無敵のフルフェイス
72話 荒くれの第1堀。
聴取も無事に終え、僕らは王都へと入る。なんでも門番の隊長が調子悪いみたいで、あまり深く聞かれることもなかった。
「ここが王都。まだ朝なのに人がたくさんいるね。」
「そうだな。これは迷ったら探すのが大変だな。」
「もし皆んなが迷う様なら、僕が迎えに行くから大丈夫だよ。」
「そりゃ頼りになるな。さてと、まずはどうするシノブ?」
「そうだね……拠点となる宿を探したい。地理もよく分からないから、ギルドに行って地図を貰おう。ギルドはどこだろう?」
すると皆んなが指を指す。王都入口から入って真正面の建物を。
「ここがそうよね?大きくようこそ王都ギルドへって書いてあるし。」
レブルが看板を読んでくれる。何か大きく書いてあると思ったけど、そんな事が書いてあるのか。僕はアイさんの魔法頼りで文字が読めるから、何もしていないと何が書いてあるか分からない。覚えなきゃなーっとは思うんだけど、仲間が皆んな読めるから勉強する気になれない。
馬車を止めて、皆んなでギルドの扉を開ける。
―ザワザワ……。
僕らが入ってくると、一斉に視線が集まってくる。ヒソヒソ何かを話す人がいるな……
「アイさん。」
『はい。リップリーディング使います。』
アイさんと言っただけで、使って欲しい魔法を発動してくれる。ずっと使っていなかったけど、僕の目線と考えを読んでくれた。これであの人達が何を言っているか分かる。
「あいつら見ない顔だな。少し挨拶でもしてやるか?」
「やめなよ。あの黒いの……何かやばい雰囲気だよ。」
「そんな事より連れてる女を見てみろよ。どれも上玉だぜ?」
「本当だな。」
なんか不穏な空気を発している。やっぱり見ない顔は絡まれる決まりでもあるのか?じっとそっちを見る。
「なんかこっち見てねえか?やっぱ少し挨拶してくるわ。」
「やめなって。」
一人の男が立ち上がりこっちに歩いてくる。それを仲間らしき人が止めているが、強くは止められないようだ。
「おい。新入り。ここは初めてか?」
「……はい。今日着いたばかりです。」
「そうか。へぇ……。」
僕には目もくれず、後ろにいるレブルに目線を向ける男。その視線がイラッとしたから、遮るように間に入る。
「はん。テメェの女か?」
「……。」
「なんだ?気にいらねぇって感じか?やんのか?」
「……。」
「だんまりか?無口な男はモテないぜ?ははは!」
「煩い男よりはマシだ。」
「あぁ?」
顔を近づけて睨んでくる。さて、どうしたもんか。
「レブルは剣を下ろして。セローも魔法はギルド内じゃ止めようか。」
「コイツが喧嘩を売ってきたのよ。」
「師匠に無礼なこの人は私が。」
「おいおい。物騒な女だな。俺は挨拶しに来ただけなのに。」
近づいてきた男の首筋にレブルが剣を突きつけて、セローの水玉が辺りに浮き上がる。この男の仲間も状況を見て剣を抜こうと立ち上がる。おや?一人は魔法を詠唱しているけど、こんなところで魔法を放つ気なのか?
「舐めんな新入りが!ファイヤーボ……」
「それはここで止めよう。グラビティ……」
―ダァァン!
「ぐぁ!?」
魔法を放とうとした魔導師を、重力で床に縛り付ける。発動前の魔法はキャンセルされ、床に這いつくばる。
「てめぇ!仲間に……」
「動かない方がいいわよ。貴方、死ぬわよ?」
「くそ!」
レブルの剣の前に何も出来ない男。
「危ないからレブルも剣を下ろして。僕なら大丈夫だから。」
「シノブさんが言うのなら。」
「ふぅ……全く手の早い女だな。責任は男が取るもんだよなぁ!!」
剣を下げるレブルに、僕に向かって拳を振る男。
―パシ。
「この遅い拳が挨拶かな?」
「くそ!なんだ!手が動かねぇ!?」
「これが王都のギルドなのか。随分と荒れくれ者がいるんだね。」
「全くね。」
気がつけば周りの冒険者全員が立ち上がっている。王都ってくらいだから、洗礼された人達がいるとばかり思っていた。止めに来ないギルドもだし、冒険者もこれじゃ魔族と戦うどころじゃないだろう。
「始めに言っておくけど。敵意を向けている人は、全員僕と戦いたい人で良いのかな?」
「随分とでかい顔するじゃないか新人!」
「ここでの礼儀をたっぷり教えてやるぜ!野郎ども!」
「「「おう!!」」」
視界に入る冒険者達が、それぞれに武器を抜く。こんな狭い所で争うのもごめんなんだけど。
「シノブ。なんかこの建物おかしくないか?」
「は!やっと気づいたか。ここは俺らが占拠した旧ギルド。王都の第1堀で俺らの拠点なんだよ!」
「第1堀って何?」
「私に言われても。私が知っている王都はこんなんじゃなかったし。」
聞いた事もない王都の第1堀と言う言葉。エストに聞いてみたけど、エストもよく分からないらしい。
「それより、こんだけ囲まれたらマズくないか?」
「そうだぜ。この人数を前にして、怯まないのは買ってやる。そこの女どもを置いて、とっとと出て行ったら許してやるぞ?」
置いて行くって、コイツは何を言っているのか。
「ちょっと意味が分からないんだけど。」
「どうもこうもねぇ!この手を離して、女を差し出せって……」
―バキィ!ドゴォォン!
