無敵のフルフェイス
92話 守りと護り。
国王と突然の謁見。とは言え、先にみんながいって許可は貰ってくれていたんだけど。
お兄さんを連れてテラスに空からの訪問。
まただらだら話してもしょうがないので、僕は単刀直入に聞いてみた。
「我がそのような命令を?した覚えはないのだが……」
「って言っているわよお兄様?」
「あぁ地面だ……。」
「あれはしばらく使い物のならないわね。」
国王様も知らないし、そもそもお兄さんも知らないとなると、誰が命令をしたのだろうか。
「もうあいつらの独断じゃないかしら?それでいい気もするわ。」
「あのヘボ騎士団……おっと、黄金騎士団がそんな事をするかしら。命令を受けないと何にも出来ないような団よ?」
ハーネスさんが僕を見ながら言ってくるけど、その度合いを求められても困る。
でも国王様が嘘を言ったり忘れたりはないのだろうか。
エストが首を振る。
「お父様は嘘はつけないし、言った事を忘れる事は出来ないわ。」
「つけないね……」
嘘はつかない。ではなくつけない。忘れる事は出来ないって言うのは何か秘密があるんだろ。その言葉自体には、決して口には出来ない凄く深い意味を感じる。
「そうなるとだ。誰が話したのって事になるよ?それとも国王様と勇者以外に命令されたとか?」
「それはないはずです。彼ら騎士団は勇者様直属。勇者様と王族以外に命令権は与えていないです。」
「そうなの?それならハーネスの言う事も聞かないの?」
「私?別にヘボ騎士団と話す事もなければ、任せられる仕事もないもの。命令権なんて無用だわ。」
「酷い言われようだ……」
「それは貴方がしっかりと教育をしないからよ?」
「耳が痛い話だ。」
変なところに飛び火した。ここは触れずにスルーしておこう。
「ところでエストレアよ。」
「はい。国王様。」
「そのような喋り方でなくてよい。この場は我らしかおらぬ言え。」
「なら気にしないわね。で、何か用?」
「急にドライじゃな……まぁその方がエストレアらしいか。ごほん!その聞いた話なんだが、帯刀していたそうだが新作か?まさかとは思うが戦闘なんぞしたり……」
みんながエストの腰にあった剣を取り出して渡す。
「外の鞘は私が作ったけど。剣自体は譲り受けたものよ。それとこれは当然戦闘用よ?」
「エストレアよ。あいつのところで剣を作る鍛治師になると言っていたではないか?」
「勿論。それも続けているわよ。ただパーティで行動しているうちに自然とこうなった。」
「自然と……シノブくんと言ったか。エストレアは怪我はしてないか?」
「え?あ、はい。大きい怪我はありませんね。優秀な治癒師もパーティにいますし。」
「しかし戦闘となれば剣士としてはまだ未熟であろう?」
「剣を教えているのは別の者で、特に問題も……」
「ございませんわ。」
「だそうです。」
エストと毎日のように剣で稽古をしているのはレブルだな。って目線を合わせたら問題ないと答えてくれた。その目線がレブルに向く。
「そちらの赤いお嬢さんは、確かレブルと名乗っていたな。」
「はい。レブルと申します。」
「よいよい。公の場ではないのだ。もっと楽にせよ。」
「そう。で、私に何か用?」
「お、おう。ごほん!エストレアの戦士として問題ないと言うのは、具体的にどう言う事だろうか。」
「そうね……。」
エストを見て、僕を見るレブル。そのまま部屋の人間をぐるりと見回す。
「ここにいる中で、4番目の強さかしら。」
「4番目と?師であるお主と、ハーネスに勇者の次にか?」
「順番が違うわね。シノブさん、ハーネス、私にエストよ。」
「…………俺がいない。」
「ココロは弱いもの。」
「ハーネス……。」
突然の話題に更に落ち込む勇者ココロ。頑張れ!
