無敵のフルフェイス
131話 禁断の果実
セローと無事合流した僕らは、コロシアムの外れにある家に降り立つ。
「ただいま。」
「今日は早いねぇ。」
「今日は送って貰ったの。」
「あやつらも少しは気の利いた事を……」
「あ、違うんだ。私の師匠に送って貰ったの。」
「師匠とな?セローちゃんの待ってた人が、迎えに来たのかい?」
外まで聞こえる声で話していたセローと誰か。ガラガラっと扉が開き、中からお婆さんが出て来る。
「これがセローちゃんの……龍?」
「「ん?」」
出て来たお婆さんが、トパーズとルビーと対面する。
「り、りゅぅぅぅぅぅ!?」
「お婆さん!?」
「がはは。こんな驚かれるなんてな。」
「これが普通の反応よね。」
「とりあえず人型になれる?」
「しょうがないわね。」
―ボォン!
「これで良いかしら。」
「ルビーさんは人になれるんだね!凄いです!」
「ま、まぁね。」
「赤い髪で、小さくて可愛いです!」
「可愛いって……」
純粋に褒めるセローに、顔を少し赤くするルビー。そしてその視線は地龍であるトパーズにも向く。
「そんなピュアな瞳で見られてもなぁ。あまり得意ではないのだが、仕方がない……むん!」
―バキィ!
何かが砕ける音がした後、トパーズがみるみる小さくなっていく。ルビーはもくもく何か出してたけど、それがないんだなぁ……あ。
「ふぅ……この姿も久しいな。んー!」
―バキ、バキ。
「あー体ばきばきだのぅ。」
「体をほぐす前に服着ようよ。」
「服なんぞ持ってないぞ。」
「しょうがないなーこれでも着てよ。」
「シノブはなんでも持っているな。」
トパーズに合いそうな、簡単な浴衣みたいな羽織りものを渡した。
「ふむ。いい感じだ。少しすーすーするが。」
「トパーズさんは随分と……逞しいね?」
「そうか?体を鍛える事は強さの秘訣だからな。」
「そう……だね。」
「セローそんなまじまじと見ないの。トパーズ、前を閉めなさいよ。」
「おっと、これは失礼。」
はだけないように帯を渡す。言わなくても押さえるものだと理解したのか、腰あたりでしっかりと結ぶ。
「これでいいか。」
「その服……なんでもないわ。」
「それならいいわ。」
「レブル〜?手を話してよ〜」
目隠しされたセロー。レブルが手を離すと少し下がる。
「私だとよく分かるね。」
「師匠と同じ格好だし、赤い剣を持った人ってレブルかなって。」
「そう。それじゃあっちのは誰か分かる?貴女の事を凄く心配してたのよ。」
「レブルさん!?」
「分かるよ……」
セローはゆっくり歩いて、紫色の騎士の前まで歩いて行く。ゆっくり手を取る。
「ごめんね。」
「セローさん。私はそんな言葉が欲しくて、ここまで来た訳ではありませんよ。」
「…………ありがとうハイヤー。」
「ご無事でなによりです。」
「へへ。」
照れた顔のセローに、頭を優しく撫でるハイヤー。
「良い雰囲気じゃないの。」
「そういうのは口にしないのよルビー。」
「ルビーは無粋だな。」
「トパーズ?」
「なんでもない。それよりあの娘を放っておいて良いのか?」
「娘?」
トパーズが指を刺す方向を見る。お婆さんしかいないけど?
「トパーズ。あれは魔族の中でも上の女性よ。」
「なんだオババか。」
「誰がオババじゃ!」
「起きたな。」
「ん?龍がさっきまで居た気がしたが。」
「夢だろオババ。」
「オババはやめ!私にはプリンシピオって名前があるんだよ。プリンちゃんと呼んでくれても構わないよ。」
プリンちゃんって、見た目からはとてもじゃないけど呼びづら……
「それではプリンちゃん。」
「呼ぶんだ……」
「何故だ?そう呼べと言っているだろう。」
「兄ちゃんは失礼な奴かと思ったけど、話は通じるようだね。名前はなんだい?」
「トパーズマーガレット。トパーズで良い。」
「カッコいい顔の割に、可愛らしい名前ねぇ。」
「お互い様だろう。」
「そうね。ささ、中に入んな。」
みんなで中に入り、プリンシピオさんが料理を出してくれた。そう言えば朝からなにも食べてなかったな。
「ごちそうさま。美味しかったです。」
「そうなの。ばぁちゃんの料理は美味しいの。」
「これ、セローちゃん。プリンちゃんでしょ?」
「そうだった。プリンばぁちゃん。」
「ん〜〜〜可愛いからいいか。」
セローにだいぶ甘いプリンシピオさん。孫に甘いのは昔からなんだろう。僕も叔母は優しかった記憶しかない。
「それでこれは真面目な話なんだけど。いつ帰るんだい?」
「プリンばぁちゃん……」
「なにしみったれた顔してんだよ。待ち人が来るまでって話だったでしょう。最後くらい最高に旨いもん食べてもらわなきゃね。」
「うぅ……プリンばぁちゃん。」
「ほらほら、泣くんじゃないよこの子は本当に……」
なんだか本当の祖母と孫に見える。会ってあまり時間も経ってないはずだけど。
「ほらほら!湿っぽいのはやめやめ!美味しい果物があるんだったわ。お口直しにどうだい?」
「そうですね。いただきます。」
「僕も貰いますね。」
―モグモグ……
「甘酸っぱい感じで、さっぱりするね。」
「風味は木の実の様な香りなのに。不思議ですね。」
「ハイヤーも師匠もそれ食べられるんだ。」
「「え?」」
「大人の味だからね。セローちゃんには早いのよ。」
「私、子供じゃないよ?」
「そうだね〜」
頭を撫でられるセローだったが、どこか納得いかなそう。プリンシピオさんからすれば、誰でもお子様なんだろう。
「黒いの。今何か失礼な事考えてないかい?」
「いえ!?僕は別に……」
―ガシ!
