無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

140話 刹那の時間に……

 崩れる戦線。レブルが立て直す為にディアンへと掛ける。僕は魔王を受け持つ。


「これは?私は?トパーズさんとルビーさんは?」
「落ち着いて下さい。あの人が来て状況が変わりました。」
「ディアン……」
「なーに、私がウイユを守るわよ。」
「ありがとうございますプリンシピオ様。」


 とにかく後はレブルとハイヤーに任せるしかないか。


「よそ見とは余裕だな!」


 ―キィン。


「そうでもないさ。こっちは必死でね、アースオペレーション!」


 ―ドン!


「土属性か。そんな遅い攻撃当たらん!」
「この山は攻撃した訳じゃないからね。よいしょ。」


 ―バキバキ、バキィィン!


 剣を作り右手に土、左手に風で剣を作る。


「剣を増やした所で、動きが鈍るだけだぞ?」
「心配には及ばないよ。」


 ―ビュン!ヒュヒュン!
 ―ギン!ギギン!


「っく。出鱈目にも程があるだろう!」
「これくらいは普通だと思うけど。」
「普通な者が我と戦える訳ない!」


「そうだねぇ。普通だと思っているのは、あんた自身だけだろうよ。」
「忍様は特別なのです。」


 魔王に後ろにいるプリン婆ちゃんとウイユさんも同意してくる。


「少しは落ち着けたようですね。さて、私は……」
「ハイヤーはセローを!魔王は僕が抑える。」
「言ってくれるな人族が!」


 これで魔王は他へ目を向けない。決定打は今はないけど、負けない戦いは得意だ。






 ♢


 セローの雨の中を走る、と言うか飛ぶ。


 この雨は翼に当たると直ぐに蒸発した。行けると思って思いつきで飛び出したけど、床をやアイツを見る限り酸よねこれ?セローも頭に血が昇ると怖いわね。


 ―ギィィィン!


「こんにちは。剣を交わすのは初めてだけど、随分と面倒な魔法を使うのね。」
「戦わない戦いもあるんだよ。お嬢さん。」


 ―ブゥゥン!


「遅い!」
「ちょっと!?」


 黒い霧ごと斬る。なんか斬れる気がしたからやってみたけど。


「なんだ斬れるじゃない。」
「それ!火じゃなくて光属性!?」
「それがどうかしたのかしら!」


 ―バキィ!


「ぐふぅ。ごほごほ……黒いのもだけど、貴女も中々に厄介な方だ。」


 ―ボォウ!ジュジュ……


「ありがとう。」
「別に褒めてなどいないのですが。熱い雨に光属性の熱い剣士……最悪だ。」
「ならその最悪を……早く終わらせてあげるわ。」
「そうして頂けると!」


 ―ギギン!ギン!ザシュ、ギン、ザシュ!


 実際早く終わらせなきゃいけないのは私の方。この雨を消す為に、いつもより大きく翼を出してるからガリガリ魔力が減ってるのよね。


「涼しい顔してなんて剣技!っぐ!」


 ―ブゥゥン!
 ―ブン!


「もうそれは見飽きたわ。」


 ―ギン、ザシュ、ザシュ。


「ぐおぉぉぉ!?」


 魔王相手には手応えがなかったけど、この人は別ね。前に戦った四天王の方が戦闘面では強かった。


 ―ヒュン……ザシュゥゥゥ!!


「ば、ばか……な。」


 倒れるディアン。雨から身を守っていた黒いのも無くなって、雨晒し。ジュウって何かが溶ける音がする。


「セロー!」
「!!」
「貴女の仇は私が取ってしまったわ。」
「……ううん。ありがとうレブル。」


 雨が止むと同時にセローが倒れる。


「あ。」


 受け止めようと向かうも足がうまく動かない。


 ―パシ。


「無茶をしすぎです。」
「はは。ごめんハイヤー。ちょっと変に魔力使っちゃって、疲れたみたい。」
「少しお休みください。あとは私とシノブさんがいます。」
「ううん。ちゃんと見るよ。だって私は師匠の弟子だから。」