「なんかの冗談だろう?勇者にエストレアが勝てるとは思えんのだが。」
「そう思うなら手合わせすればいいわ。」
「「え?」」
レブルの突然の発言に声を上げるエストと勇者。
「面白そうじゃない。シノブやレブルじゃ相手にならないし、丁度いいんじゃない?」
「相手にならないって、そんなはっきり言わなくてもだな。」
「事実でしょう?私が合わせるより訓練になると思うわよ。勿論、練習用の剣でだけど。」
「まぁそれなら……」
「エストレアもそれでいいわよね?」
「え?あ、はい。じゃなくて!止めてよ!」
僕に言われても困る。剣の師匠はレブルだからレブルに言って欲しい。目線を逸らしレブルを見る。
「私が決めるの?それなら戦いなさい。私やシノブさん以外と戦うのも訓練よ。」
「……。」
レブルの言葉に一瞬凄く嫌そうな顔をしたエスト。
♦︎
早速みんなで王都の訓練場に来た。
「なんでここに金ピカ騎士団がいるのよ。」
「ここは元々が兵士の修練所であるからな。」
「国王の権限で退かすことできないの?」
「してもいいが、戦闘は見せた方がいいと思うぞレブル。」
「見てもわかんないと思うけど。邪魔にならないなら。」
「はっはっは。寛大な心に感謝する。」
国王様とレブルが仲良く喋っている。そこらのおじさんじゃないんだから、砕けすぎな気もするけど怒っている様子はない。
「あの子凄いわね。別に本人がいいと言っていたけど、お父様前にしてあんな態度取れるって。」
「彼女は空気も読める子だから。ここまでは大丈夫だって分かっているのよ。」
「レブルは色々と気がつくからね。」
「貴方はそう言うところできなさそうだから、2人で丁度いいのかもしれないわね。」
「別に僕だって空気とか読むけど。」
「「ソウデスネ。」」
そんな話をしているうちに、兵士達は場外に移動している。真ん中にはエストと勇者が対峙している。
それを見てハーネスが2人の審判を引き受けて前に出る。
「コインが落ちたらスタートね。」
―キィーン……
オーソドックスな合図だが分かりやすい。みんながコインを見て見上げて、その行方に目を追う。
―カキィン。
「はぁぁ!!」
「っふ。」
―ブゥゥン!
勇者の大振りな上段を、軽々交わすエスト。そのまま横に避けるだけだと……
「甘いぞ!貰った!」
「すぅ……」
―カツン。
「お、うまい。」
横に避けた後の追撃をしっかり見抜いていたエスト。剣で勢いを逸らしてから屈み、その勢いを活かし回転。そしてガラ空きな横腹に……
「っふ!」
「がはっ!?」
掌底で脇腹を捉え、大きく息を吐いた勇者に更に追い討ちをかける。
「は!」
「ぐぬ、なんの!」
―キィン!
エストの剣を止めた勇者。相変わらず出鱈目な防御力だな。あの2度目の攻撃に反応出来ないくらいのダメージはあるはずなのに。
それに驚いたかエストは一度距離をとる。
「さすがに勇者ともなればタフね。」
「頑丈さは取り柄の一つだからね。」
「そう。では次にいきましょうか。」
剣を構えてその場で立ち止まる。それに突撃していく勇者。今度は横薙ぎでフルスイング。
「……。」
「てりゃ!」
―ギギ、キィン!
