無敵のフルフェイス
56話 成長を見守りたい。
翌日僕たちは領主さんの家へとパーティ全員でお邪魔している。とは言え調査とその結果の話だから、正式に招待されている訳だけど。
そして食事を取り、大きい机に皆んなで座っている。そこで領主との森で起こった事件の報告があった。
「あらかたシノブさんの言った内容通りでした。」
「そうですか。あ、それおかわり下さい。」
「それと気になる事が何個かあるのですが……私もおかわりです。」
「2人とも。食事は逃げないんだから、食べながら話すのはやめなさい。」
「「はーい。」」
飲み物で一息つきつく。
「それで、気になる事とは?」
「はい。ここに向かっていた大量の魔物についてです。」
「そう言えば魔法ぶっ放して、その後確認してないから気になってはいたんだよね。」
「現場の報告によると。地面に大きな穴が空いていて、周辺に魔物の気配はなかったそうです。」
「どこかに隠れているか、逃げて別の所に行ったかですね。魔法も発動早めるのに、少し抑えて撃ったから。」
「直径約100メートルの大穴が、抑えてですか……。」
直径100メートルって言うと…………よく分かんないや。学校の校庭くらいか?
「意外と小さい穴ですね。」
「いや、かなりデカイと思うのですが……今も穴埋め作業が難航するくらいですし。」
「穴埋めなら手伝いましょうか?」
「いえ。魔族討伐に魔物を追い払って貰った勇者様にはさせられませんよ。」
「そう?それくらいの穴ならすぐ何とか出来るんだけど。大丈夫なら……」
「因みにですが、何とかってどの様な?参考までに教えて頂けますか?」
「ん?土魔法で周辺の土を集めて平らにするくらいですけど。」
「……。」
何やら考え込む領主のフージさん。
「遠慮しないでお願いしてもいいですよ。元はシノブが空けた穴でしょう?」
「そうですね。100メートル四方の穴となれば、普通にやれば数ヶ月かかるでしょうし。」
「そうなんですよ。まだ魔物が完全に居なくなったと言えませんし。下手に人数避けないだけに難航してまして……。」
「シノブなら数秒で終わるんじゃないか?」
「え!?」
アマンとゾンの話に身を乗り出して驚くフージさん。そのまま僕の事を凝視する。
「場所も分かりますし、チャチャっと行って直します?」
「そんな何ヶ月もかかる工程をチャチャって?」
「説明するより見た方が早いと思いますが。」
「それならお願いしても良いですか?現地までの馬車は用意しますので。」
「馬車も何もいらないですよ。アマン、ちょっと出かけてくるから。」
「おう。俺らはここで待ってるよ。」
「師匠!私も行きます!師匠の魔法を見て勉強です!」
セローは真面目で熱心だな。ここは弟子に見られているし、師匠としてしっかりやらねば。
「私も行くわ。魔物が出てくる可能性がある訳だし。」
「……。」
「んっぐ。ぼ、僕も行きます。怪我したら直すのも僕に仕事です。」
「……。」
「じゃ、行きましょう。シノブさんお願い。」
「それじゃ、皆んな僕に触れて。」
―ポン。
「「え。」」
「トランステレポート。」
誰かの声が聞こえた気がした。いつもの浮遊感から暗転。そして明かりを見つけ、目が光を認識するとそこは違う場所。
「これが転移魔法……。」
「穴がないね。少しズレたかも?」
『忍様が魔法を放った場所は、行っていないので移動出来ませんでした。代わりに魔法を放った森に飛んでいます。』
「あ、そっか。あそこまで行ってないね。アイさんどっち?」
『こちらです。』
アイさんが矢印を出して道を示してくれる。
「じゃー皆んな行こうか。」
「はーい。」
「ええ。」
「何か出そうでドキドキですね。」
「何も出ないで欲しいですけど。」
「……。」
森の中を少し歩くと僕の魔法が落ちた場所まで来た。
「結構でっかいね。びっくりだ。」
「これじゃあの地響きも納得ね。」
「さすが師匠です!」
「褒めるとこですか?しかし、この規模の魔法が抑えたものと。全力だったらどうなるのか……。」
「さぁ?僕自身よく分からない。」
「私が思うに、街ごと消しされるんじゃないかしら。」
「さすが師匠です!」
「さすがで消されちゃ困ります!」
「はは。まさかそこまで出来る訳……」
『忍様なら可能かと。』
「……。」
わーお。随分と物騒な話じゃないか。これは誰にも言わないでおこう。
「さてどうしよう。アイさん、まず何からやったらいいかな?」
『有効範囲の指定と周りの土の状態を調べましょう。』
「範囲の指定ね。長さは100メートルとして、深さは……風玉!」
―ビュン………パァン。