思わず掴んだ手と反対の手で、男を殴り飛ばす。男は壁を突き抜けて、飛んでいってしまった。少し力んでしまったか、かなり飛んでいったけど。大丈夫だろうか……。
「忠告はしたからな。皆んなここを一度出よう。僕から離れないで。アイさん、僕に触れてない人を除いて、1メートルくらいの範囲を作れる?」
『お安い御用です。皆様は忍様の周りへ……キープエリア発動します。』
レブルとセローが僕の腕にしがみつく。これだと魔法が打ちづらい……まぁなんとかなるか。僕の背中を掴んだエストとラストラ。その2人の手を取るアマンとゾン。これで準備は整った。
「……グラビティ。」
―ズズ……ズドォォォン!!
僕に触れていない人が、次々と地面に這いつくばる。
「ぐぅ!」
「ぎゃ!」
「ぐぇ!」
潰れて肺から息を無理やり出されたような声を上げる。そして一歩、また一歩出口に歩いて行く。
「がは!?」
「ぐぬぅ!?」
通る度、範囲に入る人が這いつくばる。そして僕らが出入口を出ると……
―ギシ……
何かが軋む音がする。
「魔法はもう解除するけど。早くこの建物を出る事を勧めるよ。」
「って体が軽い?」
「う、動ける?」
地面に這いつくばる人達が立ち上がる。するとさらに大きな音が……
―バキィ!パラパラ……
「な!お前ら外に出ろ!崩れるぞ!!」
僕らが外に出ると、わらわらと人が外に飛び出してくる。
「あ!さっきの人達!一つ伝えないといけない事を忘れていました。」
「さっきの門番の人?どうかしましたか?」
「この王都では壁面ごとに入口がありまして、ここの入口は第1堀から入る入口なので、荒くれ者に気をつけて下さいと……」
―バキバキ……ズガァァン!!!
僕の後ろで建物が崩れる。
「あー……もしかして遅かったですかね?」
「もしかしなくてもです。」
「申し訳ありません!!」
門番の人にめっちゃ謝られました。
「ここが王都。まだ朝なのに人がたくさんいるね。」
「そうだな。これは迷ったら探すのが大変だな。」
「もし皆んなが迷う様なら、僕が迎えに行くから大丈夫だよ。」
「そりゃ頼りになるな。さてと、まずはどうするシノブ?」
「そうだね……拠点となる宿を探したい。地理もよく分からないから、ギルドに行って地図を貰おう。ギルドはどこだろう?」
すると皆んなが指を指す。王都入口から入って真正面の建物を。
「ここがそうよね?大きくようこそ王都ギルドへって書いてあるし。」
レブルが看板を読んでくれる。何か大きく書いてあると思ったけど、そんな事が書いてあるのか。僕はアイさんの魔法頼りで文字が読めるから、何もしていないと何が書いてあるか分からない。覚えなきゃなーっとは思うんだけど、仲間が皆んな読めるから勉強する気になれない。
馬車を止めて、皆んなでギルドの扉を開ける。
―ザワザワ……。
僕らが入ってくると、一斉に視線が集まってくる。ヒソヒソ何かを話す人がいるな……
「アイさん。」
『はい。リップリーディング使います。』
アイさんと言っただけで、使って欲しい魔法を発動してくれる。ずっと使っていなかったけど、僕の目線と考えを読んでくれた。これであの人達が何を言っているか分かる。
「あいつら見ない顔だな。少し挨拶でもしてやるか?」
「やめなよ。あの黒いの……何かやばい雰囲気だよ。」
「そんな事より連れてる女を見てみろよ。どれも上玉だぜ?」
「本当だな。」
なんか不穏な空気を発している。やっぱり見ない顔は絡まれる決まりでもあるのか?じっとそっちを見る。
「なんかこっち見てねえか?やっぱ少し挨拶してくるわ。」
「やめなって。」
一人の男が立ち上がりこっちに歩いてくる。それを仲間らしき人が止めているが、強くは止められないようだ。
「おい。新入り。ここは初めてか?」
「……はい。今日着いたばかりです。」
「そうか。へぇ……。」
僕には目もくれず、後ろにいるレブルに目線を向ける男。その視線がイラッとしたから、遮るように間に入る。
「はん。テメェの女か?」
「……。」
「なんだ?気にいらねぇって感じか?やんのか?」
「……。」
「だんまりか?無口な男はモテないぜ?ははは!」
「煩い男よりはマシだ。」
「あぁ?」
顔を近づけて睨んでくる。さて、どうしたもんか。
「レブルは剣を下ろして。セローも魔法はギルド内じゃ止めようか。」
「コイツが喧嘩を売ってきたのよ。」
「師匠に無礼なこの人は私が。」
「おいおい。物騒な女だな。俺は挨拶しに来ただけなのに。」
近づいてきた男の首筋にレブルが剣を突きつけて、セローの水玉が辺りに浮き上がる。この男の仲間も状況を見て剣を抜こうと立ち上がる。おや?一人は魔法を詠唱しているけど、こんなところで魔法を放つ気なのか?