心を読まれたかと思い慌てていると、腕を強烈な力で押さえ込まれる。
「忍ぅ……」
「どうしたのレブル?顔が赤いけど?」
「どうもしないわ〜ただこうしたいだけよ〜」
「ふふふ。この子は甘え癖なんだねぇ。普段から甘えさせてあげてないだろう?」
「ちょっとプリンばぁちゃん。どういう事ですか?」
「お師匠さんにそんな呼ばれ方されるのも……ありかしら。」
「師匠。これだと思う。」
セローが黄色い果物を持ってくる。これはさっき僕とハイヤーが食べたものだよね?
「魔ルーラって果物で、食べると眠くなるんだよ。」
「はっはっは。違うよ。食べれば体の中で発酵して、酔った感覚になるんだよ。セローちゃんは眠くなるだけさ。2人は特に変わらないところを見ると、それなりに強いんだろう。」
なるほど。酔っ払っているんだね。前にお酒を飲んだ時、レブルは思いっきり甘えん坊になってたなぁ……有りだ。
「にゃによ、これぇ……めのみゃえが、ぐるぐる〜あはは。」
「…………。」
ルビーは呂律が回らず、ぐるぐる回りながら笑っている。あんなフラフラしてたら気持ち悪くなりそう。トパーズは喋らないきっと僕らと同じく、強い……
「ダメだ……」
「どうしたの?」
「もう……すまん。」
―バキバキ……
トパーズの体からバキバキと音がする。この音どこかで……
「魔力を維持できん!」
「ちょ!!」
―バキィィン!ドカァァン!
プリンおばぁちゃんの家が吹き飛びました。
「ただいま。」
「今日は早いねぇ。」
「今日は送って貰ったの。」
「あやつらも少しは気の利いた事を……」
「あ、違うんだ。私の師匠に送って貰ったの。」
「師匠とな?セローちゃんの待ってた人が、迎えに来たのかい?」
外まで聞こえる声で話していたセローと誰か。ガラガラっと扉が開き、中からお婆さんが出て来る。
「これがセローちゃんの……龍?」
「「ん?」」
出て来たお婆さんが、トパーズとルビーと対面する。
「り、りゅぅぅぅぅぅ!?」
「お婆さん!?」
「がはは。こんな驚かれるなんてな。」
「これが普通の反応よね。」
「とりあえず人型になれる?」
「しょうがないわね。」
―ボォン!
「これで良いかしら。」
「ルビーさんは人になれるんだね!凄いです!」
「ま、まぁね。」
「赤い髪で、小さくて可愛いです!」
「可愛いって……」
純粋に褒めるセローに、顔を少し赤くするルビー。そしてその視線は地龍であるトパーズにも向く。
「そんなピュアな瞳で見られてもなぁ。あまり得意ではないのだが、仕方がない……むん!」
―バキィ!
何かが砕ける音がした後、トパーズがみるみる小さくなっていく。ルビーはもくもく何か出してたけど、それがないんだなぁ……あ。
「ふぅ……この姿も久しいな。んー!」
―バキ、バキ。
「あー体ばきばきだのぅ。」
「体をほぐす前に服着ようよ。」
「服なんぞ持ってないぞ。」
「しょうがないなーこれでも着てよ。」
「シノブはなんでも持っているな。」
トパーズに合いそうな、簡単な浴衣みたいな羽織りものを渡した。
「ふむ。いい感じだ。少しすーすーするが。」
「トパーズさんは随分と……逞しいね?」
「そうか?体を鍛える事は強さの秘訣だからな。」
「そう……だね。」
「セローそんなまじまじと見ないの。トパーズ、前を閉めなさいよ。」
「おっと、これは失礼。」
はだけないように帯を渡す。言わなくても押さえるものだと理解したのか、腰あたりでしっかりと結ぶ。
「これでいいか。」
「その服……なんでもないわ。」
「それならいいわ。」
「レブル〜?手を話してよ〜」
目隠しされたセロー。レブルが手を離すと少し下がる。
「私だとよく分かるね。」
「師匠と同じ格好だし、赤い剣を持った人ってレブルかなって。」
「そう。それじゃあっちのは誰か分かる?貴女の事を凄く心配してたのよ。」
「レブルさん!?」
「分かるよ……」
セローはゆっくり歩いて、紫色の騎士の前まで歩いて行く。ゆっくり手を取る。
「ごめんね。」
「セローさん。私はそんな言葉が欲しくて、ここまで来た訳ではありませんよ。」
「…………ありがとうハイヤー。」
「ご無事でなによりです。」
「へへ。」
照れた顔のセローに、頭を優しく撫でるハイヤー。
「良い雰囲気じゃないの。」
「そういうのは口にしないのよルビー。」
「ルビーは無粋だな。」
「トパーズ?」
「なんでもない。それよりあの娘を放っておいて良いのか?」
「娘?」
トパーズが指を刺す方向を見る。お婆さんしかいないけど?