勢いを流し体を屈めて回避する。この流れって……
剣の軌道を受け流され、またもガラ空きな横腹。勢いを利用して今度は始めから剣を振る。
―ドスッ。
「ごはっ!?」
「……。」
再び距離をとるエスト。その後に首を捻る。
「……馬鹿なの?」
「正解!」
「かはっ。ハーネス……。」
同じ攻撃で同じ結果に疑問を持ったエストはぽろっと口にした。
馬鹿なのかと。それにハーネスが即返事。勇者が違うところから精神攻撃を受けている。
「ふぅ……中々やるな!こっちも少しは本気で行かねばならんな!」
「そう言うのって下っ端な魔族が使いそうね。」
「ぐはっ!?」
「戦いは常に本気で来なさい。そうじゃなきゃみんなを護れないわ。」
「そうだね……失礼した。俺も勇者として、人々を守らねばならんからな。」
剣を構え直して両者が再び対峙する。
お兄さんを連れてテラスに空からの訪問。
まただらだら話してもしょうがないので、僕は単刀直入に聞いてみた。
「我がそのような命令を?した覚えはないのだが……」
「って言っているわよお兄様?」
「あぁ地面だ……。」
「あれはしばらく使い物のならないわね。」
国王様も知らないし、そもそもお兄さんも知らないとなると、誰が命令をしたのだろうか。
「もうあいつらの独断じゃないかしら?それでいい気もするわ。」
「あのヘボ騎士団……おっと、黄金騎士団がそんな事をするかしら。命令を受けないと何にも出来ないような団よ?」
ハーネスさんが僕を見ながら言ってくるけど、その度合いを求められても困る。
でも国王様が嘘を言ったり忘れたりはないのだろうか。
エストが首を振る。
「お父様は嘘はつけないし、言った事を忘れる事は出来ないわ。」
「つけないね……」
嘘はつかない。ではなくつけない。忘れる事は出来ないって言うのは何か秘密があるんだろ。その言葉自体には、決して口には出来ない凄く深い意味を感じる。
「そうなるとだ。誰が話したのって事になるよ?それとも国王様と勇者以外に命令されたとか?」
「それはないはずです。彼ら騎士団は勇者様直属。勇者様と王族以外に命令権は与えていないです。」
「そうなの?それならハーネスの言う事も聞かないの?」
「私?別にヘボ騎士団と話す事もなければ、任せられる仕事もないもの。命令権なんて無用だわ。」
「酷い言われようだ……」
「それは貴方がしっかりと教育をしないからよ?」
「耳が痛い話だ。」
変なところに飛び火した。ここは触れずにスルーしておこう。
「ところでエストレアよ。」
「はい。国王様。」
「そのような喋り方でなくてよい。この場は我らしかおらぬ言え。」
「なら気にしないわね。で、何か用?」
「急にドライじゃな……まぁその方がエストレアらしいか。ごほん!その聞いた話なんだが、帯刀していたそうだが新作か?まさかとは思うが戦闘なんぞしたり……」
みんながエストの腰にあった剣を取り出して渡す。
「外の鞘は私が作ったけど。剣自体は譲り受けたものよ。それとこれは当然戦闘用よ?」
「エストレアよ。あいつのところで剣を作る鍛治師になると言っていたではないか?」
「勿論。それも続けているわよ。ただパーティで行動しているうちに自然とこうなった。」
「自然と……シノブくんと言ったか。エストレアは怪我はしてないか?」
「え?あ、はい。大きい怪我はありませんね。優秀な治癒師もパーティにいますし。」
「しかし戦闘となれば剣士としてはまだ未熟であろう?」
「剣を教えているのは別の者で、特に問題も……」
「ございませんわ。」
「だそうです。」
エストと毎日のように剣で稽古をしているのはレブルだな。って目線を合わせたら問題ないと答えてくれた。その目線がレブルに向く。
「そちらの赤いお嬢さんは、確かレブルと名乗っていたな。」
「はい。レブルと申します。」
「よいよい。公の場ではないのだ。もっと楽にせよ。」
「そう。で、私に何か用?」
「お、おう。ごほん!エストレアの戦士として問題ないと言うのは、具体的にどう言う事だろうか。」
「そうね……。」
エストを見て、僕を見るレブル。そのまま部屋の人間をぐるりと見回す。
「ここにいる中で、4番目の強さかしら。」
「4番目と?師であるお主と、ハーネスに勇者の次にか?」
「順番が違うわね。シノブさん、ハーネス、私にエストよ。」
「…………俺がいない。」
「ココロは弱いもの。」
「ハーネス……。」
突然の話題に更に落ち込む勇者ココロ。頑張れ!
