無敵のフルフェイス
55話 去る者は追えず。
気持ちのいい朝。
部屋の窓に寄り日差しの眩しさに目を細める。
「今日もいい天気だ。今日は何も予定は無いけど、外に散歩にでも行こうかな。」
部屋を出る準備を整えヘルメットを被る。
「おはようアイさん。いい天気だね。」
『そうですね。気持ちの良い朝です。』
何気なく言ってみたが、アイさんにもこの景色が見えているのだろうか。気持ちの良いって言っている訳だし、雲一つないこの空が見えているのかな?
せっかくだから部屋の換気でもと窓を開ける。
―ふぁ
風が吹き込み窓のカーテンが揺れる。ライダースーツにフルフェイスの僕には風は感じないんだが。
―カサ。
何かが目の前に落ちたのが見えた。
「何だろう?手紙…………あ!」
『どうかされましたか?』
「手紙だよ!領主の人に来てって言われてたんだった!」
『そうですね。』
「アイさん覚えてた!?なら教えてよ〜」
『申し訳ありません。至急とも記載はありませんでしたし、忍様の御用より優先されるものでは無いと思いまして。』
「あ、ごめんね。別にアイさんが悪い訳じゃないからね。」
確かに急ぎではないと書いてあった気がするが、流石に何日も開けることはないよな。散歩にでも行こうと思ってたけど、領主に会いに行こう。歩けば散歩と変わらないだろう。
そうと分かれば早速行動……の前に朝食にしよう。誰か起きているかな。
「あ。師匠おはようございます!」
「おはようセロー。早いね。」
「はい!今日は調合の薬草を取りに行くので!」
「あー昨日入荷するって言ってたね。」
「はいです。師匠は今日どこに?」
「領主さんに会いに行こうかと。」
セローはちゃちゃっと朝食を済ますと、足早に出かけていった。
「車に……人にぶつからないようにね。」
「はいです!いってき、きゃふん。」
言ってるそばからぶつかった。僕の方を向いて走り出すからだよ。ぶつかった相手にペコペコ謝りそのまま走り去っ……また人とぶつかっていた。あれで無事たどり着けるのか?
「さてと。僕らも行こうか。」
『はい。』
席を立ち宿を出て僕は空を見上げて、陽の光に目を細める。
「…………そう言えばさ。」
『はい。』
「領主さんの家ってどこだろうね。」
『私も知らない個人の家までは……申し訳ありません。』
「だよね〜どこかに行けば分かるかな?」
『兵士のいる駐屯所なら知っているものもいるかと。』
「確かに。よしそこに行こう。」
街に入ってすぐの兵士達が集まる駐屯所に向かう。朝はあまり出歩かなかったけど、こう見るといろんな人が結構歩いている。皆んな朝早いんだね。
「あの、すいません。」
「はい。どうしまし……た……かぁ!?黒の勇者様!」
「シノブです。申し訳ないありませんが、道を尋ねたくて。」
「は!どちらに行かれますか?」
「領主さんの家に。呼ばれたんですけど、家知らなくて。」
「それならば迎えを呼びますが。」
「え?いいよ。歩きたい気分だし、場所だけ教えてくれますか?」
「畏まりました!地図などはお持ちでしょうか?ここが現在地なので……」
親切な兵士の人に家を印つけて貰った。去り際に握手を求められた。僕は有名人でも何でもないですけど?
「地図によればもう見えてくるはずなんだけど。」
『忍様。地図の印はあの建物を指しているかと。』
「あれか。でかいし、門番いるし聞いてみよう。」
欠伸をして暇そうな門番の前まで歩く。
「すいません領主さんは居ますか?」
「んぁ!?なんだ貴様!どこから出てきた!」
「どこって真っ正面ですが?」
「退屈だったとは言え、音も無く近づくとは怪しいヤツめ。」
手に持った槍を僕に向け明らかに警戒する門番。音も無く近づいたつもりはないんだけどな〜。
「領主さんに呼ばれて来たんですが。何か聞いていませんか?」
「貴様のような全身黒ずくめで魔道士の面会なんぞ……」
―ダダダ……。
どこからとも無く走る足音が聞こえる。なるほどこれくらい音を立てればいいのか。
「馬鹿者!」
―スパァァン!