「トパーズ。あれは魔族の中でも上の女性よ。」
「なんだオババか。」
「誰がオババじゃ!」
「起きたな。」
「ん?龍がさっきまで居た気がしたが。」
「夢だろオババ。」
「オババはやめ!私にはプリンシピオって名前があるんだよ。プリンちゃんと呼んでくれても構わないよ。」
プリンちゃんって、見た目からはとてもじゃないけど呼びづら……
「それではプリンちゃん。」
「呼ぶんだ……」
「何故だ?そう呼べと言っているだろう。」
「兄ちゃんは失礼な奴かと思ったけど、話は通じるようだね。名前はなんだい?」
「トパーズマーガレット。トパーズで良い。」
「カッコいい顔の割に、可愛らしい名前ねぇ。」
「お互い様だろう。」
「そうね。ささ、中に入んな。」
みんなで中に入り、プリンシピオさんが料理を出してくれた。そう言えば朝からなにも食べてなかったな。
「ごちそうさま。美味しかったです。」
「そうなの。ばぁちゃんの料理は美味しいの。」
「これ、セローちゃん。プリンちゃんでしょ?」
「そうだった。プリンばぁちゃん。」
「ん〜〜〜可愛いからいいか。」
セローにだいぶ甘いプリンシピオさん。孫に甘いのは昔からなんだろう。僕も叔母は優しかった記憶しかない。
「それでこれは真面目な話なんだけど。いつ帰るんだい?」
「プリンばぁちゃん……」
「なにしみったれた顔してんだよ。待ち人が来るまでって話だったでしょう。最後くらい最高に旨いもん食べてもらわなきゃね。」
「うぅ……プリンばぁちゃん。」
「ほらほら、泣くんじゃないよこの子は本当に……」
なんだか本当の祖母と孫に見える。会ってあまり時間も経ってないはずだけど。
「ほらほら!湿っぽいのはやめやめ!美味しい果物があるんだったわ。お口直しにどうだい?」
「そうですね。いただきます。」
「僕も貰いますね。」
―モグモグ……
「甘酸っぱい感じで、さっぱりするね。」
「風味は木の実の様な香りなのに。不思議ですね。」
「ハイヤーも師匠もそれ食べられるんだ。」
「「え?」」
「大人の味だからね。セローちゃんには早いのよ。」
「私、子供じゃないよ?」
「そうだね〜」
頭を撫でられるセローだったが、どこか納得いかなそう。プリンシピオさんからすれば、誰でもお子様なんだろう。
「黒いの。今何か失礼な事考えてないかい?」
「いえ!?僕は別に……」
―ガシ!
心を読まれたかと思い慌てていると、腕を強烈な力で押さえ込まれる。
「忍ぅ……」
「どうしたのレブル?顔が赤いけど?」
「どうもしないわ〜ただこうしたいだけよ〜」
「ふふふ。この子は甘え癖なんだねぇ。普段から甘えさせてあげてないだろう?」
「ちょっとプリンばぁちゃん。どういう事ですか?」
「お師匠さんにそんな呼ばれ方されるのも……ありかしら。」
「師匠。これだと思う。」
セローが黄色い果物を持ってくる。これはさっき僕とハイヤーが食べたものだよね?
「魔ルーラって果物で、食べると眠くなるんだよ。」
「はっはっは。違うよ。食べれば体の中で発酵して、酔った感覚になるんだよ。セローちゃんは眠くなるだけさ。2人は特に変わらないところを見ると、それなりに強いんだろう。」
なるほど。酔っ払っているんだね。前にお酒を飲んだ時、レブルは思いっきり甘えん坊になってたなぁ……有りだ。
「にゃによ、これぇ……めのみゃえが、ぐるぐる〜あはは。」
「…………。」
ルビーは呂律が回らず、ぐるぐる回りながら笑っている。あんなフラフラしてたら気持ち悪くなりそう。トパーズは喋らないきっと僕らと同じく、強い……
「ダメだ……」
「どうしたの?」
「もう……すまん。」
―バキバキ……
トパーズの体からバキバキと音がする。この音どこかで……
「魔力を維持できん!」
「ちょ!!」
―バキィィン!ドカァァン!
プリンおばぁちゃんの家が吹き飛びました。
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