『風玉の速度と反響からですと120メートルと言ったところでしょうか。』
「は〜120メートルも深さあるのか。普通に落ちたら死んじゃうね。」
「120……。」
「まぁ落ちたら飛べばいいのよ。」
「ですね。着地前に跳べば大丈夫ですね。」
「……いやいや。それ出来る人はでしょ?」
「あら、エスト居たの?」
「なぜかここに居るか私が聞きたいわ。転移をする時シノブさんの近くに居て、肩に手を乗せられたからかしら。」
「あれ?連れてこない方が良かった?でも戦闘になるならエストも居た方が心強いかなって。」
「べ、別に。嫌だとは言ってないわ。そう……心強いか。」
さて、次は土かな。100メートルとなると、周りからただ慣らすだけじゃ足りなそうだな。そもそも雷が落ちただけで、土を消したりしてない。
「そうなると、土はどこいったのか……押し潰したのかな?」
『そうです。私の見立てでは、後出量の雷が地面を押し付けて出来たかと。』
「それなら地面を盛り上げて人が踏んでも沈まない硬さにすればいいのか。」
『それなら下に行き、地面に触って魔法の使う事をお進めます。』
「分かった。そしたら下りますか。」
「え!降りるんですか?」
「はい。周りから土を集めるより、地下の土を盛り上げる方がいいので。」
フージさんが穴から下を覗き込み、それにエストも続く。
「……高いですね。」
「そうね。下の方見えないわ。2人は見ないの?」
「私はもっと高い所から見た事あるから。」
「私もです。空なので暗くないですけど。」
「そう言えばそんな体験もしたわね……。」
「空?一体何をしたんですか?」
「まぁ見てれば分かるわよ。」
2人が穴から離れる。深いと分かってて怖くても見たい気持ちは分かる。
「見納めだけどいいかな。レブルとエスト、少しの間見張りお願いね。」
「ええ。いってらっしゃい。」
「よし。セロー行くよ。」
「私も行っていいんですか?」
「僕の魔法見るんでしょ?なんならセローも土系統使えるから、手伝ってもらおうかな。」
「はいです!」
僕とセローは穴に飛び込む。
「え?えぇぇぇ!!!」
「そんな驚かなくても大丈夫よ。」
「2人は飛べるからね。」
「飛ぶですか?」
底が暗くて見えにくいな。少し明かりがあるとセローも降りやすいだろうか。
「アイさん。」
『明かりですか。下は酸素が無くなると危ないので、上空に火の玉をお勧めします。』
「さすが、言わなくても伝わるね。それじゃ……」
『マジックコントロール・ジャストワン、キープエリア。』
「火玉。」
―ゴォォォォ!!
上に投げた火玉はその場に留まり、小さな太陽みたいに穴全体を照らす。
「よく見えます〜ありがとうです〜」
「着地は気をつけてねー」
「はいです〜」
そして目の前に迫る地面。
―フワッ、スタ。
―バシャァ!
僕は風で速度を緩和、セローは水の勢いを利用して着地。
「それじゃ早速始めようか。」
「はいです!」
僕は魔法のイメージとどういう事が必要なのかセローに説明をする。有効範囲や地面の強度などは僕とアイさんでやる事になった。セローには地面を上に押し上げる事をやって貰う。
「魔力が足りなくなったら渡すからね。」
「いえ!自分用の回復薬を調合したので、実験として使います。」
「そんな物まで作れるのか!凄いね。僕も必要になる時があったらお願いしようかな。」
「へへ。完成したら師匠にもプレゼントとします!」
「うん。楽しみにしてるよ。それじゃ……頼むねセロー。」
「いきます。すぅ……はぁぁ!」
―ズズズズズズズ…………
♦︎
地面が揺れ始めた。
「早速始まったわね。」
「本当にこんな大きい穴が埋まるのかしらね?」
「もう驚かないぞ。これから起こる事は分かっているんだ。」
「そんな構えなくてもいいと思うけど。魔物の気配も無いし、気楽に見てましょう。」
この領主さんはさっきから驚きの連続で、少し落ち着いた方がいいと思う。
ここに転移して来てから、飛び降りた時、プチ太陽作った時、着地。恐らくだけど、この後の事でも驚くんでしょうね。これから起こる事は予想もつくけど。私達のように慣れてない人だと斜め上過ぎて、結局驚くと思うのよね。
―ズズズズズズズ………
揺れが少し大きくなった気がするわね。だんだんせり上がっているのかしら。
でも普通に上って行くだけなら予想通り。斜め上ってなると……
「あ。2人とも。危ないからもう少し下がりましょうか。」
「ひぃ!」
「え?徐々にせり上がってくるのにですか?」
「やっぱり普通はそう思うわよね。でもこの魔法はセローとアイさんが居るとしても、実行の要はシノブさんだから。」
「一体何が起きると……」
―ズズズ……ガガガ!