「あいた!」
走った助走をつけて勢いよく門番の頭が、何かを丸めた紙で叩かれる。
「申し訳ありません黒の勇者様!」
「はへ?黒の勇者様?この怪しい魔道士が?」
―スパァン!
「痛いっすよ。」
「当たり前だ!それもこれも連絡帳も確認せんお前が悪い!」
「連絡事項ならここにありますよ。」
「ならば読めよ!」
「近日中来客予定あり。黒一色の兜と服を着ている勇者様が来られます。失礼のないよう伝達せよ……読みました。」
「あー頭がいたい。」
「二日酔いですか?」
「違うわぁぁ!」
―スパァン!
本日3度目のいい音がする。丸めた紙が少し形が変わっていた。
「しまった!領主に渡す報告書が!」
「ははは。ドジだな〜。」
「ぐぬぬ。」
僕はいつまでこの漫才を、見ていなければならないのか。
「貴方達、家まで聞こえて来ますよ。早朝から何をして……あら、シノブじゃない。」
「どうもジュカさん。領主様に会いに来たのですが、いらしゃいますか?」
「あれ?フージ……領主様なら朝早く貴方の宿に向かったわよ?」
どこですれ違った?僕が街を眺めながら歩いている時には見かけなかったぞ。
「そうですか。では宿に戻ります。」
「申し訳ないわね。あ。屋敷で待っていてもいいのよ?」
「いえ。近いですし、少し走ればすぐ戻れるので。」
漫才を止めてくれたジュカさんにお辞儀をして、僕は宿まで大至急戻る事にした。道は混んでたし、屋根伝いに行けばすぐ着くよね。
屋根伝いに宿まで戻った。思ったより早く帰って来れた。
「あらシノブさん。どこに行っていたの?」
「ちょっと領主さんに呼ばれたの思い出して行って来たんだ。」
「そうなの。あれ?でもさっきまでここに領主が居たわよ?」
「どこ行ったの?」
「さぁ?途中で会わなかった?」
「見てないなぁ……。」
早く帰ろうとして屋根伝いに帰ったのが完全裏目だな。街中駆け抜けた方が良かったか。
『忍様。今なら転移で領主宅に行けば会えるかも知れませんよ。』
「その手があったか!」
「どの手?」
「あ、ごめん。ちょっと行ってくるねレブル。」
「ええ。いってらっしゃい。」
「テレポート。」
レブルに手を振られる景色が歪む。一瞬の暗転に浮遊感の後、目の前にはさっき来た領主の家の前。
「ふぁぁ……今日も平和だ。」
「気抜きすぎじゃない?」
「はふ!?って勇者様ですか。驚かさないでくださいよ。てか今、目の前に突然現れませんでした?」
「魔法だよ。で、領主さんは?」
「旦那ならまだ帰って来てませんけど。」
『どうやら少し早過ぎたらしいですね。』
門の前で門番と話していると……。
―ダダダ……。
また走って誰かが近づいてくる。誰かって分かっているけど、名前が分からない。
―ビュン!
今度は攻撃を回避する門番。
「そう何度も食らいませんよ。」
「ぐぬぬ。」
「はいはい。漫才はいいから。」
「また突っ走って行ったと思ったらシノブじゃない。フージに会えたかしら?」
「それが旦那とはまだ会ってないみたいですよ。」
「そうなの。」
「こら!領主様と呼べと何度言えば分かる!」
「「ごめんなさい。」」
「あ、いえ。ジュカ様の事を言っては……でも人前ではお気をつけ下さい。」
「分かったわ。」
またしても書類で叩こうと振りかぶったけど、ジュカさんが反応した事でそのまま書類は下げられた。安堵の息を吐く門番。
「それでどうする?フージ……領主様が帰るまで屋敷で待つかしら?」
「ふむ。アイさんどう思う?」
『また入れ違いになるかもしれませんし。追い掛けるより待つ方が得策だと。』
「そうだよね。」
『それに忍様に用があるなら向こうが来ればいいだけの事。忍様が探し回る必要もありません。』
わぁ〜クール。
「お昼も近いし、昼食でも用意させますよ?」
「行きます。」
「ふふ。男の子は素直で良いわね。」
領主さんの食事となれば、それだけで何故か期待が出来る。街の食堂では味わえない何かがきっとそこにはあるはず!
