無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

46話 無敵のテントは壊せない。

 僕らは【メロデ・マウント】に向かう。だけど途中の山に入ってから魔物気囲まれ続ける。それは街に近づくとそれは尚激しくなる。


「いい時間だが。これじゃ野営も出来んな。」
「街までまだあるんだよね?」
「そうだな。走り抜けるにも、馬が先に参っちまう。」
「そうだよね……じゃ、休もうか。」
「いや、だからこんな魔物がうようよいる中じゃ……。」


 いつもみたいに見張りを置いて野営をしても、おちおち寝ていられない。それは何故か?戦う人数を減らすと危ないからか?否!


「煩いなら静かになるよう設計すればいい……アース・オペレーション!」


 ―ゴゴゴゴゴ……。


「出たわね。とんでもテント。」
「久しぶりに見ますね。」
「何だそのとんでも?テント?」


 ―ゴゴゴゴゴ……ズドン!


「「「「なんか出たー!?」」」」
「ささ。入ろう。馬だけ先に入れて、馬車は仕舞うから。」
「私とセローで、皆んなが入るまで魔物を追い払うわ。」
「お任せ下さい!」
「そう?じゃ、僕は収納と補強をするよ。」


 半信半疑な仲間達は、僕の作ったテントの中に入る。殿をレブルとセローがしてくれたお陰で、すんなり収納も出来た。


「それじゃ2人とも戻って来て。」


 戦闘を切り上げ入口まで走るレブル。


「最後にお土産です!特大水玉……バースト!」


 ―ザブッ……パァァァーン!


「ナイスセロー。早くおいで。」
「はーい。」
「閉じるよ。」


 ―ズン。


 皆んな無事収容出来たかな。


「暗いな……。」
「灯か。天井少しだけ開けるか。空気穴とか必要だしね。水玉。」


 ―ドドドドドド!


 テントの天井に複数の穴を開けた。これで最低限の灯は確保出来たわけだ。


「開けるの大雑把だな。」
「細かい作業は苦手だから。気にして作るなら、作ってから壊す方が簡単だし。」
「そ、そうか。」


 ―…………トン。
 ―…………ギャァ。


「しかし音が全然しないな。」
「煩いと寝にくいじゃん?」
「いや、まぁそうなんだが。」
「とりあえず、火を起こすのお願いしていい?」
「お、おう。」


 そしていつも通りの食事の準備をアマンとゾンに任せる。初めは怯えていた馬達も今は落ち着いている。と言うか寝ている。


「戦闘続きで余程疲れてたのね。」
「……馬ってか立ったまま寝るんだ。」
「そうよ。しゃがんだりするけど滅多にないわ。」
「へ〜器用なもんだね。」


 馬の世話はいつも任せっきりだったから、馬に着いては何も知らない。今回は僕自身も馬に乗っていた事もあり、エストに簡単なお世話のやり方を教えて貰った。


「ご飯出来たぞ。キリ良いところで食べちまおう。」


 皆んなで食事をとる。解体が終わっていない素材は、広さ的に出せないので僕がバラした魔物を調理して貰った。


「しかし、このテントはなんなんだ?」
「土魔法で作った簡易なテントだよ。」
「簡易なって……外じゃ魔物が何かしてるんじゃないのか?」
「それは大丈夫ね。前にこのとんでもテントを作った時は、シノブさんが攻撃しても多少耐えていたもの。」
「そんなのもう要塞じゃないか……。」
「そうね。下手な要塞よりは強固だと思うけど。」


 言葉を失う仲間達。そんなに驚くような事じゃないと思うけど。簡易で作ったから、外の状況を確認しようもないし。灯や空気穴は後から付けた訳で。僕がもう少し魔力操作が出来れば、窓や門を作って生活しやすくするんだけど。


「師匠ですから。」
「シノブさんだから。」
「そうだな。シノブだもんな……。」
「なにその諦めたような言い方は?」
「気にするな。自分に言い聞かせているだけだ。」


 久し振りに聞いたが、僕にはその意味が全く分からない。仲間達は納得してるみたいだから、深くは突っ込まないけど。


 休める時には休もうって話で皆んなで寝る。


 ♦︎


 翌朝の出来事?暗いから朝かよく分からないけど、陽の光のようなものが入ってきていると思う。まぁこの際どっちでも良い。


 ―…………ズン。
 ―…………ズン!
 ―…………ズン!!