ほら、なんか音が変わったわ。
―ガガガ……ピシ。
目の前の地面に亀裂が入り始める。そしてアマンとゾンが言った通りの展開になる。
♦︎
―ダァァァァン!
「セロー!ストップだよ!」
「はいです!」
込めた魔力を止め、僕らな陽の光下に戻ってきた。少しだけオーバーしたかな。まぁこれなら落ちて人が気がしたりはしないだろう。そしてレブル達のとこ目掛けて飛ぶ。セローは魔力を使い切ったかヘロヘロだったのでおんぶで降りる。
―フワッ、スタ。
「ただいま戻りました。」
「セロー、シノブさんお疲れ様。」
「セローは魔力切れかしら?」
「うん。制御系以外の土をせり上げるの任せたからね。」
「え!?それではこのせり上がった大地は、こんな小さな女の子が!」
驚くフージさんにやっぱりねって顔のレブル。
「へへ。少し頑張りました。師匠のテント程ではないけど。」
「いえ、凄い成長だと思うわ。」
「そうよ。あんなテントを作れるようになったら、人として何かが遠のくわ。セローはこれくらいでいいのよ。」
結果的に直径およそ100メートル四方の、地面から5メートルくらいの高さの地面が出て来た。
「勇者様のパーティは全員が勇者様クラスなのか……。」
「私は違うからね。」
「そうね。私もまだシノブさんの足元にも及ばないわ。」
「いやいや、それはないよ。皆んなの事、だいぶ頼りにしてるから。」
照れる2人に開いた口が塞がらないフージさん。山に出来たこの土地は、削らず何かに使うとなった。何になるかは今後の話し合いで決まるのだろう。
軽い気持ちで言った、穴を直す急な工事だったけど、セローのいい魔法の訓練になったな。どんどん成長するセローの今後が楽しみである。
そして食事を取り、大きい机に皆んなで座っている。そこで領主との森で起こった事件の報告があった。
「あらかたシノブさんの言った内容通りでした。」
「そうですか。あ、それおかわり下さい。」
「それと気になる事が何個かあるのですが……私もおかわりです。」
「2人とも。食事は逃げないんだから、食べながら話すのはやめなさい。」
「「はーい。」」
飲み物で一息つきつく。
「それで、気になる事とは?」
「はい。ここに向かっていた大量の魔物についてです。」
「そう言えば魔法ぶっ放して、その後確認してないから気になってはいたんだよね。」
「現場の報告によると。地面に大きな穴が空いていて、周辺に魔物の気配はなかったそうです。」
「どこかに隠れているか、逃げて別の所に行ったかですね。魔法も発動早めるのに、少し抑えて撃ったから。」
「直径約100メートルの大穴が、抑えてですか……。」
直径100メートルって言うと…………よく分かんないや。学校の校庭くらいか?
