無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

139話 一方的な攻撃

 レブルと一緒に剣を構えて、僕らの反撃が始まる。


「変な兜を被っただけで何だと言うのだ。」
「変とは失礼な。」
「見た目の割に性能は高いのよ。」


 ―ビュン、キキィン!


「くそ!この私が受けるのが精一杯なんて!」
「甘くみてはいけないって事よ。」
「別に変じゃないって言って欲しいな。」


 ―ビュン、ザク!
 忍とレブルが2人で斬る。受けるだけで精一杯な魔王は、僕ら二人の前では少しずつ傷を増やしていく。


「私達も負けてられないね!水玉!」


 ―ザバァァン!


 セローが真正面から魔法で撃ち込む。


「そんなものくらう……足が!」


 ―バシャァ!


 回避をする魔王の足を止めるハイヤー。


「どんどん行くよ!」
「足が動かなくとも!」


 ―ヒュン。
 ―パシ。


 体を逸らし、無理やり回避する魔王。水玉を受け取る黒い手。


「それは困りました。」
「へぶぅ!?」


 受け取った水玉を魔王へぶん投げる。さすがに目の前では避ける事も出来ない。


「忍!」
「おう。」


 ―ザシュ!ザシュ!


 一方的に見える戦い。傷を受けるも倒れる様子はない。
 僕とレブルの攻撃も、致命傷は避けているんだよな。セローとハイヤーの追い討ちも、決定打とまではいかない。


 ふと魔王の視線がある事に気がつく。ウイユを守る3人の存在を。


「やはり貴様が邪魔を……」
「あ、バレた。」
「忍。それは言うべき事じゃないわ。」
「やはり!貴様が我の邪魔を!」


 ―ドゴォォン!


「させんのだ!」


 ―バシィィン!


 飛んできたビームを真正面から受け止めるトパーズ。


 ―ドゴォォン!


「む!」
「爪が甘いのよ。それ。」


 ―ボォォォ!


 トパーズを避けるように曲がるビーム。火の竜巻が魔王の攻撃防ぐ。


「やるじゃないかい。こりゃ私もうかうかしていられないわ。」
「ふふん!これでも龍だから!」
「次のは任せてもらうよ。」


 ―ドゴォォン!


「ふんぬ!」


 ―ドカァァン!


「魔法を素手で弾く方が凄いと思うけどね。」
「結果が大事なんだよ。トパーズや私は多少でもダメージがあるから。長くは持たないだろうよ。」
「私は魔力が続けばだけど。」
「とにかくウイユは絶対死守だよ!」
「「おう。」」


 後は任せて大丈夫そうだ。別に皆を試す為に、攻撃を通した訳じゃない。あの魔王、空間からあのビーム出してるんだよなぁ。自分の近くなら感じ取れるけど、あんな後ろじゃ分からない。


「魔力の範囲を広げるしかないかな。」
『これ以上は忍様の負担になってしまいます。今の戦線維持が宜しいかと。』


 僕はアイさんの助言に従い、前を向いて戦う。






 ♢


 調子がいいように見えた戦いもある一人の参入で大きく変わる。


「む。貴様はあ……」


 ―ブゥゥン!


「トパーズ!?この!」
「魔法は私には効かないのだ。」
「え?シノ……」


 ―ブゥゥン!


「ディアン……あんたは。」
「裏切ったとか言うのかい?私は初めから魔王様の物ですよ。」


 トパーズとルビーが消えてしまいました。あれは前回も見ましたが、強制的に転移されたのでしょう。この状況は良くありませんね。


「まずいわね。セロー!」
「分かってる。やっぱりアイツは許せない……」
「後ろのサポートに回ります。」
「え?あ、うん。お願いね。」


 魔王様への攻撃はお二人に任せるしかありません。私は今度こそちゃんとお守りしない。


 ―ザブゥ……ピチャン。


 水が一滴落ちる。雨でしょうか。上を見れば小さな水の粒が見えます。


「……スルゥーレイン。」
「ん?水が降って……?」
「これはセローちゃんの魔法だね。」


 誰もがちょっとした雨と思っているようです。ですが、違うと分かっているのは私だけ。ウイユさんとプリンシピオさんを抱えて無理やり引っ張ります。


「……!わわ!?」
「何だい?うひゃ!?」
「少し乱暴ですいません。しかし時間がありませんので。」


 ―ポツ、ポツ、ザァ……


 2人を回収した後、雨脚は強くなって来た。


「ただの雨がどうした。こんなもの、熱っ!ん?熱い?」
「……アシッド。」


 ―ジュ!


「あちち!ゲート!」


 どうやら予想は悪い方に当たったようです。


「セローさん!」
「許さない。許さない。」


 これは少し不味いです。シノブさんは頼れませんし、私が何とかするしかないですね。


 ♢






 トパーズとルビーが消えた。きっと何処かに飛ばされたんだ。


 ―ズズ、パァァン。


「強化が?アイさ……ウイユは無事!」
「レブル!」


 ―キィン!


 危なかった。なんかさっきより体が少し重い。


「アイさん!大丈夫!?」
「はい。私は平気です。」
「そっか。強化が切れたから、かけ直したいんだけど……ん?」
「あ。」


 アイさんに声をかけたはずだけど。返事は直ぐ近くから聞こえる。


「ウイユさん?」
「はわわわ!?」
「今更慌てない!忍、後は私に任せて。ハイヤーは2人を!」


 ―ッダ。


「アイツは次元を操るよ!」
「分かってるわ。」
「レブルさん!あの雨に触れては!」
「それも大丈夫!はぁぁ!!」


 ―ボォウ!


 炎の翼を広げてレブルが魔王に背を向けて飛んでいく。


「我に背を向けるとは!」


 ―キィン!


「僕に背を向けたら知らないよ?」
「生意気な小僧だ。」


 レブルが後ろの応援に行ってしまった。心配だけど、今僕にできるのは魔王の相手をする事。
 アイさんとの話が通じなくなったけど、泣き言言っている場合ではない。今はこの状況を何とかしないと。


 レブルを信じて僕は前を見ることにした。

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