無敵のフルフェイス
87話 平和な場所はどこにもない。
会議を早々に終えて、僕とエストとレブルは勇者一行に連れられて『王都ライドステア』のお城に向かうための第3堀まで来た。
「私よ。お父様に用があるからここを通して頂戴。」
「お帰りなさいませキャリパー王女。それに勇者様も。後ろの者達は先程ここに来ていたような?」
「妹とそのパーティメンバーよ。」
「そうでありましたか!それであれば…………妹様?」
「また会いましたわね。第七王女のエストレア・ライドステアですわ。」
「「し、し……失礼いたしました!!」」
先程とは違い態度が急変した門番。今回は本物の王女様がいる訳だし。すんなり信じて貰えた。
「第七王女って言うのは、少し意地悪な気がするけど?」
「これくらい言ってもいいじゃない。別に罰則を与える訳じゃないしー」
「ただの八つ当たりじゃない。」
「それくらいはやっても……」
「それを名乗るからには、それなりの覚悟があるのよねエストレア?」
「申し訳ありませんお姉様!少し調子に乗りました!!」
「いいのよ〜嘘ではないし。これからの態度を改めるなら、私は歓迎よ?」
「ひぃ!」
兵士達に見えないよう振り返り、エストに思いっきり微笑みかけるキャリパーさん。その目は全く笑っていない。エストは声にならない悲鳴をあげそうだったが、レブルが口を抑えて事なきを得た。
「ここが王都中心地か〜全然人が歩いていないんだね。」
「ここは王家の人間と、その血縁者しかいないから。そこまで人は多くないのです。」
「派手な馬車はちらちらと見るけど?」
「こんな道端を歩くような人間は普通いないわよ。移動は全て馬車だし、護衛がいないと外出は難しいから。」
「そうなんだね。」
街を歩きながらキャリパーさんが解説してくれる。
「一言で言えば、自分の足で街中を歩く人がいないって事よ。贅沢を覚えた人は中々そこから抜け出せないものよ。」
「太りそうね……」
「……さぁ、私達は歩いて向かうわよ!」
「いつもは馬車を呼ぶのに良いのか?」
「今日は初めて見るお2人に、王都を紹介しながら行くためですよ勇者様!」
「そうか。それならいいんだ。」
堀を超えた後に歩かず周りを見ていたのは、馬車を呼ぶためではなかったのだろうか?レブルの一言で突然歩き出したように見えたけど……
ハーネスさんと目が合い、人差し指を口に手を当ててウィンクされる。女の人にしか分からない何かがあるのだろう。僕は気にせずその後を追いかける。
王都を歩きながらお城に向かう。メンバーは勇者ココロに指南役ハーネスさんと第一王女キャリパーさん。
「そう言えば仲間の商人は連れてこなくて良かったの?」
「うん。交渉とかがあればアマンかゾンに任せるけど。今日はキャリパーさんが話してくれるし、何かあってもこのメンバーなら切り抜けられるし。」
「それでこの3人の編成なのね。と言うか、一体何が起こるのとしているのかしら?」
「それは分からないよ。ただ何となく。セローも連れてきて良かったけど……あ、青い髪の魔導師の子ね。」
「あのな小さい子でも凄い魔力だったしね……」
「まぁそう言う訳だから、残ったメンバーの護衛をお願いしてる。何が起こるか分からないからね。」
「一体何を警戒してるのですか?」
「まだ色々だよ。」
アマン達は屋敷で待機してもらっている。魔族達の動きも今のところはないけど、どうなるか分からない状況だからセローに任せてきた。範囲探索も少し使えるし、戦力的にはハイヤーもいるから安心して任せられる。
みんなで移動しているが気になる事がある。
道行く馬車が止まり移動であればと、声を掛けてくると言う事。
キャリパーさんを見かけては馬車を止めてるって、凄い光景だな。
「もういっそ乗ります?」
「お2人がそれで良いのでしたら。」
結局馬車に乗りお城まで送ってもらう事にした。
―カラカラ。
「……。」
「向かい合うとなんか気まずいわね。」
「そうですね。」
「6人も座っているからね。」
「これでも広い方の馬車ですが。」
「外見てみなよ2人とも!凄いよ〜」
「シノブさんはマイペースね。」
みんなは気まずいみたいだけど、お城とか綺麗な街並みを見ているだけで少しは紛れると思う。
そして走る事数分で馬車は止まった。
「もう着いたの?」
「そんな早いかしら?少し見てみましょう。」
外を覗くと人が馬車を取り囲む。
「人に囲まれているわ。どうなっているの?」
「僕が聞きたいけど。結局王都の中には治安いい場所がないって事?」
