無敵のフルフェイス

ノベルバユーザー458883

26話 追う者と追われる者②

 馬車を飛び出してまっすぐ北西に進む。


『忍様!イーグルアイ。』
「お、遠くに見えるあれがそうかな?」


 アイさんのフォローもあり、目で見える距離まで近づけた。


「騎士の人達は見えないから、別れた後すぐに見つかったのかな?運がないね。」
『いえ、忍様が居るのですから、運は良いと思われます。』
「そうかね〜?襲われない方が良いと思うけどね……あ、僕が追い掛けたから魔物に絡まれたとか?」
『そんな事は御座いません。』


 アマンとゾンの時もそうだけど、僕は何かに追われた人に遭遇しやすい何かがあるんじゃないか。心の中でひっそりと思ってた。知らない間に魔物を引き寄せるスキルを使っていたりして……。


「今は目の前を何とかしてから考えるか。風玉……行け。」


 ―ビュン!……ズザァァァ。


「よし倒した。回収っと。もう大丈夫で……。」


 ―ガラガラガラ…………。


 あれ?魔物にもう追われていない事に気がついていない?馬車は止まる事なく走り続ける。


「まぁ魔物に追われる事はなくなったから良いのかな。」
『忍様……あれを。』


 もう大丈夫ですの前に赤い矢印が現れた。それが上へと言っている。


「上に何か…………。」


 ―ゴォォン!


 僕の頭上を大きな黒い何かが過ぎて行った。視線の先には猛スピードで走る馬車。


「今度は別のものに追われてる?」
『その様です。』
「運が良いのか悪いのか……。しかし空を飛ぶ魔物か。これはアレを試すしかない。」
『忍様……アレですか?』
「そうアレだ…………。」
『……。』


 アイさんなら分かってくれるかと、あえてアレと言い続けた。ってこんな意地悪をしている場合じゃないか。


「アイさ……」
『畏まりました。忍様、アースオペレーションを使用する許可を下さい。』
「え?土弄りのアレ?良いけど。僕はどうすればいい?」
『地面に手を付き魔力を流して下さい。合図を出すので持ち上げて頂ければ。』
「良くわからないけど、分かった。地面に手を付いて魔力を流すね。」
『アースオペレーション…………。』


 地面に手を付きただ無心で魔力を流す。アイさんは一体何が分かったのだろうか?このタイミングで翼を生やして飛ぶという、僕の考えとは違う事は分かる。


『忍様上げて下さい!』
「りょ〜!!」


 何これ少し重い?


「うぬぬ……とりゃ!」


 ―ドゴォォォン!!


 地面から引き抜いた感覚のこれは?金属?


「アイさんこれは?」
『空を飛ぶものです。』


 おや?僕の考えと一緒だ。方法が違うだけで。見れば飛行機の翼の様なものがある。これ付けて飛ぶってどこかで見たな……ただ僕が知る物とは少し違い、ジェットエンジンがない。


『細かな姿勢制御等は私が行いますので。忍様は戦いに集中して下さい。』
「これ背負って動けるの?どうやって進みたい方向知るの?」
『行きたい方向に姿勢や視線を向けて貰えれば、そちらに動くように致します。初めのうちは誤差が0.5秒程あるかも知れませんが。』


 初め意識やイメージして、魔法で飛ぶつもりだった。よくよく考えてみれば飛んだ事が無い僕が、魔法で飛べないのかも知れない。それを読み解き、解決策を提案するアイさん。これは流石としか言えない。


「流石アイさんだね。僕の考えをさらに超えてくるね。いやー凄いわ。」
『あ、ありがとう御座います。』
「じゃ、早速試してみようか。ちょっと距離出ちゃったね。追いつけるかな?」
『問題ありません。忍様、行きましょう!』


 アイさんの作った翼を背負う。土から作った割には軽いかな。この後どうするんだ?


『エアーコントロール、ポスチャーコントロール。』


 ―ブワァ……。


 おお。浮いた。いよいよ飛び上がるのか……。


「……。」
『……。』
「……。」
『……?』
「……ん?」
『忍様?いかないのですか?』
「え?この後は僕管轄下?」


 気を取り直して……よーい、どん!


 ―ブワァ!!


 飛んだぁぁぁ!!魔物が近くに迫る。


「やぁ。こんにちわ。」


 ―ギャァ!?


「少し相手になって貰えるかな?よいしょ!」


 魔物と並走して、一応念の為に断ってから一撃を入れる。自身を回転させ、その勢いを残し足で魔物を蹴り上げる。


 ―バキィ!!


「っよ!」


 空中に足場があるように踏み込み、蹴り上げた魔物との距離を一気に詰める。


 ―ドシ。ガシ。


「せーの!とりゃ!!」


 一撃入れた魔物を掴み地面へと投げ捨てる。


 ―ズガァァァァァン!


 動かない魔物の近くに着地する。老夫婦の馬車は今度は止まって僕を待っていた。


「無事そうで何よりです。」
「あ、あの。私どもが何かしましたでしょうか?」
「何かって?」
「いえ、魔族の方が我々を助けるように見えたので。」
「魔族の人が助けてくれたの?」


 周りを見るがそれらしい反応は……。


『北から魔族に反応があります。しかしこの距離を移動したと言うか、近づいてきますが。』
「魔族はいる見たいだけど、貴方達助けた魔族は居ないようですね。」
「え?」
「ん?」


 怯える老夫婦。目の前にいるのは僕だけ。そして周りには何もない。


「黒いライダースにフルフェイス。しかも今はこの黒い翼がついて…………魔族って僕の事?」
「違うのですか?」


 話を聞けば、魔物に追われて逃げてきた。そして僕に追われていると勘違い。空の魔物を地面に叩きつけたのを見て、逃げ切れないからと止まったらしい。


「見た目の問題か……こればっかりはしょうがないか。」
「助けて頂いた恩人にとんだ御無礼を!?」
「あー良いですって。慣れてますんで。」
「して、魔導師様は儂等に何か御用でしょうか?」


 レブル達が追いつくまで時間はあるし、待ちながらこれまでの経緯を説明した。


 ♦︎


 シノブさんは森を突っ切って行ってしまった。しかも何キロ先とか言っているのを聞いた気もする。アイさんがいるとは言え、どこまで凄い魔法を持っているんだろう。


「どうしたレブル?」
「シノブさんの魔法ってどこまでいくんだろうね。」
「限界はないように感じるが、実際出来ないこともあるからな。」
「治癒とかだっけ?」
「そうだな。応急処置や怪我の治療だったら、セローや俺達の方が得意だったりする。」


 そう言えばそうね。あまり怪我もしていないから忘れそうになるわね。


「魔法のコントロールなんかは、レブルやセローの方が出来るんだろう?シノブのはする気がないように見えるがな。」
「確かに。」


 魔法は全部が規格外なシノブさん。火は私の方が上手く扱えるし、水の魔法もそのうちセローの方が上手くなるのだろうか。


「レブル!魔物がいるぞ!」
「!?今は色々考えるのはやめましょう!」


 馬車を止め剣を構える。シノブさんのいないこの状況。私だってちゃんと出来るんだから。


 ―ボォウ。


「セロー。斬り込むわ。アマンとゾンの援護を。」
「了解!」


 後ろの気配が近づいてくる。一応念には念を入れようかしら。


「そこの2人組!後ろは任せても良いかしら?」


 声をかけた2人組の声だけがする。


「「はぃぃぃ!!?」」


 今のは返事かしら?なんか囲まれつつあるし、今は目の前の敵を倒しましょう。



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