少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

17話 旅立ちと約束に為に…。

高らかに笑う1人と1体の声に、皆んなが集まる。


『其方らが、ソラヤの仲間とな。』
「ほほ。クロイと申します。」
「ゴウです!ソラヤがお世話になりました…?」
「エイリです。空ちゃんがお世話に…ん?ありがとうございます。」
『ガハハ。其方らも中々に面白いな。我は礼をされる事も、世話もしておらんぞ?』




クロイはいつも通りだけど、若干2名が少しおかしい。
いや…もしかしてドラゴンに対して、平常心な僕とクロイの方がおかしいのか?


『とにかくだ。ソラヤの仲間であれば、友であり、即ち我とも友である。』
「無理やりだなぁ。まぁジルは、お父さんもお母さんも気軽に話して良いよ。って事を言いたいんだと思うよ。」
『うむ。そう言う事だ。よろしく頼もう。』
「「は、はい!」」




ジルは喋る事自体が久し振りらしく、こうして話すのも30年振りとの事。
30年もの間、一人でいたら喋りたくなる気持ちも分からなくない。


「ところで、ジル殿はここで何をしてるのです?」
『我か?役割としては、この森の門番だな。ここは世界にとって必要な場所らしいからな。』
「原初の森でしたか?わたくしも気になったのですが、ここはどのような森で?」
『む?クロイ達は、知らずにここにいたのか?』
「そうですな。」
『ふむ。知っている事で良ければ、話しておこう。』


何かを思い出しながら、ジルが色々教えてくれた。
原初の森。それは魔物や獣人の始まりの場所。
ここで生まれ、育ち、各地域へ旅発つ。
言わば、養成所的な場所らしい。


この世界では災いの場所と、言われる事もあるみたいで。
30年前に勇者のパーティが、この場所を見つけ、殲滅する為に来た事があった。
しかし、世界の均衡を護るジルに、敗れた勇者パーティ以降、誰一人ここに来る事が無くなったとか。


「え?30年前に来たのって、勇者だったの?」
『ん?あぁ、そう名乗っていたからな。恐らくそうなのだろう。それなりに強かったからな。』
「それなりって…ジルって一体どれだけ強いの…やっぱ言わなくていいや。」
『ん?我は別に言っても、構わんが。』
「いやいや、いずれジルとは再戦するからね。ジルの情報を本人に聞くのは、ずるいと思うんだよね。」
『ガハハ。再戦か……今から楽しみであるな。』




さらっと言ったが、俺はいずれジルに、再戦を申し込むつもりだ。
今すぐは無理としても、絶対勝ってみせる。
その為の情報収集も、外の世界でやってこそだと僕は思うから。
ここであれこれ強さとかは、聞くべきではないと思う。




『して、ソラヤはこれから、どうするのだ?』
「とりあえずは、ここに来た理由を探す為に、外の世界に行こうと思ってる。」
『ここに来た理由か。そもそもだが、どうやって森の中に入ったのだ?』




ジルが興味津々だったので、ここまでの話をした。
突然この世界の森にいた話。
女神様に会って、森でLv上げしつつ進んでいたらここに来た。


よくよく考えてみると、あんまり大した事してないんだな。
あーあと、説明が面倒だから突っ込まれる前に、僕らは親子と話を追加してみた。


『そう言えば、先程、父と母と申していたな。』
「「は、はい!」」
『ふむ。言われてみれば、似ているのぉ…そうなれば、先の戦闘で逃げないのも納得だ。』


あ、簡単に信じた。
この設定意外にいけるんだな。
と言うか、本当に親でもおかしくないし。僕自身はそれで良いとも思う。
本当の両親より、2人と過ごした時間の方が長いしね。


『家族で旅とは良いものだな。』
「ジルには家族はいないの?」
『ん?おるぞ。息子と妻が。』
「今は何してるの?」
『息子は…う〜む…確か……龍の郷で………鍛えられてる?』
「なんで疑問形?」
『最後にあったのは、30年前だからな…。人間の言う、今と聞かれると困るのだ。』
「ドラゴンってそう言うもんなんだ。奥さんは?」
『妻はその郷の統治をしている。』




奥さんは即答なんだ。頻繁に会ったりはしてるのかな?




