無敵のフルフェイス
62話 あまり頭を使わないとこうなる。
暗い。
何も見えない。
今僕は目を開けているのか。それとも閉じているのか。
明かりはないだろうか?手を伸ばして辺りを探る。
―グニ。
「ひゃ。」
「ぐに?」
何だろうこの感覚……柔らくて温かい。
「ん……。」
それに誰かの声がする。ん?声?
「あはは。くすぐったいよ。私のお腹触ってるの誰?」
「これはセローのお腹なのね。」
「その声はエスト?もう、やめてよ。」
「ごめんなさい。」
僕が触っているんじゃないのか。じゃ、この柔らかい感触は……。
「ん……。」
「ひゃ!僕のお尻を触るのは誰っすか!」
この声はラストラ?もしかして僕は……。
「これ、ラストラのお尻でしたか。柔らかくてフニフニですね。」
「セローが変態になった〜」
「……。」
「アイさん視覚を確保出来る?」
『光源が完全にないので、暗視になりますが可能です。ナイトビュー。』
パッと何かが切り替わったみたいに視界が戻る。全体的に暗くて薄緑色の視界だけど、状況を確認するには十分……なんだ……よね…………。
「レブル……。」
「この声……やっぱりシノブさんなのね。」
「師匠!?ご無事でしたか!」
「シノブさんに何かあれば私達はもういないわよ。」
「良かったっす。」
レブルは僕の方を見る。見えていないはずだから、声のする方を見ているだけだと思うけど。暗視でよく見えていなくて良かった。きっと僕もレブルも顔が赤かったに違いない。
「ごめんなさい。」
「いいの。緊急事態だったし、その……なんでもない。」
僕は抱きしめていたレブルから手を離す。あの柔らかさは一体なんだったのだろうか…………。
気持ちを切り替えて、周りの様子を見る。
「ミミズ倒したのはいいけど。天井が落ちてきて、生き埋めって事で合ってるよね?」
「状況を端的にまとめればそうね。何も見えないから、今の状況は分からないけど。」
「僕は寝ていたはずですが、今は座っているっす。何かに掴まれたような。」
「それは私が掴んで投げたから。」
「レブルさんが助けてくれたんすね。ありがとっす。」
「埋もれて生きているこの状況を作っているのはシノブさんよ。」
「シノブさん、ありがとっす。」
「僕も咄嗟だったから。あまり居心地良くないけど。」
ぼんやりとだけど思い出してきた。天井が落ちる時の事を。
♦︎
『忍様!』
上を向いて目に入ってきた光景は、天井が落ちてくる。
あ〜これは…………。
「シノブさん!」
レブルがラストラを掴み、僕に向かって投げてきた。天井が落ちてくるこのタイミングで、仲間を助ける事を第一に考えて……。
僕は考えるより早く体が動いた。
「アイさん!ラストラに風の保護貼って投げるから。3人にシェルター!」
『はい!アースオペレーション!』
ここまでラストラを抱えて走る事も出来たはずだ。でもそれをしなかった。何か問題があるんだ。そんな事を頭で考えつつ、僕はレブルの元に走った。
「シノ!?」
「アースオペレーション!!」
僕はレブルを抱きしめ、土魔法で周りを固める。何が起こっても壊れない物を……。
♦︎
すると僕を呼ぶ声がする。
「シノ……ブ……ん。」
途切れ途切れだけど、レブルの声がする。
「はぁ……はぁ……良かっ……た。」
「どうしたの?」
「なん……か。呼吸…………が。」
『忍様。酸素が足りなくなっています。急ぎ空気の確保を推奨致します。』
「酸素か!確かに急に作ったから考えていなかった。今すぐやるよ、アースオペレーション!」
手を上にかざして、空気を確保する為の通気口を作る。ただ穴を開けるだけでは風が流れてこないから、外の空気を入れ替えるのに風魔法を使う。
「はぁ、はぁ。まだ少し息苦しいけど、何とか。」
「ふぅ。良かったよ。」
アイさんに言われるまで気づかなかった。空気がなくなったら危なかったよ。ん?でも僕は普通に息が出来たな?何でだ?