「舐めんな新入りが!ファイヤーボ……」
「それはここで止めよう。グラビティ……」
―ダァァン!
「ぐぁ!?」
魔法を放とうとした魔導師を、重力で床に縛り付ける。発動前の魔法はキャンセルされ、床に這いつくばる。
「てめぇ!仲間に……」
「動かない方がいいわよ。貴方、死ぬわよ?」
「くそ!」
レブルの剣の前に何も出来ない男。
「危ないからレブルも剣を下ろして。僕なら大丈夫だから。」
「シノブさんが言うのなら。」
「ふぅ……全く手の早い女だな。責任は男が取るもんだよなぁ!!」
剣を下げるレブルに、僕に向かって拳を振る男。
―パシ。
「この遅い拳が挨拶かな?」
「くそ!なんだ!手が動かねぇ!?」
「これが王都のギルドなのか。随分と荒れくれ者がいるんだね。」
「全くね。」
気がつけば周りの冒険者全員が立ち上がっている。王都ってくらいだから、洗礼された人達がいるとばかり思っていた。止めに来ないギルドもだし、冒険者もこれじゃ魔族と戦うどころじゃないだろう。
「始めに言っておくけど。敵意を向けている人は、全員僕と戦いたい人で良いのかな?」
「随分とでかい顔するじゃないか新人!」
「ここでの礼儀をたっぷり教えてやるぜ!野郎ども!」
「「「おう!!」」」
視界に入る冒険者達が、それぞれに武器を抜く。こんな狭い所で争うのもごめんなんだけど。
「シノブ。なんかこの建物おかしくないか?」
「は!やっと気づいたか。ここは俺らが占拠した旧ギルド。王都の第1堀で俺らの拠点なんだよ!」
「第1堀って何?」
「私に言われても。私が知っている王都はこんなんじゃなかったし。」
聞いた事もない王都の第1堀と言う言葉。エストに聞いてみたけど、エストもよく分からないらしい。
「それより、こんだけ囲まれたらマズくないか?」
「そうだぜ。この人数を前にして、怯まないのは買ってやる。そこの女どもを置いて、とっとと出て行ったら許してやるぞ?」
置いて行くって、コイツは何を言っているのか。
「ちょっと意味が分からないんだけど。」
「どうもこうもねぇ!この手を離して、女を差し出せって……」
―バキィ!ドゴォォン!
思わず掴んだ手と反対の手で、男を殴り飛ばす。男は壁を突き抜けて、飛んでいってしまった。少し力んでしまったか、かなり飛んでいったけど。大丈夫だろうか……。
「忠告はしたからな。皆んなここを一度出よう。僕から離れないで。アイさん、僕に触れてない人を除いて、1メートルくらいの範囲を作れる?」
『お安い御用です。皆様は忍様の周りへ……キープエリア発動します。』
レブルとセローが僕の腕にしがみつく。これだと魔法が打ちづらい……まぁなんとかなるか。僕の背中を掴んだエストとラストラ。その2人の手を取るアマンとゾン。これで準備は整った。
「……グラビティ。」
―ズズ……ズドォォォン!!
僕に触れていない人が、次々と地面に這いつくばる。
「ぐぅ!」
「ぎゃ!」
「ぐぇ!」
潰れて肺から息を無理やり出されたような声を上げる。そして一歩、また一歩出口に歩いて行く。
「がは!?」
「ぐぬぅ!?」
通る度、範囲に入る人が這いつくばる。そして僕らが出入口を出ると……
―ギシ……
何かが軋む音がする。
「魔法はもう解除するけど。早くこの建物を出る事を勧めるよ。」
「って体が軽い?」
「う、動ける?」
地面に這いつくばる人達が立ち上がる。するとさらに大きな音が……
―バキィ!パラパラ……
「な!お前ら外に出ろ!崩れるぞ!!」
僕らが外に出ると、わらわらと人が外に飛び出してくる。
「あ!さっきの人達!一つ伝えないといけない事を忘れていました。」
「さっきの門番の人?どうかしましたか?」
「この王都では壁面ごとに入口がありまして、ここの入口は第1堀から入る入口なので、荒くれ者に気をつけて下さいと……」
―バキバキ……ズガァァン!!!
僕の後ろで建物が崩れる。
「あー……もしかして遅かったですかね?」
「もしかしなくてもです。」
「申し訳ありません!!」
門番の人にめっちゃ謝られました。
「ファンタジー」の人気作品
書籍化作品
-
-
75
-
-
1
-
-
35
-
-
221
-
-
1978
-
-
11128
-
-
26950
-
-
34
-
-
0
コメント