「少し煩いね。やっぱり朝なのかな?」
「んー朝だからって訳じゃないと思うけどな。」
「アマン、スープおかわりだ。」
「おう。」
「2人とも動じなくなったわね。」
「俺らはシノブと付き合いが1番長いからな……エストもそのうち慣れる。」


 僕らは朝食中。外から少しだけ音がする様になってきた。


「こう間隔があまり空かないで音がするから。もしかしたら外でこのテントを壊そうと、無謀な事をしている人がいるかもね。」
「師匠のテントを壊そうとするなんて。私が出て懲らしめなければいけませんかね。」
「僕が行くから良いよ。出るにも壊さないとだし。外に出る時ついでに治しちゃうから、皆んなはここでゆっくり食べてて。」


 さてと、静かな朝の食卓を邪魔する悪い子は誰だい?


 ―ボーン!


 天井を撃ち抜き外に飛び出す。なんか気分はどこか煙突から出てくるキャラの……今度マントを着けてみようかな。


「ボス!上に何かいます!」
「あぁ?この俺を見下ろすだと?」
「……君より高い位置に居るんだから、見下ろしてもしょうがないでしょう。」
「ふざけんな!」


 ―ズン!


 あの音の原因は君か。それよりも気になるのは……。


「なんでこんなに魔物が?あ、でも喋っていたから魔族か?」
『その通りです。彼らは魔族です。おそらく昨日の魔物が大量に発生した事も、彼らが原因かも知れませんね。』
「そうなの?この山がもともと、モンスターマウンテンとかかもよ?」
『記録上はそう言うのは無かったのですが。ここ数年で生態系が変わったのかも知れませんね。』
「生態系変わるなんて数年じゃ無理でしょう?」
『何を言いますか。忍様なら生態系の一つや二つ簡単に変えられますよ。』
「……変えないから。さてあの魔族どうしようか。」


 下でやんや言っている魔族も、ここまで来る気配がない。テントの天辺だし、飛べば届くよね?


「降りてこい!その生意気な態度を俺様が矯正してやる!」
「飛べないの?」
「飛べなきゃ悪いのか!あぁ?」
『随分と口が悪いですね。私が粛清しましょうか?』
「粛清って。」


 絶賛今も壁を八つ当たりのように、叩き続けるボスと呼ばれた魔物。煩いからとりあえず、水玉で吹き飛ばそうか。


『あ、忍様。ここでの魔法は止めた方が。』
「どうして?」
『忍様の攻撃であれば、テントごと破壊可能だからです。』
「それは危ないね。教えてくれてありがとう。さすがアイさん。」
『とんでもありません!!』
「それじゃとりあえず……アイツらをここから剥がすところからだね。」


 テントを突き破った所を直し、固まっていない所に飛び降りる。


『マッスルレインフォース、ダイヤモンドアーマー!』
「グラビティ……。」


 ―ズズ……スタッ。


 数メートルあったから、一応重力を逆にしてふんわり着地。魔法で吹き飛ばしたり、避けられてテントに当てるわけにはいかない。それならやっぱり素手か。


 ―グガァァ!!


 突進してくる魔物。そんなご丁寧にまっすぐ角を突き出して来られても。


 ―パシ。パシ。


「っよ。」
「んな!ブレイクバッファローの突進を止めただと!?」
「何その物騒な名前。それ!」


 ―ヒュー……ドシーーン!


