少年と執事とお手伝いさんと。〜全ては時の運〜

ノベルバユーザー458883

16話 初のボス戦がドラゴンってどうなの?

回避できなかった訳で【原初の森―始まりを護る者―】ドラゴン戦に挑むことになった僕等。
冒険初心者の僕達の初ボス戦って事になる。
それがドラゴンって、何て無理ゲー?




少し自分の運を疑いたくなるこの現状。
僕らの事情何て、ドラゴンには関係ない。
口を大きく開けてからの…火の玉を僕等に撃ってくるドラゴン。


『まずは挨拶がわりだ。』


―ゴォン!!


「容赦なしか!父さん!」
「お任せ!皆んな俺の後ろに!」


スキルを使い全員無傷。
女神様様だ!っと女神様に心の中でお礼を言う。
爆煙が晴れる前に、3人を岩陰に隠す。
そして僕は…。


「出たとこ勝負!」
『今のを耐えたか?面白い!!』


あれに当たれば終わりなのは、目に見えてわかる。
なので、当たる確率が少ない僕が前に出る。
皆んなが隠れる岩陰を離れて。


「そら!」


―ブゥン!


『ふん。そんな攻撃が当たる…痛ぁっ!?』


痛ぁって…この龍ふざけてるのか?


『なんぞ、ダメージはそこまででかくないのに、妙に痛い攻撃は?』
「よく分かりませんが、もう一発!」
『むぅ!』


今度は翼を広げ暴風で、石を落とした龍。


『そんな攻撃が我に…痛ぁっ。』
「そんな大振り、何度も出来ると思わない事です。」


隙を見て石を投げる僕。
幸い昨日の夜に、栄ネェと沢山石を拾ったから、まだまだストックはある。




『グゥ、地味に痛いぞ。我が回避出来んとは…うぬはAGI極振りでもしておるのか?』
「答える義理も無いけど、ほぼAGI一択だね。」
『最近の人間は、面白い育ち方をするのだな。』
「まぁ普通じゃ無いのは、自覚してるけど。」
『良い。一撃当てれば良いのだろう?これを避けられるかな?』


―ボボボボ!


さっきより小さい火の玉が、僕に向かって飛んでくる。
さっきの大きい方が、避けやすかったのに。
なんだかんだ言っても、ドラゴンか頭が良いな。


「ほっ、よっと。」
『すばしっこいのぉ。ならば…。』


―ヒュォ…ゴォォォォ!!


「ブレス!?それはずるいぃぃ!!」
『ガハハ、足の速い子だ。それ次行くぞ〜』


ブレス自体は早くは無い。
だけど範囲が広すぎる!足を止めたら、一気に黒焦げコース。
僕は必死に走った。


―ビュン!


『あててっ。これも隙がでかいか。合間の石が地味に効くの。』
「そんな余裕そうに言われてもね!」
『これでも、うぬを褒めておるのだ。誇りに思うが良い。』
「そうですか。それはありがとうございます!」




その後も続く、続く。
爪での真空波に、尻尾でのなぎ払い。


小出しの火の玉に、忘れた頃にくるブレス。


いやぁ、可笑しいくらい強い。
もはや笑うしかないって、こういう状況なんだな。




ドラゴンも僕に集中しているのか、クロイ達には見向きもしない。
それはそれでいいのか。いや、多分気づいてる?


『ん?気にしているようだから、言ってやるが。我に向かって来ぬものに危害を加えるつもりは無いぞ?』
「あ、バレてた?」
『どこにいるかは、把握はしてないがな。巻き込まれた場合は知らん。』
「それなら、こっちとしても願ったりだよ。」
『うぬが集中できるように、先に門に向かわせても構わんぞ?』
「う〜ん。魅力的な提案だけど。僕を残して行くような人達じゃないんだよな。」
『ガハハ。愛されてるようだな。ならば、我の攻撃を喰らわぬようにな!』




―ボボボボボ!!


