無敵のフルフェイス
26話 追う者と追われる者②
馬車を飛び出してまっすぐ北西に進む。
『忍様!イーグルアイ。』
「お、遠くに見えるあれがそうかな?」
アイさんのフォローもあり、目で見える距離まで近づけた。
「騎士の人達は見えないから、別れた後すぐに見つかったのかな?運がないね。」
『いえ、忍様が居るのですから、運は良いと思われます。』
「そうかね〜?襲われない方が良いと思うけどね……あ、僕が追い掛けたから魔物に絡まれたとか?」
『そんな事は御座いません。』
アマンとゾンの時もそうだけど、僕は何かに追われた人に遭遇しやすい何かがあるんじゃないか。心の中でひっそりと思ってた。知らない間に魔物を引き寄せるスキルを使っていたりして……。
「今は目の前を何とかしてから考えるか。風玉……行け。」
―ビュン!……ズザァァァ。
「よし倒した。回収っと。もう大丈夫で……。」
―ガラガラガラ…………。
あれ?魔物にもう追われていない事に気がついていない?馬車は止まる事なく走り続ける。
「まぁ魔物に追われる事はなくなったから良いのかな。」
『忍様……あれを。』
もう大丈夫ですの前に赤い矢印が現れた。それが上へと言っている。
「上に何か…………。」
―ゴォォン!
僕の頭上を大きな黒い何かが過ぎて行った。視線の先には猛スピードで走る馬車。
「今度は別のものに追われてる?」
『その様です。』
「運が良いのか悪いのか……。しかし空を飛ぶ魔物か。これはアレを試すしかない。」
『忍様……アレですか?』
「そうアレだ…………。」
『……。』
アイさんなら分かってくれるかと、あえてアレと言い続けた。ってこんな意地悪をしている場合じゃないか。
「アイさ……」
『畏まりました。忍様、アースオペレーションを使用する許可を下さい。』
「え?土弄りのアレ?良いけど。僕はどうすればいい?」
『地面に手を付き魔力を流して下さい。合図を出すので持ち上げて頂ければ。』
「良くわからないけど、分かった。地面に手を付いて魔力を流すね。」
『アースオペレーション…………。』
地面に手を付きただ無心で魔力を流す。アイさんは一体何が分かったのだろうか?このタイミングで翼を生やして飛ぶという、僕の考えとは違う事は分かる。
『忍様上げて下さい!』
「りょ〜!!」
何これ少し重い?
「うぬぬ……とりゃ!」
―ドゴォォォン!!
地面から引き抜いた感覚のこれは?金属?
「アイさんこれは?」
『空を飛ぶものです。』
おや?僕の考えと一緒だ。方法が違うだけで。見れば飛行機の翼の様なものがある。これ付けて飛ぶってどこかで見たな……ただ僕が知る物とは少し違い、ジェットエンジンがない。
『細かな姿勢制御等は私が行いますので。忍様は戦いに集中して下さい。』
「これ背負って動けるの?どうやって進みたい方向知るの?」
『行きたい方向に姿勢や視線を向けて貰えれば、そちらに動くように致します。初めのうちは誤差が0.5秒程あるかも知れませんが。』
初め意識やイメージして、魔法で飛ぶつもりだった。よくよく考えてみれば飛んだ事が無い僕が、魔法で飛べないのかも知れない。それを読み解き、解決策を提案するアイさん。これは流石としか言えない。
「流石アイさんだね。僕の考えをさらに超えてくるね。いやー凄いわ。」
『あ、ありがとう御座います。』
「じゃ、早速試してみようか。ちょっと距離出ちゃったね。追いつけるかな?」
『問題ありません。忍様、行きましょう!』
アイさんの作った翼を背負う。土から作った割には軽いかな。この後どうするんだ?
『エアーコントロール、ポスチャーコントロール。』
―ブワァ……。
おお。浮いた。いよいよ飛び上がるのか……。
「……。」
『……。』
「……。」
『……?』
「……ん?」
『忍様?いかないのですか?』
「え?この後は僕管轄下?」
気を取り直して……よーい、どん!
―ブワァ!!
飛んだぁぁぁ!!魔物が近くに迫る。
「やぁ。こんにちわ。」
―ギャァ!?
「少し相手になって貰えるかな?よいしょ!」
魔物と並走して、一応念の為に断ってから一撃を入れる。自身を回転させ、その勢いを残し足で魔物を蹴り上げる。
―バキィ!!
「っよ!」
空中に足場があるように踏み込み、蹴り上げた魔物との距離を一気に詰める。
―ドシ。ガシ。
「せーの!とりゃ!!」
一撃入れた魔物を掴み地面へと投げ捨てる。
―ズガァァァァァン!
