無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

78話 おかしな人集り。

 王都に到着してからずっと戦闘続きだったので、昨日はすぐに寝付けた。


「アマンとゾンがいないな。相変わらず2人は早いな……ん!」


 ベットから出てヘルメットを被る。すると外から声が聞こえるようになった。


「アイさんおはよう。」
『おはようございます。忍様。』
「外が少し騒がしいけど何かあるのかね?」
『この宿の前に人集りが出来ていますね。半径1㎞以内で他に人が集まってはいないです。』
「1㎞?まぁいいか。祭りがあるって訳じゃなさそうだね。とりあえず着替えて下に行こうか。」


 身支度を終え、アマンとゾンが居るであろう1階に降りて行く。


 ーガシャーン!


 下に降りていくと、何かを砕く大きい音がした。1階に着いて宿の入口の方を見ると扉が壊れている。宿の人や他の宿泊者はロビーの端っこにいる。


「これはどう言う事?」
「シノブ!それが突然斬りつけてきて。レブルがいなきゃゾンがやばかった。」
「すまん。俺が何かまずい事を言ったようだ。」


 レブルが立ち上がるとこちらに向かって来る。


「どう言う状況?」
「変な騎士がゾンに剣を振りかぶったから、咄嗟に飛び蹴りをしたのよ。そうしたら予想以上に弱く吹き飛んでいったわ。」
「まぁ敵なら遠慮はしなくていいとして。ゾンは何を言ったの?」
「エストレア姫君がいるか聞かれたから、エストなら上で寝ているが?と言っただけだ。」
「何それ、人に尋ねといていきなり斬りかかるの?」
「剣を振りかぶった時に、呼び捨てとは不敬罪とか言ってたな。」
「理不尽にも程があるね。ラストラはセローとエストを起こしてきて。レブルは僕と外に。」
「武器が上にあるんだけど。素手でいいかしら?」
「ん……コレクト。とりあえず前の剣でいいかな?そしたらラストラ、レブルの剣も持って来て。」
「分かった。」


 トテトテと上に上がって行くラストラ。


「アマンとゾンは、3人揃ったら裏から出て馬の確保を。」
「「分かった。」」
「それじゃ行こうか。」
「ええ。」


 ゆっくりと歩くと、その度に宿の隅にいた人達がビクつく。


「アマン。一応扉と迷惑料の交渉は任せた。」
「ああ。」


 外に出ると倒れた兵士を介抱する人と、数人の兵士が宿を取り囲んでいる。


「あ……あお、おんああ!」
「っち。無事なんだ。」
「兜も砕けてるし、歯も不揃いなところ見ると無事とは言いづらいけどね。」
「貴様が隊長を!全員抜刀!」
「「「っは!!!」」」


 介抱していた兵士が声を上げると、取り囲んでいた兵士が剣を抜く。


「あの金ピカな鎧を見ると誰かさんを思い出すね。」
「……それだけで、少しイラッとするわ。」
「それはそれとして。ゾンにいきなり斬りつけた理由を聞いておきたい。」
「あいうあ、いえいいお、おいうえいいあ!」
「どうしよう。何言ってるか全然分からない。口の動きを読めば……そんな魔法なかったっけ?」
『御座います。リップリーディング。』
「悪いけど。もう一度言ってくれる?」
「(アイツは、姫君を、呼び捨てにした!)」


 ほぼ読み取れるな。この魔法凄いな。それはゾンから聞いているから、そうなると不敬罪と言うだけで斬りかかった?


「なんて言ってるの?」
「呼び捨てにしたって。」
「それが不敬罪?それだけで即剣を抜く理由になるの?」
「僕もそれは思う。」


 僕とレブルが揃って首を傾げると、さっき叫んでいた兵士が前に出てくる。


「この国で王族への敬意が無いものは、即打ち首だ!」
「何その横暴。どこにそんな国がある……ってここにあるか。」
「さっきの男とその女を、大人しく此方に引き渡せば貴様は不問とする。」
「いや、意味が分からないよ。」
「歯向かえば、貴様も反逆罪で連行する!」


 頭がおかしいとしか思えない。ここ王都だよね?それとも第2堀がおかしいだけか?どちらにしろ従う気はさらさらない。


「シノブさん。コイツらどうするの?」
「どうしようかな。ヴァイツァーの名前出せばいいかも知れないけど。それで巻き込むのも嫌だし。」
「いいんじゃない?昨日巻き込まれたし、何の問題もないでしょう。」
「そこは一応ね。別にこの人数がやばいわけじゃないから。」
「そうね。わざわざ呼びに行くのも面倒だわ。それで?剣を抜いてもいいかしら。」


 僕が許可を出す前に、レブルは剣を抜いていた。答える前になぜ抜いたし。会ってないようなもんだぞ。


「女が剣を構えたぞ!全員戦闘体勢!」
「「「っは!!!」
「どうやら向こうはやる気マンマンよ。」
「僕は始めから戦わない選択肢はないから。」
「どっちが多く倒すか競争ね。」
「レブルは魔法剣ないよね?それじゃ僕有利じゃない?」
「なら土属性は?あれ殆ど物理攻撃よね?」
「そっか。ならそれでやろう。」


 ―ズズ……バキン!


 レブルの言う通りに土で剣を作り出した。今回は鉄の配分を多めにした、そうする事でほぼ同じ見た目な剣に見える。


「準備はいい?よーい……」
「「どん!」」


 レブルは直進して兵士達の中心に突っ込んでいく。僕は左側に居る兵士に向かって走りだす。


 ―キィィン!


「馬鹿な!」
「握りが甘い!よくそんなので騎士を名乗れるわね。」
「この……ぐは!?」
「「「副隊長!」」」
「次……右ね。」
「ひぃ!?」


 レブルはそこから僕と反対側にいる奴に斬りかかる。


「副隊長が!」
「よそ見してる場合かな?」
「んな!ごふぅ……」
「次行くよ。」


 僕とレブルは次々と騎士を倒していく。


「いいぞ!やれー!」
「赤いねーちゃんも黒いにーちゃんも頑張れ!」


 何故か野次馬の人から声援が聞こえる。どう言う事だろう?騎士を倒してるのに。


「うわー何この状況。」
「凄いですね〜お祭りです。」
「地獄絵図ってこう言う事だよな。」
「でもアマン。皆んなの声援は凄いよ?」
「シノブ、いつでもいけるぞ。」


 皆んなが馬を連れて表までやって来る。ここに来たら裏から出た意味がないよ。


「皆んなこっちに来たらだめじゃん。」
「表から声援が聞こえたからな。これは行くしかないって。」
「まぁもう終わるからいいけど。」


 ―キィィン!ヒュン!……キン。


「終わったわ。」
「剣はいらなかったわね。」
「この子もしばらく使ってなくて寂しがってたから。久々に暴れられて楽しかったわ。シノブさん、この子も自分で持っていてもいいかしら。」
「うん。もともとはレブルのだし。」


 剣を2つ腰に下げるレブル。


「シノブさん……」
「ん?」
「この勝負私の勝ちね。」
「あぁ……いつのまに差が。」


「騎士達を倒したぞ!」
「いいぞ!黒いのと赤いの!」
「うぉぉ!やりやがった!」


 野次馬の人がさらに集まって、人集りがさらに増えていく。


「これどうしよう。このまま次の堀に行こうかと思ったんだけど。」
「人集りで行けないわね。」


 僕は街の人達に退路を断たれた。





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