無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

135話 危険な魔導書 ②

 レーダビットに到着して、僕らは龍に乗り魔王城へ向かう。


「あれが魔王城だよ。一気に突っ込んどくれ。」
「分かったわ。」
「今回は攻撃されないといいんだがな。」
「トパーズ。それは口にしない方が……」


 魔王城に近いたとき、一部が大爆発。黒い柱が天まで届く。


「遅かったか。このまま突っ込むのは危なそうだねぇ。降りて向かった方が良さそうだね。」


 プリンシピオの指示で地上に降りようとした。


「魔力反応!師匠!」


 黒い魔力が放たれる。


「やっぱりそうなるのか。僕が前に出る!皆は下がって!」


 ―ドォォォ!!


「ふん!あ、これは強いな。」


 皆の前に出て、黒い魔力の塊を空に逸らす。しかし思った以上の威力に僕は反動で吹き飛ぶ。


「忍!?」
「師匠!!」


 吹き飛ばされた先に皆が集まり心配される。


「いやーびっくりしたね。」
「そりゃこっちのセリフだよ。」
「忍!怪我はない?」
「うん。大丈夫。」


 プリンシピオの影から、声が聞こえた。


「早い到着だな……」
「レディの下から勝手に出てくるのは、礼儀がなっていないね。」
「申し訳ありません。プリンシピオ様。緊急事態により私が勝手に判断致しました。」
「ウイユが判断したのならしょうがないわね。」
「それなら私の頭から足を退けて欲しいのだが。」
「これはすまないね。」


 影から出てきたのは、ボロボロになったディアン。それを抱えるメイド服の女の子が出てきた。どこかで会った事があるような……


「ウイユ。状況を説明してくれるかい?」
「は!現状ビット様が魔術式を展開。止めに入ったと証言するディアンは使えず、その場に倒れていて。止めるにも結界が発動されていて、私も近づく事ができません。魔力察知にて、プリンシピオ様を感じまして。ここまできたと言う事です。」
「遅かったか……」


 状況はどうやら芳しくないみたいだ。メイドさんが僕の事をじっと見つめてくる。やっぱりどこかで会った事があるような?


「とにかく城に近づくよ。」


 傷ついたディアンを置いて、魔王城まで走る。龍の2人は人型になって、僕らの後を一緒に着いてくる。


「皆、早いな。」
「トパーズが遅いだけよ。」
「そう言っても、ルビーもギリギリに見えるが?」
「わ、私はトパーズに合わせているだけよ。」
「そうなのか。すまんな。」


 とは言え僕らに着いてくるのが難しく、少しずつ距離が離れる。






 5分もしないで、僕らは魔王城の下まで到着した。龍2人は見えないけど、そのうち来るだろう。結界に近づき、プリンばぁちゃんが触れる。


 ―バチィ!!!


「随分と厄介な結界だねぇ……」
「プリンシピオ様。無闇に触られると危ないですよ。」
「そうみたいだねぇ。うーん、どうしたものかしら。」


 メイドさんが再び僕を見てくる。何か話したそうだけど。


「メイドさん。僕に何か?」
「いえ、忍様であればこの結界をなんとか出来るのではと。」
「結界を壊すってどうすればいいの?」
「強い魔力で一点集中で攻撃すれば、一時的にですが結界を抜けられるはずです。」
「そっか。ん?僕、名前……」
「悪いねシノブ。試してもらってもいいかい?」
「あ、はい。」


 どうして僕の名前を知っているのかと思ったけど、誰かが僕を呼んでいるのを聞いていたのかな。
 まぁ今は細かい事は気にしなくていいか。アイさんと連絡取れないけど、コントロールする必要ないし。


「一点集中なら水玉を尖らせたいなぁ。ん〜凍らせればいいか……よし!」


 上空に水玉を作り、先を尖らせる為に凍らせた。一つじゃ不安だから数個作る事にした。


「皆様、少しここから離れる事をお勧め致します。あの数であの魔力ですと、巻き込まれる可能性があります。」
「ウイユが言うんだ。間違い無いだろう。ほら、下がるよ。」


 メイドさんの指示で全員が僕から離れて行く。そんな大層な魔力を込めたりしてないんだけどなぁ。まぁ何かあってからじゃ遅いし。安全第一って事で。


「それじゃ、遠慮なく行こうかな。いけ!!」


 ―…………パキパキ!


 凍った水玉がパキパキ音をさせながら落ちてくる。地上の温度が高いから、少しずつ溶けてる?まぁそしたら溶ける前に落としちゃおう。


「グラビティ……」


 ―ゴゴゴ!!??


「なんだいこれは!?空気が震えてるじゃないかい!」
「さすが師匠です!私も今度やってみたいです!」
「あれは水属性の他に、風と闇属性の魔法が必要なので、セローに出来るでしょうか。」
「さらっと凄いことしてたー」
「ウイユの分析力もだけど。本当にセローちゃんの師匠はなんなんだい?」
「師匠は師匠です。」
「それを私達の仲間内で、忍だから。って言っているわ。」
「あんたらも大変なんだねぇ……」


 後ろで何か色々言われている。それにしてもあのメイドさんは凄いなぁ〜見ただけで属性を言い当てちゃうなんて。
 そんな感心している間に、氷の粒は結界に到達する。


 ―バリバリ!バリン!!!


「あ、結界壊れた。まだ1個しか当ててないのに。」


 残り9個の氷の粒が魔王城目掛けて降り注ぐ。重力で早く落とすようにしていたのが、仇になったか止められない。


 ―ズガァァン!ズガァァン!…………


 完全に結界を砕いた10個の氷の粒は、トパーズが余裕で通れそうな穴を開ける事に成功した。


「これで行けるか。」
「城そのもの壊したおかげで、通り道も瓦礫の山だけどねぇ。まぁ行けなくもないか。」


 プリンばぁちゃんが愚痴をこぼしながら、魔王城へと踏み込んで行く。


「師匠やり過ぎです〜」
「やっぱりアイさんが抑えてくれないとダメね。」
「様子見で一つであれば良かったのですが。」
「忍様は保険で魔法を展開されたのですよね。自身の力を過信しないとは……さすがで御座います。」
「あ、どうも。」


 メイドさんだけは僕の意図を汲んでくれた。分析力が高いだけにそんなとこまで分かるもんなんだね。まるでアイさんと会話をしているような感じに……


「結界があったんじゃないのか?これじゃ人型になる必要なくないか?」
「きっとシノブがぶち壊したんでしょ。元に戻ってもいいけど、的になるわよ?」
「うむ。我、このまま頑張る。」


 僕を抜いて走り抜けるトパーズとルビー。


「何をしている?行くのだシノブ。」
「あ、うん。」


 僕より前に出ようとしないトパーズ。言われて僕も皆に着いて走り出す。ふと左を見るとメイドさんが並走している。


「僕から離れないで下さいね。」
「お心遣い感謝致します。」
「…………。」


 右側から無言の圧力を感じる。横を見るのが怖い僕は前を向いて走る。
 瓦礫の山をポンポン飛び越すプリンばぁちゃんと、瓦礫があっても関係ないセローが爆走する。
 それに続くハイヤーは、黒い手を使い器用に進んで行く。


「「ふふふ。」」


 両隣から不適な笑い声が聞こえる。僕が一体何をしたんだ!
 誰か助けて!

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