無敵のフルフェイス
146話 地図が読めなくても。
最南端をさらに南下して、はや……何分経ったか?
「陸が見えてこないな。もしかして世界って一周しないの?」
景色がずっと海の上だから、どれくらい進んでいるのか。そもそも真っ直ぐ進めているかも怪しい。
「この下の海なのか……」
世界が繋がってなかったらどうしよう。途中で画面の端にぶつかって、海もここまで人が来ること考えてないからただの水だけだったり。
「考えれば考えるほど怖くなってきた。」
誰からの言葉も返ってこない。
1人ってこんなに怖かったんだ……。
いつも以上に独り言が増えて、不安な事ばかり思い浮かぶ。
「あー駄目だ。こんなんじゃ。生物がいるかどうかなんて、確認すればいい事!水玉!」
―ブクゥ……ザブン!
少し水を圧縮した水玉を海らしきところに投げ入れる。ちょっと深めに潜らせて……爆破!
―ザバァァァァ!!!
海底で噴火したかの様な衝撃があり、海にぽっかり大きな穴が空いた。
カラフルな魚から、これは何だろうってものまで空を飛ぶ。そして再び海に向かって戻って行く。
「生物は作っていたって事が。恥の方までしっかりと世界は作ってあると。」
少しほっとした。世界はしっかり造られている。
「それじゃ、暗くなる前に魔王城に行きたいから。急ぐか……手ぶらはあれか。」
―ビュン、ズボ!
さぁ気を取り直して、再び空を飛ぶ。
……。
…………。
………………そしてしばらく飛んだ後に、陸地が見えて来た。
「そんなゆっくり飛んでたわけじゃないけど、一周って結構かかるんだな。街は何処かに……」
陸地に到着して辺りを見渡す。て言うか、上から見てないからここがあの町か分からない。降りるか。
―ビュン、スタッ。
「魔力反応は……あっちか。」
すれ違う人が道を開けてくれる。出来れば話しかけたいんだが、俺を見るなりかなり距離をとって逃げる。捕まえる事は容易いが、そんな時間かけるのはもったいない。
「ここか……」
―ツカツカ……
「あの。」
「はぃぃ!なんかご用でしょうか!!」
「地図とかないかな?」
「ただいまお持ちしますぅ!!」
慌ただしくその男の人がカウンターの奥に引っ込んでいく。
現在地だけ分かれば、後はコロシアムまでひとっ飛び。
「ありました!」
「ありがとう……現在地はここでいいのかな?」
「はい!」
「それでコロシアムは……」
「ここです。」
ちょっと下に行って、西に行く感じか。ざっくり方角さえ分かればいい。
「ありがとう。」
「いえ!?」
さぁそうと決まれば、南西に向けて……
―ガタン!
入口の扉が乱暴に開けられる。この状況もしかして?
「あぁ?見ない顔だな。」
「……。」
やっぱりベルだ。何か言われる前に退散しよう。目を合わさず、何事もなかったかの様に扉を出る。
「てめぇ!?何無視してくれてんだ!」
「……。」
見なくてもどうやら絡んでくる様だ。放っておこう、飛んで行けば誰も追いつけない。
―ブゥワ!
「んな!?飛んだだと!?」
「西南…………」
とりあえず真っ直ぐ前を見つめる。
「ベル。西はどっちだ?」
「あ?そんなのあっちだろう。」
「感謝する。それじゃ。」
「っておい!!」
僕は指差された方向に向かって全力で飛び立つ。下から何か怒号の様なものが聞こえたが、今はどうでも良い。
……。
…………。
………………海が見えたら南に、ジグザグしながら西のコロシアムを目指す。我ながらいい作戦だ。ほら、コロシアムが見えて来たよ。
上からでもよく分かるコロシアム。何やら視線が集まってくるが、今は関係ない。
「ここからそう離れていないはず…………あれだ。」
コロシアムから少し離れた荒野に、ポツンと一軒家が建っている。あそこがプリン婆ちゃんの家だ。
さっそくだけど、おうちに近づいて行く。
―スタッ。
家の前に降り立ち、扉をノックする。
―コンコン。
「誰だい?こんな時間に?」
こんな時間?まだ夕暮れ前だから、夜遅くって訳じゃないはずだけど。
「すいません。こちらプリン婆ちゃんの家でしょうか?」
「誰が婆ちゃんだい!新手の詐欺かい!?」
確かに突然そんなこと言われたら怪しむよね。そうだろうと思い、俺は準備していた事がある。
「コレクト!」
―ズズ……ズドォォォン!