「アイさん。僕は別に苦しくなかったけど。何で?」
『忍様のこのフルフェイスがある為です。』
「このフルフェイスにそんな効果が?」
『はい。人が必要な酸素を生成する仕様です。そうでなければ、呼吸しづらく声も篭ってしまうので。』
「確かに……苦しいと思った事ないし。皆んなに僕の声は普通に聞こえているっぽいね。」
なんか地味に凄い機能が付いていた。てかフルフェイスでは風穴が空いているぐらいだぞ。
「なんでまたこんな事に?」
『忍様の世界から持って来たとは言え、神が創ったものですから。不憫が無いよう心遣いでは?』
「はぁ〜至れに尽せりだ。」
一度は亡くなった身体を創って、さらにこんな凄い物まで……それにアイさんと言う頼もしい相棒まで。会う機会があればお礼を言いたい。いつかきっとそんな日が来るんじゃないかと思う。
「シノブさん。セロー達は大丈夫かしら?」
「そうだった!向こうも空気が!?」
『彼方は問題ありません。僭越ながら私が形成しましたので。』
「流石アイさん。抜かりはないね。」
『本来は忍様の分も形成しようと思ったのですが。忍様の結界に干渉する事が出来ず……。』
「そうか。それはごめん。」
『いえ、私が未熟でした。忍様には何の落ち度もありません。』
「まぁ結果無事だったし。セローとエストとラストラを守ってくれてありがとう。」
『もったいなきお言葉……。』
何せ一瞬で作ったから、色々と必要な物が無かったのかもしれない。その点アイさんは土魔法で皆んなを守り、さらに換気口まで作るクオリティ。あの一瞬でそこまで判断は、僕には出来ないであろう事だよな。
「師匠〜これからどうしますか〜?」
何処かから声が聞こえる。僕の後ろ?周りを見ても目の前にはレブルがいるだけ。近くにいる感じではない。
「3人は今どうしてるの?」
『はい。アースオペレーションによって強固な箱を作成。酸素確保の為に、土の水分を分解し酸素へ変換する魔法を発動しています。』
「そうか。」
何それ?変換する魔法って。僕は通気口を作って風で換気しているのに。そう言えば、このフルフェイス自体にそんな魔法が付いてるんだっけか。
「その魔法って簡単なの?僕は通気口作ったけど。」
『原理としては難しくありません。危険性や安全を考えれば忍様のやり方が良いと思います。』
「危険性って?」
『爆発します。』
「爆発って一体何してんの?これ僕のこれにも使っているんでしょう?」
『まず媒体である水を分解します。すると水素と酸素に分かれます。酸素は摂取されますが、残った水素を人の吐く二酸化炭素と合成します。結果としてエチレンと呼ばれる素材を土に還しています。』
「……おぅ。科学か。」
その分野は苦手なんだよ。水がH2Oで二酸化炭素がCO2な事ぐらいしか分からない。何がどう危険なんだろう。
「ごめん、その分野苦手だった何だよね。何が危ないか分からないや。」
『端的に申しますと水素が問題の物質です。それなりの質量が爆発すると、この辺り一帯が吹き飛びます。忍様の世界でも水素爆弾と呼ばれる物で想像しやすいかと。』
「水素爆弾ってあれか。」
目の前で見た事は当然ない。僕の時代は戦争は無かったし。歴史の資料とかそう言うのでしか見た事ない。
「とにかく危険なんだね。まぁ僕自身が使う機会もあるかもだし。今度ゆっくりやり方教えてね。」
『忍様であればすぐに習得出来ます。頑張りましょう。』
さてさて、少しばかり学生に戻った様な、少しだけ勉強した気分になった。だからか、頭をあまり使いたくない。てっとりばやくこの状況を脱出したい。
「この通気口通れば外に出れるね。」
『地表まで100メートル程ありますが、忍様とレブルであれば問題ありませんが。』
「私達はいいけど、セロー達は厳しくないかしら?」
「だよね。」
まずは穴を空けるところからで、あまり近距離で穴が2つや、大きい穴が開けばまた埋まる可能性が出てくる。
「転移魔法は?」
「皆んなに触れないと。」
「そうだったわね。それじゃ掘る?」
「セローのところまで?ん〜そしたら崩れない様に掘り進まないとか。」
「面倒ね。と言うか油断すればまた生埋めね。」
そうなんだよ。何をするにも土の中に居るから上にも土は沢山ある。それを全部ちょこちょこ取り除いている訳にもいかない。いっその事上の土だけ吹き飛ばしたり……
「あ。そうか土を吹き飛ばせばいいんだ!」
「吹き飛ばすってそんな簡単に……ってシノブさんなら出来そうね。」
「うん。まずは皆んなを地上の高さまで押し上げないと。」
自分が今踏んでいる地面はエスト達と同じ高さにあったはず。立ってた位置が少しだけ違うから3メートルくらい余裕を持って、距離は僕を中心に500くらいかな?これくらいあれば、さっきのミミズの魔物の素材も回収出来るだろう。
「皆んな少し揺れるから気をつけて〜」
「了解です師匠!ひし!」
「あわわ。何が起こるっすか。」
「2人とも私にくっつかなくても。」
向こうは準備いいみたい。こっちは……
ふわっと僕の背中に手が回る。
「こ、これでいいかしら……。」
「う、うん。捕まってて。」
「分かった。」
抱きしめられる手に力がこもっている。僕も片手をレブルの腰に回してささえる。……あくまでも腰である。
「いくよ!アースオペレーション!!」
―ズズ……ズズ……ズドォォォォォン!!!
