〜…なんか、否定できない。」
「空ちゃん、そこは否定しないと!」
「え?でも…。」
「私以外が変だって。」
「ソウデウネー。」




もう変でも何でもいいか。とりあえず、聞けることを聞こう。
空から鳥に捕まって出会った、シー以外の現地の人だ。
しかも馬車を持ってるって事は、何処かに向かうはず。
こう言う話は、クロイに任せよう。
目でクロイに合図をする。




「失礼ですが、どこかの村か街へ、向かわれたりしますか?」
「ん?あぁ、今から行く予定だが。」
「どう行けばいいか、教えて頂けませんか?」
「ん?地図を持っていないのか?見た所、腕の立つパーティなのに?」


やはりこの世界に地図はあるんだな。
しかも持ってないのは、おかしいんだな。


「先程、ハーピーイーグルと遭遇しまして。」
「何と!そうか、それで逃げている、最中に失くしたのだな。」
「あー……はい。逃げたのはいいのですが、道が分からずでして。」
「あんなの王都の兵士ですら逃げ出すからな。君らは運が良かったな。」


クロイに任せて正解だったな。
そんなの、倒しましたとか言ったら、説明が面倒だった。
僕が話してたら、ぽろっと言ってしまいそうだ。
一応、他の3人には、手で合図をする。
口チャック!喋らないように!


「それなら、ソラ…「はい、シー、ストップ。」…むぐっ。」
「むぐぐ!?」
「ちょっと静かにしようね〜」


―ボン


これ以上ない素早い動きを見せた僕。
お口にチャックを知らないシーが、何か言おうとしたので止めました。
口を塞いで、相手に聞こえないように耳元で。……なんか爆発した?


「空ちゃん、シーちゃんはもう喋らないから…いや、喋れないから話して平気よ。」
「そう?」
「ふにゃぁ…。」


その場に倒れこむシー。
おっと、苦しかったかな?倒れそうな体を支えてあげる。


―ボン


「……。」
「どうしよう。シーが動かなくなった。」
「しばらく、そっとしときましょう。」


まぁ静かだし、いいか。
寝かせるのも人の前だしな…。
おんぶしてればいいか。


「あ、ごめんなさい。話を続けて下さい。」
「ん?あぁ。で、何の話だったか?」
「町への行き方を、お教え頂きたいと言う話に御座います。」
「そうだったな。…馬車も空きがある。村までの護衛をしてくれるなら乗せていこう。」
「ほほ。それは助かります。ソラヤそれでいい?」
「はい。ご好意感謝致します。」
「うむ。」


と言う訳で、馬車に乗せて貰った。
馬車を操る人の横に、僕とクロイ。
馬車の中に居たおじさんと、治癒しのおば様。
寝てるシーにお母さんとお父さん。


後ろでは、お父さんとお母さんが話をしている。
情報収集はやっぱり必要だし。
クロイにさせてもいいんだけど、見た目が子供だからな。
つい交渉して貰ったけど、雑談から得られる情報なら大人同士の会話がいいだろう。


横にいる従者さんが、僕らに声をかけてきた。


「坊や達は、冒険者なのかい?」
「どうなんでしょう?ギルドみたいな所には、出向いてませんし。旅人?」
「そうなのかい?ワームやウルフを倒せるんだろう?冒険者には、是非登録しておく事を進めるよ。」
「ギルドって、今から向かう所にありますか?」
「あぁ。小さい村だが、出張所があるはずだ。」


ギルドか。適当に言ってみたけど、やっぱり何処にでもあるんだな。
冒険者に登録か、よく言う身分証明書だったり、クエストの報酬でお金が貰えたり…。


あれ、僕らこの世界に来てから、お金の存在見てないな。
シーに聞けばある程度知っているだろう。
魔物倒してる時に、何もドロップしてないから、倒して稼ぐ訳じゃないのか。
少し聞いておこうかな…いや、なんか常識的に知らないとか面倒な予感。よし、忘れよう。


「しかし、君達がいれば旅も楽だな。」
「そうですか?」
「あぁ。特に君の隣の子。」
「ほほ?…それそれそれ。」


目につくワームを片っ端から燃やしていくクロイ。
そんなに凄いことか?まぁ全部1撃だけど、Lvとスキル考えたら余裕かと。


「俺自身、戦士だから魔法は分からんが。魔法って詠唱も無しで、そんなポンポン撃てるもんなのか?」
「……。」


しまった。何も気にしてなかった。
そう言えば、始めの獣人は詠唱してたな。
無詠唱も連続使用も、この世界じゃ特殊なのか?


「ほほ。今更ですよ。コツさえ掴めば、魔導師なら当然出来ましょう。」
「そんなもんかね?魔導師は強いんだな。」
「そうでもありませんよ。撃たれ弱いので、攻撃を守ってくれる、お兄さんみたいな戦士が必要なんだよ。」
「そ、そうか?」
「そうです。わたくし達には、後ろの父さんがその戦士ですので。」
「親子なのか、子供を守る親父か。かっこいいじゃねえか。」
「ほほ。そうですな。」


馬車の旅は、快適だった。
今度町に行ったら、買おう………あ、お金。
忘れろ、考えるな、忘れたんだ。




よし!さー、新しい村に行くぞー!




そして意気揚々と進む僕らの通る道には、何かが燃えた後だけ残る……。

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