 そのまま遠くに投げてみた。少し遠くに飛ばしすぎたか?まぁいいか。


「なんてやつだ……。」
「忍って言います。」
「いや、名前は聞いてはいないんだが……。」
「そう。ところで突然攻撃するって事は敵で良いんだよね?」


 魔物全体が一歩下がる。ちょっと下がられると困るんだけど。


「てめーら!ビビってんじゃねーぞ!相手は人間1人だぞ……あ〜人間か?」
「失礼な。どこからどう見ても人間でしょう?」
「どこからどう見ても?ブレイクバッファローを素手で投げ飛ばす人間はいない。」
「ここにいるじゃないか。」
「いや、まぁそうなんだが……くそ、なんか調子狂うな。」


 魔族の人がイライラしてか、地面を足で踏みつける。


「1体で戦うな!複数で攻めろ!いけ!!」


 ―グラァァァ!
 ―ギャァァァ!


 魔物達が殺気立つと、複数で僕に向かってくる。


「っしょ!」


 ―スパァァ……ドシーーン!


 右手のビンタでどこかに飛んでく魔物。軽いなぁ。


「っし!」


 ―ビュン、ッゴ!ドン……ドン……ザァァ……。


 回し蹴りを当てると、今度は地面にバウンドしながら飛んでいく。


「大きさの割に随分と軽いんだね。」
「どっちも数百キロの魔物なんだが?」
「そうなの?それなら足腰が弱いだけか。」


 そして勢いよく吠えた魔物達は、一歩また一歩と下がって行く。だからテントから離れてよ。


「っち。何体使っても、こっちの頭数が減らされるだけか。お前ら予定通り街に行け!俺はこいつの相手をする……。」


 魔物達は魔族の言う事を聞いて、どこかへ移動していった。よしよし、それでいい。


「ん?街?」
「……貴様の相手はこの俺様だ。」


 ちょっと待てよ。この魔族は今街に行けって言ったか?


「アイさん。さっきの魔物達が向かった先って分かる?」
『あの方角には【メロデ・マウント】があります。近隣に他の街はありません。』
「街って【メロデ・マウント】か。これから行くとこなのに、あの魔物達がめちゃくちゃにしたら困るな。」
「ふん。少し予定が狂ったが、貴様はここから先には行かせねーぜ。」


 何処からか斧を出し構える魔族。


 すぐ倒せるか分からないし、ここはレブル達に先に街に行って貰うしかないかな。


「ちょっとごめんね。」
「何がだ……」
「テレポート。」


 ―ヒュン。


 テントの中に戻ると、旅支度を済ませたレブル達がいた。


「行くのねシノブさん。」
「あ、ちょっと状況は悪い方に。説明するから皆んな聞いて欲しい。」


 僕は外にいる謎の魔族の相手をするから、皆んなで【メロデ・マウント】に行って可能な限り支援をお願いした。


「向こうでの指揮はレブルに任せるから。馬もお願いね。」
「分かったわ。」
「おいおい。いきなり物騒な話だな。」
「そうだね。でも魔物達は、僕が片手でビンタや蹴りで飛んでくくらいだから。」
「その基準は参考にならないが、外の魔族よりは安全そうだな。」
「外にいる魔族もそんなに強くないかもよ?テントも壊せないくらいだし。」
「シノブの基準じゃ当てにならんって。そもそも魔族は騎士が部隊で戦うくらいだぞ。」


 何その基準。レブルだって戦えたんだし、ビビりすぎじゃない?


「ほら、話してる間も街は危ないから。早く行きましょう。」
「それもそうだね。ちょっと荒っぽく入口作るから離れてね。」


 そう言うと、全員でテントの端っこまで下がった。それを見ていた馬も……。


「そんな離れなくても……まぁいいか。水玉……バースト!」


 ―ズガァァァァァン!!!


 セローのやってた魔法を真似てみたけど。結構上手くいったね。


「さぁ行こうか。」


 僕らは無敵のテントを壊して出た。

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