「続いて僕らの上部分の土を砂に……それを風で吹き飛ばす!ウィンド!」
―サラサラ、ビュゥゥゥン!!!
「よし上手く出来たね。」
『時間を掛けず、大胆に凄い事を行いましたね。流石です。』
「凄い大胆?ただ地面を地上まで押し上げて、上にある土を砂に変えたら吹き飛ばして終わりってだけだけど。」
周りを見ると少し離れた位置に、セローとラストラがエストにしがみ付いている。
「外です!」
「わー!」
「何をしたの……あぁ。」
皆んなが外に出れた事にテンションが上がっている中、エストだけ何か固まっている。下?
下を見ると何も見えない。これって……
「あー適当に500メートルくらいに範囲を決めたはずだけど。」
「シノブさん。高さも500メートルいるの?」
「ん〜いらない!あまり頭を使いたくないって思ったから。ついね。」
「ついでこんな塔を作られても困るわ。いいから地面に近づけて貰える?今度はアイさんと協力してね!頼んだわアイさん!」
『……。』
実はアイさんには魔力を出しすぎない様に抑えてもらっていた。ただ結果は僕が500メートルをイメージしたからそのまま反映された。と言うか1割くらいの魔力なのにこれか……なんか最近魔力が増えたと言うか、燃費がいい気がする。
そして今度はアイさんと相談して、しっかり計画を立てて地面まで下げました。
何も見えない。
今僕は目を開けているのか。それとも閉じているのか。
明かりはないだろうか?手を伸ばして辺りを探る。
―グニ。
「ひゃ。」
「ぐに?」
何だろうこの感覚……柔らくて温かい。
「ん……。」
それに誰かの声がする。ん?声?
「あはは。くすぐったいよ。私のお腹触ってるの誰?」
「これはセローのお腹なのね。」
「その声はエスト?もう、やめてよ。」
「ごめんなさい。」
僕が触っているんじゃないのか。じゃ、この柔らかい感触は……。
「ん……。」
「ひゃ!僕のお尻を触るのは誰っすか!」
この声はラストラ?もしかして僕は……。
「これ、ラストラのお尻でしたか。柔らかくてフニフニですね。」
「セローが変態になった〜」
「……。」
「アイさん視覚を確保出来る?」
『光源が完全にないので、暗視になりますが可能です。ナイトビュー。』
パッと何かが切り替わったみたいに視界が戻る。全体的に暗くて薄緑色の視界だけど、状況を確認するには十分……なんだ……よね…………。
「レブル……。」
「この声……やっぱりシノブさんなのね。」
「師匠!?ご無事でしたか!」
「シノブさんに何かあれば私達はもういないわよ。」
「良かったっす。」
レブルは僕の方を見る。見えていないはずだから、声のする方を見ているだけだと思うけど。暗視でよく見えていなくて良かった。きっと僕もレブルも顔が赤かったに違いない。
「ごめんなさい。」
「いいの。緊急事態だったし、その……なんでもない。」
僕は抱きしめていたレブルから手を離す。あの柔らかさは一体なんだったのだろうか…………。
気持ちを切り替えて、周りの様子を見る。
「ミミズ倒したのはいいけど。天井が落ちてきて、生き埋めって事で合ってるよね?」
「状況を端的にまとめればそうね。何も見えないから、今の状況は分からないけど。」
「僕は寝ていたはずですが、今は座っているっす。何かに掴まれたような。」
「それは私が掴んで投げたから。」
「レブルさんが助けてくれたんすね。ありがとっす。」
「埋もれて生きているこの状況を作っているのはシノブさんよ。」
「シノブさん、ありがとっす。」
「僕も咄嗟だったから。あまり居心地良くないけど。」
ぼんやりとだけど思い出してきた。天井が落ちる時の事を。
♦︎
『忍様!』
上を向いて目に入ってきた光景は、天井が落ちてくる。
あ〜これは…………。
「シノブさん!」
レブルがラストラを掴み、僕に向かって投げてきた。天井が落ちてくるこのタイミングで、仲間を助ける事を第一に考えて……。
僕は考えるより早く体が動いた。
「アイさん!ラストラに風の保護貼って投げるから。3人にシェルター!」