空間からさっきの海で見た大きな魚を床に置いた。
「お土産です。」
「突然押しかけといて、生魚なんぞ…………これは!?」
魚に飛びつくプリン婆ちゃん。マグロっぽいのを選んだつもりなんだけど、もしかして食べれない品種だったかな?
「幻の黒魔黒!北陸にしかない様な代物を一体どうやって?」
目がキラキラしたプリン婆ちゃんに迫られて、俺は一部始終を話した。
「飛翔に爆破系の魔術。それに収納魔法……それほどの使い手が、私なんかに何の用だい?」
「聞きたい事があってさ。出来るなら案内して欲しいかなって。」
「ほう。聞こうか。」
俺は魔王についてプリン婆ちゃんに全て話した。魔書による復活。それによって人が死ぬ事を……。
「その内容誰かに話したりしたのかい?」
「いや、プリン婆ちゃんが初めてだ。」
「信じがたい内容だけどねぇ……」
考え込むプリン婆ちゃん。
「いいだろう。私が案内してやろうじゃないか。魔界の尻拭いもアイツとの約束だし。」
「助かる。」
「それでどうしようって言うんだい?魔王城までかなりあるがねぇ。」
「今から行きたいところだが、まだ時間はある。明日の朝に出発でもいいかな?」
「構わないよ。」
こんなすんなり話が通るとは……少しくらい否定されると思ったんだけど。
「不思議そうな顔だね。信じて貰えると思わなかったのかい?」
「ええ。」
「人族が魔書を知っている。しかもその後の話は想像がつくからね。まぁ私じゃなきゃ信じて貰えないだろうよ。」
「ありがとう。」
「手土産に釣られただけだよ。」
「そう言う事にしておきます。それじゃ、こいつ捌きますね。」
明日が本番だ。気負い過ぎてもいけないし、今日はこいつを味わうとしよう。
「陸が見えてこないな。もしかして世界って一周しないの?」
景色がずっと海の上だから、どれくらい進んでいるのか。そもそも真っ直ぐ進めているかも怪しい。
「この下の海なのか……」
世界が繋がってなかったらどうしよう。途中で画面の端にぶつかって、海もここまで人が来ること考えてないからただの水だけだったり。
「考えれば考えるほど怖くなってきた。」
誰からの言葉も返ってこない。
1人ってこんなに怖かったんだ……。
いつも以上に独り言が増えて、不安な事ばかり思い浮かぶ。
「あー駄目だ。こんなんじゃ。生物がいるかどうかなんて、確認すればいい事!水玉!」
―ブクゥ……ザブン!
少し水を圧縮した水玉を海らしきところに投げ入れる。ちょっと深めに潜らせて……爆破!
―ザバァァァァ!!!
海底で噴火したかの様な衝撃があり、海にぽっかり大きな穴が空いた。
カラフルな魚から、これは何だろうってものまで空を飛ぶ。そして再び海に向かって戻って行く。
「生物は作っていたって事が。恥の方までしっかりと世界は作ってあると。」
少しほっとした。世界はしっかり造られている。
「それじゃ、暗くなる前に魔王城に行きたいから。急ぐか……手ぶらはあれか。」
―ビュン、ズボ!
さぁ気を取り直して、再び空を飛ぶ。
……。
…………。
………………そしてしばらく飛んだ後に、陸地が見えて来た。
「そんなゆっくり飛んでたわけじゃないけど、一周って結構かかるんだな。街は何処かに……」
陸地に到着して辺りを見渡す。て言うか、上から見てないからここがあの町か分からない。降りるか。
―ビュン、スタッ。
「魔力反応は……あっちか。」
すれ違う人が道を開けてくれる。出来れば話しかけたいんだが、俺を見るなりかなり距離をとって逃げる。捕まえる事は容易いが、そんな時間かけるのはもったいない。
「ここか……」
―ツカツカ……
「あの。」
「はぃぃ!なんかご用でしょうか!!」
「地図とかないかな?」
「ただいまお持ちしますぅ!!」
慌ただしくその男の人がカウンターの奥に引っ込んでいく。
現在地だけ分かれば、後はコロシアムまでひとっ飛び。
「ありました!」
「ありがとう……現在地はここでいいのかな?」
「はい!」
「それでコロシアムは……」
「ここです。」
ちょっと下に行って、西に行く感じか。ざっくり方角さえ分かればいい。
「ありがとう。」
「いえ!?」
さぁそうと決まれば、南西に向けて……
―ガタン!
