無敵のフルフェイス
93話 お互いの証明
剣を構え直して両者が再び対峙する。
「正直ここまで戦えるとは驚いた。我がライバルのパーティメンバーなだけの事はある。」
「それは私もです。勇者様が手加減してくれたおかげで、ここまで見せられる手合わせになったのですから。」
「俺は別に手加減はしていないつもりだけどな……。」
「そんなことはありませんよ。聞いていますよ光の魔法剣を使えると。」
「あ、忘れていた。」
「……。」
やはり勇者は馬鹿なのかも知れない。今までの戦いではあえて使っていないのかと思ったのに。
「それでは見せてもらいましょう。勇者様の本気を!」
「っふ。面白い。いいだろう!シャインブレード!」
―キラッ、ブゥゥン!
無駄に眩しい剣だな。威力はきっと申し分ないけど、あの勇者分かってるのか?あの剣は……
「行くぞ!シャイィィィ……スラッシュ!」
―ヒュン!
上段に構えた光の剣を、エスト目掛けて振り落とす。当然読んでいたエストは、勇者との距離を一気に詰める。そして振り下ろされた剣の根本に、自身の剣を振り下ろす。
―バキィン!
「え?」
―ッス。
「勝負有りです。」
勇者の剣を折ったエスト。それに驚いた勇者の隙を見逃さず、首元にしっかり剣を向けるエスト。
「ほぅ……レブルの言う通り終わったな。武器破壊を狙っていたとは。」
「攻める事が得意じゃないエストならではの戦い方ね。成長したわ。」
「師にそう言って貰えると、嬉しいものだな。」
終わってみれば呆気ない。まぁいつもの武器で勝負したらまた結果は変わるだろうけど。これは立ち合いであって殺し合いではない。
「……これが俺の実力か。」
「勇者様……。」
「課題は状況判断と視野の狭さね。」
「……。」
折れた剣を見つめ、天を仰ぐ勇者。
「なんか悪い事をしてしまったかしら。」
「エストが気にする事はないわ。」
「そうそう。勇者には強くなってもらわないと。今後王都を守るには必要な経験だって。」
「2人で頭を撫でるのは止めて。」
「嬉しいくせに〜」
「ふん。」
「はは。」
さて急な立ち合いになったけど、この後どうしようかな。
「色々とごめんなさいね。こんな事になっちゃって。」
「いいよ。今後の為に必要な事って言うのは、勇者だけじゃなくエストもだから。」
「ふふ。大きい声じゃ言えないけど、貴方の方が勇者っぽいわね。」
「遠慮するよ。みんなのヒーローにはなる気がないから。僕らは楽しく旅が出来ればそれでいい。」
「そうは言っても見逃して貰えるかしら?」
チラッと目を動かした先には国王とレブルが仲良く話している。そこにはエストや他の人が居る。
「……嫌な予感がするよ。」
「それはこの後分かるわ。ほら、呼ばれているわよ。」
レブルに呼ばれて、少し離れたところにいた僕とハーネスはみんなと合流する。
「さて、先の戦闘を見せて貰って一つ聞きたいのだが。」
「はい。何でしょうか?」
「はっきり聞こう。このまま王都に残って、共にこの国を守って貰えないだろうか?無論、地位や名誉も与える事ができる。」
「お断りします。」
少し驚かれた顔をしている。即答は不味かったか?