♦︎
しばらくしても領主さんは帰って来なかった。
昼食を頂き、食後にお茶を貰い。そのままおやつまでご馳走になった。
「満足。美味しかった……。」
「ふふ。」
「ははは。そう言ってくれると、作った甲斐があるってもんだよ。」
「仲間にも味わって貰いたいくらいですよ。」
「それなら明日も来たら良いわ。フージにも言っておくから。用があるのはこっちなのに申し訳ないけど。」
「本当ですか?でも今日もご馳走になって、明日もってなんか……。」
「私は構わないさ。それにこれから夕食の買い出し行くから。若い子が遠慮するもんじゃないよ。」
少しだけ考えた。しかし答えは既に決まっている。
「明日も伺います。」
「そうと決まったら私は買い物に行かなきゃね。今なら露店にまだ食材並んでるからね!」
「それなら僕が送りますよ。」
「坊やがエスコートかい?」
「行き帰り大変ですし、荷物ごと運びますよ。」
「よく分からないけど。それじゃ頼もうかしらね。」
「それではジュカさん。領主さんに言伝お願いします。コック長は僕に掴まって下さい。」
「こうかい?」
「それじゃ行きましょう。トランステレポート!」
「え?えぇぇ…………」
移動する間際にジュカさんの叫び声がしたような……気の所為か。
僕と料理長は露店の並ぶ場所まで飛んだ。
「ここは?いつも買い物する所じゃないかい。噂には聞いていたが、勇者様は何でも出来るもんなんだね。」
「そんな事ないですが。では帰りも送りますので。遠慮なく買い物して下さい。」
「そうかい?ついでだし、重たい物も買っちゃうかしら。」
その後色々買い物に付き合った。今日と明日の美味しい物の為ならば安いものだ。今から明日が楽しみである。
部屋の窓に寄り日差しの眩しさに目を細める。
「今日もいい天気だ。今日は何も予定は無いけど、外に散歩にでも行こうかな。」
部屋を出る準備を整えヘルメットを被る。
「おはようアイさん。いい天気だね。」
『そうですね。気持ちの良い朝です。』
何気なく言ってみたが、アイさんにもこの景色が見えているのだろうか。気持ちの良いって言っている訳だし、雲一つないこの空が見えているのかな?
せっかくだから部屋の換気でもと窓を開ける。
―ふぁ
風が吹き込み窓のカーテンが揺れる。ライダースーツにフルフェイスの僕には風は感じないんだが。
―カサ。
何かが目の前に落ちたのが見えた。
「何だろう?手紙…………あ!」
『どうかされましたか?』
「手紙だよ!領主の人に来てって言われてたんだった!」
『そうですね。』
「アイさん覚えてた!?なら教えてよ〜」
『申し訳ありません。至急とも記載はありませんでしたし、忍様の御用より優先されるものでは無いと思いまして。』
「あ、ごめんね。別にアイさんが悪い訳じゃないからね。」
確かに急ぎではないと書いてあった気がするが、流石に何日も開けることはないよな。散歩にでも行こうと思ってたけど、領主に会いに行こう。歩けば散歩と変わらないだろう。
そうと分かれば早速行動……の前に朝食にしよう。誰か起きているかな。
「あ。師匠おはようございます!」
「おはようセロー。早いね。」
「はい!今日は調合の薬草を取りに行くので!」
「あー昨日入荷するって言ってたね。」
「はいです。師匠は今日どこに?」
「領主さんに会いに行こうかと。」
セローはちゃちゃっと朝食を済ますと、足早に出かけていった。
「車に……人にぶつからないようにね。」
「はいです!いってき、きゃふん。」
言ってるそばからぶつかった。僕の方を向いて走り出すからだよ。ぶつかった相手にペコペコ謝りそのまま走り去っ……また人とぶつかっていた。あれで無事たどり着けるのか?