「意外と小さい穴ですね。」
「いや、かなりデカイと思うのですが……今も穴埋め作業が難航するくらいですし。」
「穴埋めなら手伝いましょうか?」
「いえ。魔族討伐に魔物を追い払って貰った勇者様にはさせられませんよ。」
「そう?それくらいの穴ならすぐ何とか出来るんだけど。大丈夫なら……」
「因みにですが、何とかってどの様な?参考までに教えて頂けますか?」
「ん?土魔法で周辺の土を集めて平らにするくらいですけど。」
「……。」
何やら考え込む領主のフージさん。
「遠慮しないでお願いしてもいいですよ。元はシノブが空けた穴でしょう?」
「そうですね。100メートル四方の穴となれば、普通にやれば数ヶ月かかるでしょうし。」
「そうなんですよ。まだ魔物が完全に居なくなったと言えませんし。下手に人数避けないだけに難航してまして……。」
「シノブなら数秒で終わるんじゃないか?」
「え!?」
アマンとゾンの話に身を乗り出して驚くフージさん。そのまま僕の事を凝視する。
「場所も分かりますし、チャチャっと行って直します?」
「そんな何ヶ月もかかる工程をチャチャって?」
「説明するより見た方が早いと思いますが。」
「それならお願いしても良いですか?現地までの馬車は用意しますので。」
「馬車も何もいらないですよ。アマン、ちょっと出かけてくるから。」
「おう。俺らはここで待ってるよ。」
「師匠!私も行きます!師匠の魔法を見て勉強です!」
セローは真面目で熱心だな。ここは弟子に見られているし、師匠としてしっかりやらねば。
「私も行くわ。魔物が出てくる可能性がある訳だし。」
「……。」
「んっぐ。ぼ、僕も行きます。怪我したら直すのも僕に仕事です。」
「……。」
「じゃ、行きましょう。シノブさんお願い。」
「それじゃ、皆んな僕に触れて。」
―ポン。
「「え。」」
「トランステレポート。」
誰かの声が聞こえた気がした。いつもの浮遊感から暗転。そして明かりを見つけ、目が光を認識するとそこは違う場所。
「これが転移魔法……。」
「穴がないね。少しズレたかも?」
『忍様が魔法を放った場所は、行っていないので移動出来ませんでした。代わりに魔法を放った森に飛んでいます。』
「あ、そっか。あそこまで行ってないね。アイさんどっち?」
『こちらです。』
アイさんが矢印を出して道を示してくれる。
「じゃー皆んな行こうか。」
「はーい。」
「ええ。」
「何か出そうでドキドキですね。」
「何も出ないで欲しいですけど。」
「……。」
森の中を少し歩くと僕の魔法が落ちた場所まで来た。
「結構でっかいね。びっくりだ。」
「これじゃあの地響きも納得ね。」
「さすが師匠です!」
「褒めるとこですか?しかし、この規模の魔法が抑えたものと。全力だったらどうなるのか……。」
「さぁ?僕自身よく分からない。」
「私が思うに、街ごと消しされるんじゃないかしら。」
「さすが師匠です!」
「さすがで消されちゃ困ります!」
「はは。まさかそこまで出来る訳……」
『忍様なら可能かと。』
「……。」
わーお。随分と物騒な話じゃないか。これは誰にも言わないでおこう。
「さてどうしよう。アイさん、まず何からやったらいいかな?」
『有効範囲の指定と周りの土の状態を調べましょう。』
「範囲の指定ね。長さは100メートルとして、深さは……風玉!」
―ビュン………パァン。
『風玉の速度と反響からですと120メートルと言ったところでしょうか。』
「は〜120メートルも深さあるのか。普通に落ちたら死んじゃうね。」
「120……。」
「まぁ落ちたら飛べばいいのよ。」
「ですね。着地前に跳べば大丈夫ですね。」
「……いやいや。それ出来る人はでしょ?」
「あら、エスト居たの?」
「なぜかここに居るか私が聞きたいわ。転移をする時シノブさんの近くに居て、肩に手を乗せられたからかしら。」
「あれ?連れてこない方が良かった?でも戦闘になるならエストも居た方が心強いかなって。」
「べ、別に。嫌だとは言ってないわ。そう……心強いか。」
さて、次は土かな。100メートルとなると、周りからただ慣らすだけじゃ足りなそうだな。そもそも雷が落ちただけで、土を消したりしてない。
「そうなると、土はどこいったのか……押し潰したのかな?」
『そうです。私の見立てでは、後出量の雷が地面を押し付けて出来たかと。』
「それなら地面を盛り上げて人が踏んでも沈まない硬さにすればいいのか。」
『それなら下に行き、地面に触って魔法の使う事をお進めます。』
「分かった。そしたら下りますか。」
「え!降りるんですか?」
「はい。周りから土を集めるより、地下の土を盛り上げる方がいいので。」
フージさんが穴から下を覗き込み、それにエストも続く。
「……高いですね。」
「そうね。下の方見えないわ。2人は見ないの?」
「私はもっと高い所から見た事あるから。」
「私もです。空なので暗くないですけど。」
「そう言えばそんな体験もしたわね……。」
「空?一体何をしたんですか?」
「まぁ見てれば分かるわよ。」
2人が穴から離れる。深いと分かってて怖くても見たい気持ちは分かる。
「見納めだけどいいかな。レブルとエスト、少しの間見張りお願いね。」
「ええ。いってらっしゃい。」
「よし。セロー行くよ。」
「私も行っていいんですか?」
「僕の魔法見るんでしょ?なんならセローも土系統使えるから、手伝ってもらおうかな。」
「はいです!」
僕とセローは穴に飛び込む。
「え?えぇぇぇ!!!」
「そんな驚かなくても大丈夫よ。」
「2人は飛べるからね。」
「飛ぶですか?」
底が暗くて見えにくいな。少し明かりがあるとセローも降りやすいだろうか。
「アイさん。」
『明かりですか。下は酸素が無くなると危ないので、上空に火の玉をお勧めします。』
「さすが、言わなくても伝わるね。それじゃ……」
『マジックコントロール・ジャストワン、キープエリア。』
「火玉。」
―ゴォォォォ!!