「即答とは……何か目的があるのか?」
「目的は世界を見る事です。」
「その上で魔族が邪魔をしてきたらどうする?平和になってから旅をしてもいいだろう?」
「そうですね。道中に魔物と出会う事もあるでしょう。だからこそ今なんだと思います。」
「そうか。我に其方らを縛る事はできん。最後に一つだけ……エストレアの事をお願いします。」
頭を下げる国王。
「国王様が簡単に頭を下げてはいけませんよ。」
「はっはっは。我は1人の父親として話しているのだ。気にする事もない。」
「お父様……。」
「であるから、もう少しはここに顔を出しなさい。エストレアは幼少期から、何かと遠慮しすぎだ。」
なんだいい父親じゃないか。自分の王都が可愛いからって贔屓するような人に見えないぞ。
「ん〜。」
「どうしたのシノブさん?」
「なんかさ。エストが言っているような人には見えなくて。王都を第一優先に!みたいな。聞いていた話だと自分が可愛い人なのかと。」
「言われてみれば。何か色々と矛盾と言うか、違和感があるわ。」
そうなるとだ。あの金ピカ騎士団に命令した人は誰になるんだ?ここにいるし聞いてみて貰おうかな。
「ハーネス。」
「何かしら?」
「話はだいぶ戻るんだけど。金ピカ騎士団に命令した人は、結局誰なんだろう?」
「あーそう言えばそうね。」
「あの国王様を見ていると、そんな悪い人に見えないんだけど。」
「それは私も少し驚いているわ。貴方達に会う前と比べて、まるで別人でね。まぁそれは良いとして、聞いて来るわね。」
ハーネスに聴き取りをお願いした。これで少し分かればいいんだけど。
♦︎
闘技場を後にして、さっきのテラスに戻ってきた。今はみんなでお茶を飲んでまったりしている。
―コンコン。
「ハーネスです。」
「うむ。入れ。」
「失礼します。シノブに言われ聴き取りをしたのですが、少し気になる話が……」
「それはなんだ?」
「彼らが宿へエストレアを迎えに行く命令を出した方話なんですが。どうやら国王様と証言をしていまして……」
みんなが国王を見る。
「我が命じたと間違いではないのだな?」
「そう言っています。」
「ふむ……言った記憶がないな。」
「お父様が言うのであれば、違うのでしょう。そうなると……」
「嘘は言ってないように見えたわ。」
無言の空気がテラスを包む。国王は言っていなくて、騎士団は国王と言っている。
「どっちの言い分も間違ってないとすると、幻覚を見せられたか操られている。もしくは国王に似た別の誰かがいる……ですかね。」
僕がボソッとそう言う事を言ったら、みんなに注目された。何かおかしな事言った?
「はっはっは。シノブ殿は面白い事を言う。」
「他に兄弟で似ているやつはいないぞ?あ、だからって俺じゃないからな。」
「「……。」」
大きな声で笑う国王と、自分じゃないと言うお兄さん。エストとキャリパーの2人が考え込む。
「変な事言ってごめんなさい。そんな事もあるかなのかな?なんて。」
『忍様。気になるのであれば調べる事も出来ますが?』
「え?本当に?」
『可能です。能力を見せないようにする事の逆なのでで。私がしなくても出来る人間はいますが。』
どうやら他のみんなも気がついたようだ。
「お兄様がまず本物かどうか……」
「お姉様。それはシノブさんとアイさんに任せましょう。それでお互いが見れば解決です。」
「そこで僕の名前が?」
「多分だけど出来るんでしょう?」
「まぁそうだけど。」
僕とお兄さんで見つめ合う。
「男の人と見つめ合うのは……」
『別に対象さえ触れれば、見なくても構いませんよ。』
「見なくていいんだ。」
「すまないが、俺は相手の目を見ないといけなくて。」
「早くすませちゃいましょう。あ、一つだけ言いますが。能力については他言無用でお願いします。」
「それはもちろ…………ん?」
お兄さんと目が合う。僕もちゃっちゃと済ませちゃおう。触ればいいんだよね。
あーこれが見る力なのか。前衛向きのステータスではないな……かと言って使える魔法もない。知将タイプなんだろう。
「これ何をもって本物になるの?」
「その者の名が見えるはずです。それを偽る事はできません。」
「名前か…… イグナイター・ライドステアってなってます。僕はどうですか?」
「その名前が読めないんだが、古代文字か何かか?」
「あ、それってこれですよね。川崎でカワサキ、忍でシノブって読みます。」
実際紙に書いて名前を書いてみる。こっちじゃずっとシノブと名乗っていたけど、本来の名前は変わらないんだね。
「名前もそうだけど……君は本当に人間かい?」
「一応そうなっているはずだけど。」
「他にも何かあるね……これが……」
「しーです。これ以上は言わないように。」
「分かったよ。これでお互いの証明はできたって事で……」
「…………。」
静かに成り行きを見守る人物が1人。
「さぁ国王。見せてもらうよ。」
「……ふっふっふ。」
目を瞑り静かに笑う国王。
「……長い様で短かったな。」
「みんな僕の背後に。」
どうしてこうなったんだろう。本当は巻き込まれたくなかったけど、やっぱり王都で勇者や王女に絡みすぎた。こうなる事は避けられなかったんだろう。
どこで間違ったかな〜
「正直ここまで戦えるとは驚いた。我がライバルのパーティメンバーなだけの事はある。」
「それは私もです。勇者様が手加減してくれたおかげで、ここまで見せられる手合わせになったのですから。」
「俺は別に手加減はしていないつもりだけどな……。」
「そんなことはありませんよ。聞いていますよ光の魔法剣を使えると。」
「あ、忘れていた。」
「……。」
やはり勇者は馬鹿なのかも知れない。今までの戦いではあえて使っていないのかと思ったのに。
「それでは見せてもらいましょう。勇者様の本気を!」
「っふ。面白い。いいだろう!シャインブレード!」
―キラッ、ブゥゥン!