「さてと。僕らも行こうか。」
『はい。』
席を立ち宿を出て僕は空を見上げて、陽の光に目を細める。
「…………そう言えばさ。」
『はい。』
「領主さんの家ってどこだろうね。」
『私も知らない個人の家までは……申し訳ありません。』
「だよね〜どこかに行けば分かるかな?」
『兵士のいる駐屯所なら知っているものもいるかと。』
「確かに。よしそこに行こう。」
街に入ってすぐの兵士達が集まる駐屯所に向かう。朝はあまり出歩かなかったけど、こう見るといろんな人が結構歩いている。皆んな朝早いんだね。
「あの、すいません。」
「はい。どうしまし……た……かぁ!?黒の勇者様!」
「シノブです。申し訳ないありませんが、道を尋ねたくて。」
「は!どちらに行かれますか?」
「領主さんの家に。呼ばれたんですけど、家知らなくて。」
「それならば迎えを呼びますが。」
「え?いいよ。歩きたい気分だし、場所だけ教えてくれますか?」
「畏まりました!地図などはお持ちでしょうか?ここが現在地なので……」
親切な兵士の人に家を印つけて貰った。去り際に握手を求められた。僕は有名人でも何でもないですけど?
「地図によればもう見えてくるはずなんだけど。」
『忍様。地図の印はあの建物を指しているかと。』
「あれか。でかいし、門番いるし聞いてみよう。」
欠伸をして暇そうな門番の前まで歩く。
「すいません領主さんは居ますか?」
「んぁ!?なんだ貴様!どこから出てきた!」
「どこって真っ正面ですが?」
「退屈だったとは言え、音も無く近づくとは怪しいヤツめ。」
手に持った槍を僕に向け明らかに警戒する門番。音も無く近づいたつもりはないんだけどな〜。
「領主さんに呼ばれて来たんですが。何か聞いていませんか?」
「貴様のような全身黒ずくめで魔道士の面会なんぞ……」
―ダダダ……。
どこからとも無く走る足音が聞こえる。なるほどこれくらい音を立てればいいのか。
「馬鹿者!」
―スパァァン!
「あいた!」
走った助走をつけて勢いよく門番の頭が、何かを丸めた紙で叩かれる。
「申し訳ありません黒の勇者様!」
「はへ?黒の勇者様?この怪しい魔道士が?」
―スパァン!
「痛いっすよ。」
「当たり前だ!それもこれも連絡帳も確認せんお前が悪い!」
「連絡事項ならここにありますよ。」
「ならば読めよ!」
「近日中来客予定あり。黒一色の兜と服を着ている勇者様が来られます。失礼のないよう伝達せよ……読みました。」
「あー頭がいたい。」
「二日酔いですか?」
「違うわぁぁ!」
―スパァン!
本日3度目のいい音がする。丸めた紙が少し形が変わっていた。
「しまった!領主に渡す報告書が!」
「ははは。ドジだな〜。」
「ぐぬぬ。」
僕はいつまでこの漫才を、見ていなければならないのか。
「貴方達、家まで聞こえて来ますよ。早朝から何をして……あら、シノブじゃない。」
「どうもジュカさん。領主様に会いに来たのですが、いらしゃいますか?」
「あれ?フージ……領主様なら朝早く貴方の宿に向かったわよ?」
どこですれ違った?僕が街を眺めながら歩いている時には見かけなかったぞ。
「そうですか。では宿に戻ります。」
「申し訳ないわね。あ。屋敷で待っていてもいいのよ?」
「いえ。近いですし、少し走ればすぐ戻れるので。」
漫才を止めてくれたジュカさんにお辞儀をして、僕は宿まで大至急戻る事にした。道は混んでたし、屋根伝いに行けばすぐ着くよね。
屋根伝いに宿まで戻った。思ったより早く帰って来れた。
「あらシノブさん。どこに行っていたの?」
「ちょっと領主さんに呼ばれたの思い出して行って来たんだ。」
「そうなの。あれ?でもさっきまでここに領主が居たわよ?」
「どこ行ったの?」
「さぁ?途中で会わなかった?」
「見てないなぁ……。」
早く帰ろうとして屋根伝いに帰ったのが完全裏目だな。街中駆け抜けた方が良かったか。
『忍様。今なら転移で領主宅に行けば会えるかも知れませんよ。』
「その手があったか!」
「どの手?」
「あ、ごめん。ちょっと行ってくるねレブル。」
「ええ。いってらっしゃい。」
「テレポート。」
レブルに手を振られる景色が歪む。一瞬の暗転に浮遊感の後、目の前にはさっき来た領主の家の前。
「ふぁぁ……今日も平和だ。」
「気抜きすぎじゃない?」
「はふ!?って勇者様ですか。驚かさないでくださいよ。てか今、目の前に突然現れませんでした?」
「魔法だよ。で、領主さんは?」
「旦那ならまだ帰って来てませんけど。」
『どうやら少し早過ぎたらしいですね。』
門の前で門番と話していると……。
―ダダダ……。
また走って誰かが近づいてくる。誰かって分かっているけど、名前が分からない。
―ビュン!