上に投げた火玉はその場に留まり、小さな太陽みたいに穴全体を照らす。
「よく見えます〜ありがとうです〜」
「着地は気をつけてねー」
「はいです〜」
そして目の前に迫る地面。
―フワッ、スタ。
―バシャァ!
僕は風で速度を緩和、セローは水の勢いを利用して着地。
「それじゃ早速始めようか。」
「はいです!」
僕は魔法のイメージとどういう事が必要なのかセローに説明をする。有効範囲や地面の強度などは僕とアイさんでやる事になった。セローには地面を上に押し上げる事をやって貰う。
「魔力が足りなくなったら渡すからね。」
「いえ!自分用の回復薬を調合したので、実験として使います。」
「そんな物まで作れるのか!凄いね。僕も必要になる時があったらお願いしようかな。」
「へへ。完成したら師匠にもプレゼントとします!」
「うん。楽しみにしてるよ。それじゃ……頼むねセロー。」
「いきます。すぅ……はぁぁ!」
―ズズズズズズズ…………
♦︎
地面が揺れ始めた。
「早速始まったわね。」
「本当にこんな大きい穴が埋まるのかしらね?」
「もう驚かないぞ。これから起こる事は分かっているんだ。」
「そんな構えなくてもいいと思うけど。魔物の気配も無いし、気楽に見てましょう。」
この領主さんはさっきから驚きの連続で、少し落ち着いた方がいいと思う。
ここに転移して来てから、飛び降りた時、プチ太陽作った時、着地。恐らくだけど、この後の事でも驚くんでしょうね。これから起こる事は予想もつくけど。私達のように慣れてない人だと斜め上過ぎて、結局驚くと思うのよね。
―ズズズズズズズ………
揺れが少し大きくなった気がするわね。だんだんせり上がっているのかしら。
でも普通に上って行くだけなら予想通り。斜め上ってなると……
「あ。2人とも。危ないからもう少し下がりましょうか。」
「ひぃ!」
「え?徐々にせり上がってくるのにですか?」
「やっぱり普通はそう思うわよね。でもこの魔法はセローとアイさんが居るとしても、実行の要はシノブさんだから。」
「一体何が起きると……」
―ズズズ……ガガガ!
ほら、なんか音が変わったわ。
―ガガガ……ピシ。
目の前の地面に亀裂が入り始める。そしてアマンとゾンが言った通りの展開になる。
♦︎
―ダァァァァン!
「セロー!ストップだよ!」
「はいです!」
込めた魔力を止め、僕らな陽の光下に戻ってきた。少しだけオーバーしたかな。まぁこれなら落ちて人が気がしたりはしないだろう。そしてレブル達のとこ目掛けて飛ぶ。セローは魔力を使い切ったかヘロヘロだったのでおんぶで降りる。
―フワッ、スタ。
「ただいま戻りました。」
「セロー、シノブさんお疲れ様。」
「セローは魔力切れかしら?」
「うん。制御系以外の土をせり上げるの任せたからね。」
「え!?それではこのせり上がった大地は、こんな小さな女の子が!」
驚くフージさんにやっぱりねって顔のレブル。
「へへ。少し頑張りました。師匠のテント程ではないけど。」
「いえ、凄い成長だと思うわ。」
「そうよ。あんなテントを作れるようになったら、人として何かが遠のくわ。セローはこれくらいでいいのよ。」
結果的に直径およそ100メートル四方の、地面から5メートルくらいの高さの地面が出て来た。
「勇者様のパーティは全員が勇者様クラスなのか……。」
「私は違うからね。」
「そうね。私もまだシノブさんの足元にも及ばないわ。」
「いやいや、それはないよ。皆んなの事、だいぶ頼りにしてるから。」
照れる2人に開いた口が塞がらないフージさん。山に出来たこの土地は、削らず何かに使うとなった。何になるかは今後の話し合いで決まるのだろう。
軽い気持ちで言った、穴を直す急な工事だったけど、セローのいい魔法の訓練になったな。どんどん成長するセローの今後が楽しみである。
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