無敵のフルフェイス
46話 無敵のテントは壊せない。
僕らは【メロデ・マウント】に向かう。だけど途中の山に入ってから魔物気囲まれ続ける。それは街に近づくとそれは尚激しくなる。
「いい時間だが。これじゃ野営も出来んな。」
「街までまだあるんだよね?」
「そうだな。走り抜けるにも、馬が先に参っちまう。」
「そうだよね……じゃ、休もうか。」
「いや、だからこんな魔物がうようよいる中じゃ……。」
いつもみたいに見張りを置いて野営をしても、おちおち寝ていられない。それは何故か?戦う人数を減らすと危ないからか?否!
「煩いなら静かになるよう設計すればいい……アース・オペレーション!」
―ゴゴゴゴゴ……。
「出たわね。とんでもテント。」
「久しぶりに見ますね。」
「何だそのとんでも?テント?」
―ゴゴゴゴゴ……ズドン!
「「「「なんか出たー!?」」」」
「ささ。入ろう。馬だけ先に入れて、馬車は仕舞うから。」
「私とセローで、皆んなが入るまで魔物を追い払うわ。」
「お任せ下さい!」
「そう?じゃ、僕は収納と補強をするよ。」
半信半疑な仲間達は、僕の作ったテントの中に入る。殿をレブルとセローがしてくれたお陰で、すんなり収納も出来た。
「それじゃ2人とも戻って来て。」
戦闘を切り上げ入口まで走るレブル。
「最後にお土産です!特大水玉……バースト!」
―ザブッ……パァァァーン!
「ナイスセロー。早くおいで。」
「はーい。」
「閉じるよ。」
―ズン。
皆んな無事収容出来たかな。
「暗いな……。」
「灯か。天井少しだけ開けるか。空気穴とか必要だしね。水玉。」
―ドドドドドド!
テントの天井に複数の穴を開けた。これで最低限の灯は確保出来たわけだ。
「開けるの大雑把だな。」
「細かい作業は苦手だから。気にして作るなら、作ってから壊す方が簡単だし。」
「そ、そうか。」
―…………トン。
―…………ギャァ。
「しかし音が全然しないな。」
「煩いと寝にくいじゃん?」
「いや、まぁそうなんだが。」
「とりあえず、火を起こすのお願いしていい?」
「お、おう。」
そしていつも通りの食事の準備をアマンとゾンに任せる。初めは怯えていた馬達も今は落ち着いている。と言うか寝ている。
「戦闘続きで余程疲れてたのね。」
「……馬ってか立ったまま寝るんだ。」
「そうよ。しゃがんだりするけど滅多にないわ。」
「へ〜器用なもんだね。」
馬の世話はいつも任せっきりだったから、馬に着いては何も知らない。今回は僕自身も馬に乗っていた事もあり、エストに簡単なお世話のやり方を教えて貰った。
「ご飯出来たぞ。キリ良いところで食べちまおう。」
皆んなで食事をとる。解体が終わっていない素材は、広さ的に出せないので僕がバラした魔物を調理して貰った。
「しかし、このテントはなんなんだ?」
「土魔法で作った簡易なテントだよ。」
「簡易なって……外じゃ魔物が何かしてるんじゃないのか?」
「それは大丈夫ね。前にこのとんでもテントを作った時は、シノブさんが攻撃しても多少耐えていたもの。」
「そんなのもう要塞じゃないか……。」
「そうね。下手な要塞よりは強固だと思うけど。」
言葉を失う仲間達。そんなに驚くような事じゃないと思うけど。簡易で作ったから、外の状況を確認しようもないし。灯や空気穴は後から付けた訳で。僕がもう少し魔力操作が出来れば、窓や門を作って生活しやすくするんだけど。
「師匠ですから。」
「シノブさんだから。」
「そうだな。シノブだもんな……。」
「なにその諦めたような言い方は?」
「気にするな。自分に言い聞かせているだけだ。」
久し振りに聞いたが、僕にはその意味が全く分からない。仲間達は納得してるみたいだから、深くは突っ込まないけど。
休める時には休もうって話で皆んなで寝る。
♦︎
翌朝の出来事?暗いから朝かよく分からないけど、陽の光のようなものが入ってきていると思う。まぁこの際どっちでも良い。
―…………ズン。
―…………ズン!
―…………ズン!!