今度は攻撃を回避する門番。
「そう何度も食らいませんよ。」
「ぐぬぬ。」
「はいはい。漫才はいいから。」
「また突っ走って行ったと思ったらシノブじゃない。フージに会えたかしら?」
「それが旦那とはまだ会ってないみたいですよ。」
「そうなの。」
「こら!領主様と呼べと何度言えば分かる!」
「「ごめんなさい。」」
「あ、いえ。ジュカ様の事を言っては……でも人前ではお気をつけ下さい。」
「分かったわ。」
またしても書類で叩こうと振りかぶったけど、ジュカさんが反応した事でそのまま書類は下げられた。安堵の息を吐く門番。
「それでどうする?フージ……領主様が帰るまで屋敷で待つかしら?」
「ふむ。アイさんどう思う?」
『また入れ違いになるかもしれませんし。追い掛けるより待つ方が得策だと。』
「そうだよね。」
『それに忍様に用があるなら向こうが来ればいいだけの事。忍様が探し回る必要もありません。』
わぁ〜クール。
「お昼も近いし、昼食でも用意させますよ?」
「行きます。」
「ふふ。男の子は素直で良いわね。」
領主さんの食事となれば、それだけで何故か期待が出来る。街の食堂では味わえない何かがきっとそこにはあるはず!
♦︎
しばらくしても領主さんは帰って来なかった。
昼食を頂き、食後にお茶を貰い。そのままおやつまでご馳走になった。
「満足。美味しかった……。」
「ふふ。」
「ははは。そう言ってくれると、作った甲斐があるってもんだよ。」
「仲間にも味わって貰いたいくらいですよ。」
「それなら明日も来たら良いわ。フージにも言っておくから。用があるのはこっちなのに申し訳ないけど。」
「本当ですか?でも今日もご馳走になって、明日もってなんか……。」
「私は構わないさ。それにこれから夕食の買い出し行くから。若い子が遠慮するもんじゃないよ。」
少しだけ考えた。しかし答えは既に決まっている。
「明日も伺います。」
「そうと決まったら私は買い物に行かなきゃね。今なら露店にまだ食材並んでるからね!」
「それなら僕が送りますよ。」
「坊やがエスコートかい?」
「行き帰り大変ですし、荷物ごと運びますよ。」
「よく分からないけど。それじゃ頼もうかしらね。」
「それではジュカさん。領主さんに言伝お願いします。コック長は僕に掴まって下さい。」
「こうかい?」
「それじゃ行きましょう。トランステレポート!」
「え?えぇぇ…………」
移動する間際にジュカさんの叫び声がしたような……気の所為か。
僕と料理長は露店の並ぶ場所まで飛んだ。
「ここは?いつも買い物する所じゃないかい。噂には聞いていたが、勇者様は何でも出来るもんなんだね。」
「そんな事ないですが。では帰りも送りますので。遠慮なく買い物して下さい。」
「そうかい?ついでだし、重たい物も買っちゃうかしら。」
その後色々買い物に付き合った。今日と明日の美味しい物の為ならば安いものだ。今から明日が楽しみである。
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