 セローはハイヤーが受け止めてくれた。私は倒れるまではいかないけど、忍と一緒に戦うのは厳しいかな。


「少し、疲れたわ。」
「十分!レブルも見ていて!」
「そうするわ…………頑張れ忍。」


 私は剣を鞘に戻す。


 ♢






 レブルがディアンを倒す。前回戦った時には僕でも逃げられた相手だった。それを倒すなんて、さすがレブル。


「僕もうかうかしてられないな。」
「まさか、人族にディアンが敗れるとは……」
「あとは魔王だけだね。」
「ふん!仲間は満身創痍に見えるが?」
「大丈夫。僕はまだ元気だよ。」


 仲間が居たから僕は戦える。


「ディアン!やれ!」


 魔王が倒れたディアンにやれとだけ叫ぶ。


「何を!?」


 後ろを見るとフラフラ立ち上がるのが見えた。そして黒い魔力が身体中から噴き出す。


「いかん!あやつ自爆するぞ!」
「ふははは!慌てても遅い!貴様の仲間は……」


 ―ッダ!!


 魔王の言葉を聞かず、僕は後ろに向かって走る……1番アイツに近いのはレブル。


「間に合えぇぇぇ!!!!エアー……」


 ―ッカ!!ドゴォォォォォン!!!






 ……


 …………


 ………………。


 完全に崩れ去る魔王の部屋。


「忍?」


 後ろから聞こえるその声に、振り向き抱きしめる。


「無事で良かった。」
「私は……でも忍が!腕が……」
「こんなのかすり傷だよ。」


 咄嗟に動いて守りの結界が十分じゃなかったか、ライダースーツが焼けた。腕が少しひりひりするけど、レブルが無事なら問題ない。


「大丈夫。まだ動く!」
「そう言う問題じゃないよー!無茶しないでよ!」


 涙ながら抱きしめ返してくれるレブル。


「最後の仕事もこのザマか……」


 魔王の声がする。ウイユさんに近づく魔王。


「守ってもらってばかりじゃないよ!」
「ダメ!プリンシピオ様!」
「邪魔だ!」


 ―ザク!


「がはっ!?」
「プリン婆ちゃん!!」
「セローさん!」


 ウイユさんの前に出たプリン婆ちゃんが刺される。すぐに反応したのはセロー。しかし魔力がないのか、いつもの勢いはない。


 ―ブン!


「貴様もここで終わりだ!」
「させません!!」


 ―ギギ……


「ぐぐ!」
「ハイヤー!」
「邪魔だ!!」
「っぐ!」
「きゃ!?」


 ―バァァン!


 ハイヤーごとセローを巻き込み吹き飛ばされる。


「ウイユを守って!」


 抱きしめていた手を解き、背中を押される。


「これで終わらせてやる!」
「させない!」


 しかし追いつきウイユの前に出て、剣で魔王を斬る。


 ―ザシュ!


 斬れたのは黒い影。魔王の魔力のだった。


「魔力の塊?魔王は!」


 魔王を一瞬見失う。






 そして嫌な予感がして、振り返るとレブルの後ろに黒い影が現れる。剣を振り被る姿が見える。


 レブルは後ろの影に気づいていない。


 攻撃を止めるには、剣ごと破壊するしか。魔法じゃ間に合わないし、剣を壊せるか分からない。


 受けても壊れない何かが!


「これなら!」


 この世界に来てからずっと被ってきた。


 神様がくれた物。


 そしてアイさんや仲間と出会うことが出来た。


「お前なら……いっけぇ!!!」


 自分の被っているフルフェイスを手に取り、全力で投げる。


 ―ゴォォ!!


 空を斬るフルフェイス。


 ―バキィ!?
 ―バリィィン!


 黒いカケラが飛び散る。


「僕のレブルには指一本触れさせない!」
「ぐほぉ!?」


 渾身の拳を魔王の顔面に打ち込んだ。

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