『はい!アースオペレーション!』
ここまでラストラを抱えて走る事も出来たはずだ。でもそれをしなかった。何か問題があるんだ。そんな事を頭で考えつつ、僕はレブルの元に走った。
「シノ!?」
「アースオペレーション!!」
僕はレブルを抱きしめ、土魔法で周りを固める。何が起こっても壊れない物を……。
♦︎
すると僕を呼ぶ声がする。
「シノ……ブ……ん。」
途切れ途切れだけど、レブルの声がする。
「はぁ……はぁ……良かっ……た。」
「どうしたの?」
「なん……か。呼吸…………が。」
『忍様。酸素が足りなくなっています。急ぎ空気の確保を推奨致します。』
「酸素か!確かに急に作ったから考えていなかった。今すぐやるよ、アースオペレーション!」
手を上にかざして、空気を確保する為の通気口を作る。ただ穴を開けるだけでは風が流れてこないから、外の空気を入れ替えるのに風魔法を使う。
「はぁ、はぁ。まだ少し息苦しいけど、何とか。」
「ふぅ。良かったよ。」
アイさんに言われるまで気づかなかった。空気がなくなったら危なかったよ。ん?でも僕は普通に息が出来たな?何でだ?
「アイさん。僕は別に苦しくなかったけど。何で?」
『忍様のこのフルフェイスがある為です。』
「このフルフェイスにそんな効果が?」
『はい。人が必要な酸素を生成する仕様です。そうでなければ、呼吸しづらく声も篭ってしまうので。』
「確かに……苦しいと思った事ないし。皆んなに僕の声は普通に聞こえているっぽいね。」
なんか地味に凄い機能が付いていた。てかフルフェイスでは風穴が空いているぐらいだぞ。
「なんでまたこんな事に?」
『忍様の世界から持って来たとは言え、神が創ったものですから。不憫が無いよう心遣いでは?』
「はぁ〜至れに尽せりだ。」
一度は亡くなった身体を創って、さらにこんな凄い物まで……それにアイさんと言う頼もしい相棒まで。会う機会があればお礼を言いたい。いつかきっとそんな日が来るんじゃないかと思う。
「シノブさん。セロー達は大丈夫かしら?」
「そうだった!向こうも空気が!?」
『彼方は問題ありません。僭越ながら私が形成しましたので。』
「流石アイさん。抜かりはないね。」
『本来は忍様の分も形成しようと思ったのですが。忍様の結界に干渉する事が出来ず……。』
「そうか。それはごめん。」
『いえ、私が未熟でした。忍様には何の落ち度もありません。』
「まぁ結果無事だったし。セローとエストとラストラを守ってくれてありがとう。」
『もったいなきお言葉……。』
何せ一瞬で作ったから、色々と必要な物が無かったのかもしれない。その点アイさんは土魔法で皆んなを守り、さらに換気口まで作るクオリティ。あの一瞬でそこまで判断は、僕には出来ないであろう事だよな。
「師匠〜これからどうしますか〜?」
何処かから声が聞こえる。僕の後ろ?周りを見ても目の前にはレブルがいるだけ。近くにいる感じではない。
「3人は今どうしてるの?」
『はい。アースオペレーションによって強固な箱を作成。酸素確保の為に、土の水分を分解し酸素へ変換する魔法を発動しています。』
「そうか。」
何それ?変換する魔法って。僕は通気口を作って風で換気しているのに。そう言えば、このフルフェイス自体にそんな魔法が付いてるんだっけか。
「その魔法って簡単なの?僕は通気口作ったけど。」
『原理としては難しくありません。危険性や安全を考えれば忍様のやり方が良いと思います。』
「危険性って?」
『爆発します。』
「爆発って一体何してんの?これ僕のこれにも使っているんでしょう?」
『まず媒体である水を分解します。すると水素と酸素に分かれます。酸素は摂取されますが、残った水素を人の吐く二酸化炭素と合成します。結果としてエチレンと呼ばれる素材を土に還しています。』
「……おぅ。科学か。」
その分野は苦手なんだよ。水がH2Oで二酸化炭素がCO2な事ぐらいしか分からない。何がどう危険なんだろう。
