無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

137話 出鱈目な人と人?

 黒い繭は何をしても無効化される。


 ―カチャ、カチャ。
 ―ガチャン。


「師匠。それ取って下さい。」
「ほい。」
「あ、それ私の!」
「誰のとはないだろう。早い者勝ちなのだ。」
「それじゃ、これは貰うわね。」
「それは我のだ!」


 ルビーとトパーズがおかずの取り合いをする。


「忍。これ美味しいわよ。」
「忍様。こちらは如何でしょうか?」


 レブルとウイユが箸を僕に向ける。どうしてこうなった……悩む事はないんだろうけど、どっちを選んでも問題な気がするが。


 ―パク。


「どう?」
「ん。」


 レブルのを先に食べる。嬉しそうに味を聞いてくるが、作ったのはレブルではない。少し悲しそうな目をするウイユの方を続いて食べる。


 ―パク。


「ふふ。美味しいですか?」
「ん。」


 次の箸に何かが取られる前に、僕はおにぎりへと手を伸ばす。これを食べている間は落ち着いて食べられる……


「はい。忍。」
「どうぞ忍様。」
「……。」


 その考えは甘かったみたいだ。


「ウイユもだけど、随分と落ち着いているんだねぇ。」
「プリンばぁちゃんも食べて〜腹が減っては何とかって、前に師匠が言ってたよ。」
「そうかい。なんか慌てるだけ無駄な気がしてきたよ。」


 僕以外の所はゆっくりできている様だ。気が休まらないわけじゃないけど、魔王様はそろそろお目覚めにならないだろうか……


 ―ピキ。


 黒い繭にヒビが入る。


「きた!」


 おにぎりを頬張り立ち上がる。僕に食べてもらえなかったおかずをそれぞれ口にして、レブルウイユも立ち上がる。


「あの魔王は空気も読めないのね。」
「魔導書には書いてなかった様ですね。」
「「「…………。」」」


 2人の会話に全員の背筋が凍る。


 ―ピキピキ……バリィィン!


 黒い繭が割れて、魔王が出てくる。


「逃げずに待っているとは……余程早く死にたい様だ……」


 ―ヒュン……バキィ!


「んなぁ!?」


 ―ドゴォォン!


 最後まで喋る事なくレブルが魔王を斬る。斬る音ちは違う鈍い音がした後、魔王は壁まで吹き飛ぶ。


「レブル。抜け駆けはいけません。」
「貴女の初動が遅いだけでは?」
「言ってくれますね。」
「手応えはイマイチだから、次があるわよ。」


 仲が良いのか、悪いのか……。


「いきなり不意打ちとは、随分と礼儀がなっておらん様だな。」


 レブルの攻撃を受け、壁に激突するも何事もなかったかの様に這い上がる魔王。


「失礼致します。」
「ん?」


 ―ドゴ、ドゴ、バキィ!ドゴォォン!


「うわぁ……痛そうなのである。」
「これは私達の出番が本当にないわよ。」


 起き上がった魔王を確認すると、今度はウイユが攻撃をする。龍2人がウイユの攻撃を見て、少し引き気味に下がる。正直言うと僕も攻撃するのを躊躇う中で、2人は遠慮が全くない。


「レブル!あまり前に出過ぎないで。」
「何かあれば忍が守ってくれるでしょう?」
「そりゃ守るけど。」
「私は守って下さりますか?」
「もちろん守りますよ。」
「「なら問題ないわ。」」


 ん〜伝わってない?


 プリンばぁちゃんが言う魔導書が、どれだけ危険なのか分からないから。あまり前に出過ぎないで欲しいのだけど。守ると言った手前、一応すぐ動ける様に強化はしておこう。


「全く……いつの時代も女は荒いものだな。」
「どうやら全く効いていない様だね。」
「どうするのプリンばぁちゃん?」
「そんなの決まってるわ……」


 ―ダァン!