「少し煩いね。やっぱり朝なのかな?」
「んー朝だからって訳じゃないと思うけどな。」
「アマン、スープおかわりだ。」
「おう。」
「2人とも動じなくなったわね。」
「俺らはシノブと付き合いが1番長いからな……エストもそのうち慣れる。」
僕らは朝食中。外から少しだけ音がする様になってきた。
「こう間隔があまり空かないで音がするから。もしかしたら外でこのテントを壊そうと、無謀な事をしている人がいるかもね。」
「師匠のテントを壊そうとするなんて。私が出て懲らしめなければいけませんかね。」
「僕が行くから良いよ。出るにも壊さないとだし。外に出る時ついでに治しちゃうから、皆んなはここでゆっくり食べてて。」
さてと、静かな朝の食卓を邪魔する悪い子は誰だい?
―ボーン!
天井を撃ち抜き外に飛び出す。なんか気分はどこか煙突から出てくるキャラの……今度マントを着けてみようかな。
「ボス!上に何かいます!」
「あぁ?この俺を見下ろすだと?」
「……君より高い位置に居るんだから、見下ろしてもしょうがないでしょう。」
「ふざけんな!」
―ズン!
あの音の原因は君か。それよりも気になるのは……。
「なんでこんなに魔物が?あ、でも喋っていたから魔族か?」
『その通りです。彼らは魔族です。おそらく昨日の魔物が大量に発生した事も、彼らが原因かも知れませんね。』
「そうなの?この山がもともと、モンスターマウンテンとかかもよ?」
『記録上はそう言うのは無かったのですが。ここ数年で生態系が変わったのかも知れませんね。』
「生態系変わるなんて数年じゃ無理でしょう?」
『何を言いますか。忍様なら生態系の一つや二つ簡単に変えられますよ。』
「……変えないから。さてあの魔族どうしようか。」
下でやんや言っている魔族も、ここまで来る気配がない。テントの天辺だし、飛べば届くよね?
「降りてこい!その生意気な態度を俺様が矯正してやる!」
「飛べないの?」
「飛べなきゃ悪いのか!あぁ?」
『随分と口が悪いですね。私が粛清しましょうか?』
「粛清って。」
絶賛今も壁を八つ当たりのように、叩き続けるボスと呼ばれた魔物。煩いからとりあえず、水玉で吹き飛ばそうか。
『あ、忍様。ここでの魔法は止めた方が。』
「どうして?」
『忍様の攻撃であれば、テントごと破壊可能だからです。』
「それは危ないね。教えてくれてありがとう。さすがアイさん。」
『とんでもありません!!』
「それじゃとりあえず……アイツらをここから剥がすところからだね。」
テントを突き破った所を直し、固まっていない所に飛び降りる。
『マッスルレインフォース、ダイヤモンドアーマー!』
「グラビティ……。」
―ズズ……スタッ。
数メートルあったから、一応重力を逆にしてふんわり着地。魔法で吹き飛ばしたり、避けられてテントに当てるわけにはいかない。それならやっぱり素手か。
―グガァァ!!
突進してくる魔物。そんなご丁寧にまっすぐ角を突き出して来られても。
―パシ。パシ。
「っよ。」
「んな!ブレイクバッファローの突進を止めただと!?」
「何その物騒な名前。それ!」
―ヒュー……ドシーーン!
そのまま遠くに投げてみた。少し遠くに飛ばしすぎたか?まぁいいか。
「なんてやつだ……。」
「忍って言います。」
「いや、名前は聞いてはいないんだが……。」
「そう。ところで突然攻撃するって事は敵で良いんだよね?」
魔物全体が一歩下がる。ちょっと下がられると困るんだけど。
「てめーら!ビビってんじゃねーぞ!相手は人間1人だぞ……あ〜人間か?」
「失礼な。どこからどう見ても人間でしょう?」
「どこからどう見ても?ブレイクバッファローを素手で投げ飛ばす人間はいない。」
「ここにいるじゃないか。」
「いや、まぁそうなんだが……くそ、なんか調子狂うな。」
魔族の人がイライラしてか、地面を足で踏みつける。
「1体で戦うな!複数で攻めろ!いけ!!」
―グラァァァ!
―ギャァァァ!
魔物達が殺気立つと、複数で僕に向かってくる。
「っしょ!」
―スパァァ……ドシーーン!
右手のビンタでどこかに飛んでく魔物。軽いなぁ。
「っし!」
―ビュン、ッゴ!ドン……ドン……ザァァ……。
回し蹴りを当てると、今度は地面にバウンドしながら飛んでいく。
「大きさの割に随分と軽いんだね。」
「どっちも数百キロの魔物なんだが?」
「そうなの?それなら足腰が弱いだけか。」
そして勢いよく吠えた魔物達は、一歩また一歩と下がって行く。だからテントから離れてよ。
「っち。何体使っても、こっちの頭数が減らされるだけか。お前ら予定通り街に行け!俺はこいつの相手をする……。」
魔物達は魔族の言う事を聞いて、どこかへ移動していった。よしよし、それでいい。
「ん?街?」
「……貴様の相手はこの俺様だ。」
ちょっと待てよ。この魔族は今街に行けって言ったか?