「そんな城を目の前にして、襲って来るような馬鹿な事をする人は……」
「アイさん。外の声を拾えるかな?」
『可能です。窓を少し開けて下さい。風で声を運びましょう。』
暫く様子を見守ると、馬を操っていた人が馬車を捨てて逃げていった。
「女に傷をつけるなよ。あんな上玉が4人も一気に手に入る機会なんてそうそうないからな。」
「剣を持った派手な男と黒い魔道士がいたから、先に魔道士を殺しておけ。」
風が運んでくる声はこれぞ悪党って言葉だった。
「……王都の治安どうなのよ。ここに来てから戦闘ばっかりよ。」
「エストの家も大変な場所なのね。でももしかすると、シノブさんがそう言うのを引き付けるのかしら?」
「レブルがそう言うとそんな気がして来るよ。」
別にそんな特殊能力はないけど、平和と呼ぶには程遠い生活をしてきた気がする。冒険ってそう言うもんなんだと、最近は自分に言い聞かせている。
「上玉が4人だって〜嫌な気はしないわね!」
「キャリパー、今はそんな事言っている場合じゃないわよ。」
「そうだぞ!悪はこの俺が退治してくれる。2人は下がっているんだ!」
「こんな狭いところで立ち上がらないでよ。それと貴方が出るとややこしくなるから、ここでじっとしておいて。シノブさんにお任せしたいんだけど?」
「僕に?別にいいけど。アイさん出来る?」
『はい。声を運ぶ際に敵と一般人は切り分けています。』
それならと僕は馬車の扉を空けて外に出る。
「それじゃ少し掃除してくる。」
「あ、シノブさん程々にね。」
「大丈夫だよ。敵はもう見分けているから……」
「そう言う事じゃないんだけど。」
さぁ僕らはやる事もあるし、時間をかけるのはよろしくない。
「アイさん!敵は外に飛ばすから。座標の固定と範囲指定だけお願いね。」
『畏まりました。範囲と座標……指定できました。』
「舞い上がれ!トランスサイクロン!」
「なんだこの風こんな……」
「お頭!これはどこかに……」
「みんな消えていく!?この風は……」
「いやだ!このま……」
風で飛ばしたように見せとして、実は王都の外まで転移で飛ばしているだけだったりする。
王都に出発する前にアマンに言われた。転移を使うなら少し目立たない努力をしろと。風魔法なら飛んでいったと思えば大丈夫だよね!
「今日の快晴。さて行こうか。」
風が雲をも散らし、雲一つない綺麗な青空が広がる。
「私よ。お父様に用があるからここを通して頂戴。」
「お帰りなさいませキャリパー王女。それに勇者様も。後ろの者達は先程ここに来ていたような?」
「妹とそのパーティメンバーよ。」
「そうでありましたか!それであれば…………妹様?」
「また会いましたわね。第七王女のエストレア・ライドステアですわ。」
「「し、し……失礼いたしました!!」」
先程とは違い態度が急変した門番。今回は本物の王女様がいる訳だし。すんなり信じて貰えた。
「第七王女って言うのは、少し意地悪な気がするけど?」
「これくらい言ってもいいじゃない。別に罰則を与える訳じゃないしー」
「ただの八つ当たりじゃない。」
「それくらいはやっても……」
「それを名乗るからには、それなりの覚悟があるのよねエストレア?」
「申し訳ありませんお姉様!少し調子に乗りました!!」
「いいのよ〜嘘ではないし。これからの態度を改めるなら、私は歓迎よ?」
「ひぃ!」
兵士達に見えないよう振り返り、エストに思いっきり微笑みかけるキャリパーさん。その目は全く笑っていない。エストは声にならない悲鳴をあげそうだったが、レブルが口を抑えて事なきを得た。
「ここが王都中心地か〜全然人が歩いていないんだね。」
「ここは王家の人間と、その血縁者しかいないから。そこまで人は多くないのです。」
「派手な馬車はちらちらと見るけど?」
「こんな道端を歩くような人間は普通いないわよ。移動は全て馬車だし、護衛がいないと外出は難しいから。」
「そうなんだね。」
街を歩きながらキャリパーさんが解説してくれる。
「一言で言えば、自分の足で街中を歩く人がいないって事よ。贅沢を覚えた人は中々そこから抜け出せないものよ。」
「太りそうね……」
「……さぁ、私達は歩いて向かうわよ!」
「いつもは馬車を呼ぶのに良いのか?」
「今日は初めて見るお2人に、王都を紹介しながら行くためですよ勇者様!」
「そうか。それならいいんだ。」
堀を超えた後に歩かず周りを見ていたのは、馬車を呼ぶためではなかったのだろうか?レブルの一言で突然歩き出したように見えたけど……