無駄に眩しい剣だな。威力はきっと申し分ないけど、あの勇者分かってるのか?あの剣は……
「行くぞ!シャイィィィ……スラッシュ!」
―ヒュン!
上段に構えた光の剣を、エスト目掛けて振り落とす。当然読んでいたエストは、勇者との距離を一気に詰める。そして振り下ろされた剣の根本に、自身の剣を振り下ろす。
―バキィン!
「え?」
―ッス。
「勝負有りです。」
勇者の剣を折ったエスト。それに驚いた勇者の隙を見逃さず、首元にしっかり剣を向けるエスト。
「ほぅ……レブルの言う通り終わったな。武器破壊を狙っていたとは。」
「攻める事が得意じゃないエストならではの戦い方ね。成長したわ。」
「師にそう言って貰えると、嬉しいものだな。」
終わってみれば呆気ない。まぁいつもの武器で勝負したらまた結果は変わるだろうけど。これは立ち合いであって殺し合いではない。
「……これが俺の実力か。」
「勇者様……。」
「課題は状況判断と視野の狭さね。」
「……。」
折れた剣を見つめ、天を仰ぐ勇者。
「なんか悪い事をしてしまったかしら。」
「エストが気にする事はないわ。」
「そうそう。勇者には強くなってもらわないと。今後王都を守るには必要な経験だって。」
「2人で頭を撫でるのは止めて。」
「嬉しいくせに〜」
「ふん。」
「はは。」
さて急な立ち合いになったけど、この後どうしようかな。
「色々とごめんなさいね。こんな事になっちゃって。」
「いいよ。今後の為に必要な事って言うのは、勇者だけじゃなくエストもだから。」
「ふふ。大きい声じゃ言えないけど、貴方の方が勇者っぽいわね。」
「遠慮するよ。みんなのヒーローにはなる気がないから。僕らは楽しく旅が出来ればそれでいい。」
「そうは言っても見逃して貰えるかしら?」
チラッと目を動かした先には国王とレブルが仲良く話している。そこにはエストや他の人が居る。
「……嫌な予感がするよ。」
「それはこの後分かるわ。ほら、呼ばれているわよ。」
レブルに呼ばれて、少し離れたところにいた僕とハーネスはみんなと合流する。
「さて、先の戦闘を見せて貰って一つ聞きたいのだが。」
「はい。何でしょうか?」
「はっきり聞こう。このまま王都に残って、共にこの国を守って貰えないだろうか?無論、地位や名誉も与える事ができる。」
「お断りします。」
少し驚かれた顔をしている。即答は不味かったか?