動かない魔物の近くに着地する。老夫婦の馬車は今度は止まって僕を待っていた。
「無事そうで何よりです。」
「あ、あの。私どもが何かしましたでしょうか?」
「何かって?」
「いえ、魔族の方が我々を助けるように見えたので。」
「魔族の人が助けてくれたの?」
周りを見るがそれらしい反応は……。
『北から魔族に反応があります。しかしこの距離を移動したと言うか、近づいてきますが。』
「魔族はいる見たいだけど、貴方達助けた魔族は居ないようですね。」
「え?」
「ん?」
怯える老夫婦。目の前にいるのは僕だけ。そして周りには何もない。
「黒いライダースにフルフェイス。しかも今はこの黒い翼がついて…………魔族って僕の事?」
「違うのですか?」
話を聞けば、魔物に追われて逃げてきた。そして僕に追われていると勘違い。空の魔物を地面に叩きつけたのを見て、逃げ切れないからと止まったらしい。
「見た目の問題か……こればっかりはしょうがないか。」
「助けて頂いた恩人にとんだ御無礼を!?」
「あー良いですって。慣れてますんで。」
「して、魔導師様は儂等に何か御用でしょうか?」
レブル達が追いつくまで時間はあるし、待ちながらこれまでの経緯を説明した。
♦︎
シノブさんは森を突っ切って行ってしまった。しかも何キロ先とか言っているのを聞いた気もする。アイさんがいるとは言え、どこまで凄い魔法を持っているんだろう。
「どうしたレブル?」
「シノブさんの魔法ってどこまでいくんだろうね。」
「限界はないように感じるが、実際出来ないこともあるからな。」
「治癒とかだっけ?」
「そうだな。応急処置や怪我の治療だったら、セローや俺達の方が得意だったりする。」
そう言えばそうね。あまり怪我もしていないから忘れそうになるわね。
「魔法のコントロールなんかは、レブルやセローの方が出来るんだろう?シノブのはする気がないように見えるがな。」
「確かに。」
魔法は全部が規格外なシノブさん。火は私の方が上手く扱えるし、水の魔法もそのうちセローの方が上手くなるのだろうか。
「レブル!魔物がいるぞ!」
「!?今は色々考えるのはやめましょう!」
馬車を止め剣を構える。シノブさんのいないこの状況。私だってちゃんと出来るんだから。
―ボォウ。
「セロー。斬り込むわ。アマンとゾンの援護を。」
「了解!」
後ろの気配が近づいてくる。一応念には念を入れようかしら。
「そこの2人組!後ろは任せても良いかしら?」
声をかけた2人組の声だけがする。
「「はぃぃぃ!!?」」
今のは返事かしら?なんか囲まれつつあるし、今は目の前の敵を倒しましょう。
『忍様!イーグルアイ。』
「お、遠くに見えるあれがそうかな?」
アイさんのフォローもあり、目で見える距離まで近づけた。
「騎士の人達は見えないから、別れた後すぐに見つかったのかな?運がないね。」
『いえ、忍様が居るのですから、運は良いと思われます。』
「そうかね〜?襲われない方が良いと思うけどね……あ、僕が追い掛けたから魔物に絡まれたとか?」
『そんな事は御座いません。』
アマンとゾンの時もそうだけど、僕は何かに追われた人に遭遇しやすい何かがあるんじゃないか。心の中でひっそりと思ってた。知らない間に魔物を引き寄せるスキルを使っていたりして……。
「今は目の前を何とかしてから考えるか。風玉……行け。」
―ビュン!……ズザァァァ。
「よし倒した。回収っと。もう大丈夫で……。」
―ガラガラガラ…………。
あれ?魔物にもう追われていない事に気がついていない?馬車は止まる事なく走り続ける。
「まぁ魔物に追われる事はなくなったから良いのかな。」
『忍様……あれを。』
もう大丈夫ですの前に赤い矢印が現れた。それが上へと言っている。
「上に何か…………。」
―ゴォォン!
僕の頭上を大きな黒い何かが過ぎて行った。視線の先には猛スピードで走る馬車。
「今度は別のものに追われてる?」
『その様です。』
「運が良いのか悪いのか……。しかし空を飛ぶ魔物か。これはアレを試すしかない。」
『忍様……アレですか?』
「そうアレだ…………。」
『……。』
アイさんなら分かってくれるかと、あえてアレと言い続けた。ってこんな意地悪をしている場合じゃないか。
「アイさ……」
『畏まりました。忍様、アースオペレーションを使用する許可を下さい。』
「え?土弄りのアレ?良いけど。僕はどうすればいい?」
『地面に手を付き魔力を流して下さい。合図を出すので持ち上げて頂ければ。』
「良くわからないけど、分かった。地面に手を付いて魔力を流すね。」
『アースオペレーション…………。』
地面に手を付きただ無心で魔力を流す。アイさんは一体何が分かったのだろうか?このタイミングで翼を生やして飛ぶという、僕の考えとは違う事は分かる。
『忍様上げて下さい!』
「りょ〜!!」
何これ少し重い?