「ごめん、その分野苦手だった何だよね。何が危ないか分からないや。」
『端的に申しますと水素が問題の物質です。それなりの質量が爆発すると、この辺り一帯が吹き飛びます。忍様の世界でも水素爆弾と呼ばれる物で想像しやすいかと。』
「水素爆弾ってあれか。」
目の前で見た事は当然ない。僕の時代は戦争は無かったし。歴史の資料とかそう言うのでしか見た事ない。
「とにかく危険なんだね。まぁ僕自身が使う機会もあるかもだし。今度ゆっくりやり方教えてね。」
『忍様であればすぐに習得出来ます。頑張りましょう。』
さてさて、少しばかり学生に戻った様な、少しだけ勉強した気分になった。だからか、頭をあまり使いたくない。てっとりばやくこの状況を脱出したい。
「この通気口通れば外に出れるね。」
『地表まで100メートル程ありますが、忍様とレブルであれば問題ありませんが。』
「私達はいいけど、セロー達は厳しくないかしら?」
「だよね。」
まずは穴を空けるところからで、あまり近距離で穴が2つや、大きい穴が開けばまた埋まる可能性が出てくる。
「転移魔法は?」
「皆んなに触れないと。」
「そうだったわね。それじゃ掘る?」
「セローのところまで?ん〜そしたら崩れない様に掘り進まないとか。」
「面倒ね。と言うか油断すればまた生埋めね。」
そうなんだよ。何をするにも土の中に居るから上にも土は沢山ある。それを全部ちょこちょこ取り除いている訳にもいかない。いっその事上の土だけ吹き飛ばしたり……
「あ。そうか土を吹き飛ばせばいいんだ!」
「吹き飛ばすってそんな簡単に……ってシノブさんなら出来そうね。」
「うん。まずは皆んなを地上の高さまで押し上げないと。」
自分が今踏んでいる地面はエスト達と同じ高さにあったはず。立ってた位置が少しだけ違うから3メートルくらい余裕を持って、距離は僕を中心に500くらいかな?これくらいあれば、さっきのミミズの魔物の素材も回収出来るだろう。
「皆んな少し揺れるから気をつけて〜」
「了解です師匠!ひし!」
「あわわ。何が起こるっすか。」
「2人とも私にくっつかなくても。」
向こうは準備いいみたい。こっちは……
ふわっと僕の背中に手が回る。
「こ、これでいいかしら……。」
「う、うん。捕まってて。」
「分かった。」
抱きしめられる手に力がこもっている。僕も片手をレブルの腰に回してささえる。……あくまでも腰である。
「いくよ!アースオペレーション!!」
―ズズ……ズズ……ズドォォォォォン!!!
「続いて僕らの上部分の土を砂に……それを風で吹き飛ばす!ウィンド!」
―サラサラ、ビュゥゥゥン!!!
「よし上手く出来たね。」
『時間を掛けず、大胆に凄い事を行いましたね。流石です。』
「凄い大胆?ただ地面を地上まで押し上げて、上にある土を砂に変えたら吹き飛ばして終わりってだけだけど。」
周りを見ると少し離れた位置に、セローとラストラがエストにしがみ付いている。
「外です!」
「わー!」
「何をしたの……あぁ。」
皆んなが外に出れた事にテンションが上がっている中、エストだけ何か固まっている。下?
下を見ると何も見えない。これって……
「あー適当に500メートルくらいに範囲を決めたはずだけど。」
「シノブさん。高さも500メートルいるの?」
「ん〜いらない!あまり頭を使いたくないって思ったから。ついね。」
「ついでこんな塔を作られても困るわ。いいから地面に近づけて貰える?今度はアイさんと協力してね!頼んだわアイさん!」
『……。』
実はアイさんには魔力を出しすぎない様に抑えてもらっていた。ただ結果は僕が500メートルをイメージしたからそのまま反映された。と言うか1割くらいの魔力なのにこれか……なんか最近魔力が増えたと言うか、燃費がいい気がする。
そして今度はアイさんと相談して、しっかり計画を立てて地面まで下げました。
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