『ソラヤが旅をしている間、暇になるな…郷にでも帰るか。』
「え?ここ離れて平気なの?」
『我の管轄だからな。誰かが来れば分かる。それにカッコよかろう。』
「カッコいいって何が?」
『このエリアに入った後、誰もいない。そして遠くから飛んでくる我。』
「何それ………めちゃくちゃ、カッコいいじゃん。」
『だろう?』


僕らが来た時、寝てたしな。
まぁあれは、あれで、迫力あったとは思うけど。
でも、何もいないと思ってからの、遠くから飛んでくるジル。
想像しただけでも、カッコいい!
如何にも、凄いの来た!感がする。




『もしもだが、旅の途中で寄る事があれば、紹介しよう。』
「龍の郷だっけ?それって人間行けるの?」
『はて?我は飛んでいくからな。陸路は知らん。』
「まぁ、調べてみるさ。」
『人間の立ち入りを、禁止にしていないはずだ。もし来たのならば、友として歓迎しよう。』


ジルに龍の郷まで来たら、歓迎すると言われた。
友人の自宅にお呼ばれみたいな?
話は聞かずとも、人間がそこに行けるか分からないけど。


僕らより1,000倍生きてるって、ジルは言っていたし。
そのいつかは、きっと来るだろう。
それが再戦の前か後かは、分からないけど。




『郷にくるのもだが、この森に突然呼ばれ、Lv1でよく生きてたものだな。』
「そこは、女神様の加護もあったし。」
『ほほぅ。どんなものか気になるが……いや、我も聞かぬ方がいいな。』
「別にこっちは、外でジルの事調べるし。言ってもいいけど?」
『いや、聞かんぞ。楽しみが減るではないか。』
「ジルがそう言うなら。じゃ、僕も調べないで、出たとこ勝負しようかな。」
『ガハハ。存外ソラヤもバトル好きなのだな。』


ジルが知りたければ、言ってもよかったんだけど。
楽しみが減るのは確かに嫌だな。
物語でもなんでも、ネタバレって僕自身も好きじゃないし。
そうなると、外でジルについて調べるのも止めよう。
出たとこ勝負だったけど。それはそれで、僕も楽しかったし。




『そうか…女神が………うむ!ソラヤ…いや、うぬら4人に、我の加護もやろう。』
「え?それって不公平じゃない?」
『そんな事はない。我はこれでも、人間の1,000倍は生きておるし、何より強いからな。』
「そりゃ、ジルに比べたら若いけど。強いって部分は今のところだよ?」
『ガハハ。言ってくれる!ならば、強さを求めよ……何事にも貪欲になれ。』
「面白い。皆んなも、それでいいよね?」
「ほほ。どこまでもついて行きましょう。」
「ソラヤを守るのは、俺の仕事だから。聞かれるまでもない。」
「勿論よ。強くなって、私も空ちゃん達の、役に立ちたいもん。」


はは。皆んな考える間もなく即答してくれる。
頼もしいパーティで…僕の大事な家族だ。
絶対強くなって、約束も皆んなも守ってみせる。






ジルが金色に光る…。






『我は原初の森…始まりと終わりを護る者。ジルフォレス・ガーラが加護…強さを求める強者の元へ。』






うぉ。女神様の時と同じで、目の前が真っ白になる。
目を開けているのか、閉じているかも分からない。
けれど、とても暖かく…力が湧いてくる感じがする。




「ほほ。何やら力が湧いてくる感じがしますな。」
「ええ。とても力強い、それでいて護られてる感じがします。」
「うまく言葉にできないけど。元気になる感じがする。」
「……うん。ありがとうジル。」
『礼には及ばん。我が楽しみたいだけだ。強くなれ人間。それまで我は、ここで待つ。』






友に見送られ。




白い門を前に、僕は一度振り返る。




「また来る!そんで…次は勝てせてもらう!」
『我も負けるつもりはない。また会おう……友よ。』






僕達は新たな地へと旅発つ。
強くなる為、友との約束を護る為に…。

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