「うぬぬ……とりゃ!」
―ドゴォォォン!!
地面から引き抜いた感覚のこれは?金属?
「アイさんこれは?」
『空を飛ぶものです。』
おや?僕の考えと一緒だ。方法が違うだけで。見れば飛行機の翼の様なものがある。これ付けて飛ぶってどこかで見たな……ただ僕が知る物とは少し違い、ジェットエンジンがない。
『細かな姿勢制御等は私が行いますので。忍様は戦いに集中して下さい。』
「これ背負って動けるの?どうやって進みたい方向知るの?」
『行きたい方向に姿勢や視線を向けて貰えれば、そちらに動くように致します。初めのうちは誤差が0.5秒程あるかも知れませんが。』
初め意識やイメージして、魔法で飛ぶつもりだった。よくよく考えてみれば飛んだ事が無い僕が、魔法で飛べないのかも知れない。それを読み解き、解決策を提案するアイさん。これは流石としか言えない。
「流石アイさんだね。僕の考えをさらに超えてくるね。いやー凄いわ。」
『あ、ありがとう御座います。』
「じゃ、早速試してみようか。ちょっと距離出ちゃったね。追いつけるかな?」
『問題ありません。忍様、行きましょう!』
アイさんの作った翼を背負う。土から作った割には軽いかな。この後どうするんだ?
『エアーコントロール、ポスチャーコントロール。』
―ブワァ……。
おお。浮いた。いよいよ飛び上がるのか……。
「……。」
『……。』
「……。」
『……?』
「……ん?」
『忍様?いかないのですか?』
「え?この後は僕管轄下?」
気を取り直して……よーい、どん!
―ブワァ!!
飛んだぁぁぁ!!魔物が近くに迫る。
「やぁ。こんにちわ。」
―ギャァ!?
「少し相手になって貰えるかな?よいしょ!」
魔物と並走して、一応念の為に断ってから一撃を入れる。自身を回転させ、その勢いを残し足で魔物を蹴り上げる。
―バキィ!!
「っよ!」
空中に足場があるように踏み込み、蹴り上げた魔物との距離を一気に詰める。
―ドシ。ガシ。
「せーの!とりゃ!!」
一撃入れた魔物を掴み地面へと投げ捨てる。
―ズガァァァァァン!
動かない魔物の近くに着地する。老夫婦の馬車は今度は止まって僕を待っていた。
「無事そうで何よりです。」
「あ、あの。私どもが何かしましたでしょうか?」
「何かって?」
「いえ、魔族の方が我々を助けるように見えたので。」
「魔族の人が助けてくれたの?」
周りを見るがそれらしい反応は……。
『北から魔族に反応があります。しかしこの距離を移動したと言うか、近づいてきますが。』
「魔族はいる見たいだけど、貴方達助けた魔族は居ないようですね。」
「え?」
「ん?」
怯える老夫婦。目の前にいるのは僕だけ。そして周りには何もない。
「黒いライダースにフルフェイス。しかも今はこの黒い翼がついて…………魔族って僕の事?」
「違うのですか?」
話を聞けば、魔物に追われて逃げてきた。そして僕に追われていると勘違い。空の魔物を地面に叩きつけたのを見て、逃げ切れないからと止まったらしい。
「見た目の問題か……こればっかりはしょうがないか。」
「助けて頂いた恩人にとんだ御無礼を!?」
「あー良いですって。慣れてますんで。」
「して、魔導師様は儂等に何か御用でしょうか?」
レブル達が追いつくまで時間はあるし、待ちながらこれまでの経緯を説明した。
♦︎
シノブさんは森を突っ切って行ってしまった。しかも何キロ先とか言っているのを聞いた気もする。アイさんがいるとは言え、どこまで凄い魔法を持っているんだろう。
「どうしたレブル?」
「シノブさんの魔法ってどこまでいくんだろうね。」
「限界はないように感じるが、実際出来ないこともあるからな。」
「治癒とかだっけ?」
「そうだな。応急処置や怪我の治療だったら、セローや俺達の方が得意だったりする。」
そう言えばそうね。あまり怪我もしていないから忘れそうになるわね。
「魔法のコントロールなんかは、レブルやセローの方が出来るんだろう?シノブのはする気がないように見えるがな。」
「確かに。」
魔法は全部が規格外なシノブさん。火は私の方が上手く扱えるし、水の魔法もそのうちセローの方が上手くなるのだろうか。
「レブル!魔物がいるぞ!」
「!?今は色々考えるのはやめましょう!」
馬車を止め剣を構える。シノブさんのいないこの状況。私だってちゃんと出来るんだから。
―ボォウ。
「セロー。斬り込むわ。アマンとゾンの援護を。」
「了解!」
後ろの気配が近づいてくる。一応念には念を入れようかしら。
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