「アイさん。さっきの魔物達が向かった先って分かる?」
『あの方角には【メロデ・マウント】があります。近隣に他の街はありません。』
「街って【メロデ・マウント】か。これから行くとこなのに、あの魔物達がめちゃくちゃにしたら困るな。」
「ふん。少し予定が狂ったが、貴様はここから先には行かせねーぜ。」
何処からか斧を出し構える魔族。
すぐ倒せるか分からないし、ここはレブル達に先に街に行って貰うしかないかな。
「ちょっとごめんね。」
「何がだ……」
「テレポート。」
―ヒュン。
テントの中に戻ると、旅支度を済ませたレブル達がいた。
「行くのねシノブさん。」
「あ、ちょっと状況は悪い方に。説明するから皆んな聞いて欲しい。」
僕は外にいる謎の魔族の相手をするから、皆んなで【メロデ・マウント】に行って可能な限り支援をお願いした。
「向こうでの指揮はレブルに任せるから。馬もお願いね。」
「分かったわ。」
「おいおい。いきなり物騒な話だな。」
「そうだね。でも魔物達は、僕が片手でビンタや蹴りで飛んでくくらいだから。」
「その基準は参考にならないが、外の魔族よりは安全そうだな。」
「外にいる魔族もそんなに強くないかもよ?テントも壊せないくらいだし。」
「シノブの基準じゃ当てにならんって。そもそも魔族は騎士が部隊で戦うくらいだぞ。」
何その基準。レブルだって戦えたんだし、ビビりすぎじゃない?
「ほら、話してる間も街は危ないから。早く行きましょう。」
「それもそうだね。ちょっと荒っぽく入口作るから離れてね。」
そう言うと、全員でテントの端っこまで下がった。それを見ていた馬も……。
「そんな離れなくても……まぁいいか。水玉……バースト!」
―ズガァァァァァン!!!
セローのやってた魔法を真似てみたけど。結構上手くいったね。
「さぁ行こうか。」
僕らは無敵のテントを壊して出た。
「いい時間だが。これじゃ野営も出来んな。」
「街までまだあるんだよね?」
「そうだな。走り抜けるにも、馬が先に参っちまう。」
「そうだよね……じゃ、休もうか。」
「いや、だからこんな魔物がうようよいる中じゃ……。」
いつもみたいに見張りを置いて野営をしても、おちおち寝ていられない。それは何故か?戦う人数を減らすと危ないからか?否!
「煩いなら静かになるよう設計すればいい……アース・オペレーション!」
―ゴゴゴゴゴ……。
「出たわね。とんでもテント。」
「久しぶりに見ますね。」
「何だそのとんでも?テント?」
―ゴゴゴゴゴ……ズドン!
「「「「なんか出たー!?」」」」
「ささ。入ろう。馬だけ先に入れて、馬車は仕舞うから。」
「私とセローで、皆んなが入るまで魔物を追い払うわ。」
「お任せ下さい!」
「そう?じゃ、僕は収納と補強をするよ。」
半信半疑な仲間達は、僕の作ったテントの中に入る。殿をレブルとセローがしてくれたお陰で、すんなり収納も出来た。
「それじゃ2人とも戻って来て。」
戦闘を切り上げ入口まで走るレブル。
「最後にお土産です!特大水玉……バースト!」
―ザブッ……パァァァーン!
「ナイスセロー。早くおいで。」
「はーい。」
「閉じるよ。」
―ズン。
皆んな無事収容出来たかな。
「暗いな……。」
「灯か。天井少しだけ開けるか。空気穴とか必要だしね。水玉。」
―ドドドドドド!