「なんかの冗談だろう?勇者にエストレアが勝てるとは思えんのだが。」
「そう思うなら手合わせすればいいわ。」
「「え?」」
レブルの突然の発言に声を上げるエストと勇者。
「面白そうじゃない。シノブやレブルじゃ相手にならないし、丁度いいんじゃない?」
「相手にならないって、そんなはっきり言わなくてもだな。」
「事実でしょう?私が合わせるより訓練になると思うわよ。勿論、練習用の剣でだけど。」
「まぁそれなら……」
「エストレアもそれでいいわよね?」
「え?あ、はい。じゃなくて!止めてよ!」
僕に言われても困る。剣の師匠はレブルだからレブルに言って欲しい。目線を逸らしレブルを見る。
「私が決めるの?それなら戦いなさい。私やシノブさん以外と戦うのも訓練よ。」
「……。」
レブルの言葉に一瞬凄く嫌そうな顔をしたエスト。
♦︎
早速みんなで王都の訓練場に来た。
「なんでここに金ピカ騎士団がいるのよ。」
「ここは元々が兵士の修練所であるからな。」
「国王の権限で退かすことできないの?」
「してもいいが、戦闘は見せた方がいいと思うぞレブル。」
「見てもわかんないと思うけど。邪魔にならないなら。」
「はっはっは。寛大な心に感謝する。」
国王様とレブルが仲良く喋っている。そこらのおじさんじゃないんだから、砕けすぎな気もするけど怒っている様子はない。
「あの子凄いわね。別に本人がいいと言っていたけど、お父様前にしてあんな態度取れるって。」
「彼女は空気も読める子だから。ここまでは大丈夫だって分かっているのよ。」
「レブルは色々と気がつくからね。」
「貴方はそう言うところできなさそうだから、2人で丁度いいのかもしれないわね。」
「別に僕だって空気とか読むけど。」
「「ソウデスネ。」」
そんな話をしているうちに、兵士達は場外に移動している。真ん中にはエストと勇者が対峙している。
それを見てハーネスが2人の審判を引き受けて前に出る。
「コインが落ちたらスタートね。」
―キィーン……
オーソドックスな合図だが分かりやすい。みんながコインを見て見上げて、その行方に目を追う。
―カキィン。
「はぁぁ!!」
「っふ。」
―ブゥゥン!
勇者の大振りな上段を、軽々交わすエスト。そのまま横に避けるだけだと……
「甘いぞ!貰った!」
「すぅ……」
―カツン。
「お、うまい。」
横に避けた後の追撃をしっかり見抜いていたエスト。剣で勢いを逸らしてから屈み、その勢いを活かし回転。そしてガラ空きな横腹に……
「っふ!」
「がはっ!?」
掌底で脇腹を捉え、大きく息を吐いた勇者に更に追い討ちをかける。
「は!」
「ぐぬ、なんの!」
―キィン!
エストの剣を止めた勇者。相変わらず出鱈目な防御力だな。あの2度目の攻撃に反応出来ないくらいのダメージはあるはずなのに。
それに驚いたかエストは一度距離をとる。
「さすがに勇者ともなればタフね。」
「頑丈さは取り柄の一つだからね。」
「そう。では次にいきましょうか。」
剣を構えてその場で立ち止まる。それに突撃していく勇者。今度は横薙ぎでフルスイング。
「……。」
「てりゃ!」
―ギギ、キィン!
勢いを流し体を屈めて回避する。この流れって……
剣の軌道を受け流され、またもガラ空きな横腹。勢いを利用して今度は始めから剣を振る。
―ドスッ。
「ごはっ!?」
「……。」
再び距離をとるエスト。その後に首を捻る。
「……馬鹿なの?」
「正解!」
「かはっ。ハーネス……。」
同じ攻撃で同じ結果に疑問を持ったエストはぽろっと口にした。
馬鹿なのかと。それにハーネスが即返事。勇者が違うところから精神攻撃を受けている。
「ふぅ……中々やるな!こっちも少しは本気で行かねばならんな!」
「そう言うのって下っ端な魔族が使いそうね。」
「ぐはっ!?」
「戦いは常に本気で来なさい。そうじゃなきゃみんなを護れないわ。」
「そうだね……失礼した。俺も勇者として、人々を守らねばならんからな。」
剣を構え直して両者が再び対峙する。
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