「今度はプリンシピオか?老いぼれは黙って欲しいものだが。」
「まだまだ現役だよ!」


 今度はプリンばぁちゃんが魔王に突っ込む。


 ―ビュン!パシ!


「遅い。さっきの者達の方が、早かったぞ。」
「っく。まだじゃ!」


 そこそこ早いと思うパンチも魔王は、簡単に受け止める。


 ―ビュン!パシ!


 懐に入ったプリンばぁちゃんは、さらに打ち込むがそれも掴まれる。


 ―ザブン!


「水玉!」
「小賢しい!」
「おっ!?」


 掴んだプリンばぁちゃんを水玉の盾にしようとする魔王。


「っふ!」


 ―ピタ!


「っは!」
「む。」


 ―ザバァァン!


 プリンばぁちゃんに当たりそうになった水玉を止め、軌道を変えて魔王の顔面に当てるセロー。プリンばぁちゃんに当たるかと少しひやっとした。


「ふん。そんな攻撃が我には効かん。」
「それではこれは如何でしょう?」


 ―ズズズ……ビュン!


 影からハイヤーの手が伸びて魔王の顔の横を過ぎる。あの僅かな間に攻撃を入れるハイヤーはさすがだ。しかし簡単に交わされた。


 ―ッザザ!


 無理に交わしたからか、体制を崩した所にレブルとウイユさんが懐に入る。


「小賢しいと言っているだろう!!」


 ―ブゥゥン!


「うひゃ!?」


 プリンばぁちゃんを掴んだまま、振り回してレブルとウイユさんは攻撃をせず距離をとる。あのまま掴まれていると邪魔だな。


 ―ヒュン……


「そろそろ僕も参加しようかな。」
「!!」


 ―ビュン!


 プリンばぁちゃんを掴んだ腕ごと狙って斬ったけど、ギリギリの所で手を離し躱される。


 ―ビュン!


「っく!?」
「これも躱すの?でも次はどうかな?」


 ―ビュン!ビュン!


「っく!この!」
「それそれそれ!」


 ―ビュン!ビュン!キィィン!


 何度か躱された後、決まると思ったら受け止められた。黒い空間から剣の刀身だけ出ている。


「まさか私が剣を抜かされるとは……」
「受けて安心してたらダメだよ。ふん!」


 ―ギィィ……ドゴォォン!


 受け止めた剣ごと思いっきり振り抜く。再び壁まで吹き飛ぶ魔王。


「プリンばぁちゃん立てる?」
「目が回ったくらいだわ。別に立てなく……」


 ―ドォォン!!


 吹き飛ばした方から黒い何かが放たれる。


 ―ギン!ドゴォォ……


「玉って言うよりビームだね。」
「な、何をしたんだい?」
「軌道を逸らしただけ。」
「簡単に言ってくれるね……まだくるよ!」


 ―ドゴォォン!
 ―ギン!ドゴォォ……


 同じ攻撃がくるが、軌道を逸らして回避する。避けられない事もないけど、そうすると後ろに居るプリンばぁちゃんが危ない。


「出鱈目な!これならどうだ!」


 ―ドゴォォン!


 軌道を変えてセロー達の方にビームが撃たれた。


「あ。」
「我の出ば……」


 ―ドカァァン!!


 振り向くとトパーズが皆の前に出て、ビームを受け止めていた。


「ちと熱いな。」
「熱いで済むんだ。」
「シノブよ。後は任せよ。前だけ向いていればいいのだ。」
「ありがとうトパーズ。」


 ―ズズズ……


「プリンシピオ様。こちらへ。」
「すまんねウイユ。」


 影からウイユさんがプリンばぁちゃんを連れて下がってくれる。


 ―ドゴォォン!


「何度も同じ手は……せい!」


 ―ズバァン!


「斬った!?」
「逸らす必要もない。」


 仲間が守ってくれる。僕は1人じゃない。


「さぁ……始めようか。」
「っくそ!いいだろう。本気で相手をしてやろう!」


 魔王との一騎討ちが始まる。

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