テントの天井に複数の穴を開けた。これで最低限の灯は確保出来たわけだ。
「開けるの大雑把だな。」
「細かい作業は苦手だから。気にして作るなら、作ってから壊す方が簡単だし。」
「そ、そうか。」
―…………トン。
―…………ギャァ。
「しかし音が全然しないな。」
「煩いと寝にくいじゃん?」
「いや、まぁそうなんだが。」
「とりあえず、火を起こすのお願いしていい?」
「お、おう。」
そしていつも通りの食事の準備をアマンとゾンに任せる。初めは怯えていた馬達も今は落ち着いている。と言うか寝ている。
「戦闘続きで余程疲れてたのね。」
「……馬ってか立ったまま寝るんだ。」
「そうよ。しゃがんだりするけど滅多にないわ。」
「へ〜器用なもんだね。」
馬の世話はいつも任せっきりだったから、馬に着いては何も知らない。今回は僕自身も馬に乗っていた事もあり、エストに簡単なお世話のやり方を教えて貰った。
「ご飯出来たぞ。キリ良いところで食べちまおう。」
皆んなで食事をとる。解体が終わっていない素材は、広さ的に出せないので僕がバラした魔物を調理して貰った。
「しかし、このテントはなんなんだ?」
「土魔法で作った簡易なテントだよ。」
「簡易なって……外じゃ魔物が何かしてるんじゃないのか?」
「それは大丈夫ね。前にこのとんでもテントを作った時は、シノブさんが攻撃しても多少耐えていたもの。」
「そんなのもう要塞じゃないか……。」
「そうね。下手な要塞よりは強固だと思うけど。」
言葉を失う仲間達。そんなに驚くような事じゃないと思うけど。簡易で作ったから、外の状況を確認しようもないし。灯や空気穴は後から付けた訳で。僕がもう少し魔力操作が出来れば、窓や門を作って生活しやすくするんだけど。
「師匠ですから。」
「シノブさんだから。」
「そうだな。シノブだもんな……。」
「なにその諦めたような言い方は?」
「気にするな。自分に言い聞かせているだけだ。」
久し振りに聞いたが、僕にはその意味が全く分からない。仲間達は納得してるみたいだから、深くは突っ込まないけど。
休める時には休もうって話で皆んなで寝る。
♦︎
翌朝の出来事?暗いから朝かよく分からないけど、陽の光のようなものが入ってきていると思う。まぁこの際どっちでも良い。
―…………ズン。
―…………ズン!
―…………ズン!!
「少し煩いね。やっぱり朝なのかな?」
「んー朝だからって訳じゃないと思うけどな。」
「アマン、スープおかわりだ。」
「おう。」
「2人とも動じなくなったわね。」
「俺らはシノブと付き合いが1番長いからな……エストもそのうち慣れる。」
僕らは朝食中。外から少しだけ音がする様になってきた。
「こう間隔があまり空かないで音がするから。もしかしたら外でこのテントを壊そうと、無謀な事をしている人がいるかもね。」
「師匠のテントを壊そうとするなんて。私が出て懲らしめなければいけませんかね。」
「僕が行くから良いよ。出るにも壊さないとだし。外に出る時ついでに治しちゃうから、皆んなはここでゆっくり食べてて。」
さてと、静かな朝の食卓を邪魔する悪い子は誰だい?
―ボーン!
天井を撃ち抜き外に飛び出す。なんか気分はどこか煙突から出てくるキャラの……今度マントを着けてみようかな。
「ボス!上に何かいます!」
「あぁ?この俺を見下ろすだと?」
「……君より高い位置に居るんだから、見下ろしてもしょうがないでしょう。」
「ふざけんな!」
―ズン!
あの音の原因は君か。それよりも気になるのは……。
「なんでこんなに魔物が?あ、でも喋っていたから魔族か?」
『その通りです。彼らは魔族です。おそらく昨日の魔物が大量に発生した事も、彼らが原因かも知れませんね。』
「そうなの?この山がもともと、モンスターマウンテンとかかもよ?」
『記録上はそう言うのは無かったのですが。ここ数年で生態系が変わったのかも知れませんね。』
「生態系変わるなんて数年じゃ無理でしょう?」
『何を言いますか。忍様なら生態系の一つや二つ簡単に変えられますよ。』
「……変えないから。さてあの魔族どうしようか。」
下でやんや言っている魔族も、ここまで来る気配がない。テントの天辺だし、飛べば届くよね?
「降りてこい!その生意気な態度を俺様が矯正してやる!」
「飛べないの?」
「飛べなきゃ悪いのか!あぁ?」
『随分と口が悪いですね。私が粛清しましょうか?』
「粛清って。」
絶賛今も壁を八つ当たりのように、叩き続けるボスと呼ばれた魔物。煩いからとりあえず、水玉で吹き飛ばそうか。
『あ、忍様。ここでの魔法は止めた方が。』
「どうして?」
『忍様の攻撃であれば、テントごと破壊可能だからです。』
「それは危ないね。教えてくれてありがとう。さすがアイさん。」
『とんでもありません!!』
「それじゃとりあえず……アイツらをここから剥がすところからだね。」
テントを突き破った所を直し、固まっていない所に飛び降りる。
『マッスルレインフォース、ダイヤモンドアーマー!』
「グラビティ……。」
―ズズ……スタッ。
数メートルあったから、一応重力を逆にしてふんわり着地。魔法で吹き飛ばしたり、避けられてテントに当てるわけにはいかない。それならやっぱり素手か。
―グガァァ!!