そう言っておいて、遠慮がないな、おい。
連続で火の玉を打ち出すドラゴン。
当たらないように交わす。もちろん爆発や予熱とかに、巻き込まれない距離を稼ぎつつ。
VIT1の僕では、おそらく掠っても、HPを0にされる自信がある。
LUKが高いから、回避に専念すれば当たる事もないんだろうけど。




「負けないにしても、勝てる算段が一個も浮かばないな。」
『ガハハ。石コロのみで我を、どうにか出来る訳ではあるまい。』
「そうなんだけ…ど!」
『グゥ。隠してる力があるのだろう?我は待っているぞ?』
「そんなの、Lv10に期待されても無いけどね!」
『……何?』


ん?急にドラゴンが大人しくなった。
何かあるんだろうかと、身構える。


『今、うぬはLv10と申したか?』
「え?うん。そうですけど。」
『ん!?誠か!それでいて、我の攻撃し全て交わし、その石コロでダメージを??』
「ええ。そうですが。それが何か?」
『ガハハハ!なんと珍妙な!我はうぬに興味が湧いた。久しぶりの戦闘で、少々遊んでしまったがな。』


だろうな。きっとこのドラゴンは、相手を倒す訳ではなく、戦いを楽しんでいたように見えたし。
もしかしなくても…。


「龍神様は【必中系】のスキルか能力を、何かしら持っていたのでは?」
『ほほう。それに気づいて、我に挑んでいたか。』
「まぁこの戦いでは、使わないと思ってましたが。」
『ガハハ。うぬの読み通りよ。回避の人間に撃てば、終わるからの。そんなつまらん事は、せん主義なのだ。』
「龍神様の気遣いに感謝します。」
『腰の低い人間だな。我はうぬを友として話を望む。仰々しいのは無しで構わぬ。』
「なら、そうするよ。」
『うむ。その方が自然で良い。して、うぬの名はなんと申す?』
「僕はソラヤです。」
『ソラヤだな。しかと覚えた。』


気さくなドラゴンだなぁ。
イメージでは、もっと暴れん坊で、かつ戦闘狂かと思ったのに。


「では、僕も友達として聞きたいんだけど。」
『なんぞ?』
「龍神様に名はあるのでしょうか?」
『我の名とな?特に取り決めはないな…それが何か問題があるのか?』
「ええ。友達なら名前で、呼び合う方がいいかなって。」
『ふむ。そう言われてもな…お、ならば、うぬが付けてくれ。』
「そんな簡単に決めていいの?」
『我が決めたのだ。誰にも何も言わせん。ガハハ。』


いきなり名付けを頼まれたぞ?
変な名前にしたら、それがずっと続くんだろう…そして名付けた僕の名前と共に…。


「クロイ。近くにいるか?」
「はい。居ますよ。」
「うわっ、こんな近くに居たのか?」
「ええ。ソラヤが話し始めて、龍神様の覇気も消えたので。」
「覇気とかなんだ?…まぁそれは後でいいや。」




黒ジィを近くに呼び、地面にしゃがむ。
原初、森、護る、ドラゴンと書いていく。


「これ英語にして。あ、読めないからカタカナで。」
「ふむ。これなら…こうですかね?」


オリジナル、フォレスト、ガード、ドラゴンと書いてくれる。


「ドラゴンはそのままなんだ。」
「ええ。元は龍などが日本語読みです。」
「ふーん……これだと…呼びづらいし。うーん。」


色々な文字を書いては消して、書いては消してを繰り返す。
呼びやすさも欲しいし、かと言ってカッコ悪いのもなんだし。
…あ、これいいかも。


「決まった!ジルフォレス・ガーラなんてどう?」
『ふむ。意味は何かあるのか?』
「原初と森、護る龍を英語で、かっこよくまとめてみた!」
『自信満々に言うのだな。ジルフォレス・ガーラか…その名、しかと貰い受ける。』
「よろしくジル!」
『むむ?早速改名か?』
「違う違う、ジルは愛称。僕も全部名乗ると、青海アオミ 空矢ソラヤって言うし。」
『アオミ ソラヤか。確かに呼びにくいな。それでソラヤか。ふむ、友らしくて気に入った!』






始めは正直ここで終わっちゃうかなって、思ったりもした。
だけど、僕は生きている。
生死を覚悟した戦いが、結果ドラゴンと友達になると、誰が予想しただろうか。
僕自身が1番驚いてます。
なので、これはもう笑うしか無い!


「あははは!」
『ガハハハ!』


原初の森―始まりを護る者ー…ジルフォレス・ガーラ
友となった2人は、高らかに笑う声が響くのであった。



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