ハーネスさんと目が合い、人差し指を口に手を当ててウィンクされる。女の人にしか分からない何かがあるのだろう。僕は気にせずその後を追いかける。
王都を歩きながらお城に向かう。メンバーは勇者ココロに指南役ハーネスさんと第一王女キャリパーさん。
「そう言えば仲間の商人は連れてこなくて良かったの?」
「うん。交渉とかがあればアマンかゾンに任せるけど。今日はキャリパーさんが話してくれるし、何かあってもこのメンバーなら切り抜けられるし。」
「それでこの3人の編成なのね。と言うか、一体何が起こるのとしているのかしら?」
「それは分からないよ。ただ何となく。セローも連れてきて良かったけど……あ、青い髪の魔導師の子ね。」
「あのな小さい子でも凄い魔力だったしね……」
「まぁそう言う訳だから、残ったメンバーの護衛をお願いしてる。何が起こるか分からないからね。」
「一体何を警戒してるのですか?」
「まだ色々だよ。」
アマン達は屋敷で待機してもらっている。魔族達の動きも今のところはないけど、どうなるか分からない状況だからセローに任せてきた。範囲探索も少し使えるし、戦力的にはハイヤーもいるから安心して任せられる。
みんなで移動しているが気になる事がある。
道行く馬車が止まり移動であればと、声を掛けてくると言う事。
キャリパーさんを見かけては馬車を止めてるって、凄い光景だな。
「もういっそ乗ります?」
「お2人がそれで良いのでしたら。」
結局馬車に乗りお城まで送ってもらう事にした。
―カラカラ。
「……。」
「向かい合うとなんか気まずいわね。」
「そうですね。」
「6人も座っているからね。」
「これでも広い方の馬車ですが。」
「外見てみなよ2人とも!凄いよ〜」
「シノブさんはマイペースね。」
みんなは気まずいみたいだけど、お城とか綺麗な街並みを見ているだけで少しは紛れると思う。
そして走る事数分で馬車は止まった。
「もう着いたの?」
「そんな早いかしら?少し見てみましょう。」
外を覗くと人が馬車を取り囲む。
「人に囲まれているわ。どうなっているの?」
「僕が聞きたいけど。結局王都の中には治安いい場所がないって事?」
「そんな城を目の前にして、襲って来るような馬鹿な事をする人は……」
「アイさん。外の声を拾えるかな?」
『可能です。窓を少し開けて下さい。風で声を運びましょう。』
暫く様子を見守ると、馬を操っていた人が馬車を捨てて逃げていった。
「女に傷をつけるなよ。あんな上玉が4人も一気に手に入る機会なんてそうそうないからな。」
「剣を持った派手な男と黒い魔道士がいたから、先に魔道士を殺しておけ。」
風が運んでくる声はこれぞ悪党って言葉だった。
「……王都の治安どうなのよ。ここに来てから戦闘ばっかりよ。」
「エストの家も大変な場所なのね。でももしかすると、シノブさんがそう言うのを引き付けるのかしら?」
「レブルがそう言うとそんな気がして来るよ。」
別にそんな特殊能力はないけど、平和と呼ぶには程遠い生活をしてきた気がする。冒険ってそう言うもんなんだと、最近は自分に言い聞かせている。
「上玉が4人だって〜嫌な気はしないわね!」
「キャリパー、今はそんな事言っている場合じゃないわよ。」
「そうだぞ!悪はこの俺が退治してくれる。2人は下がっているんだ!」
「こんな狭いところで立ち上がらないでよ。それと貴方が出るとややこしくなるから、ここでじっとしておいて。シノブさんにお任せしたいんだけど?」
「僕に?別にいいけど。アイさん出来る?」
『はい。声を運ぶ際に敵と一般人は切り分けています。』
それならと僕は馬車の扉を空けて外に出る。
「それじゃ少し掃除してくる。」
「あ、シノブさん程々にね。」
「大丈夫だよ。敵はもう見分けているから……」
「そう言う事じゃないんだけど。」
さぁ僕らはやる事もあるし、時間をかけるのはよろしくない。
「アイさん!敵は外に飛ばすから。座標の固定と範囲指定だけお願いね。」
『畏まりました。範囲と座標……指定できました。』
「舞い上がれ!トランスサイクロン!」
「なんだこの風こんな……」
「お頭!これはどこかに……」
「みんな消えていく!?この風は……」
「いやだ!このま……」
風で飛ばしたように見せとして、実は王都の外まで転移で飛ばしているだけだったりする。
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