入口の扉が乱暴に開けられる。この状況もしかして?
「あぁ?見ない顔だな。」
「……。」
やっぱりベルだ。何か言われる前に退散しよう。目を合わさず、何事もなかったかの様に扉を出る。
「てめぇ!?何無視してくれてんだ!」
「……。」
見なくてもどうやら絡んでくる様だ。放っておこう、飛んで行けば誰も追いつけない。
―ブゥワ!
「んな!?飛んだだと!?」
「西南…………」
とりあえず真っ直ぐ前を見つめる。
「ベル。西はどっちだ?」
「あ?そんなのあっちだろう。」
「感謝する。それじゃ。」
「っておい!!」
僕は指差された方向に向かって全力で飛び立つ。下から何か怒号の様なものが聞こえたが、今はどうでも良い。
……。
…………。
………………海が見えたら南に、ジグザグしながら西のコロシアムを目指す。我ながらいい作戦だ。ほら、コロシアムが見えて来たよ。
上からでもよく分かるコロシアム。何やら視線が集まってくるが、今は関係ない。
「ここからそう離れていないはず…………あれだ。」
コロシアムから少し離れた荒野に、ポツンと一軒家が建っている。あそこがプリン婆ちゃんの家だ。
さっそくだけど、おうちに近づいて行く。
―スタッ。
家の前に降り立ち、扉をノックする。
―コンコン。
「誰だい?こんな時間に?」
こんな時間?まだ夕暮れ前だから、夜遅くって訳じゃないはずだけど。
「すいません。こちらプリン婆ちゃんの家でしょうか?」
「誰が婆ちゃんだい!新手の詐欺かい!?」
確かに突然そんなこと言われたら怪しむよね。そうだろうと思い、俺は準備していた事がある。
「コレクト!」
―ズズ……ズドォォォン!
空間からさっきの海で見た大きな魚を床に置いた。
「お土産です。」
「突然押しかけといて、生魚なんぞ…………これは!?」
魚に飛びつくプリン婆ちゃん。マグロっぽいのを選んだつもりなんだけど、もしかして食べれない品種だったかな?
「幻の黒魔黒!北陸にしかない様な代物を一体どうやって?」
目がキラキラしたプリン婆ちゃんに迫られて、俺は一部始終を話した。
「飛翔に爆破系の魔術。それに収納魔法……それほどの使い手が、私なんかに何の用だい?」
「聞きたい事があってさ。出来るなら案内して欲しいかなって。」
「ほう。聞こうか。」
俺は魔王についてプリン婆ちゃんに全て話した。魔書による復活。それによって人が死ぬ事を……。
「その内容誰かに話したりしたのかい?」
「いや、プリン婆ちゃんが初めてだ。」
「信じがたい内容だけどねぇ……」
考え込むプリン婆ちゃん。
「いいだろう。私が案内してやろうじゃないか。魔界の尻拭いもアイツとの約束だし。」
「助かる。」
「それでどうしようって言うんだい?魔王城までかなりあるがねぇ。」
「今から行きたいところだが、まだ時間はある。明日の朝に出発でもいいかな?」
「構わないよ。」
こんなすんなり話が通るとは……少しくらい否定されると思ったんだけど。
「不思議そうな顔だね。信じて貰えると思わなかったのかい?」
「ええ。」
「人族が魔書を知っている。しかもその後の話は想像がつくからね。まぁ私じゃなきゃ信じて貰えないだろうよ。」
「ありがとう。」
「手土産に釣られただけだよ。」
「そう言う事にしておきます。それじゃ、こいつ捌きますね。」
明日が本番だ。気負い過ぎてもいけないし、今日はこいつを味わうとしよう。
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