突進してくる魔物。そんなご丁寧にまっすぐ角を突き出して来られても。
―パシ。パシ。
「っよ。」
「んな!ブレイクバッファローの突進を止めただと!?」
「何その物騒な名前。それ!」
―ヒュー……ドシーーン!
そのまま遠くに投げてみた。少し遠くに飛ばしすぎたか?まぁいいか。
「なんてやつだ……。」
「忍って言います。」
「いや、名前は聞いてはいないんだが……。」
「そう。ところで突然攻撃するって事は敵で良いんだよね?」
魔物全体が一歩下がる。ちょっと下がられると困るんだけど。
「てめーら!ビビってんじゃねーぞ!相手は人間1人だぞ……あ〜人間か?」
「失礼な。どこからどう見ても人間でしょう?」
「どこからどう見ても?ブレイクバッファローを素手で投げ飛ばす人間はいない。」
「ここにいるじゃないか。」
「いや、まぁそうなんだが……くそ、なんか調子狂うな。」
魔族の人がイライラしてか、地面を足で踏みつける。
「1体で戦うな!複数で攻めろ!いけ!!」
―グラァァァ!
―ギャァァァ!
魔物達が殺気立つと、複数で僕に向かってくる。
「っしょ!」
―スパァァ……ドシーーン!
右手のビンタでどこかに飛んでく魔物。軽いなぁ。
「っし!」
―ビュン、ッゴ!ドン……ドン……ザァァ……。
回し蹴りを当てると、今度は地面にバウンドしながら飛んでいく。
「大きさの割に随分と軽いんだね。」
「どっちも数百キロの魔物なんだが?」
「そうなの?それなら足腰が弱いだけか。」
そして勢いよく吠えた魔物達は、一歩また一歩と下がって行く。だからテントから離れてよ。
「っち。何体使っても、こっちの頭数が減らされるだけか。お前ら予定通り街に行け!俺はこいつの相手をする……。」
魔物達は魔族の言う事を聞いて、どこかへ移動していった。よしよし、それでいい。
「ん?街?」
「……貴様の相手はこの俺様だ。」
ちょっと待てよ。この魔族は今街に行けって言ったか?
「アイさん。さっきの魔物達が向かった先って分かる?」
『あの方角には【メロデ・マウント】があります。近隣に他の街はありません。』
「街って【メロデ・マウント】か。これから行くとこなのに、あの魔物達がめちゃくちゃにしたら困るな。」
「ふん。少し予定が狂ったが、貴様はここから先には行かせねーぜ。」
何処からか斧を出し構える魔族。
すぐ倒せるか分からないし、ここはレブル達に先に街に行って貰うしかないかな。
「ちょっとごめんね。」
「何がだ……」
「テレポート。」
―ヒュン。
テントの中に戻ると、旅支度を済ませたレブル達がいた。
「行くのねシノブさん。」
「あ、ちょっと状況は悪い方に。説明するから皆んな聞いて欲しい。」
僕は外にいる謎の魔族の相手をするから、皆んなで【メロデ・マウント】に行って可能な限り支援をお願いした。
「向こうでの指揮はレブルに任せるから。馬もお願いね。」
「分かったわ。」
「おいおい。いきなり物騒な話だな。」
「そうだね。でも魔物達は、僕が片手でビンタや蹴りで飛んでくくらいだから。」
「その基準は参考にならないが、外の魔族よりは安全そうだな。」
「外にいる魔族もそんなに強くないかもよ?テントも壊せないくらいだし。」
「シノブの基準じゃ当てにならんって。そもそも魔族は騎士が部隊で戦うくらいだぞ。」
何その基準。レブルだって戦えたんだし、ビビりすぎじゃない?
「ほら、話してる間も街は危ないから。早く行きましょう。」
「それもそうだね。ちょっと荒っぽく入口作るから離れてね。」
そう言うと、全員でテントの端っこまで下がった。それを見ていた馬も……。
「そんな離れなくても……まぁいいか。水玉……バースト!」
―ズガァァァァァン!!!
セローのやってた魔法を真似てみたけど。結構上手くいったね。
「さぁ行こうか。」
僕らは無敵のテントを壊して出た。
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