「即答とは……何か目的があるのか?」
「目的は世界を見る事です。」
「その上で魔族が邪魔をしてきたらどうする?平和になってから旅をしてもいいだろう?」
「そうですね。道中に魔物と出会う事もあるでしょう。だからこそ今なんだと思います。」
「そうか。我に其方らを縛る事はできん。最後に一つだけ……エストレアの事をお願いします。」
頭を下げる国王。
「国王様が簡単に頭を下げてはいけませんよ。」
「はっはっは。我は1人の父親として話しているのだ。気にする事もない。」
「お父様……。」
「であるから、もう少しはここに顔を出しなさい。エストレアは幼少期から、何かと遠慮しすぎだ。」
なんだいい父親じゃないか。自分の王都が可愛いからって贔屓するような人に見えないぞ。
「ん〜。」
「どうしたのシノブさん?」
「なんかさ。エストが言っているような人には見えなくて。王都を第一優先に!みたいな。聞いていた話だと自分が可愛い人なのかと。」
「言われてみれば。何か色々と矛盾と言うか、違和感があるわ。」
そうなるとだ。あの金ピカ騎士団に命令した人は誰になるんだ?ここにいるし聞いてみて貰おうかな。
「ハーネス。」
「何かしら?」
「話はだいぶ戻るんだけど。金ピカ騎士団に命令した人は、結局誰なんだろう?」
「あーそう言えばそうね。」
「あの国王様を見ていると、そんな悪い人に見えないんだけど。」
「それは私も少し驚いているわ。貴方達に会う前と比べて、まるで別人でね。まぁそれは良いとして、聞いて来るわね。」
ハーネスに聴き取りをお願いした。これで少し分かればいいんだけど。
♦︎
闘技場を後にして、さっきのテラスに戻ってきた。今はみんなでお茶を飲んでまったりしている。
―コンコン。
「ハーネスです。」
「うむ。入れ。」
「失礼します。シノブに言われ聴き取りをしたのですが、少し気になる話が……」
「それはなんだ?」
「彼らが宿へエストレアを迎えに行く命令を出した方話なんですが。どうやら国王様と証言をしていまして……」
みんなが国王を見る。
「我が命じたと間違いではないのだな?」
「そう言っています。」
「ふむ……言った記憶がないな。」
「お父様が言うのであれば、違うのでしょう。そうなると……」
「嘘は言ってないように見えたわ。」
無言の空気がテラスを包む。国王は言っていなくて、騎士団は国王と言っている。
「どっちの言い分も間違ってないとすると、幻覚を見せられたか操られている。もしくは国王に似た別の誰かがいる……ですかね。」
僕がボソッとそう言う事を言ったら、みんなに注目された。何かおかしな事言った?
「はっはっは。シノブ殿は面白い事を言う。」
「他に兄弟で似ているやつはいないぞ?あ、だからって俺じゃないからな。」
「「……。」」
大きな声で笑う国王と、自分じゃないと言うお兄さん。エストとキャリパーの2人が考え込む。
「変な事言ってごめんなさい。そんな事もあるかなのかな?なんて。」
『忍様。気になるのであれば調べる事も出来ますが?』
「え?本当に?」
『可能です。能力を見せないようにする事の逆なのでで。私がしなくても出来る人間はいますが。』
どうやら他のみんなも気がついたようだ。
「お兄様がまず本物かどうか……」
「お姉様。それはシノブさんとアイさんに任せましょう。それでお互いが見れば解決です。」
「そこで僕の名前が?」
「多分だけど出来るんでしょう?」
「まぁそうだけど。」
僕とお兄さんで見つめ合う。
「男の人と見つめ合うのは……」
『別に対象さえ触れれば、見なくても構いませんよ。』
「見なくていいんだ。」
「すまないが、俺は相手の目を見ないといけなくて。」
「早くすませちゃいましょう。あ、一つだけ言いますが。能力については他言無用でお願いします。」
「それはもちろ…………ん?」
お兄さんと目が合う。僕もちゃっちゃと済ませちゃおう。触ればいいんだよね。
あーこれが見る力なのか。前衛向きのステータスではないな……かと言って使える魔法もない。知将タイプなんだろう。
「これ何をもって本物になるの?」
「その者の名が見えるはずです。それを偽る事はできません。」
「名前か…… イグナイター・ライドステアってなってます。僕はどうですか?」
「その名前が読めないんだが、古代文字か何かか?」
「あ、それってこれですよね。川崎でカワサキ、忍でシノブって読みます。」
実際紙に書いて名前を書いてみる。こっちじゃずっとシノブと名乗っていたけど、本来の名前は変わらないんだね。
「名前もそうだけど……君は本当に人間かい?」
「一応そうなっているはずだけど。」
「他にも何かあるね……これが……」
「しーです。これ以上は言わないように。」
「分かったよ。これでお互いの証明はできたって事で……」
「…………。」
静かに成り行きを見守る人物が1人。
「さぁ国王。見せてもらうよ。」
「……ふっふっふ。」
目を瞑り静かに笑う国王。
「……長い様で短かったな。」
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